『ハナヤマタ』3話 夕刻の逆転劇
ガールズ・スタイル
テレビアニメ『ハナヤマタ』第3話
出演:上田麗奈 田中美海 奥野香耶 大坪由佳 沼倉愛美 豊口めぐみ 小山剛志
演出:細川ヒデキ
絵コンテ:佐山聖子
監督:いしづかあつこ
シリーズ構成・脚本:吉田玲子
キャラクターデザイン・総作画監督:渡辺敦子
色彩設計:大野春恵
原作:浜弓場双『ハナヤマタ』(芳文社刊)
アニメーション制作:マッドハウス
放送:2014年
食卓は女の戦場。
昼休みに机と椅子をならべれば、三つ巴の駆け引きがはじまる。
「そういえばハナちゃん、いつもパンだよね……。
はい、よかったら好きなのたべて!」
やさしい「なる」が「ハナ」におすそ分け。
おもしろくないのは、親友を金髪ロリ転校生にうばわれた「ヤヤ」。
浜弓場双の原作は、きららの王道をゆくバランスとれた絵柄だが、
アニメ版の渡辺敦子によるキャラデザは誇張がほどこされ、
より菱形にちかづいた目が、少女の内面にはえたトゲをおもわせる。
「これは『鳴子』といいま~す! よさこい、たのしいですよ~っ!!」
ニュージャージー州から、相模湾をのぞむ中学へやってきた伝道師の宗旨は、
なんと高知県発祥の踊りである「よさこい」。
空気をよめないどころか、空気を全否定するいきおい。
だれも相手にしない。
気弱なせいでおしきられた、なるをのぞいては。
内気で、どんくさく、趣味といえば秘密のポエムくらいのなるが、
派手な衣装をきて人前でおどるなんて、ありえない。
親友を強引にひきこみ、恥をかかせるハナがゆるせない。
でも、いやいやながら協力するなるは、本当はもっとかがやきたかったのかも。
自分は親友の願望に気づかず、おさえつけてたのかも。
かんがえればかんがえるほど、悶々とする。
ひさしぶりにヤヤとなるのふたりでお出かけすることに。
待ち合わせは「駅前で3時」。
いっぱい話もするだろうし、ちっぽけな悩みなんて鎌倉市街でぜんぶ解決!
翌朝、家業である蕎麦屋の掃除をはじめたら、店先で金髪ロリが行き倒れていた。
しかたなく蕎麦をふるまう。
アメリカ人にしては粋な食べっぷり。
なるとの「デート」にもついてきた。
ニーソでツンデレなヤヤは、なるよりは無遠慮な性格だが、
そこは日本人のかなしさ、面とむかって「ゴーホーム」とはいえない。
「なんで日本の曲って、ところどころ英語がはいるんですか? 日本語キレイなのに!」
ゆうことがいちいち癪にさわる。
待ち合わせの3時まで、マックで時間をつぶす。
夕映えの大胆なうつくしさ。
サイケデリックな色づかいが印象的だった『ノーゲーム・ノーライフ』につづき、
いしづかあつこ監督は、大野春恵に色彩設計をまかせている。
「きょうわたしがたのしかったのは、ヤヤさんと一緒にいたからですよ!
すきなひとと一緒なら、たのしいも2倍ですっ!!」
「ふえぇっ……な、なんなのよ、もう……」
椅子のしたでブーツをモゾモゾ。
親友が転入生に心をひらいた理由がわかった。
こんなKY外人なんて大嫌いなのに、かまわず懐へとびこんできて、
おもわず好きになる自分がいて、そんな自分にムカつくから、やっぱ嫌い。
ジャパニーズツンデレの洗礼をあびせる。
まばゆい西日にやきもきしていた視聴者は、ようやく時刻をおそわる。
16時07分。
「あっ、ま、待ち合わせ……」
百合は戦争である一方、サスペンスでもある。
アニメのつよみである色彩表現をいかす「時刻表トリック」に舌をまいた。
最近すれちがってたふたりにとって、大切な時間になるはずだったのに、
すっぽかされては立場がなく、日をまたぎ平身低頭されても、なるはきかない。
ソリがあわないヤヤとハナが、陰で仲よくなったのも腹にすえかねる。
いいもん、いいもん、もうすきにすれば!
たぶん人生で一番感情を爆発させた、なる。
午後3時から4時までの半刻で、くるっと力関係が逆転。
ぱっと、ぱっと、はれやかに。
さかせましょ、花の様に。
風まかせの乙女心が、かろやかに花瓣をちらす。
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