スポーツとしての戦争

 

 

『バルジ大作戦』(アメリカ映画/1965年)はおもしろい。

ロバート・ショウ扮する、ドイツのヘスラー大佐がかつこよくて。

反戦メッセージなぞ皆無、両軍を公平にえがき、

ひたすら娯楽に徹する、スポーツ的戦争映画だ。

 

だが戦争は、それ自体リアルなもの。

 

 

 

 

進軍のおそさを、コーラー将軍(ヴェルナー・ペータース)にせめられる場面。

反論の根拠として、捕虜から没収したチョコレートケーキをみせる。

 

「なんだこれは?」

「ボストンから送られたものです。なにを意味するかわかりますか?」

 

 

 

 

「アメリカ人は大西洋をこえ、燃料や飛行機やケーキを補給しつづける。

われらはその士気をうちくだかねばならない。総攻撃の許可を!」

 

 

 

 

「かたよつた戦争映画」の傑作といえば『華氏911』(アメリカ映画/2004年)。

子をうしなつたイラク女性の慟哭に、ボクは劇場で涙した。

 

戦争は、母の愛で遂行され、母のかなしみでおわるゲーム。

立場は無関係。

 

 

海軍大臣時代のチャーチル

 

 

第二次大戦をはじめたのはヒトラーでなく、チャーチル。

きもちわるいほどアングロサクソン民族にあこがれたヒトラーは、

海軍力で英米に対抗する気はなく、陸でも二正面作戦をおそれた。

かれの野望は、客観的にみて穏当。

ユダヤ人虐殺も、敗北の予兆がみえてからはじめた。

 

 

1942年のモスクワで、スターリンと談笑

 

 

激烈に共産主義をにくむチャーチルが、同盟をくんだのはスターリン。

1939年時点で、ヒトラー以上の大量殺戮者なのをしつてたのに。

イデオロギーは、ときに開戦のきつかけとなり、ときに無視される。

 

イギリス軍は、近代戦のルールを意図的に放棄、都市爆撃をおこなつた。

ドイツ軍は一方、従来の包囲爆撃のルールにしたがう。

野蛮な新戦略は、アメリカが東京大空襲で完成させる。

 

チャーチルは優生学を信じる、差別主義者だつた。

精神薄弱者を隔離せよと主張し、「黒ん坊」などを侮蔑。

かれが格別に不寛容というより、単に時代の子だつた。

 

戦場は鏡、敵味方が相似形となる。

 

 

『華氏911』

 

 

ジョージ・W・ブッシュは、大統領執務室にチャーチルの胸像をかざつた。

 

 

 

 

数百万人を死なせ、大英帝国の植民地をうしない、

ソビエトという御しがたい超大国の擡頭をうながし、

自国経済を破産させ、世界を混乱させた、先輩のひそみに倣うよき弟子だつた。







【参考文献】

パトリック・J・ブキャナン『不必要だった二つの大戦 チャーチルとヒトラー』(国書刊行会)



不必要だった二つの大戦 チャーチルとヒトラー不必要だった二つの大戦 チャーチルとヒトラー
(2013/02/25)
パトリック・J・ブキャナン

関連記事

テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

最近の記事
記事の分類
検索とタグ

著者

苑田 謙

苑田 謙
漫画の記事が多め。
たまにオリジナル小説。

Twitter
メール送信

名前
アドレス
件名
本文

カレンダー
01 | 2020/02 | 03
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
月別アーカイヴ
02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03