東小雪『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』

宝塚音楽学校本科生時代の、暑中見舞い用の写真

 

 

なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白

 

著者:東小雪

発行:講談社 2014年

 

 

 

「あうら真輝」の藝名でタカラヅカの舞台にたった著者による体験記。

 

宝塚音楽学校予科生(1年生)の睡眠時間は一、二時間だけ。

本科生(2年生)による拷問にちかい「指導」は精神も害し、たいてい生理不順となるが、

むしろそれは名誉で、生理のある同期は「ラク予科」とバカにされる。

本科生に対しつかってよい言葉は「予科語」とよばれる7語(「いいえ」は生意気なので実質6語)のみ、

つねに口角をさげ眉間にシワをよせる「予科顔」もしないといけない。

 

予科生が本科生になると、うつくしき伝統はひきつがれる。

下級生を泣きながら絶対服従させるのは、たまらなく快感だから。

歴代のスターはこのんで予科生時代の苦労話をするが、

自分が一年間加害者だった経験は決してかたらない。

ボクの様なファンでないものが宝塚におぼえる無機質なイメージは、

レトルトの粥をレンジでチンする暇さえなく、そのまま口でチューチューすいこみ、

ロクに入浴もできず満身創痍でステージにたつ、劣悪な環境がもたらすのかも。

 

著者が退団したきっかけは、宝塚大劇場での『落陽のパレルモ』に出演する際、

衣装のズボンの内側にはいっていた縫い針が、腿に刺さったこと。

とにかく雑用が苦手だったので、連帯責任とらされる同期にうとまれた。

宝塚で先輩は後輩を、絶対たすけない。

同期の信頼をうしなうと、ここでは生きてゆけない。

 

 

貞本義行による『新世紀エヴァンゲリオン』のイラスト

 

 

精神科で処方された抗不安薬や抗鬱薬への依存がはじまる。

手のひらに山盛りの錠剤を、ワインで一気にながしこむ。

医者が飲めとゆうのだから、それは「いいこと」と自分に言い聞かせた。

リストカットをくりかえし、金沢市にある実家の二階の窓から飛び降りもした。

 

 

2013年3月1日、東京ディズニーシーでの挙式。ヴェネツィアン・ゴンドラで祝杯をあげる

 

 

よくかけた一冊の本は、著者の個性をあらわにする。

東小雪の場合、それは「暗示のかかりやすさ」。

 

高校2年生のとき親友のカミングアウトをきき、自分もレズビアンだと突如めざめた。

2012年春、シンデレラ城で結婚式をあげるプランがあると何気なく話したら、

パートナーの増原裕子に「同性カップルでもできるのかな?」といわれる。

天啓をえたかの様に、著者はディズニーリゾートへ電話した。

 

一週間の猶予をへてのディズニーの回答がしるされているが、

「反同性愛」と批判されるリスクを秤にかけた結果とはいえ、立派で誠実なもの。

日本においてディズニーは国法に準ずる権威があり、公平性では比較にならない。

 

 

仕事で東京にきた小学6年生のとき、浅草寺で

 

 

父・東修はナレーション事務所を経営し、演劇にたづさわる、地元の名士だった。

著者の藝名をかんがえもした。

3歳から子役をはじめ、バレエやピアノの稽古にはげんだ。

両親をよころばせたい一心で。

 

中2で初潮をむかえるまで、父と風呂にはいっていた。

そこで挿入をともなう性虐待をうけつづけたと本書にある。

ふるえながら「お父さんがお尻に恥づかしいことをする」とうったえたが、母は無視。

 

カウンセリングで誘導された「虚偽記憶」である蓋然性は否定できない。

2008年に父は悪性リンパ腫で死んでいる。

体中をかきむしり、血だらけとなって書いた本らしいし、

虐待経験を母に告白するとき、自分以上に傷つき自殺するのをおそれたとゆう記述も、

真摯な態度を感じさせ、本書に疑いをはさむことを躊躇させるが。

「記憶の恢復」により、著者がすくわれたのは事実なのだし。

 

 

サントリー「ビックル」のCM

 

 

小学4・5年生のころ、当時流行していたCMソング『おーい中村君』をうたったら、

不可解なことに「そんな歌、うたうのやめなさいッ!」と両親が激昂した。

ある日、ふとその記憶がよみがえった著者はYouTubeで検索。

坂井真紀が「お父さん、一緒にお風呂はいる?」と笑顔でセリフを口にしていた。

お母さんは、虐待に気づいてたんだ。

お父さんも、バレてるとしってたんだ。

 

ボクはそのヴァージョンをみつけられなかった。

「子どもと家族の心と健康」調査委員会は1998年に、

18歳未満の女子の39.4%が、なんらかの性的被害をうけいてると報告した。




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(2014/06/03)
東小雪

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苑田 健

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