TNSK『昇る朝日にくちづけを』

 

 

昇る朝日にくちづけを

 

作者:TNSK

発行:集英社 2014年

レーベル:ヤングジャンプ・コミックス

 

 

 

初期のpixiv出身でイラストレーターとしても活躍する、TNSKの短篇集。

少女漫画みたいなタイトルだが、歯ごたえある一冊だ。

 

 

 

 

巻頭の『忘月夏』は、広島辯のきこえる郷里ですごす、ある夏の日をえがく。

死んだ恋人の妹「千代」が急接近してくる。

「私は姉ちゃんの代わりなんじゃ」といって。

 

 

 

 

その村の祭りは、假面をかぶっておこなう奇妙なもの。

迫害をのがれた隠れキリシタンがはじめた秘祭だとか。

土俗にまみれないハイカラな風習。

 

 

 

 

主人公は死者にあうため、はじめて地元の祭りへ参加。

闇に、髪のながい假面の女があらわれ、どちらからともなくまじわる。

それは恋人かもしれないし、千代かもしれない。

 

男の背筋にみえるリアリズムは、美大の油絵科でまなんだ素養がにじむ。

藝術性や文学性が、pixiv的なイラスト文化の抽象性とせめぎあう。

 

 

 

 

表題作は、時代をまたぐ凝った三部構成。

ときは戦中、佐渡の漁村の話からはじまる。

 

 

 

 

あどけない笑顔の「松」は、嫁ぎ先で夫から虐待されていた。

幼なじみの淡い恋心の純粋さと、寒村での復讐譚のどきついコントラスト。

 

 

 

 

後篇で読者は現代にとぶ。

高校教師「東崎先生」は、同僚に弱みをにぎられ関係を強要されている。

ひきつった笑顔で、それをうけいれる。

 

假面・性的禁忌・暴力……この短篇集は全体でひとつの変奏曲をなす。

 

 

 

 

夢のなかで松と先生が通じあう。

いつの世も日本のどこかにいる、いたましい夜をおくる女たちが、しばし解放される。

 

柳田國男『遠野物語』からえたインスピレーションが、

ゴヤやモネやゴッホにあこがれ絵筆をふるった経験と共鳴し、

なまなましいのに、どこか浮世ばなれしたお伽話をかたる。

 

 

『忘月夏』

 

 

空虚さが破片となり、胸にささる。

 

本書は「2010年代の最高傑作」とはいわないが、

ボクがこの5年でよんだどの漫画より、10年代的。




昇る朝日にくちづけを (ヤングジャンプコミックス)昇る朝日にくちづけを (ヤングジャンプコミックス)
(2014/08/20)
TNSK

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