なじみ『しょうこセンセイ!』
しょうこセンセイ!
作者:なじみ
掲載誌:『まんがタイムきらら』(芳文社)2018年-
単行本:まんがタイムKRコミックス
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目覚ましと同時にガバッと起床したのは「吉田翔子」。
身長120センチで、年齢は8歳だが、やる気が半端ない。
実は、翔子の職業は高校教師だった。
天才なので特例として認められたらしい。
真摯に生徒とむきあう姿勢は、同僚からも評価されている。
翔子は子供なのでよく転ぶ。
オリエンテーションの時間に膝を擦りむいたときは、
保健室で生徒に手当てしてもらった。
ジタバタする姿がかわいい。
普段から小さい翔子だが、ときおりデフォルメキャラに変貌する。
これが反則的なかわいさ。
得意の工作をするときとか。
頑張り屋さんでも、甘えたいときはある。
母の海外赴任がきまったときは、感情を抑えきれなかった。
本作が初連載で初単行本となる作者なじみは、
主人公にかわいさを詰め込んだと、あとがきで語っている。
たしかに詰め込みすぎてパンク寸前な気もしなくはない。
その一方で、脇役はみな普通にかわいい。
翔子の歓迎会をひらいた、居酒屋での大人女子トークは、
きらら作品でいうと『スロウスタート』に匹敵するたのしさ。
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仁山渓太郎『津軽先輩の青森めじゃ飯!』
津軽先輩の青森めじゃ飯!
作者:仁山渓太郎
掲載サイト:『マンガクロス』(秋田書店)2018年-
単行本:チャンピオンREDコミックス
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青森県のご当地グルメをテーマとする作品である。
主人公の「都飯美(みやこ めしみ)」は東京出身だが、
大学卒業後、青森の新聞社で働きはじめた。
右も左もわからない土地で苦労するが、そんな飯美に対し、
地元を愛する「津軽先輩」がおいしいものを紹介してくれるのだった。
本作に登場する食べ物は、八戸名物の「せんべい汁」など、
どちらかと言えばB級グルメ寄りだ。
高級すぎたりレアすぎたりで味が想像できない、なんてことはない。
だすけ青森のグルメを引っ張ってるのは八戸だはんで!
下北半島のむつ市では、とれたてのウニ丼に舌鼓をうつ。
山盛りなのに2000円。
東京では考えられない安さも、青森グルメの魅力だ。
5話と13話は、津軽先輩の少女時代をえがく。
ちょっとベタな母子家庭のエピソードに、津軽弁がハマっている。
本作が個性的なのは、単に食べ物がおいしそうというだけでなく、
青森ならではの人情味やホスピタリティが感じられるからだろう。
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『大奥スパイミッション』 第1章「お江戸の電撃姫」
江戸西端にある新宿の夜景が車窓を流れていた。アール・デコ風のドコモタワーの背後は暗闇だった。とっくに閉まった新宿御苑は照明が灯っていない。
ときは慶長十九年。関ヶ原の戦いから十数年が過ぎた。征夷大将軍に就任した徳川家康らが支配を確立し、この列島はようやく永続的な平和を取り戻そうとしている。
いまのところは。
ショートボブの髪をミニツインテに結ぶ女が、満員電車でドアに押しつけられながら、アイフォンでアニメを見ていた。『とある科学の超電磁砲』など、お気にいりの作品は全話ダウンロード済みで、いつでも鑑賞できる様にしてある。画面では主人公の御坂美琴がスターバックスかどこかのカフェで、放課後なので制服のまま友達とおしゃべりしている。
