市川和馬『鉄仮面のイブキさん』
鉄仮面のイブキさん
作者:市川和馬
掲載誌:『まんがタイム』(芳文社)2013年-
単行本;まんがタイムコミックス
本来めまぐるしく変動する、思春期女子の感情表現をあえて抑制した、
綾波レイや長門有希など「無表情キャラ」の一群に、ニューフェイスあらわる!
「伊吹さん」の特色は、愛想がわるくないこと。
実は表情ゆたかで、笑顔の練習にも余念ない。
ごく一部のひとにしか、つたわらないだけ。
顔色ひとつかえずに握力23.1kg
「レイvsアスカ論争」とゆう、20年におよぶイデオロギー闘争がある。
『新世紀エヴァンゲリオン』の真ヒロインがどちらかについて議論はつづくが、
両者は対照的で、かつ拮抗した魅力の持ち主で、いまだ結論に達しない。
ただ2000年前後は、綾波レイがその新奇さゆえ、エヴァの象徴とみなされた。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(日本映画/2012年)
10年代はアスカが優勢といえる。
両極端な「ツンデレキャラ」が世間で持て囃されるなか、元祖として脚光あびた。
特に2012年の『エヴァQ』での活躍はあざやかで、レイを脇においやる。
伊吹さんは、ツンデレ時代に叛旗をひるがえす。
鉄假面かぶったまま、必死にアピール。
たとえば演劇部でナースの衣装をかり、セリフを棒読みしたとする。
背筋がこおるほど怖い。
伊吹さんの言動は、意図がつかめない分、別の「意味」がうまれる。
美術の時間、伊吹さんがデッサンのモデルをつとめた。
幼なじみの「相楽さん」のスケッチブックに、満面の笑みが!
無表情キャラには、解釈の余地がある。
好意を安売りするツンデレとくらべ、より高次元の存在だ。
教科書を貸してくれたお礼に、顔文字そえて「ありがとう」。
女の子は、感情表現の武器をたくさんもっている。
頬をあからめるだけが能じゃない。
意識とは、けっして意識された存在以外のものではありえず、
そして、人間たちの存在は、彼らの現実的な生活過程である。
カール・マルクス/フリードリヒ・エンゲルス『ドイツ・イデオロギー』
はげしく火花ちらすジャパン・イデオロギー。
ポーカーフェイスで日常に革命をおこせ。
![]() | 鉄仮面のイブキさん (1) (まんがタイムコミックス) (2014/08/07) 市川 和馬 |
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