佐々木ミノル『中卒労働者から始める高校生活』第2巻
中卒労働者から始める高校生活
作者:佐々木ミノル
掲載誌:『コミックヘヴン』(日本文芸社)2012年-
単行本:ニチブンコミックス
[第1巻の記事はこちら]
なすがまま、家庭教師に体をまさぐられるヒロイン「莉央」。
もう何年も何年も。
通信制高校のちょっとにがい青春をえがく力作の第2巻。
左の莉央は、フツウじゃない学校に不似合いなお嬢さま。
そのいきさつがあかされる。
虐待は小学6年のときはじまった。
いとこの「タクヤ」は、「冗談だ」とかまるめこみながら心身を蹂躙。
SOSを発するも、親戚を気づかう母へとどかない。
少女の内側にふかい傷がのこる。
親の顔がみたくなるクズだが、母親もでてくる。
「社会勉強」とか「教育方針」とか、ブルジョア的偽善を皮肉にえがく。
親のいいなりで、デパートでバイトすることになったタクヤだが、
客に説教するなどコミュ障ぶりを発揮。
皿をクール便と一緒に配送すれば1個口分の送料ですむなんて、
妙に具体的なエピソードがおもしろい。
劣等感のかたまりで粗暴な主人公「マコト」は、
年上で子もちの女性「若葉さん」としたしくなる。
おもわず同級生にキスしたと職場の同僚にうちあけたら、
「子供を半日あづかるから」と熱烈に支援される若葉さん。
「押すとき押さないと後悔するよ!?」
通信制の日常は、多様な人生が交錯するモザイク。
作者にとって傷であり宝物でもある記憶が、作品をゆたかにする。
窓をやぶりヒロインの危機に馳せ参じた主人公。
ただリアルなだけでなく、ヒロイックな物語でもある。
ホンネをぶつけあう、わかいふたり。
底辺でも上流でも、人間は大抵よわく傷だらけで、おびえつつ生きている。
それをおおらかに肯定するカタルシスが、本作最大の美点。
こうゆう兄妹の絵によわい
天真爛漫な妹かつ同級生「真彩」の出番すくないのが不満だが、
かわりに表紙で大々的にフィーチャーされ、結局文句なしの第2巻だ。
![]() | 中卒労働者から始める高校生活(2) (ニチブンコミックス) (2014/01/29) 佐々木ミノル |
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