ペドロ・G・フェレイラ『パーフェクト・セオリー 一般相対性理論に挑む天才たちの100年』
六道神士/士郎正宗『紅殻のパンドラ』(角川コミックス・エース)
パーフェクト・セオリー 一般相対性理論に挑む天才たちの100年
The Perfect Theory: A Century of Geniuses and the Battle over General Relativity
著者:ペドロ・G・フェレイラ
訳者:高橋則明
発行:2014年 NHK出版
原書発行:2014年
アインシュタインは偉大だが、一般相対性理論はもっと偉大だった。
構築した本人がもてあますほど。
過去の理論より、壮大な「統一場理論」の研究に時間をついやした。
さまざまな理論のあいだをふらつき、物理学界で孤立したまま死んだ。
相対性理論からみちびかれる「膨張モデル」や「ブラックホール」を否定。
「計算はただしいが、物理学としてはひどい」といって。
一般相対性理論の発展をもっともさまたげた研究者は、アインシュタインだ。
『シドニアの騎士』(テレビアニメ/2014年)
ナチスが政権をとった1933年、アインシュタインは祖国をさる。
ドイツで相対性理論研究は停滞。
唯物論哲学はびこるソヴィエトでも、抽象的思考をうながす面が攻撃された。
わかい世代は量子物理学に魅了される。
実験で検證可能な理論こそ正義だから。
プリンストンでの散歩仲間であるゲーデルは、1915年の方程式に関心しめした。
その解は時間遡行をみとめる奇怪なもので、アインシュタインはとまどう。
シヒラ竜也『Q[クー]』(ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ)
アインシュタインの死後、一般相対性理論は収穫の季節をむかえる。
ブラックホールの実在を證明せんとする、冷戦の壁をこえた協同作業のはじまり。
1960年代にようやく物理学の主流となった。
ホーキングは1974年にオックスフォードで、ブラックホールは「ブラック」でなく、
非常にかすかだが光をはなつとプレゼンし、聴衆の度肝をぬいた。
一般相対性理論と量子物理学をまとめる可能性がひらかれた。
それから40年、物理学はまだ混沌のなかにある。
意見の一致する量子重力理論はみつからない。
しかしそのカオスこそ、現代物理学の「土台」だ。
弦理論にせよループ量子重力理論にせよ、ほとんどすべてのアプローチが、
「時空を基本要素とするのを断念する」点で共通している。
どうやら時空は存在しない。
ディラックが「完璧な理論」とよんだ一般相対性理論は、
近年では暗黒エネルギーなど、観測データの挑戦をうけている。
基本假説を検證するのは学問の王道だが、あまりに数学的にうつくしすぎ、
100年のながきにわたり神聖不可侵の女王として君臨した。
物理学者はよく、シロウトからくだらない質問をされる。
たとえば「ビッグバンの前はなにがあったんですか?」と聞かれたら、
「それは北極点の北になにがあるか聞く様なものです」とはぐらかす。
いまはもっと多様な回答がありうる。
量子の泡や弦やブレーンやループなどで、時空のない世界へひとびとをいざなう。
![]() | パーフェクト・セオリー―一般相対性理論に挑む天才たちの100年 (2014/04/23) ペドロ・G・フェレイラ |
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