組織力より天津飯 ― 「反町ジャパン」を傍観する

天津飯

北京オリンピック男子サッカー 一次リーグB組第一試合 日本-アメリカ
結果:0-1
得点者:ホールデン(47分)
[テレビ観戦]

日本のサッカーは「個人の能力」ではかなわないのだから、
「組織力」で勝負するべきだ。


よく聞く言葉であり、なかば常識になっているといえるだろう。
おれにはまったく意味がわからないが。
「組織力」って一体なんなの?
組織で数的優位をつくる?
ちょっとまってください、サッカーのプレイヤーは人数がきまっているんですよ。
相手が一人一人を監視したらそれでおわり。
けっきょく一対一の攻防がすべてです。
もうすこし論理的にかんがえてみましょうか。
もし本当に「組織力」が「個人能力」の差をうめることができるのなら、
一部の強国以外はみな「組織力」で勝負しているはずではないか?
そして「組織力」が世界のサッカーの主流になっているはずだ。
いやいや、日本人選手はチームに対する忠誠心がたかく、
運動量が豊富で、パスをつなぐ技術がたかい。
だからこそ組織でたたかうサッカーにむいているのだ!
…なるほどそこまで譲歩していただければ飲みこみやすくはなりました。
でもそれって「個人能力」ですよね。
忠誠心も運動量もパスの技術も。
なんで素直に「個人でたたかう」といわないのですか?
なにをおそれているんですか?

サッカーマガジン八月十九日号は、
われらが五輪代表チームの中心選手へのインタビューを掲載している。
本田圭佑、安田理大、長友佑都の三人だ。
本田はこの世代の選手では一番鼻っ柱がつよくて、
「組織教」にも毒されていないはずだったが、
本番をまえにびびったのか弱音をはいているからなさけない。

ある意味海外の良いところでもあるんですけど、
向こうは完全に「個」なんです。
でも、相手が個を押し出してくるのなら、
こっちは組織で数的優位をつくって対抗する。


ああ、かれまで臆病者の教義に洗脳されたのか。
日本人らしい運動量が自慢の長友は、女手ひとつで三人の子どもをそだてた
母親への感謝の気もちをかたっていて泣かせるが、ここにも邪教の魔の手が…。

守備では、2対1など数的優位の状況を
できるだけ増やしていかないと厳しいでしょう。


きました数的優位!
守備で数的優位、攻撃でも数的優位。
どうして都合よく日本人だけが外人を数で上まわるのか?
そもそも「数的」の「的」が意味不明。
単純に数の大小をくらべているのではなく、流動的な状況における
戦術のありかたを曖昧に表現しているのだとかんがえられる。
要するに、バカなスポーツ記者と玉蹴り屋だけが
信じている実態のない概念なのだ。
安田は…浪速の金狼はどうなんや?

僕のプレーの全部を見てほしいですね。
どんな強い相手が目の前におっても、
そこに向かっていくチャレンジ精神を見てもらいたいです。
僕は気持ちが前に出る選手やし、どんな相手でもアグレッシブにいく、
というところを見てもらいたいです。


さすがは妻子持ち、ええこというやないか!
なんもかんがえとらんだけかもしれへんけど。
いやたしかに安田はいいよ、走るだけの長友より全然いい。
川崎の暴れん坊・森勇介との対決は最高だったなあ。
それにしてもコイツの笑いの個人能力はワールドクラスだな。
直前のインタビューなのに「(笑)」ばかりだよ。
逆に心配になってしまうよ。
柏木、梅崎、家長といった選にもれた連中をネタにしてからかうのだが、
これはかれらをはげますメッセージでもある。
やさしい男なんだ。
ガンバ大阪ジュニアユース時代の先輩である本田も当然標的になっている。
本田は、ほかの選手が『プレイボーイ』を読んでいる横で
ひとりで『プレジデント』を読んでいるらしい。

前おきがながくなったけれど、試合の話。
反町監督がとった戦術は、前線に森本をすえて、
その後ろに左から香川、谷口、本田をならべるというもの。
右利きを左に、左利きを右に。
両翼の香川と本田の縦への推進力はよわく、どうしても内側をむきたがる。
相手守備陣への重圧をほとんどあたえられなかった。
それはそれでよい。
日本人は中盤に人材が豊富なのだから、
その長所をいかしてボール所持率をたかめる。
中盤でパス交換をしながらサイドバックの上がりを待ち、
「人数をかけて」決定的にくずす。
それなりに合理的な「組織サッカー」だといえる。
実際に前半は、最近なぜか絶好調の内田篤人が右サイドを制圧した。
しかしなぜ谷口博之なんだ?
前線への果敢な飛びだしがウリの男で、何度も好機に顔をだす。
健闘していたのは事実だ。
しかしあまりにはげしい上下動をしいられて、シュートに力がたりない。
非力な森本は完全に孤立し、ごついアメリカ守備陣の陰にきえた。

反町監督の意図はわかっているつもりだ。
谷口の運動量に賭けて、影のストライカーとしての得点を期待したのだ。
そして、中盤の枚数をひとつふやして「数的優位」をたもつこともできる。
しかし谷口は、中央で攻撃を指揮することはできない。
このように選択肢がすくなくなっている状況において、
きのうは内田しか敵防衛線をやぶれなかった。
反対側の長友はほとんどの時間で沈黙し、
敵の右サイドバックのウインに縦にぬかれて失点の原因をつくる。
このウインは百メートルを十秒台ではしるらしいからすごいねえ。
残念ながら長友は「2対1など数的優位の状況」はつくれなかったことになる。
もし安田が先発だったら?
春風亭小朝カットの二十歳なら百メートル十秒男にちがう応対をしただろうね。

このチームは4-4-2をベースにたたかってきたが、
指揮官は臆病風にふかれてしまったようだ。
本田の弱気発言もその空気に影響されたからなのかもしれない。
もはやグループリーグ突破の可能性はほとんどなくなったわけだが、
現地で天津飯や嫁への愛をブログでかたる安田の出番はあるのだろうか?
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