左翼の推薦図書

(撮影:Wenjiang Yu)

 

 

吉成真由美によるインタヴュー集、『知の逆転』(NHK出版新書)は退屈だが、

言語学者ノーム・チョムスキーの応答の切れ味は、さすがとおもつた。

たとえば教育について。

 

――早期教育についてはいかがですか。

良い学校、良い大学に入るために、早期教育がもてはやされているわけですが。

 

チョムスキー 海兵隊員や労働者になるための訓練としては良いと思います。

 

「バカなこと聞くなよ」と相手にさとらせる、寸鉄人を刺す皮肉をボクもいつてみたい。

 

 

さてこの本は、話のおわりに若者むけの推薦図書をたづねる。

ジャレド・ダイアモンドなどほかの五人は、えらそうにズラズラ列挙するが……。

 

よくそのように質問されるのですが、

たいへんありがたいことではあるけれど、歯がゆくもある。

つまり、どう答えていいかわからないからです。

自分の子供や孫たちに対してさえ、そのようなリストを作れないくらいですから、

ましてや私の知らない人に対しては、さらに難しくなります。

 

数冊の書名をあげて物知りぶる、という誘惑に勝つのは簡単ぢやない。

筋金いりのアナーキストだけ可能だ。

 

 

(撮影:Rolfmueller)

 

 

『韓非子』「説難篇」をおもいだした。

 

ある日、鄭の武公は、大夫の関其思に相談する。

 

「これから兵をうごかすとしたら、相手はどこがよい?」

「胡がよろしいでしょう」

「……親類の国を攻めろとは、なにごとか!」

 

武公は激怒し、関其思を戮した。

なにせ娘を胡の王に嫁がせたばかり。

 

騒動をつたえきいた胡君は、安堵して鄭への防備をとく。

だがその虚をつき、武公は胡を征伐した。

 

 

つまり、結果として処刑されるも、関其思の説はあたつていた。

 

すなわち、知の難きにあらざるなり。

知に処する、すなわち難きなり。

(物事を知るのはやさしいが、その知識を実践するのがむつかしい)

 

「知に処する」術を知つてはじめて、世界を理解したことになる。

それは無政府主義的な学習によつてしか、身につかない。






知の逆転 (NHK出版新書 395)知の逆転 (NHK出版新書 395)
(2012/12/06)
ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー 他

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テーマ : 哲学/倫理学
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