『SHORT PEACE』
オープニング(監督:森本晃司)
SHORT PEACE
監督:森本晃司 森田修平 大友克洋 安藤裕章 カトキハジメ
制作:サンライズ 2013年
短篇アニメ四作あつめたオムニバスだが、大友克洋による『火要鎮』が圧巻。
『火要鎮』(監督:大友克洋)
町娘「お若」の秘めたる恋をえがく、江戸ものだ。
全盛期すぎた作家が「日本回帰」するのはありがち。
中身はすこしもありふれてない。
絵巻物風の手法をとり、上下に縁がつく。
スクロールがスクロールするさまに感動。
季節がうつろうにつれ、縁の装飾もかわる。
雪岱や松園の絵がうごく様な、たおやぐ女性美の極致。
親がきめた相手にとつぐことになるが、幼なじみへの思慕にひきさかれる。
平行四辺形の畳。
なんと大友が遠近法をすて、「吹抜屋台」の構図をもちいている!
パースで革命をおこした男なのに!
ひとりさびしく投扇興をしていたとき、あやまつて行灯を発火させる。
お若は消火しない。
このまま家が燃えれば、三度の飯より火事見物がすきな、あの人にあえるかも。
火事と喧嘩は江戸の花。
勘当され行方しれずのおもいびとは、火消となつていた。
総がかりであたりの民家をこわし、被害をくいとめる。
荒つぽいねえ、粋だねえ!
『武器よさらば』(監督:カトキハジメ)
ふとおもう、これつていつもの大友克洋ぢやないかと。
破壊と廃墟への執着が。
『火要鎮』
かれが廃墟をこのむのは、冷戦期にそだつたトラウマかと、漠然とかんがえていた。
根源は徳川期にある。
平和に飽いた鬱屈が、破壊衝動として先鋭化した文化に。
惚れた男のためなら、江戸が焼け野原になつてもかまわない。
「日本史上の最萌えヒロインは八百屋お七」と信じる、ボクの心をゆすぶる作品だ。
オープニング
日本文化万歳!
さらなる美のたかみをめざし、まだまだいけるぜ!
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