『2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する』

 

 

2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する

Megachange: The World in 2050

 

著者:英『エコノミスト』編集部

訳者:東江一紀 峯村利哉

発行:文藝春秋 2012年

原書発行:2012年

 

 

 

 

統計にもとづき客観的にかく点で、わが道をゆく雑誌が、イギリスの『エコノミスト』。

自信満々で2050年の世界を予測する。

 

産業革命とともにはじまつた人口増加は、ようやく終焉をむかえる。

38年後の新興経済圏は、BRICsほど影響をあたえない。

 

気候変動はとめられない。

その促進要因がインフラに組みこまれてるから、劇的な変化はのぞめない。

 

都市や国や大陸は、景気の浮き沈みがある。

だが惑星単位では安定して発展する。

ほかの星に借金できないから。

 

 

 

 

支那の成長はにぶるが、それでもGDPが全世界の20%をしめるだろう。

19世紀まで最大の経済圏として傑出していたのだし、

白人に牛耳られたここ200年の世界が、あきらかに異常だつた。

 

 

 

 

 

 

 

支那とアラブの富裕層が台頭し、美術品の売上を激増させている。

しかし売れたのは、支那とイスラムの美術。

世界の距離は、文化的にはちぢまらない。

 

北京語が英語に取つて代わりもしない。

だれがこのんで幾千の漢字をおぼえるか?

ヒンディー語なぞ、インド国内の共通語にもなつてない。

世界の7000の言語は、今後100年で半数が死滅する。

犯人は英語でなく、ポルトガル語(ブラジル)やインドネシア語だ。

 

ナイジェリアの人口は、2050年に3億8900万となる。

その映画産業は「ノリウッド」とよばれ、すでに世界第2位の制作本数をほこる。

グローバル化が、各大陸の文化圏から地元色を消すことはない。

 

 

 

 

先進国を中心に、貧富の格差がひろがつている。

ただそれ以上の速度で、各国間の格差が縮小。

世界の「中流化」がすすむ。

 

 

 

 

 

 

 

国ごとにみれば、惑星単位の発展に取り残されるところもある。

日本だ。

世界史上もつとも高齢化のすすんだ社会。

人口の半分が52歳以上に。

 

この趨勢を逆転するには、最低でも20年が必要だが、政府は無為無策。

 

GDPは世界経済の5.8%から1.9%へ。

 

あわれむべき国だ。

 

 

 

 

 

 

 

アメリカ合衆国の軍事的優位は持続できない。

中国などが拮抗し、ヒズボラなどの非国家組織が挑戦する。

2006年のレバノン侵攻では、後者がイスラエル軍をくるしめた。

ハイエンドな軍隊が、ローエンドな手段で無力化される。

たとえば、最新鋭の装備で身をかためた熟練兵も、

携帯電話で起爆する即席の手製爆弾でふきとぶ。

 

 

 

 

科学の未来は、生物学にある。

化学は智的学問として枯渇したし、物理学も希望はもてない。

 

ではこの分野もアジアの時代となるか?

うたがわしい。

権威にしたがうのでなく、挑むことで、科学は進展する。

アジアの新興国は、革新につきものの破壊思考に手を染めることなく、

西洋の科学革命の果実だけあじわつてきた。

日本でさえ、科学部門のノーベル賞をうけたのは、わづか15人。

人口7%以下のオーストリアは14人もいるのに。

 

冷戦がおわり、宇宙での有人飛行競争もおわつた。

だがもし、支那人がアメリカ人を出し抜き、火星着陸をはたしたら?

どれほどの心理的打撃をもたらすか!

 

 

 

 

 

 

 

精神世界では、無宗教が地球をうけつぐ。

経済発展でひとは宗教を相対化するから。

 

アメリカを偉大な例外として。

平均寿命は34位、殺人発生率や服役者の割合もとびぬけて高い。

つまり内面的にアメリカは、富裕国より貧困国に似る。

 

イデオロギーも宗教も退潮した社会でひとびとは、

ツイッターやフェイスブックなどのSNSをもちい、

「友だち」の助言をもとに意思決定をおこなう様になる。

 

 

 

 

 

 

 

一部で最新流行なのに、一部で陳腐化したイデオロギーがある。

「民主主義」だ。

19世紀までは「衆愚政治」の意味をふくみ、

前世紀は「社会主義」の関連語(北朝鮮の国名をみよ)だつたこの概念が、

「競争選挙」と、「政治的自由」の同義語として使われだしたのは最近のこと。

独裁を打倒する際の旗印となる民主主義は、新興国で前進する。

 

だが先進国で後退する。

ロビイストの暗躍、癒着腐敗、マスコミ操作。

缺陥だらけ。

ワシントンDCと距離をおくことを誇りにしてきたマイクロソフトやグーグルすら、

ロビー活動の事務所を首都に開設した。

かつてロシアの統治者は選挙をおそれたが、選挙戦術をおぼえた現在は心待ちにする。

 

市井の活動家は、ツイッターやフェイスブックで体制派を出し抜けるのでは?

敵はその先をゆく。

最先端の人口動態分析をもちい、浮動票を誘導し、みるみる権益を拡大している。

 

選挙は、利益集団が権力にしがみつくための道具になりさがつた。

 

では、民主主義にかわる懸案はなにか?

「法の支配」だ。

公務員とむきあう市民に、尊厳を保證できるかどうか。

正当な理由で国を訴えたとき、実効的な損害賠償を勝ち取れるかどうか。

いうまでもなく日本にないものだ。

 

法の支配は、弱者だけでなく、強者にも歓迎される。

ロシアの新興財閥は、自国の腐敗した政治制度を愛しているが、

法律上のいざこざを解決するときかれらが頼るのは、

ロンドンの商事裁判所やストックホルムの仲裁裁判所。

 

法の支配が民主主義の脆弱性をおぎなう、なんて議論は目からウロコで、

大いに啓蒙されるも、「結局ただしいのは『韓非子』かあ」と落胆しなくもない。






2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する
(2012/08/03)
英『エコノミスト』編集部、船橋 洋一 他

商品詳細を見る

関連記事

テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

最近の記事
記事の分類
検索とタグ

著者

苑田 健

苑田 健

掲示板『岩渕真奈 閃光の天使』
も運営しています。

Twitter
メール送信

名前
アドレス
件名
本文

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
月別アーカイヴ
08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03