陰謀うづまく世界で

京劇でもちいる曹操の面

 

 

ある軍旅のさなか、曹操は兵糧係にこつそり相談した。

 

「糧食不足をどうにかしてくれ」

「枡をちいさくすれば食いのばせるでせう」

「それでゆけ」

 

ところが将兵の間に、曹操が兵糧をごまかしているとの噂が。

すぐ係を斬つて晒しものにし、コイツが軍糧をぬすんだ犯人と布告した。

 

まあ、密室の隠蔽工作が歴史にのこるのが不自然だが、

ひととなりがつたわればよし、というのが支那の史書のつね。

 

それにこの話では、兵糧係の献策が反乱をまねきかけた。

無能者を斬るのは、曹操なりの正義だつた。

 

 

袁紹

 

 

曹操と袁紹は中原の二大勢力だが、ゆたかな河北一帯に根をはり、

四代にわたり三公を輩出する名門出身、袁紹の兵力は絶大。

かれらが河南へ侵攻したのが「官渡の戦い」

 

両者にらみあう半年で、曹軍の糧食は底をつく。

許ヘ撤退しようと、留守をまもる荀彧に伝令すると、こう返答が。

 

「大軍をひきいる袁紹は勝負にでています。

ここで弱気になれば、つけこまれるだけです。

それに袁紹の幕下は人材豊富ですが、使いこなせません。

あなたの敵ではないのです」

 

兵站をうけもつ荀彧には、補給の不手際を敗因にされたくない、という意図もあるか。

いづれにせよ曹操は策を容れた。

 

 

 

 

袁紹陣営の許攸が、処遇に不満とかで投降。

「敵本営の北にある輸送隊を襲え」との機密情報を手土産に。

 

これまた判断がむつかしい。

前線指揮官たちは、罠でないかと裏切り者をうたがう。

荀攸と賈詡、ふたりの参謀は「是非に」と、インテリジェンスに色めきたつ。

 

曹操はみづから五千をひきい、夜間に出撃、明け方に烏巣を急襲。

むかえうつ淳于瓊は一万、さらに袁紹が騎兵を救援におくる。

 

「敵の騎兵が接近しています。兵力をさいて防ぎませう」

「うるさい! 背後にまわられたら教えれば、それでよい!」

 

淳于瓊をやぶる。

逆に袁紹に本営を攻められるが、どうにか持ちこたえ、敵は全軍崩壊。

物資を没収し、兵を捕虜とした。

 

書類の束から、袁紹と内通していた味方の手紙がみつかる。

曹操はすべて焼いた。

寛容と反対の、大量虐殺者として歴史に名をのこす男だが、

殺したいほど憎い相手でも、有能ならゆるした。

 

 

 

 

曹操はあるとき、お気にいりの女の膝で昼寝した。

「すぐおこしてくれ」といつて。

あまりぐつすり眠るので、女はおこしそびれる。

自分で目をさました曹操は、棒で女をなぐり殺した。

 

たとえ女でも、無能は死にあたいする罪だつた。






【参考文献】

『正史 三国志英傑伝 I 起つ (魏書・上)』(徳間書店)


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(1994/01)
中国の思想刊行委員会

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