我孫子祐『スライムさんと勇者研究部』
最終戦争ちかし
スライムさんと勇者研究部
作者:我孫子祐
掲載誌:『別冊少年マガジン』(講談社)2012年~
単行本:講談社コミックス
壁に耳あり障子に目あり。
天井にゴーレムあり。
建物と融合できる「ゴーレムさん」が活躍する、「ドラクエインスパイア系」の漫画だ。
後輩にツッコむときは、壁を経由。
舞台は、勇者と魔王の戦いの二千年後。
勝つたのは魔王だつた。
ただ世界が平和をとりもどすにつれ、人類は魔力をうしなう。
青いリボンがすてきな後輩は、水をあびるとスライムに!
勇者復活がちかづき、魔力を覚醒させる若者が各地にあらわれた。
こつそりトイレで変身したところ、先輩にみつかる。
天然のウォーターベッドは快適すぎて、つい居眠り。
しつぽりと濡れつつ、まじわるさまは、見様によつては相当エロい。
「キメラさん」は、動物と一体化する合成獣。
普段はブアイソだが、猫とまじると愛嬌たつぷり。
三人は勇者研究部員として、休日も魔王城で歴史の勉強。
どうみてもただのお出かけだが。
キメラさんのワンピは、おばあちやんが買つてくれたもの。
私服で個性を描きわけるあたり、初単行本とおもえぬ高レヴェル。
作者はどこで経験値をかせいだのか。
スライムさんたちは、ドラクエ的に雑魚キャラ。
勇者の剣ひと振りで瞬殺される。
だがモンスター同士団結すれば、対抗できるかもしれない。
それは、百合という特攻作戦。
ある雨の放課後。
同級生の「山田勇作」と相合い傘で下校。
いい雰囲気となるが、結局スライム化。
勇者の末裔らしき勇作は、ラブコメの王道をゆく。
つまり「魔物 対 勇者」のハルマゲドンは、
「百合 対 ラブコメ」、二大恋愛思想の雌雄を決する戦争でもある。
不意に挿しこまれる、灰燼に帰した世界の風景。
ゆるふわぷにぷにな日常にただよう終末観を、みごと表現する。
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