常野啓『グリッドで背景を描こう』

 

 

Comickers テクニックブック  マンガ背景技法

グリッドで背景を描こう

 

著者:常野啓

監修:菅野博之

発行:美術出版社 2013年

 

 

 

 

もし絵の才能があれば、FE覚醒の同人誌とか描きたい。

燃えるストーリーや萌えるキャラなら、いくらでも脳裏にうかぶ。

でも背景は……。

「パース(遠近法)」の透視図法とか練習しないとダメらしいし。

ちまちま戦場や城を描く自分を想像するだけでうんざり。

 

 

 

 

本書は、ビルの外装を設計する仕事をへて漫画界入りした著者による、革命的技法書。

 

マンガはすきだが背景作画がきらいなアヤちやんに、立方体を描かせる。

パースの集束点をたしかめたらバラバラ。

この空間になにを描いても、パースがくるう。

でもつねパン師匠は問題ないと。

人間の視覚なんてテキトー、垂直にまじわる「グリッド」さえあれば十分!

 

 

 

 

方眼紙でつくつた「グリッド空間」の写真で線をのばすと、集束しない。

カメラのレンズにゆがみがあるから。

写真は遠近法にしたがわない。

 

大友克洋(『AKIRA』)による背景の衝撃と、映画コンプレックスと、

アカデミックな絵画技法の影響で、漫画界に「パース崇拝」がはびこる。

その信仰自体が、パースがくるつてるとしたら?

 

 

 

 

一マスは「90×90cm」のたたみ半畳分にすると、日本人の寸法にあう(欧米は100×100cm)

このサイズにあてはめた立方体と円柱で、「人がつかえる家具」を作画。

イスを制すものは、屋内描写を制す!

 

 

 

 

あとはグリッドにならべるだけ。

子どもが積み木やレゴブロックであそぶ感覚で、

アヤちやんの非遠近法的空間が、プロ水準の背景となつた。

漫画家はおのれの直感を信じ、描きたいものを描くべし。

 

 

 

 

グリッドは汎用性たかく、階段もかける。

段差も要は四角形だから。

線数はおおいが、作業は単純。

 

 

参考画像:かかし朝浩『ムジカ』(バーズコミックス)

 

 

物語をドラマチックに演出するのに、空間を上下にひろげる階段は缺かせない。

 

 

 

 

天球も、円筒型のグリッドで。

人物や読者の意識をみちびく。

 

 

 

 

高層ビルにも応用可能。

グリッド間隔を大きくすれば、写真をそのままトレスするより作業は簡略に。

 

 

 

 

描き手の主観を投影し、作品全体と調和させる。

漫画らしいビルになる。

 

 

 

 

グリッドは、コマごと設定される感覚的指標ゆえ、

菅野博之『漫画のスキマ』説くところの「視線誘導」につかいやすい。

背景は雄辯にかたる。

 

 

 

 

おなじくパースのおかしい空間も、描きこんで情報量をふやすと違和感がへる。

人間が一度にさばける視覚情報は有限だから。

 

大学で建築をまなんだ著者は、遠近法が無用と主張しない。

あくまで道具にすぎず、それにしばられたら本末転倒というだけ。

 

 

 

 

それより「作家の感性の優位」を、理論化したことに意味がある。

漫画史を西洋美術史になぞらえれば、いまは「印象派」の時代か。

プロの卵や、えらそうな編輯者をギャフンといわせたい新人にとり、

『漫画のスキマ』や本書は、したがうにせよ乗り越えるにせよ、必読。

かつてモネやセザンヌの絵がそうだつた様に。

 

 

参考画像:保志レンジ『サクラサク症候群』(ライバルKC)

 

 

いでよ、現代のパブロ・ピカソ!

ボクはみてたのしむしか、できないけれど。




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(2013/03/18)
常野啓

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