大嶽秀夫『ニクソンとキッシンジャー』

『パットン大戦車軍団』(アメリカ映画・1970年)

 

 

ニクソンとキッシンジャー 現実主義外交とは何か

 

著者:大嶽秀夫

発行:2013年 中央公論新社

レーベル:中公新書

 

 

 

リチャード・ニクソンのすきな映画は『パットン大戦車軍団』で、

かの猛将とおなじく、臆病とおもわれたくないだけで、強硬策をとりがちだった。

イデオロギーより、男らしさを優先。

反共産主義をウリに出世したが、大統領としてソヴィエトと支那にあゆみよる。

ユダヤ人ぎらいなのに、ヘンリー・キッシンジャーを重用。

ヴェトナム戦争の責任を、民主党政権になすりつけもしない。

 

 

ニクソンとキッシンジャー

 

 

1970年前後の国際政治は、性悪説がまかりとおった。

「理想主義」は偽善とみなされる。

プロの外交官を排除、政治学者キッシンジャーに外交を仕切らせた。

交渉相手のほとんどが独裁国なので、バックチャネルの利用はうまくいった。

 

「現実主義」は、ブレジネフや毛沢東や周恩来と共有可能な、唯一の哲学。

 

 

毛沢東

 

 

文化大革命の嵐やまぬ支那への接近は、驚天動地のできごと。

そんな政策を口にした米国の政治家など皆無。

ニクソンがひとりで構想したものだ。

カリフォルニア生れの彼は、もともと太平洋に、そして東アジアに関心あった。

 

1968年ごろを頂点に、ソヴィエト共産党に距離をおく、

「毛沢東主義」が西欧諸国でもひろまっていた。

チェコの「プラハの春」を三日で制圧したソヴィエトの電撃戦は、

ナチスより迅速で、国境紛争かかえる支那をふるえあがらせた。

 

そこで挙行されたのが、ニクソンの「天下三分の計」。

米支の蜜月は、ソヴィエトにおいて対支脅威論を喚起させ、

支那国境での軍拡が、ソ連経済のおおきな負担となる。

ブレジネフは、アメリカとのデタント(緊張緩和)に応じざるをえなかった。

これぞパワーゲーム。

 

 

ハーグでの日米韓首脳会談

 

 

国際政治を「米支ソ」の三極の枠組みでとらえるニクソン=キッシンジャー外交は、

その単純さが弱点でもあり、バングラデシュ独立(1971年)などで失態をまねいた。

政権末期にはデタントもほころび、レーガン時代に「新冷戦」がはじまる。

偽善者たちが結局、世界をとりもどした。

 

さて日本のはなし。

キッシンジャーは日本の指導者を、長期的ヴィジョンをもたず、

概念的にかんがえられない、信用にあたわぬ連中だと公言。

実に的確な評だ(笑)。

在日米軍をきらう周恩来に対しては、アメリカの軍隊はビンの蓋のごとく、

日本のナショナリズムを抑制し、東アジアの安定をもたらすとのべた。

これまた2014年にぴたりあてはまる。

 

イデオロギーに毒され、だれかのコマとしてうごかされるのでなく、

プレイヤーとして他国をうごかす政治家がいてもよいのに。




ニクソンとキッシンジャー - 現実主義外交とは何か (中公新書)ニクソンとキッシンジャー 現実主義外交とは何か (中公新書)
(2013/12/19)
大嶽秀夫

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