女は涙ぐんだ。二次元の少女たちが羨ましくて仕方ない。特殊な環境で生育したこの女は、教育機関へ通った経験がない。だから学校帰りに友達とクレープを食べるとか、そういう仲睦まじい青春の一場面を見るたび、憧れと嫉妬で胸が締めつけられる。あたしもJKになりたい。制服で友達と街を闊歩したい。二十一歳の女は痛切に願うのだった。
女は唇を噛んだ。現実世界で異変がおきた。ネットフリックスのアプリを終了させた。
黒のミニスカートごしに、尻を触られていた。痴漢だ。女は車窓に映る男の顔を見た。白髪で、皺が刻まれている。六十代後半だろうか。背はさほど高くない。コーデュロイの洒落たジャケットを着ている。
車輌が速度を落とした。新宿駅へ入ろうとしている。老人の右手はスカートの内側へ侵入した。
来やがったな。
里見ハナはほくそ笑んだ。老人が自分に狙いをつけたのは、職場近くの代々木駅のホームで気づいた。慎重に品定めしてからターゲットを選ぶのが痴漢の習性だ。勿論やつらは、捕まれば必ず「ほんの出来心でした」と弁解する。
嘘っぱちだ。
やつらは絶対、衝動的に行動しない。ターゲットを選定する時間も、快楽の大事な要素だからだ。若く性的に魅力的で、決して反抗しそうにない女をじっくり探す。なのでハナは自分が狙われてると悟ったとき、わざと目を伏せ、もじもじと気弱にふるまった。
なにしろ痴漢狩りが、彼女の趣味みたいなものだった。ミニツインテやニーソックスなど、二十一歳にしてはやや幼い格好は、敵をおびき寄せる餌だった。童顔なので似合ってはいるが、年齢的にギリギリなのは自覚していた。でもおかげで月に二三回は痴漢を私人逮捕できる。
ハナはアイフォンを後ろ手に回し、フラッシュを焚いて老人の犯行を撮影した。なにはさておき証拠固めだ。事件において物的証拠に優るものはない。
ドアが開いた。ハナはホームに降りて振り向く。チェックのシャツをつかみ、老人を銀色の車体へ押しつける。アイフォンを老人の眼前に掲げ、撮ったばかりの写真を見せつけた。
ハナは言った。「ちょっと事務室で話そうか」
老人は無表情だった。薄笑いを浮かべる様にも見える。どうでもいい。性犯罪者の感情を慮る必要などない。泣き出したり、激昂することもある。意味はない。重要なのは、こいつらが卑劣な犯罪者であるという客観的事実だけだ。
駅員が駆け寄ってきた。ハナを見て顔をしかめた。
駅員が言った。「またあんたか」
「またとはなんだよ」
「先週捕まえたお武家さんは、偉い旗本だったよ。あとで俺が上から怒られた。ひどい目にあった」
「知るか。あたしは被害者なんだ。さっさと連れてけ」
「やれやれ、困ったもんだ」
ハナと老人は駅員に先導され、人混みを掻き分けてコンコースを進んだ。「痴漢は犯罪です!」と書かれたポスターが目に入り、ハナは鼻で笑った。まったく警察の努力には頭が下がる。痴漢が犯罪であるという斬新な法解釈を、わざわざ一般市民に教えてくれるのだから。
狭い事務室の四人掛けのテーブルで、ハナはどかりと腰を下ろした。向かいに老人が座った。やはりポーカーフェイスだった。ハナはすこし嫌な予感がした。
事務室はキャビネットやパソコンがならぶ、雑然としたオフィスだった。オレンジ色のAEDのケースが壁に掛かっている。ほかに駅員はいない。
五分ほどして、くたびれたコートを着た大柄な男が入ってきた。剣帯に刀を二本差しするだけでなく、手に別の大小を携えていた。無精髯を生やしたむさ苦しいなりだが、いちおう武士であるらしい。眼光鋭い男は、黒い手帳を駅員に見せた。徳川宗家の三つ葉葵の紋があしらわれている。駅員は驚き、求められるまま事務室から出ていった。
大柄な男がテーブルに大小の刀を置いた。老人はかるく頷き、感謝の意を示した。
痴漢に武器が提供された。
頭蓋骨がひび割れそうな音量で、ハナの脳内で警報が鳴っていた。これは罠だ。
あたしはハメられた。
