小説11-1 ボンバーガール

『自由か、隷属か』


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4月13日 ゴッドガール

 

 

 

「うりゃスマッシュ、パーフェクトじゃ!」

「やられた!」

 

ゲームセット。

わらわのとなりに、Wiiリモコンプラスをにぎる小太りの中年男が。

任天堂社長・岩田聡と『Wii Sports Club』であそんでおる。

 

「陛下がこんなにお強いとは、おどろきました」

「Wii版をやりこんだからのう。和歌や俳諧に通ずるシンプルさがよい。

ところで今日はもうひとり客人をまねいたはずじゃが」

 

ここは吹上御苑にあるゲーム部屋。

『PONG』からXbox Oneまで、入手可能なすべてのゲームをそろえた。

セガの「R-360」筐体がギュンギュンまわる。

 

「紹介します、弊社の専務取締役・宮本茂です」

「ゲーマーでしらぬものはおらぬわ」

 

キツネ目の男がでてきた。

 

「……おもしろいけど、ここまで回転する意味あったんかな」

「これはマイケル・ジャクソンの遺品じゃ」

「ああ、かれはセガのファンでしたね」

「おしい男をなくした。またここであそぶ約束をしておったのに……」

 

いかんいかん、やつのことをかんがえるとつい涙が。

 

「葬儀へゆけなかったが、先代の山内のことは愁傷じゃった」

「おそれいります。故人もよろこぶでしょう」と岩田。

「ファミコンなくしてわらわの人生はかたれぬからのう。

スーマリにスターソルジャーにボンバーマンに桃鉄……」

「ハドソンさんが多いですね」と宮本。

「高橋名人の熱狂的信者じゃったからな。買わなきゃハドソン♪

損ばっかりだして会社自体買われたのは皮肉なことよの」

 

無反応。

 

「ぬしの作品では、ありきたりではあるが『時のオカリナ』に感動したのう。

ゲームを藝術の域へたかめた天才じゃな。国民栄誉賞授与をはたらきかけておる」

「もったいないです、ゲームは集団でつくるものですから」

「謙虚なことよ。さて、先週おくった企画書の件じゃが」

 

世間話モード終了。

 

「マリオ新作のキャラを、陛下にかえるとゆうお話ですね」と岩田。

「大半のゲーマーはヒゲ面のオヤジに見飽きておる。

わらわもNintendo Directに出演してやるぞよ。てゆうか出してたもれ」

「うーん、キャラは数学の記号みたいなもので、簡単にかえられないです。

たとえば信号の赤と青が逆になったら混乱するでしょ?」と宮本はしぶい顔。

「任天堂はそう保守的だからいかんのじゃ。

国内市場は萌え、海外はグロで勝負せんときびしいぞ。わらわはどちらもイケる」

 

ふたりが気乗り薄なのは想定内。

エサも用意せずよびだしたりしない。

ぶあつい書類をとりだす。

 

「コナミとかけあって、ボンバーマンと桃鉄の権利を買いとってきた。

わらわの小遣いで買えたのが、ファンとしては複雑じゃが……」

「はぁ」

「宮本には、わらわがピョンピョン跳びはね、爆弾をばらまき、

電車にのって買い物するゲームをつくってもらう。

神ゲーまちがいなしじゃ! 神であるわらわが言うのもおかしいが」

 

顔をみあわせる社長と専務。

どう断ろうかかんがえとるな。

切り札である英文の手紙をみせる。

 

「これはゲーム事業について提案する、ビルからの手紙じゃ」

「……ビルといいますと、まさか」と岩田の眼鏡がひかる。

「もちろんビル・ゲイツじゃ。いまは慈善基金を運営しておるそうな。

やつはアマチュアの歴史家でな、わらわを妙に慕っておる」

「そんな御関係がおありとは」

「最近はマイクロソフトも、アップルやグーグルにおされ苦しいからのう。

そこで目をつけたのが、わらわと任天堂とゆうことらしい」

「く、くわしく訊かせてください」

「まさに『社長が訊く』じゃな」



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苑田 謙

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