適材適所だったダグラス・マッカーサー

コレヒドール島の洞窟で、参謀長リチャード・サザーランド少将と(1942年3月1日)

 

 

マッカーサーは攻勢型の将軍だった。

防戦においては自軍を過大評価しがちで、何度も痛い目にあう。

日本がハワイやフィリピンを奇襲するなど夢にもおもわなかったし、

朝鮮戦争勃発時も狼狽し、それが開戦だと認識するのに一両日かかった。

また「中共の介入はありえない」と断言、みづからの解任をまねく。

 

晩年にかいた回想録はウソばかり。

手柄を誇張しつつ、ミスを政治家や海軍や日本軍へなすりつけた。

ウェストポイントを抜群の成績で主席卒業し、軍事以外の歴史にも精通する教養人だが、

後世の歴史家による批判などすこしもおそれなかった。

信じがたい自尊心と楽観主義。

 

 

 

 

マッカーサーはお気にいりでかためた、直接の幕僚にのみ依存した。

現場の指揮官は意思決定にくわわれず、サザーランド参謀長など、

傲慢な「バターン・ボーイズ」の命令にふりまわされた。

 

かれは一言でいえば貴族だった。

父が南北戦争の英雄であるだけでなく、本人の気質が貴族的だった。

他人とうちとけず、めったに笑わなかった。

 

 

『終戦のエンペラー』(アメリカ映画/2013年)

 

 

常識はづれの勇者でもある。

銃弾とびかう敵前上陸中、ほかはみなヘルメットで身をまもるのに、

トレードマークの金モールつきフィリピン軍元帥制帽をかぶりつづけた。

日本の降伏直後、狙撃の可能性を十分しりつつ、平然と厚木飛行場へおりる。

部下は軍神をみるおもいだった。

 

側近を依怙贔屓し、軍内に特権階級をつくったが、公私混同にはきびしく、

サザーランドの女性問題が発覚したときなど、はげしく怒り狂った。

 

 

1945年9月27日、アメリカ大使館にて

 

 

これほど「占領者」にふさわしい男はいない。

憲法改正はワシントンの指示でなく、マッカーサーの独断ですすめた政策。

「二院制」「生存権」「内心の自由」など、日本政府の要請もとりいれる。

おおむねGHQ案がとおったのは、それがすぐれていたから。

むしろ抵抗がなさすぎ、占領者の方がおどろいた。

いまさら「GHQの押しつけ」なんて文句をつける連中は、歴史に無知なだけ。

 

朝鮮戦争で混乱する1950年7月、GHQの指令で「警察予備隊」が設置される。

警察なんだか軍隊なんだか、不明瞭な組織だ。

マッカーサーは新憲法の平和主義に自信をもっていたが、

ワシントンの要求にしたがわざるをえず、曖昧な表現でメンツをまもった。

のちの9条をめぐる不毛な論争は、マッカーサーのプライドに起因する。

 

 

1950年のフィリピンで、妻ジーン、息子アーサーと

 

 

かれは、軍人としては露骨すぎるほど大統領選へ意慾をもやし、

国民からの人気もあったが、えらばれたのは元部下のアイゼンハワー。

調整能力のたかい司令官で、「アイク」の愛称でしたしまれていた。

「占領者」より「外交官」の方が、戦後のリーダーにふさわしいと判断された。

 

エゴの塊みたいな男をこき使い、絶妙のタイミングで梯子をはづす。

アメリカの人材活用術は、神のごとく老獪だ。




マッカーサー フィリピン統治から日本占領へ (中公新書)マッカーサー―フィリピン統治から日本占領へ (中公新書)
(2009/03)
増田弘

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