川崎直孝『ちおちゃんの通学路』
ちおちゃんの通学路
作者:川崎直孝
掲載誌:『月刊コミックフラッパー』(メディアファクトリー/KADOKAWA)2014年-
単行本:MFコミックス フラッパーシリーズ
帰宅部の活躍をえがく漫画はいくつかしってるが、
さすがに「登校」が物語になるとおもわなかった。
始業前の十数分に、「三谷裳(みやも)ちお」が壮大なドラマを演ずる。
もし遅刻寸前でえらんだショートカットが通行止だったら。
電柱をのぼり、屋根づたいにすすむしかない。
高校1年のちおちゃんは重度のPCゲーマー。
ゲーミングキーパッド&マウスをあやつり、世界の猛者と砲火をまじえる。
哲学者じゃない方の「カント」とか煽られるとムキになり、徹夜がつづく。
当然、登校時間はまもれない。
ゲーム脳は、妄想を実体にする。
上からながめる町並みは、いつもよりずっとうつくしい。
まさに気分は『アサシンクリード』。
通学路における最大の障碍は、同級生だ。
上位カーストの「細川さん」から手をふられて困惑。
挨拶をかえして勘ちがいだったら、大恥かく。
かといって「中の下」に属するちおが失礼はたらけば、報復されるかも。
レーシングウェア姿の細川さんがステキ
地形をグリッド化して把握。
「細川さん・自分・(いるかもしれない)もうひとり」の位置関係と、攻撃範囲が表示される。
SRPGよろしく、最適な行動を詰将棋的にみちびく。
ゲーマーは、歩道の色つきブロックだけ踏んであるく子供にちかい。
中学からの腐れ縁である、「真奈菜ちゃん」と登校することも。
やたらカップルふえたのが不満なんだと。
高校3年間をマグロの部位にたとえる珍妙な恋愛論など、
不毛すぎるガールズトークがたのしい。
細川さんのリア充っぷりをみせつけられたあと、偶発的にキスする。
百合ですら、お遊戯感覚。
アクションが可能であるかを基準に、空間を再定義。
攻略の対象として、世界が構築される。
ゲーム脳は、21世紀の実存主義哲学だ。
![]() | ちおちゃんの通学路 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ) (2014/09/23) 川崎直孝 |
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