デュリック『レ・ブルー黒書 フランス代表はなぜ崩壊したか』

(撮影:julien haler

 

 

レ・ブルー黒書 フランス代表はなぜ崩壊したか

Le livre noir des Bleus, Chronique d'un désastre annoncé

 

著者:ヴァンサン・デュリック

訳者:結城麻里

発行:講談社 2012年

原書発行:2010年

 

 

 

 

2010年6月20日。

いくら左寄りで、ストライキの天才を自認するフランス国民も、

代表チームがワールドカップ大会中に練習をボイコット、という知らせには動揺した。

 

発端は17日。

第2試合・メキシコ戦のハーフタイム、ドメネク監督に批難されたアネルカがつぶやく。

「オカマでも掘つてもらえ、うす汚ねえ売女の息子め」

19日土曜日付の『レキップ』誌がこの暴言をあばいた。

それでもアネルカは謝罪をこばみ、南アフリカから追放される。

 

選手らは情報漏洩者をさがす「もぐら狩り」をはじめ、疑心暗鬼となり、

ついにスパイクを履くことさえ忘れ、ホスト国の南アにやぶれ、

前大会優勝チームがグループAの最下位となつた。

 

 

 

 

 

(撮影:David Ruddell

 

 

2006年、レ・ブルーにはジダンがいた。

ドメネクは、この将軍へ全面的に権限をゆだね、自身も安定的な権力をえた。

 

ジダンは、フォーメイションや選手起用に容喙した。

中盤をヴィエラとマケレレの2ボランチにせよと要求し、みとめられた。

チーム全体の飲料水がボルヴィックに。

かれのスポンサー企業の商品だ。

 

嫌いなアンリにパスをださない。

ジダンがアンリのゴールをアシストしたのは、なんとフリーキックからの一回のみ!

好きなのはアネルカ。

ジダンの後押しもあり代表に定着したが、

それがのちの「売女の息子」発言の遠因となると思うと皮肉だ。

 

決勝でマテラッツィに頭突きし、ジダンはレ・ブルーを去り、ドメネクは残つた。

 

 

 

 

 

(撮影:Gind2005

 

 

EURO2008は、グループリーグ最下位で敗退。

尻尾をきつたトカゲに、集中砲火がふりそそぐ。

 

それでも選手は敗軍の将を支持する。

本心でなく、ドメネクがそう根回しした。

代表スタッフ、たとえば運動マッサージ療法士やセキュリティ担当まで駆使し、

策士のネットワークで輿論操作をこころみる。

 

老兵プラティニも肩をもつた。

ブランやデシャンなど、98年の優勝メンバーを嫉妬しており、

ドメネクの留任はかれの意にかなう。

 

トカゲは逃げきつた。

 

 

 

 

 

 

 

2010年にはグルキュフがいたが、将軍ではなかつた。

この数学教師の息子は、練習で「煉瓦」をぶつけられた。

つまり、わざとトラップ不能のパスを送られても、反抗しなかつた。

ひたすら自分の殻にこもり、より周囲を苛立たせた。

 

権力は、闘争でしか手にはいらないのに。

 

 

 

 

 

アーセナル時代、フリーキックをねらうアンリ(撮影:Edg2s)

 

 

かつて代表監督エメ・ジャケはマンチェスターへ飛び、

エリック・カントナと対面し、もうキミは不要だと告げた。

ジダンの時代がくるから。

ドメネクはバルセロナで、おなじ目的でアンリと面会した。

泣き落しにあつた。

 

ティエリ・アンリは全キャリアを通じ、トレゼゲなど、ほかのストライカーを潰した。

それは競技者に必要な性質で、悪ではない。

だが、自分が控えにまわされたことを恨み、チームを破壊せんと企んだなら。

 

新主将はエヴラ、アンリと同郷の後輩だ。

反乱を扇動したのはアンリと著者は断じる。

その論證についてくわしくは、本書を紐解いていただくしかない。

 

ドメネクは保身のため妥協をかさね、影の王の謀略をとめられず、

サッカー史上もつとも醜悪な喜劇の主役と成り果てた。






レ・ブルー黒書――フランス代表はなぜ崩壊したかレ・ブルー黒書――フランス代表はなぜ崩壊したか
(2012/06/05)
ヴァンサン・デュリュック

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