グリーンウォルド『暴露 スノーデンが私に託したファイル』

Eメールなどのデータを収集するプログラム「XKeyscore」

 

 

暴露 スノーデンが私に託したファイル

No Place to Hide: Edward Snowden, the NSA, and the U.S. Surveillance State

 

著者:グレン・グリーンウォルド

訳者:田口俊樹 濱野大道 武藤陽生

発行:新潮社 2014年

原書発行:2014年

 

 

 

NSA(アメリカ国家安全保障局)の分析官は、インターネット上の全情報を監視できる。

アドレスさえわかれば、大統領のメールの中身までみれる。

 

内部告発者となったエドワード・スノーデンは、協力者と接触するとき、

携帯電話のバッテリーをぬくよう相手に要求する。

電源を切っていても、NSAは遠隔地から起動し、盗聴器としてつかうことが可能。

とりはづせない構造なら冷凍庫にいれさせる。

 

くりかえすが、NSAの目標は「すべて」の情報を傍受すること。

いまは航空機のフライト中の通信を追跡するのに躍起になっている。

数時間でも、だれかが監視の目をのがれることが我慢ならない。

 

 

(撮影:Laura Poitras/Praxis Films)

 

 

1983年うまれのスノーデンは高校中退者で、アウトサイダーの匂いをただよわす。

名門大学卒業者なら、立身出世をすててまで正義をつらぬかないだろう。

しかし諜報機関は、疎外された若者たちに依存せざるをえなかった。

 

ギリシア神話の本を読破し、ビデオゲームにひたりこみ、

ヒーローになるのを夢みるコンピュータオタクだった。

また彼の世代にとってインターネットは、自己実現の場だった。

そのプライヴァシーと匿名性と自由を政府がうばうなら、行動をおこすしかない。

 

 

2008年11月、オーヴァルオフィスでのブッシュとオバマの会談

 

 

オバマ政権は「1917年のスパイ活動法」を適用し、7名の内部告発者を逮捕した。

その数は、1917年から前任者までの延べ人数の倍以上。

NSAについての輿論調査は、賛成者と反対者の支持政党がいれかわった。

 

こうした政界の日和見主義で野放し状態となった公安機関は、

選挙でえらばれた大統領よりつよくなる。

 

 

マルウェアの感染に成功した場所と件数

 

 

2005年からNSA長官をつとめるキース・B・アレグザンダー陸軍大将は、

イラク占領時にもちいたユビキタス監視システムを、国内に導入した。

 

「テロとの戦い」は口実にすぎず、どうみても国家安全保障と関係ない、

ブラジルの石油会社、経済会議、同盟国の指導者、ハッカー集団「アノニマス」、

そしてなによりアメリカの一般市民をターゲットにしてきた。

 

テロリストは、監視への対抗手段をまなんでから活動をはじめる。

2013年のボストンマラソン爆弾テロに関し、NSAはなにも検知できなかった。

デトロイトやニューヨークの件が未遂でおわったのは、市民や従来の警察力のおかげ。

大量のメタデータ収集が対テロ戦争に必要である根拠を、NSAは提示できてない。

 

 

ネットワーク機器にビーコンをうめこむロードステーション

 

 

NSAの本質は「経済スパイ」だ。

支那企業が、ルータやサーバに監視装置をうめこむのを米政府は批判するが、

NSAもおなじことをしており、要するに市場シェアでまけ監視網をせばめたくないだけ。

 

経済力と軍事力が表裏一体なのは事実だが、かといってウソはゆるされない。

アメリカ政府が説明責任をはたさず、国民からの同意を無視すれば、

支那に抗議する正当性をうしない、結果的に利敵行為となる。

 

 

ワシントン・ポスト紙編集主幹のボブ・ウッドワード(撮影:Kat Walsh)

 

 

本書の後半は、実名あげて米英の体制べったりなジャーナリズムをぶった斬り、

おもしろいのだが日本人には直接関係ないので、ここでくわしくふれない。

 

「責任ある報道」とゆう美名のもと、中立のフリしてつねに政府の主張をとりいれる姿勢、

日本なら「マスゴミ」だが、あちらは「コーポレート・ジャーナリズム」とゆう蔑称があること、

ジュリアン・アサンジ同様、スノーデンにも人格面を攻撃する報道がなされたが、

それはソヴィエトや中国政府の得意技でもあること、などなど。

 

イギリス版NSAの「GCHQ」が、ガーディアン紙へのりこみHDDを破壊したのはひどすぎるし、

スノーデンに協力した罪で逮捕されるべきと著者も批判されたが、

なら定期的に秘密情報をうけとってるボブ・ウッドワードはどうなのよとか、

著者の激烈な反骨精神が、読者を奮い立たせてくれる。

 

 

NSAの提携企業およびその協力分野

 

 

NSAの情報は、「ファイヴ・アイズ」とよばれる五か国で共有される。

アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド、共通点は英語をはなすこと。

なかでも英国のGCHQは、スパイの国だけあってNSAに匹敵する能力をもつ。

 

イスラエルとも親密な関係をきづいてきたが、彼らはしたたかで、

合衆国に対しもっとも敵対的な諜報活動をおこなう国のひとつでもある。

ゆうまでもなく日本は、なんの見返りもなく尻尾をふりつづける、ただのポチ。

 

フェイスブック・ヤフー・アップル・グーグルなど、民間企業もNSAと秘密協定をむすぶ。

いちばん協力的なのはマイクロソフトってのが、イメージどおりでわらえる。

「いまの時代、個人情報を共有するのは当然さ」とうそぶくマーク・ザッカーバーグは、

自宅に隣接する4軒の家を3000万ドルで購入、プライヴァシーをまもった。

なお社内システムへのアクセスをこばんだ唯一の企業は、ツイッター

 

 

高山としのり『i・ショウジョ』(ジャンプ・コミックス)

 

 

スノーデンが世界につきつけた問題はおもい。

 

米ペンクラブの報告書によると、NSAの監視活動をしったことで、

アメリカ人作家のおおくが自己検閲に駆り立てられている。

すくなくともメールにヘタなことは書けない。

これぞまさに権力がのぞむこと。

データ収集そのものより、ひとびとを萎縮させる効果に意味がある。

 

もし警察に、令状なしに家宅捜索したり、自宅に監視装置をおく権限をあたえれば、

まちがいなく犯罪率はへるが、いまのところ民主国家はそうしない。

安全よりプライヴァシーが優先事項と、市民はかんがえるから。

自由なき社会での生に、意味などないから。

 

スノーデンはそう宣言するため危険をおかし、どうにか世界の流れをかえた。




暴露:スノーデンが私に託したファイル暴露:スノーデンが私に託したファイル
(2014/05/14)
グレン・グリーンウォルド

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