ティアラをつけたメグ・ライアン ― 「魔法にかけられて」をみて

魔法にかけられて
Enchanted
出演者:エイミー・アダムズ パトリック・デンプシー ジェームズ・マースデン
監督:ケヴィン・リマ
(2007年/アメリカ/107分)
[DVDで鑑賞]
ふと気づいたのだが、この作品はおれがはじめてみた「ディズニー映画」だ
お姫さまがウロウロする話をこのむ男はあまりいないのも事実だが
ひごろ知ったかぶりをして映画をかたっているが、ヘボブロガーの鑑賞歴などその程度のものです
そんなわたしも「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」でエイミー・アダムズの虜になり、食わずぎらいを克服することができました
ありがとうエイミー姫
ディスクをノートPCに差しこむまえから、魔法ははじまっている
「むかしむかしあるところに…」からはじまり、突然あらわれる王子さまのキスですべての決着がつき、「…そしてふたりは末永くしあわせに暮らしましたとさ」でおわる物語
だまされやすい子どもたちでも、さすがにいまさらそんなおとぎ話は通用しない
それならディズニーアニメのお姫さまを、ニューヨークにそのままつれてくればいいじゃない
ふわふわのドレスも、唐突にはじまる歌とダンスも、「ただ一度のキス」でちかわれる永遠の愛も、とりあえずアリになるし
だってかの女はお姫さまだもの!
でもこれはかなりむずかしい賭けだ
少女たちは大都会で右往左往するプリンセスに幻滅し、いい歳をしてディズニー映画をみているおとなたちは名作への冒涜とおもうかもしれない
じっさいに制作は難航したようだ
2002年にはクランクインするはずが、スタッフや脚本の度重なる変更をへて2007年11月にようやく公開にたどりつく
動物といっしょに掃除をしながらうたう「歌ってお仕事(Happy Working Song)」は、最先端のCGと調教師にトレーニングされたネズミやハトのハーモニーがたのしめる
ゴキブリのダンスは勘弁してもらいたいけれど
「想いを伝えて(That's How You Know)」はセントラルパークにいろいろな人種、いろいろなパフォーマーがあつまって恋のすばらしさをうたいあげる
途中で出てくるじいさんばあさんはむかしのミュージカル映画に多数出演していたベテランのダンサーだそうで、本作は過去の作品への敬意がかんじられてみていて気分がよい
エイミー姫の歌声もすばらしい
お姫さまらしい素っ頓狂ともいえる高音でうたっているのだが、都会の風景にやさしくなじんできこえるのが不思議だ
ニューヨークのど真ん中ではじまるミュージカルの不自然さも、エイミー姫の屈託のない笑顔をみているとゆるしたくなってしまう
まるで魔法みたい
現代都市に追放されたプリンセスをたすけるパトリック・デンプシーがじつによい
離婚をあつかう弁護士の役で、娘とふたりで暮らしている
ディズニーアニメと現実世界のつなぎ目となる、簡単とはいえない役どころだ
娘のプレゼントに伝記をあげて、「本なの?」といやな顔をされるまじめなパパぶりがおかしい
険悪な夫婦関係を処理する毎日をおくるインテリなのだが、永遠の愛をしんじるプリンセスによってじょじょに心がひらかれてゆくさまをうまく演じている
アンダレーシアからの客人と子持ちの弁護士が「そんなのはおとぎ話だ!」などと議論しながら、おたがいをふかく理解してゆく筋がきはとても現代的だ
設定がぶっとんでいるので目がくらまされるけれど、ようするにこの映画はロマコメなのです
メグ・ライアンがおいしいところをすべてもってゆくアレです
都会での熾烈な生存競争のただなかで、大切なひとたちをまもりそだてるという生き方
それはおとぎ話の王子さまより尊いのだと映画はうったえている
そしてエイミー姫
ぼくより年上のプリンセス
サファイヤのようにおおきくかがやく瞳、たかく秀でた頬、きりりとした鼻柱、かわいらしい口元
普通なら結婚式でも躊躇しそうな、ふわふわの純白のドレスがよく似あう
33歳なのにそばかすをのこしたような肌のきめで、たしかにお姫さまにみえます
どの国の姫君にも実際にお目にかかったことはないので、想像でいっていますが…
この映画ではいつもニコニコ、なにもかんがえてなさそうなところがよいです
でも年齢のせいなのか、みていて安心感があります
むしろロマコメのヒロインとしては最適の年格好ともいえますね
女性の観客は同性の役者にきびしいので、尻の青い小娘ではメグ・ライアンのかわりになれません
そしてたのもしい姫さまは、われらが現実世界に舞いおりて二三日で環境に適応してしまう
「妖精より役にたつ」魔法のカード、クレジットカードで買いものをたのしんだり
さっそく「デート」という現代の習慣を理解して実行にうつし、まわりの男たちをしっかりと品くらべした上で、安易な運命や「ただ一度のキス」などではなく、みずからの意志で生涯の伴侶をえらぶ
けっきょく女性の適応力と合理的な判断力にはかなわないというわけです
故郷に未練はないのか?
そもそもロバートは元妻となぜわかれたのか?
ナサニエルが良心に目ざめたきっかけは?
龍があばれる最後の場面が適当
ゴキブリがきもい
エイミー姫のしわをごまかせていない
…などの疑問点もありますが、重箱のすみをつつくのは野暮ってもんでしょう
だってこれはディズニー映画だもの!
![]() | 魔法にかけられて 2-Disc・スペシャル・エディション (2008/07/18) エイミー・アダムスパトリック・デンプシー 商品詳細を見る |
- 関連記事