ピーター・A・ロージ『アジアの軍事革命』

『武経総要』(1044年完成)に紹介された火砲

 

 

アジアの軍事革命

The Asian Military Revolution

 

著者:ピーター・A・ロージ

訳者:本野英一

発行:昭和堂 2012年

原書発行:2008年

 

 

 

はじめに火薬と銃砲を開発したのは支那だ。

ロケット弾・火炎放射器・手榴弾・煙幕弾・毒ガス弾・地雷・焼夷弾なども製造される。

近世型の戦争は、女真族やモンゴル族とたたかう宋王朝があみだしたもので、

モンゴル経由で軍事革命がひろがり、ヨーロッパ社会などを根底からかえた。

1338年には大砲を鋳造する。

 

16世紀にポルトガルの火縄銃がつたわるが、すぐ再生産した。

当時の支那は、世界最先端の工業国だった。

 

 

明時代の士大夫

 

 

ゆたかな農業が、支那の工業をささえる。

また歴代王朝は、文字に通じ計算のできる官僚や事務員を登用、

人的資源を水も漏らさず管理し、つねに大軍を維持してきた。

 

 

赤線が明代の万里の長城(作成:Roke)

 

 

明王朝が建設した万里の長城は、「無用の長物」の代名詞だが、

榴弾砲や小銃とくみあわせると、遊牧民族に対し効果覿面だった。

 

 

『ザマの戦い』(1567年)

 

 

東南アジアも、ヨーロッパと密に接する100年前から銃砲に慣れしたしんだ。

 

たしかにムガル帝国のインドでは、象部隊が火力兵器にふるえあがったが、

ラクダの背に旋回榴弾砲を据えつけるなど、独自の発展をとげる。

 

イギリスによる征服は、紙一重の勝利にすぎない。

ヨーロッパがすぐれていたのは技術でなく、統治機構だ。

特定のパーソナリティでなく、東インド会社の様な永続的システムの力で、

統一された中央集権国家を誕生させた。

 

 

太平天国の乱、岳州の戦い

 

 

統治に問題をかかえてたのは清朝もおなじ。

いくら近代の兵器や戦術を採用しても、軍資金や兵站が間にあわない。

西洋の軍隊より、不満ためこむ人民の方が脅威だった。

たとえば太平天国の乱は、清朝を滅亡の際までおいつめる。

 

 

真珠湾攻撃で爆発炎上する駆逐艦「ショー」

 

 

めぼしい産物がなく、貿易ルートからはづれていた日本は、

帝国主義を直接体験することがアジアで一番すくなくすんだおかげで、

スムーズに西洋の「技術」をとりいれるのに成功した。

 

その他のアジア人は日本の「近代化」に感心し、留学する者もでたが、

紫式部とか夏目漱石とか、日本の「文化」にちっとも魅力を感じない。

まして日本に統治されるなぞ、まっぴら御免だった。

 

「いちはやく近代化したわが国は優秀だから、文化もアジアで尊重されるはず!」

そんな日本人の錯覚は、歴史上もっとも滑稽でかなしい挿話のひとつだ。

 

 

初代ベンガル知事となったロバート・クライヴ

 

 

アジアの貿易ルートをのっとったヨーロッパは、自前の技術でなにも切り拓いてない。

そしてごく一時的な、それもわづかな「技術的優位」を、明白な「文化的優位」と勘違いした。

いや、いまもしている。

 

現在アメリカは、軍事技術において圧倒的な主導権をにぎるが、

その優位は、政治的・地理的・文化的に限定される。

假に民国独立をめぐり、米支間で紛争がおきたとしよう。

アメリカの議会や輿論は、多数の死傷者にたえられるか?

第二次大戦では、日本人による騙し討ちが戦意高揚に貢献したものの、

毛沢東をみればわかる様に、支那の軍隊はそこまでバカじゃないわけで。




アジアの軍事革命―兵器から見たアジア史アジアの軍事革命―兵器から見たアジア史
(2012/04)
ピーター・A・ロージ

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