おだやかな微笑を浮かべ、はじめて老人が口を開いた。
「ワシらは御庭番だ。上様に直属する秘密警察だ……ああ、上様とは将軍である秀忠公のことだ」
ハナは言った。「弁護士を呼ぶ」
「だから秘密警察と言うておろうに。権利を主張する相手をまちごうとる」
「うるせえ、クソジジイ」
老人はジャケットからセブンスターの箱を出した。大柄な男がライターで火をつけた。大柄な男の両手に、剣術修行のせいか分厚いタコができている。普通タコは左手のみにできるから、両刀使いかもしれない。
無遠慮に煙を吐き、老人が言った。
「先週の金曜、この駅で痴漢の冤罪事件がおきた。巻きこまれたのは幕府上層部にいるお方だ。大層ご立腹でな、濡れ衣を着せた女を探せとワシらに命令がくだった。そやつの残した連絡先は嘘だったのでな」
「あたしに関係ない」
「まあ聞け。くだらん仕事と思いながらも、ワシらは捜査をはじめた。すると興味ぶかい状況が浮かび上がった。調べがついただけでも、その女は二十以上の事件に関わっている。只者ではない。痴漢が有罪か無罪かはともかく」
「てめえが痴漢したのは事実だろうが!」
「そのとおりだ。試させてもらった。女、お前は腕がいい。それに……」
そう老人が言いかけると、隣に立つ大柄な男がテーブルに身を乗り出し、ハナの顎をつかんだ。上下左右にうごかし、あらゆる角度から顔立ちを値踏みする。
野太い声で大柄な男が言った。
「それに、顔も悪くない。薄化粧だが見れるツラだ。これなら高値で売れるだろう」
ハナは両方の手のひらを下へ向けた。はげしい痒みが走っていた。男性アレルギーのせいで、あっという間に蕁麻疹がひろがった。さっきの車内みたいに「触らせてる」ときは問題ないが、同意なく「触られる」と発症する。
ハナの苦しげな様子を見た老人が、大柄な男に言った。
「宮本、すこし外してくれ」
「お楽しみを独り占めするつもりか」
「売り物に傷はつけんよ」
「どうだか」
「御台所様から、この件は内密に進めろとお達しが出ている。大奥の内部情報を多くの耳に入れられないのでな」
「ふん」
宮本と呼ばれた男は鼻息荒く事務室を出て、大きな音を立ててドアを閉めた。
煙草の灰をタイル床に落としつつ、老人が言った。
「すまんな。あれは諸国を放浪している牢人だ。用心棒としては役立つが、無作法なのには閉口する」
「一体あたしになんの用だ」
「察しはついてるはずだ。工作員として雇いたい。断れる立場ではないのもわかるな」
「だれがてめえなんかのために」
口調は攻撃的だが、ハナは内心怯えていた。徳川幕府は、尋問や刑罰の苛酷さで悪名高い。とはいえ御庭番だかなんだか知らないが、こんな胡散臭い連中に協力するのは御免だ。できるだけ会話を引き延ばし、逃げる隙を見つけたい。
「そう強情を張るな」老人が言った。「いまの生活に満足か? 痴漢を捕まえて鬱憤を晴らしても、結局虚しいだろう」
「痴漢はゴミクズだ」
「ははっ、勇ましいな」
「クズなのはてめえも含めてだ」
「女には女の生き方がある。お前はそこから逃げている」
「説教はやめろ。なにが工作員だ。わけわかんねえ」
「任務は潜入調査だ。女しか入れない場所でな」
「大奥か? さっきから言ってる」
老人は薄気味悪い笑みを返した。吸い終わった煙草を床に捨て、あたらしい一本に自分で火をつけた。あきらかに勿体ぶっている。国家レベルの重要機密にアクセスできる身分を誇ってるらしい。
冗談じゃねえと、ハナは内心で毒づいた。
江戸城の大奥と言えば、将軍の子供を産んで育てるための機関だ。男に触られただけで蕁麻疹が出るあたしにとっちゃ、むしろ死んだ方がマシな職場だ。
狭い事務室に毒ガスを充満させつつ、老人が言った。
「大奥では派閥抗争がおきている。御台所様は心を痛めておいでだ。お前の役目は、ある側室に近づいて弱みを握ることだ」
「だれだよ」
