泥棒にまけない
盗みをはたらく浮浪児
神奈川県警で窃盗事件にかかわつた小川泰平の、『泥棒刑事』(宝島社新書)をよんだ。
日本に職業泥棒は3000人いるとされ、検挙された犯罪の65%以上が窃盗犯。
検挙率があがるもさがるも、ドロ刑の手腕にかかる。
泥棒は、結局つかまるものらしい。
最初は慎重だが、うまくゆくうち自分の手口に酔い、次第に大胆となる。
ボロをだすのは、盗みの上級者がおおい。
おもしろいのは、30歳の美人泥棒「関口恵理」。
男を逆ナンし、「ちよつと嫌なことがあつて……」とラブホテルへさそう。
シャワーからでると、男の財布とズボンがきえていた。
パンツ丸出しでは追いかけられないし、やましさゆえ被害届もだせない。
みごとな完全犯罪だが、美人泥棒は弱点がひとつ。
容姿がめだつのでマークしやすく、「写真面割り」一発で御用となる。
エロは被害者の口封じにきわめて有効。
逮捕した空き巣の余罪を追及するとき、「ウチは絶対はいられてません!」と、
かたくなに協力をこばむ20代前半の女がいた。
どうもおかしいと被疑者に再度の調べをすると、
机のひきだしから「大人のおもちや」をぬすんだと判明。
事情聴取を女性警察官にまかせ、なんとか被害届を提出するよう説得した。
(撮影:Rama)
職人技をほこる金庫破りは、工具をつかい5-10分で破壊するが、
「ガードマックス」などクマヒラの金庫は堅牢で、侵入先にあれば指一本ふれずに逃げる。
バールやハンマーは勿論、ガスバーナーなどの焼き切りも歯がたたず、
しかも小型金庫さえ300kg以上あり、持ち去ることもできない。
金庫破り同士は刑務所で、「クマヒラだけはやめておけ」と畏怖の念をもつてかたる。
治安維持に貢献する一般市民は、ほかにもいる。
質屋のオヤジだ。
かれらの尋問テクニックはさりげない。
あるときルイ・ヴィトンのバッグを質入れにきた男がいた。
「いつ買いました?」
「5年まえです」
「それにしては品物があたらしいですね」
「買つてから一度もつかつてないので……」
オヤジはこのバッグが発売から一年半しかたつてないのを知つている。
「ヴィトンはお好きなんですか?」
男はファンというが知識なく、あやしいとにらむオヤジに雑談で「供述」をひきだされ、
防犯カメラの映像も捜査につかい、余罪数十件の窃盗犯として逮捕された。
外国人犯罪のピークは2003年、最近は支那人も鳴りをひそめる。
盗みにもお国柄があらわれ、南米系はラテン気質のせいか、
現場は足の踏み場もないほど荒らされるが、反面大雑把でもある。
洋服ダンスに金の延べ棒10本(2000万円)をかくしていた家で、
南米系窃盗団が6本みつけ有頂天となり、それ以上さがさなかつたマヌケな事件が。
日本人の泥棒ではかんがえられない。
常習者の手口には、現金と貴金属のほか手をつけず、いちいち引き出しをしめ、
カーテンや窓も復元、被害者が賊に侵入されたと二三日きづかないことも。
わが国の治安がよいとしたら、泥棒もふくめ、几帳面な国民性のおかげの様だ。
![]() | 泥棒刑事 (宝島社新書) (2013/05/10) 小川泰平 |
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