ロンドンですれちがい ― 『バンク・ジョブ』

バンク

バンク・ジョブ
The Bank Job

出演者:ジェイソン・ステイサム サフロン・バロウズ リチャード・リンターン
監督:ロジャー・ドナルドソン
制作:イギリス 二〇〇八年
[シネマライズで鑑賞]


冒頭、中古車をうるジェイソン・ステイサムの店に、
やくざが借金をとりたてにくる。
レンチで車を破壊。
主人公は、眉ひとつうごかさない。
「売りものをこわされたら、金をかえせないだろ」
オレもこんなタフガイになりたかったが、もうおそいなあ。
たとえば、せまい道でひととすれちがうとき、みなさんどうします?
オレが道をゆずると、相手もおなじ方向にスライド。
さらにまごまご反復よことびをして、自己嫌悪におちいる。
ジェイソンならちがうね。
あるく速度はおとさず、いつもきまった方向にすこしずれる。
対面者はけおされて逆に。
たまに肩がぶつかるが、やつにケンカをうる馬鹿はいない。
『マトリックス』以降、アクションスターの市場は開放された。
まともにメシもくっていなそうな、ほそみのむすめがなぐりあう超現実。
そんな逆境のなかでも、男一匹、ステイサム氏は元気です。


真相はともかく、題材となる事件はイギリスで有名らしい。
わがくにの「三億円事件」みたいなものか。
宣伝では、九割が実話にもとづくというが、
かりに半分が事実だとしても、まるで信じがたい!
首がまわらないジェイソンは、しりあいのおんながもちかけた、
銀行の貸金庫をおそう計画にくわわる。
ところがそのはなしの裏で、英国政府が糸をひく。
ある悪党が脅迫の材料につかう、
マーガレット王女の乱交場面をおさめる写真を、
強盗にみせかけて極秘裏にうばわせる魂胆。
わるだくみは成功するが、貸金庫にはやばい荷物が満載で、
警察とマフィアの癒着の証拠までながれて、
国家をゆるがす不祥事に発展する。
「ホントかよ」と口をあんぐりあけたまま、
はなしをおうだけでたのしい犯罪映画の秀作だ。
監督のロジャー・ドナルドソンは、
キューバ危機をあつかう『13デイズ』がよかった記憶があるが、
実話を料理するのが得意なのだろうか。


おそろしい権力をもつ政府筋の人間のまえでも、
われらがジェイソンはおちつきはらう。
虚勢をはる相手のよわみをしめあげ、金と自由を要求。
相手がジェイソンだと、情報機関もおじけづく。
配役も気がきいてよくできた映画なのだが、
恋愛ばなしは、とってつけたちぐはぐさが。
犯罪にさそうおんなと、ジェイソンの妻が、嫉妬の火花をちらす。
警察と情報機関とマフィアにおわれるのに、
普通、三角関係で右往左往するひまはないよね。
まあ、きょうもロンドンに雨がふるように、
映画にはロマンスがつきものかもしれない。
敵対するおとこはにげだし、綺麗なおんなはむらがる。
まったくうらやましい境遇としか。
『デス・レース』につづき、ジェイソン・ステイサム絶好調だ。

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苑田 謙

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