「お雪という女だ。美貌の誉れ高いが、近頃は上様の御寵愛をいいことに、政治にまで口出しをしよる……」
老人は饒舌だった。フィクサー気取りで自惚れている。実はハナはお雪を個人的に知っており、話の内容に関心があった。しかし、逃走のチャンスはいましかない。
ハナはテーブルを蹴り上げた。老人の二本の刀が床に転がる。ハナは両手をグレーのパーカーの袖に挿し入れる。左右四本づつ、棒手裏剣を仕込んであった。
久留里流忍技【千鳥】。
八本の手裏剣が同時に老人へ襲いかかった。南総で暗躍した忍びの集団「久留里衆」がつかう忍技を、ハナは一部伝授されていた。プロではないが、その真似事くらいはできる。
老人は両腕で頭部を守った。手裏剣のほとんどがコーデュロイのジャケットを貫いた。ハナはその一本を引き抜き、老人の左目に深々と突き刺した。
タイル床で七転八倒する老人に、ハナは唾を吐きかけた。
くそったれ。尻を触られた報いにゃ不十分だが、ちょっとは気が晴れたぜ。
ハナは五感を研ぎ澄まし、ドアの方を観察した。新宿駅のコンコースの雑踏が、以前より遠ざかった気がする。おそらく宮本と呼ばれた男が、抜刀してドアの外で待ち構えている。
これは直感でしかない。でもいまは、おのれの直感しか頼れるものがない。
壁にかかるオレンジ色のケースから、ハナはAEDを取り出した。マニュアルモードに切り替えて起動する。これで心電図解析をしないでも電気ショックをあたえられる。
ドアの方からかすかな金属音が響いた。宮本がノブに手をかけたにちがいない。
ハナは電極パッドをノブに貼りつけ、放電ボタンを押した。ウッという呻き声のあとドアが開き、宮本が内側によろけてきた。宮本は抜き身の刀を杖代わりにして堪えた。憤怒の形相でハナを見上げている。
ハナは黒のニーソックスを履いた右脚を振り上げ、宮本の顔面を全力で蹴りつけた。
宮本が仰向けに倒れたとき、すでにハナはコンコースの人の波を泳いでいた。スラロームをするスキー選手の様に速い。
息を弾ませながら、ハナはつぶやいた。
さっきのあたし、御坂美琴みたいでカッコよかったんじゃね? お江戸の電撃姫って名乗っちゃおうかな。
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安堂ミキオ『はたらくすすむ』
はたらくすすむ
作者:安堂ミキオ
掲載誌:『ヤンマガサード』(講談社)2018年-
単行本:ヤンマガKC
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妻との死別と定年退職が同時期に重なった66歳の男が、
人生に手応えをもとめてなんとなくアルバイトに応募したら、
それはピンサロのボーイだったという、シルバーお仕事漫画。
主人公「長谷部進」は、まじめな性格で風俗店へ行ったことがない。
なので、客の悪口を言いまくってたのに瞬時に営業スマイルに変わるなど、
表と裏の顔をつかいわけるピンサロ嬢たちに仰天する。
掃除中、ブラックライトに照らされた床が、星空の様にきらめいた。
それは嬢たちが頬張るフリスクがこぼれたものだった。
ひっきりなしに客の相手をするので、うがいをするヒマがないから、
せめてミントの清涼感で口腔内の不快さをごまかす。
作者は女性であるらしく、理想的とは言えない環境でたくましく生きる、
若い女の子たちへの共感がテーマとなっている。
ストーリーは1話完結型で、人情オチがつく。
一番出来がいいのは、性病検査を題材にした第7話かな。
いろいろな理由で検査を嫌がる嬢たちに対し、
進は妻を失った経緯を涙ぐみながら語り、彼女らの心をうごかす。
派手だったり地味だったり、ガングロギャルだったり清楚だったり、
嬢たちは皆それぞれ個性的に描かれている。
店のナンバーワンは、冒頭の引用に出てくる関西弁の「朱美」だが、
