水樹奈々『深愛』

水樹奈々の師匠、安留安生(画像は別名義)

 

 

深愛

 

著者:水樹奈々

発行:幻冬舎 2011年

 

 

 

有名な歌手・声優である、水樹奈々の自伝でもっとも印象ぶかいのは、

演歌歌手めざし5年半、内弟子として住み込みで教えをうけた、

安留安生からの度重なるセクハラ被害を告白した部分だろう。

自業自得とはいえ、加害者にとって人格破壊的な内容であり、

これを書いただけでも、著者はタダモノでないとわかる。

 

歯科技工士だった水樹の父は、独自のメソッドで娘の喉をきたえた。

粉塵と騒音まみれの作業場で、毎日何時間も熱唱。

よくいえば力強い、わるくいえば押しつけがましい、例の歌唱スタイルのルーツだ。

 

カラオケ大会を荒しまわる、愛媛県新居浜市の「天才演歌少女」は、

あまりに特異すぎ学校でイジメられた。

堀越高校の芸能活動コースに進学してからは、月3万円の仕送りで生活。

学校指定の700円の靴下を買うのが、なによりくるしかった。

歌手としては鳴かず飛ばずで仕事にめぐまれず、

欠席がむしろ褒められる芸能科で、皆勤賞かつ学年トップの成績をおさめた。

 

絵にかいた様な「苦労人」ぶりは、まさに演歌の世界。

 

 

 

 

しかし演歌的な水樹奈々は、演歌を超えている。

 

昭和の基準にあてはめても、躾のきびしい父だったが、

娘が催し物でもらった「おひねり」に決して手をつけなかった。

なにを買おうが文句をいわなかった。

歌手が、自分の歌で得たものだから。

5歳で高峰三枝子を歌いこなす天才少女は、荒稼ぎした。

スパルタ教育の一方で、その経済的自由は同年代と比較にならない。

 

おひねりは、アニメグッズやゲームや漫画に消えた。

子供が大金を手にしたらそうなる。

筋金入りのオタクは、まづ「声優」として藝能界のぶあつい壁をやぶる。

父のみた夢とことなるが、その晴れ舞台をお膳立てしたのは父だった。

 

 

高知よさこい祭り2005(撮影:工房 やまもも)

 

 

新居浜は、街のいたるところに「カラオケ喫茶」がある。

 

みんな歌うことが大好きで、目立ちたがり。

四国全体に言えることだが、

生まれながらに祭り好きで、楽しいこと、騒ぐことが大好き。

 

だから、子供の私にも歌う場がたくさんあった。

 

演歌の英才教育で「日本の心」を植えつけられた水樹だが、

それより根っこにあるのは、四国人の魂。

深刻なトラウマさえ、明朗なエネルギーに変換し、ステージでドカンと昇華させる。




深愛 (しんあい) (幻冬舎文庫)深愛 (しんあい) (幻冬舎文庫)
(2014/01/16)
水樹奈々

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