小説13-3 開戦

『自由か、隷属か』


登場人物表


全篇はこちら






メッセの国際会議場3階。

会長が、嗚咽もらすフランのちいさな背をさする。

 

「わたしなにもできなくて……」

「そんなことない、勇敢だったわ」

「ゴッドガール陛下のときも……失敗してみんなに迷惑を……」

 

ずっと呼吸があさく、せわしない。

PTSDに発展する可能性がある。

のりこえてほしい。

わたしやジョージには軍師が必要だ。

戦局全体を俯瞰しながら、筋のとおった戦略をたて、

ときに外交官として合従連衡をむすべる人材が。

 

 

 

来島ゲン元中尉が3人つれて入室。

 

「会議のまえに不幸なしらせがある。

さきほどの戦闘で獅子奮迅の活躍だった、一ノ瀬シン上等兵が死亡した」

 

フランが息をのむ。

 

「1分間の黙祷をささげ、霊をなぐさめたい。いいかな? では、黙祷」

 

薄目でみると、来島が会議室の約30名を両目あけて観察する。

忠誠心をためしたつもりか。

おたがいさまだが、卑しいふるまいだ。

 

「革命戦士の栄誉は永遠にたたえられん!」

「死者に安息を、われらに勝利を!」

「自由日本万歳!」

 

士気のたかさは噂どおり。

クリップボードもった迷彩服のメガネ男が事務的な話をはじめた。

この梁山泊は正規軍あがりが牛耳ってる様だ。

上座についた来島がわたしのTシャツをみている。

きがえたとき、面倒でブラジャーしなかったのをおもいだした。

わたしは脂肪がすべて胸にあつまる体質らしく、閉口させられる。

ほかは骨と皮なのに不格好でしたかない。

 

「中尉、ちょっといいですか」と小声で話しかけた。

「な、なんだ」

「会議は無腰でとききましたが、なぜあなたたちだけ帯刀してるのですか?」

「法律が軍人にみとめる権利だ」

「『元』軍人でしょう」

「…………」

 

メガネが、われら蒼月学園自由部員を紹介する。

 

「そういや羽生女史は秋葉原にいたそうだね。何人斬った?」と来島。

「中立のつもりだったから武装してません」

「わたしは10人斬った。はやくも『一人十殺』達成さ」

「たのもしいですね」

「キミも相当な腕らしいじゃないか。どこの戦場にいた?」

 

おもわず吹き出して注目あびる。

 

「あっはっは……ネットのデマを真にうけるなんて。剣道をかじっただけですよ」

「かくさなくていい。SASにいたとゆう話もきく」

「バカバカしい! ただの女子高校生なのに」

「わたしはフォートブラッグに派遣され訓練をうけた。イラクにもいった」

 

会話をきりあげるため、席をたちコーヒーメーカーへむかう。

 

 

 

猫舌なので、必死にさましながら熱すぎるコーヒーをすする。

議題はきょうの復讐戦にかわり、来島が雄辯をふるう。

ホワイトボードにきたない図をかき、練馬の駐屯地を襲うとかなんとか。

 

「たとえば、わたしもいたデルタフォースはソマリアで民兵の包囲を突破し……」

 

そろそろ灸をすえねば、こちらの命が危険にさらされる。

マグカップをテーブルの角においてから、ちかよる。

 

「来島中尉、ソマリアと日本になんの関連性が?」

「あくまで過去の作戦の例として……」

「で、なんの関連性が?」

「……ならきくが、キミにもっとすぐれた作戦案があるのか。

わたしはフォートブラッグで非正規戦をまなんだ専門家だ」

 

相手の胸ぐらをつく。

倍の体重があるくせよろける。

 

「おい中尉、デルタ本部の門番をつとめる名物じいさんをしってるか?」

「なに?」

「名前をいえ。退役曹長だ。さあ、はやくいえ!」

 

さらにおす。

太刀に手をかけた巨漢の腰がテーブルへぶつかる。

 

「いいかげんにしろ小娘……あちっ!」

 

手足にそそがれる、推定95度のコーヒー。

喉をつかみ、上半身を卓上にたたきつける。

 

「驕りたかぶりたいなら、戦場で手柄あげてからにしろ!

この朱星ジュンが、どれほどあぶない橋をわたってきたかしらないのか!?

オマエみたいなウスノロとは格がちがう。すこしは敬意をはらえ!」

 

 

 

 

 

はぁ……またブチギレてしまった。

ほかにやり様あったろうに。

解散後の会議室でため息つく。

セーラー服の革命家がニヤニヤしてやってきた。

 

「やっぱアリアさん、ウチらで一番漢らしいわ」

「……反省してるんだから、放っておいてくれ」

「『敬意をはらえ』って、うれしかったよ。あたしも苦労したもんね」

 

どの苦労をさすのだろう。

 

「これが武力革命のみにくい現実だ。キミもわかったんじゃないか」

「でもアリアさんと仲よくなれた。昔からお姉ちゃんほしかったし」

 

声に切実なひびきが。

 

「ところで門番の名前ってなんなの?」とジュン君がつづける。

「オチは御想像のとおりさ」

「さあ、どうだか」



関連記事

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

最近の記事
記事の分類
検索とタグ

著者

苑田 謙

苑田 謙
漫画の記事が多め。
たまにオリジナル小説。

Twitter
メール送信

名前
アドレス
件名
本文

カレンダー
08 | 2020/09 | 10
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -
月別アーカイヴ
04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03