スタイル抜群な女子大生「エレナ」も人気がある。
特に苦学生というわけでなく、遊ぶ金欲しさでたまに店に出ている様だ。
いや、作中にそういう描写はないのだけれど、
キャラクターに存在感があるので、つい背景まで想像してしまう。
カジュアルな営業形態であるピンサロは、あまり漫画映えしない。
おそらく本作は「抜き目的」につかえないだろう。
ただ物理的に近いけれど、精神的には結構遠い、その微妙な距離感が、
独特のドラマを生み出しており、読みごたえが非常にある。
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天倉ふゆ『ヒロインはじめました。』
ヒロインはじめました。
作者:天倉ふゆ
掲載誌:『デザート』(講談社)2019年-
単行本:KCデザート
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憂いをふくんだ美少女、高校1年の「周子」がスカートを穿いたまま、
キレてほかの男子に暴力をふるう先輩に、大胆なカニ挟みをしかける。
すらりとのびる脚がうつくしい。
少女漫画の第1話としては、めづらしい展開ではないだろうか。
先輩がキレていた相手は、1年の「正樹」。
天然タラシな性格で、入学早々あちこちに敵をつくっている。
周子に対してもさっそく壁ドン。
しかし周子は格闘技の達人だった。
反射的に背後をとり、バックブリーカーをきめてギブアップさせる。
そんなこんなでふたりは意気投合した。
恋愛トラブルに巻きこまれがちな正樹は、周子にボディガード役を依頼。
高校では女の子らしい生活をおくりたかった周子の方も、
イケメンのそばにいられるのは貴重な機会なので承諾する。
凛々しい周子は無表情なタイプだが、ときおり見せるテレ顔が魅力的。
初デートをえがく第4話。
ファッションに疎い周子は、自分の野暮ったい服装を恥づかしかるが、
着る人の素材のよさでオシャレにみえる、少女漫画のマジックが炸裂。
作者の美麗な描線が、個性的なヒロインを得てさらに際立つ作品だ。
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川田暁生『ロボット依存系女子のメーワクな日常』
ロボット依存系女子のメーワクな日常
作者:川田暁生
掲載誌:『少年マガジンエッジ』(講談社)2018年-
単行本:マガジンエッジコミックス
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実験都市で運用されるロボットであるアクティブ・アーマー。
通称「A.A」。
トレーラーで輸送されている途中、街中で起動する。
そのパイロットは女子高生だった。
黒髪の少女の名は「高科はがね」。
人見知りな性格で、いつもコックピットに引きこもって生活している。
操縦技術はともかく精神的に幼いはがねを支えるのが、親友の「琴葉」。
「ロボット×百合」が本作のウリで、
たとえば狭いコックピットでのいちゃいちゃは見ごたえあり。
はがねは民間の警備会社と契約し、ゴミ処理などの雑用をまかされる。
一方でテロリストの陰謀も進行しており、事件に巻き込まれることも。
大型ジェット機の暴走をとめる第2話のアクションは、手に汗握る迫力。
美少女たちのロボットアクション、なおかつ講談社の月刊誌ということで、
僕は名作『サクラブリゲイド』を連想した。
ストーリー的なフックはやや弱いが、百合に特化している点、
そして気合いのはいったメカ描写は、本作の優位性とおもう。
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渡邉ポポ『埼玉の女子高生ってどう思いますか?』2巻
埼玉の女子高生ってどう思いますか?
