須藤佑実『包帯少女期間』
包帯少女期間
作者:須藤佑実
発行:ジーオーティー 2019年
百合系の8作を収録した短篇集である。
須藤佑実の作風は、情緒的かつ錯綜としたストーリー、
やや不安定だが巧みに表情をとらえた女性像などに特徴がある。
女同士の心理戦をえがく百合は、向いてるジャンルかもしれない。
たとえば表題作は、大怪我をして全身包帯だらけの美少女が、
弱みを見せるどころか、クラスメイトを意のままに支配する。
ノスタルジックで浮世離れした世界観も、この作家の魅力。
『おねがい』は、女子高生が空の浴槽の中にいる場面から始まる。
人物だけでなく空間の描写も冴えている。
本作は、ファッションモデルをしている先輩と、
彼女と交際してるが平凡な後輩のすれちがいがテーマ。
いかにも少女漫画風のベタな設定と、
作者らしい不思議な空気が混ざり合う、複雑なあじわいだ。
『氷の部屋』は、わがままで傍若無人な「ユキ」に翻弄される話。
作者はユキを否定しない。
ヒエラルキーの上位にいるのは大抵こういう人間だから。
余談だが、なぜか須藤作品には看護師がよく出てくる。
本作はサスペンスの側面があり、非常におもしろい。
作者は、ユキの性格の悪さを淡々と中立的に描くなかで、
堅い鎧の内側にあるピュアな何かを掘り出してみせる。
恐ろしいほどの完成度を誇る傑作だ。
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