破壊者・松木安太郎 vs. 連絡者・遠藤保仁

松木

ワールドカップ・アジア最終予選 バーレーン-日本

結果:2-3(0-2 2-1)
得点者:
[バーレーン]サルマン・イサ(後半四十二分)、オウンゴール(後半四十三分)
[日本]中村俊輔(前半十八分)、遠藤保仁(前半四十四分)、
中村憲剛(後半四十分)
会場:マナマ
[テレビ観戦]


テレビの視聴率や会場への集客数において、
われらが日本代表の人気が低下していることが明らかになってきた。
人気に浮き沈みがあるのはあたりまえで、
個人的にはまったく関心のもてない話題だが、
関係者たちはその原因についてあれこれと議論している。
宿主が死ねば、寄生虫もまた死ぬ。
日本代表を食いものにする大勢の人間は、不安におののくばかり。
しかし、皆わからないフリをしているのだろうか?
主たる要因ははっきりとしているのに。
テレビ朝日だ。
二〇〇一年に同社は八年間の契約で、
AFCが主催する全試合の放映権を獲得した。
この契約によりドイツ大会と南アフリカ大会の最終予選の放映権を独占。
落札価格は九十億円程度といわれる。
モトをとらねばならない同社の番組制作方針はマンネリの極致で、
代表戦の放映の質は地の底におちた。
角澤照治や田畑祐一の、醜悪で無内容な「実況」、
松木安太郎やセルジオ越後の、
俗におもねるだけでクソの役にもたたない「解説」。
サッカーファンからの批判がよほどこたえるのか、
松木は「ボクはシロウトの知識にあわせて解説してるんだ」と
釈明しているが、そんなヘリクツは通用しない。
ヤツは、番組製作者の「ひたすら騒げ」という命令に忠実なだけだ。
結果として、サッカーの「シロウト」たちは
耳ざわりな雑音をきらってテレビをけした。
もう一度念をおしておこう。
角澤や松木たちが、国民が日本代表のサッカーにふれる機会をつぶしたのだ。


さて、半年ぶりのマナマでの試合。
前回は最終防御線に三人がかまえて、ゴールに鍵をかけた。
両サイドに駒野と安田、中盤に鈴木、中村憲剛、山瀬という布陣。
これ以上はかんがえられないほどの、無残な戦術的敗北だった。
土曜日の試合では、半年まえは三十四分しか出番がなかった遠藤保仁に、
その三倍にちかい時間があたえられた。
遠藤は相撲取りのようにセンターサークルに体をのこしながら
灼熱の戦場を支配した。
中距離のパスの正確性と判断力は傑出しており、
小気味よくボールと味方選手が循環してゆく。
左がわでさびしげに出没する松井大輔の足もとにも宅急便がとどき、
その吸引力あるドリブルがバーレーン人をこまらせた。
高い位置のウイングによる起点も、半年まえになかったものの一つ。
オレが感心したのは前半十五分。
松井から中村俊輔へのパスが止められたときの遠藤の立ち位置だ。
中央のやや前よりに立つ遠藤の目前に相手クリアボールがころがり、
そこからの反撃でフリーキックを獲得。
十七分にそれを中村が直接きめて先制点をえた。
要するにサッカーは「そこ」にいればよいのだけど、それが一番むずかしい。


松井のサイド攻撃は有効だったが、
前線にいるのが玉田と田中の二人では選択肢がすくない。
単純な理屈をいうなら、中央に巻誠一郎がいれば得点機会はより多かった。
梯子をかけなければ壁はこえられない。
それとも、どのような高度なサッカー理論書に、
二本の槍だけで城門をこじあける方法がのっているのか。
両フォワードのうごきはよく、何度も相手の防御線の裏をついていた。
だが、いつものように背番号10の掩護射撃はなかった。
オレは中村俊輔という、左利きのやせっぽちの
価値が理解できないままもう十年になる。
土曜日もかれは中盤を徘徊しながら、むなしいピクニックをたのしんでいた。
多分かれは、10番のユニフォームをきせるために
やとわれたマネキン人形なのだろう。
中途半端だったのは、遠藤と対をなす長谷部もおなじ。
この役の最良の選択は鈴木啓太ではないか。
中盤よりまえの攻撃の指揮は遠藤がとるのだから、
相棒は黙々と支援をつづければよい。
ヤットのために相手ボールをうばって献上し、
ヤットのためにうごいてパスの行き先をふやす。
それだけで攻守の効率はたかまる。


骰子の目の奇数と偶数がみっつずつなのに似て、
よい面とわるい面がおなじくらいある試合だとおもっていたら、
日本代表はのこり十分で突如調子をみだした。
戦術面の不手際もあるにせよ、要するに最終予選出場国の
士気をうちくだけるような戦力差をつくれていないということだ。
連携や均衡は、まだまだ改善すべき余地がおおい。
十一人を堅密に鎖でむすぶことで失点のリスクは減少する。
そして目にみえない「縦」のつながりの存在も指摘しておきたい。
山口素弘や名波浩は対談で、遠藤保仁と中村憲剛を
日本のうつくしいパスサッカーの血脈の後継者に任命した。
かれらの鑑定眼はさすがに正しかったことが、
この最終予選で証明されつつある。
松木安太郎が放送室でどれだけ声をはりあげようと、
フィールド上にはりめぐらされた縦横の鎖を断ちきることはできない。
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