きえたマトリョーシカ ― 『ゴーストワールド』をみて

ゴーストワールド

ゴーストワールド
Ghost World

出演者:ソーラ・バーチ スカーレット・ヨハンソン スティーヴ・ブシェミ
監督:テリー・ツワイゴフ
制作:アメリカ・イギリス・ドイツ 二〇〇一年
[早稲田松竹で鑑賞]


女のひとの体型を云々するのは野暮としりつつも、
ちいさな頭に、安定感のゆたかな下半身をぶらさげた、
わかき日のソーラ・バーチをみていたら、
入れ子構造のロシアのマトリョーシカ人形をおもいだした。

マトリョーシカ

ちいさい人形が、おおきなほうにぴたりとおさまる。
ボーリングのピンにもにてる。
まんなかでわけたおかっぱの黒髪が、
つややかな額の半円をきわだてる。
顔の部品が下半分にぎゅっとひしめいて、
おちょぼ口と子豚のような鼻があいくるしい。
このひとくせある青春映画で、
ソーラは世間になじめない女の子を演じていて、
神経質にくるくるかわる表情をながめているだけでたのしく、
二時間があっというまにすぎてゆく。
あのころ、「ソーラ・バーチがかわいい!」とまわりに宣伝して、
うざがられたのをおもいだす。


この映画のソーラは、まさにきせかえ人形。
場面ごとに、色とりどりの服にきがえるのでめまぐるしい。
髪を緑にそめてパンクファッションに身をかためたら、
その日のうちに黒髪にもどす。
ソーラはなにをきてもよくにあうから、
衣装の担当者がはりきりすぎたのも理解できる。
急に金髪にしてまわりをおどろかせたりする、
情緒不安定な女の子って、ボクらのまわりにもいるよね。
服装とは、自我をまもるための鎧でもあり、
かの女たちはころころと見た目をかえながら、
自分に擬態をほどこし、世間という密林に身をかくそうとする。
本作と同時期に公開された『ダンジョン&ドラゴン』や『穴』も、
作品への評価はともかく、ソーラの演技は印象的だったのだが、
それ以降、出演作がわが国の映画館にかかることはない。
ボクも新顔の女優にかまけているうちに、ソーラの存在をわすれていた。
マトリョーシカの外がわをひとつずつはずしていったら、
中身がきえてしまったかのように。


いまをときめくスカーレット・ヨハンソンは、ソーラの親友の役。
このひと、まったくかわってない。
調子はずれのかすれ声、ふてぶてしく眉間にしわをよせ、
ぽってりしたくちびるはいつも半びらき。
わるくいえばなにも成長していないのだが、
十代のままの素の自分をさらけだしながら、
ハリウッドでいきのこっているのだから立派ともいえる。
多分、余計なことはなにもかんがえないまま、
この業界にやすやすと適応したのだろう。
あれもこれも、女子のいきる道。
どっちがただしいかなんて、わからないよね。
青春映画が他人事におもえる年になったボクだけど、
現在青春まっただなかのあなたがみれば、
人生のことがもっとわからなくなるような傑作だと保證しよう。
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苑田 謙

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