望月桜『恋にならないシェアハウス』

 

 

恋にならないシェアハウス

 

作者:望月桜

掲載誌:『エレガンスイブ』(秋田書店)2019年-

単行本:A.L.C. DX

[ためし読みはこちら

 

 

 

ウェブ関係の会社に勤める31歳の「斎木真奈」は、最近引っ越しをした。

購入していたマンションは、同棲相手が浮気するのに利用され、

嫌な思い出が残ったので、貸しに出してしまった。

そこで選んだのが郊外にあるシェアハウス。

 

 

 

 

たがいに見知らぬ4人の共同生活がはじまる。

男が2人いることを、うっかりネット広告で見落とした真奈だが、

管理人の「西川」はイケメンで料理も上手で、むしろ万々歳だった。

 

 

 

 

研究者だという「吉岡」とは、女同士仲良くしようと話しかけるが、

いつも素っ気ない反応しか返ってこず、関係を構築できない。

しかしある日、吉岡は心の病気を抱えていることを告白する。

 

 

 

 

真奈の母が様子を見にやってくる第4話も秀逸なエピソードだ。

美人だが自己中心的な性格で、周囲に迷惑をかけがち。

真奈がつい自分の感情を押し殺してしまう傾向があるのは、

母親からのプレッシャーを受け続けてきたからだと解る。

 

 

 

 

シェアハウスの4人は、不器用でフツウの幸せをつかめなかった人たち。

でも人と一緒にいるのが嫌なわけではなく、むしろ求めていて、

ゆるやかだけど安心できる空間を、一から作り上げようと努力している。





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都陽子『ニュースの現場から!』

 

 

ニュースの現場から!

 

作者:都陽子

配信サイト:『COMIC BRIDGE online』(KADOKAWA)2019年-

単行本:ブリッジコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

小さな地方テレビ局に勤める、アルバイトの新米カメラマンの漫画。

田舎なので大事件は起きないが、それでも火災現場などは相当危険だ。

 

 

 

 

主人公は26歳の「相原夏未」。

やりたいことが見つからず職を転々とし、ふらふら暮らしていた。

現在はコンビニ店員をしているが、そこに大学の先輩「岩隈」が現れる。

人手不足なので気の合う後輩をスカウトしにきた。

夏未の方も岩隈を憎からず思ってたので、オファーを受け容れる。

 

 

 

 

夏未は時給900円でアシスタントの仕事をはじめる。

映像に興味があった訳でもないので、知らないことばかりだ。

5、600万円するカメラを壊したときは大ピンチに。

 

 

 

 

数か月アシスタントをこなした夏未は、

5分間のニュース映像のためご当地アイドルを追う仕事を任される。

しかし、うまくいかない。

カメラマンは、ただカメラを担いで立つだけの職業ではない。

われわれ視聴者は、映像を見るときカメラマンの存在を意識しないが、

被写体にとってはそうでなく、視界にいるだけで足を引っ張ることも。

 

作者はアイドルを題材にした作品をいくつか発表しており、

得意のネタを取り上げたこの第5話は、出色のエピソードとなっている。

 

 

 

 

本作は、まんがタイム掲載作みたいな「お仕事もの」風のノリだ。

淡々としている。

「やりたいことを見つける」というストーリーはやや弱く感じるが、

飾らない性格の20代女子のがんばる姿がナチュラルに浮かび上がる。





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森猫まりり『源氏物語~愛と罪と~』3巻

 

 

源氏物語~愛と罪と~

 

作者:森猫まりり

掲載誌:『Sho-Comi』(小学館)2019年-

単行本:フラワーコミックス

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3巻は若紫篇である。

紫上は初登場時まだ10歳。

庭で雀をつかまえて戯れる、無邪気な少女だった。

 

のちに心身ともに成長し、この作品のヒロイン格となり、

原作者の呼称「紫式部」の由来とされる重要キャラだ。

 

 

 

 

祖母が他界し、頼れる身寄りがいなくなった紫上に、源氏は同情する。

保護するという名目で、幼女誘拐犯さながらに自邸へ連れ去ってしまう。

 

 

 

 

源氏の庇護のもと、紫上はおだやかな生活を送る。

「潮が引く様にお兄さまの心が離れたら嫌だ」とか、

絶妙な切り返しで源氏をタジタジとさせたりする。

このとき紫上は14、5歳で、海など見たこともないだろうに、

それらしい返歌をさらっと詠むあたり、知性と教養が光っている。

 

本作は、女子中高生にもダイレクトに伝わるスタイルを採用するが、

その枠内で宮廷文化の香りを漂わせるのが巧い。

 

 

 

 

ある日源氏は豹変し、保護者としての仮面を脱ぎ捨てる。

計画通りであり、正妻葵上を喪った悲しみゆえの行動でもある。

心の準備ができてない紫上は抵抗するが、相手が源氏では分が悪い。

 

性愛というものの暴力的な本質を抉り出す名場面である。

衣擦れの音がエロティックだ。

 

 

 

 

信頼を裏切られた紫上は悲嘆に暮れる。

自分への優しい態度は、すべてこれが目的だったのかと。

そして庭を歩きながら身の振り方を考える。

 

例の行為は許せないが、これまで源氏から大切にされてたのは事実だ。

不自由なく暮らせる私は、客観的に見て幸福な女だ。

主観的には不幸だが、ならば幸福とはそもそも何か。

私はいったい誰に何を求めているのか。

 

人生の荒波に翻弄されるヒロインの心理描写が冴えている。





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苑田 謙

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