中山敦支『ねじまきカギュー』10巻 悪との対峙

下へ、もつと下へ

 

 

 

 

ねじまきカギュー

 

作者:中山敦支

掲載誌:『週刊ヤングジャンプ』(集英社)2011年~

単行本:ヤングジャンプ・コミックス

[以前の記事→1-4巻/5巻/6巻/7巻/8巻/9巻

 

 

 

 

『ねじまきカギュー』、堂々完結!

ほかの女と結婚したカモ先生への未練をふりきり、

カギューは小学校教師として、あらたな夢を追いはじめる。

 

 

 

 

……てのは、生徒会長・衿沙がしかけた精神攻撃。

単純なカギューたんには特に有効。

 

エリザの父である理事長がいう「自殺の聖歌」とは、

放送禁止になつたハンガリーの『暗い日曜日』のこと。

藝術は、人をうごかす力がある。

命さえうばう。

 

 

 

 

百面相攻撃が炸裂。

瞬きよりはやく、人格がいれかわる。

 

 

 

 

エリザにとつて、人生は芝居だつた。

何度も何度も、鏡のまえで顔をつくつた。

優等生になり、愛情のうすい父から一言でも褒められたくて。

せめて悪い子になり、怒られたくて。

 

 

 

 

はじめて敗北するとき、どんな表情をすればよいかわからず、のつぺらぼうに。

敵役とはいえ、ここまで突き落すかと、作者の容赦なさにふるえる。

 

 

 

 

ビルから転落しかけたところを、カギューにすくわれた。

手をさしのべる父。

 

 

 

 

宙吊りのまま、にらみつける。

地獄の底でも、この男だけは心をひらけない。

 

 

 

 

ついに父は、娘の「努力する才能」をみとめた。

無個性という個性を発見したから。

 

 

 

 

エリザが親から褒められたのは、生まれてはじめて。

この瞬間をもとめ、骨身を惜しまなかつた。

ヨシヨシ、ナデナデ、タカイタカイ。

高校生なのに恥しいけど、うれしくて。

 

 

 

 

理事長がよき父のふりをしたのは、自分でお仕置きするため。

絶望の淵をドリルで掘削、さらにふかい絶望をもたらす。

 

 

 

 

体は救助されるも、心は墜落。

死より重い罰。

ここまで人は残虐になれるのか。

 

 

 

 

親子の愛憎をえがききる第10巻。

この重厚な悲劇は、『トラウマイスタ』(少年サンデーコミックス)4巻をこえた。

作者と父の関係は良好だつたらしいが、

人間にとり刮目すべきトラウマは、心の襞のあちこちにある。

 

 

 

 

理事長は、どんな報いをうけるのだろう。

八つ裂きすら、なまぬるい。

卑屈さのかけらもない邪悪さは、娯楽作品の枠をはみだす。

危険な漫画だ。





ねじまきカギュー 10 (ヤングジャンプコミックス)ねじまきカギュー 10 (ヤングジャンプコミックス)
(2013/05/17)
中山敦支

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