作者:渡邉ポポ
掲載誌:『ゴーゴーバンチ』『月刊コミックバンチ』(新潮社)2017年-
単行本:バンチコミックス
埼玉についての自虐ネタやあるあるネタで笑わせつつ、
いつの間にか読者を埼玉ファンに変える、ご当地漫画の傑作。
最新刊も魅力たっぷりだ。
アグリが神社の娘なのはわかっていたが、ついに2巻で巫女姿を披露。
巫女っぽくない容姿だけど似合っている。
その第14話は「さきたま火祭り」がテーマ。
コノハナサクヤヒメとニニギノミコトの挿話をかたることで、
産屋炎上のシーンにおいて、日本神話のエロスとタナトスが炸裂する。
東京から引っ越したばかりで埼玉をバカにしてた、小6の岬も感動。
埼玉JK屈指の名場面だ。
僕は、小鳩がしまむらへゆく1巻3話が好きだが、
残念ながら2巻にしまむらで買い物するシーンはない。
ただし「古代蓮物語」で温泉にはいる15話で、
小鳩は、妹が選んだしまむらのブラを見せびらかす。
渡邉ポポは、『よつばと!』からの影響をよく指摘される。
しかし本作では、それぞれ個性的なこだわりをもったJK同士が、
ちょっと遠慮がちに交流するときの独特の間合いが、際立っている。
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嵜山弓『坂の町』
坂の町
作者:嵜山弓
発行:KADOKAWA 2018年
レーベル:ビームコミックス
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おもに自費出版した作品をおさめた短篇集で、著者にとっては初単行本。
ジャンルは少女漫画に分類される。
年上の男への片思いをえがく表題作は、タイトルどおり坂道が、
出会いと別れとすれ違いの舞台として、人生のメタファーとなっている。
『平安な彼女』は、同棲相手が突然かぐや姫に変貌し、
恋人に無理難題をつきつける風変わりなドタバタコメディ。
平安時代へのタイムスリップ感の演出が巧みだ。
拒食症になって仕事をうしない、田舎で休養するモデルをえがく作品。
本書におさめられた短篇はどちらかといえば女性向け、
つまり女性の価値観や欲求に呼応する作品が多いが、
たとえば「死」の様な普遍的テーマにもふれている。
異常を内に孕みつつも日常でありつづける風景を、
丁寧かつ変幻自在に活写する作品群。
短篇集好きな人に自信をもっておすすめできる一冊だ。
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びみ太『田舎に帰るとやけになついた褐色ポニテショタがいる』
田舎に帰るとやけになついた褐色ポニテショタがいる
作者:びみ太
掲載サイト:『ジーンピクシブ』(ピクシブ)2018年-
単行本:MFC ジーンピクシブシリーズ
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長いタイトルがだいたいすべてを語っている作品。
大学生の「航平」は夏になると、従弟の「圭」や祖母がいる田舎へゆく。
ひとりっ子だからか、圭は航平にベタベタとなつく。
圭は体が大きくなっただけでなく、なぜか髪をのばしていた。
つい航平は、そこに女っぽさを感じてしまう。
勿論、ついてるモノはついてるので錯覚なのだが、
日焼け跡がくっきりのこる肌などを見ると、理解できなくもない。
本作はツイッターへの投稿から派生したらしい。
ゆえに瞬発力重視の作風であり、堅牢なストーリーアークは存在しない。
たとえば、圭の父母が存命かどうかなどは1巻に言及がない。
セクシャルな刺激を存分に駆使した作品といえるだろう。
作者はあとがきで、背景作画のアシスタントをしていたと語るが、
本作では田舎の風景を前面に出し、自身の強みをいかしている。
たしかに、そこかしこでハッとする様な瞬間風速を計測できる。
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