タチ『真面目ガールと青春ランジェリー』
真面目ガールと青春ランジェリー
作者:タチ
掲載誌:『コミック電撃だいおうじ』(KADOKAWA)2018年-
単行本:電撃コミックスNEXT
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高校1年の「蘭」が、下着というファッションを通じて、
未知の世界へ飛びこんでゆく物語である。
マジメさを匂わすヘアピンが、キャラデザのいいアクセントだ。
蘭はこれまで、母が買ってきたジュニア用ブラしか着けたことがない。
しかし高校入学を期に、意を決してランジェリーショップへ突撃。
応対してくれた店員の「そららさん」は、商売熱心をとおりこし、
まるで宣教師の様な口ぶりで下着の魅力を語るのだった。
口癖の「甘い考えです!」は、そららさんの蘊蓄がはじまる合図。
採寸してもらったところ、蘭のサイズは「A65」。
俗にいう貧乳だ。
しかし、そららさんが見つくろったバルコネットブラは、
自分のカラダをすてきに演出してくれる。
蘭が典型的な「貧乳キャラ」でないのが、本作のキモ。
下着は着用者の内面ちかくに寄り添い、彼女を自己肯定感でみたす。
勿論、作者お得意の百合要素もてんこ盛り。
蘭のいる試着室に闖入してきたのは、金髪ツインテのハーフ少女、
「小阪ジェラルディーン」、愛称「ジェリー」。
蘭とあわせてランジェリーコンビの誕生だ。
ジェリーには下着をコレクションする趣味がある。
意気投合したふたりは放課後、下着ファッションショーをしたり、
ランジェリーパーティをしたりしてすごす。
たがいの下着姿を真剣に見つめ合うシーンは、危険なほどエロティック。
JK同士のおしゃべりのたのしさも、作者ならでは。
そららさんの妹「うみみ」は、下着に独自のこだわりがある。
「見えないおしゃれ」と言えば聞こえはいいが、
本来下着は補正のため着用するものであり、見せびらかすなど本末転倒。
大人ぶって舞い上がっていた蘭は、正論をぶつけられ動揺する。
「キス」をテーマに、個性的な世界観を提示した『桜Trick』同様、
本作も一点突破の迫力がみなぎっており、非常におもしろい。
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柴嶺タカシ『黒のカミサマと白のアデプト』
黒のカミサマと白のアデプト
作者:柴嶺タカシ
掲載誌:『コミックアライブ』(KADOKAWA)2018年-
単行本:MFコミックス アライブシリーズ
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ごく普通の高校生「悠真」が放課後の校舎裏へゆくと、
そこに銀髪のセーラー服の少女がいた。
少女は「コード」とよばれる魔法をつかい、キツネとともに浮遊する。
彼女の名は「叶奏(かなで)」。
国の機関ではたらく魔法士である。
この世界をむしばむ瘴鬼とたたかっている。
こちらは幼なじみの「みなか」。
オカルト研究会に所属しており、胸が大きいのが特徴。
悠真を一途に慕うが、どうも相手は好意に気づいてない。
着衣でも十分魅力的なキャラデザだが、本作はサービスカットたっぷり。
触手で責められる場面まである。
ただし、とぼけた会話でわかる様に、ガチの陵辱までは至らない。
精神汚染されたみなかが嫉妬に狂い、悠真に襲いかかる。
かといって反撃もできない、スリリングなシーンだ。
褐色肌の幼女「クロ」は、悠真をサポートする神姫。
仔犬の様に無邪気に主人になつく。
本作は、柴嶺タカシのオリジナル作品としては初単行本となる。
後書きで「好きなものを色々ぶち込んだ」と述べており、
良くいえばにぎやか、悪くいえば詰めこみすぎな仕上がりだ。
それはともかく、3話扉絵の入魂の下着の描写などをみると、
描きたいものを思う存分描けるよろこびが横溢していて、すばらしい。
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カモトタツヤ『鬼のまにまに』
鬼のまにまに
作者:カモトタツヤ
掲載誌:『まんが4コマぱれっと』(一迅社)2018年-
単行本:4コマKINGSぱれっとコミックス
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19歳の大学生「総司」が、祖父が遺した土地をはじめて訪れると、
そこには古いお堂があり、ツノをはやした鬼が棲みついていた。
幼女みたいな外見の鬼の名は「あいら」。
こう見えて140歳。
総司は立ち退くよう要求するが、あいらは聞く耳もたず、
めずらしい来訪者に興味をもち、妙になついてくる。
本作は、文字どおり「鬼かわいい」をめざす4コマ漫画である。
ロリロリな鬼っ娘とお風呂にはいるなど、夢の様な生活のはじまりだ。
恋人のいない総司は、ぐいぐい攻められて当惑するが、
相手は合法ロリとはいえ罪悪感はぬぐえず、どうにか堪える。
こちらは総司とおなじ大学へかよう「ささら」。
ツノを隠してるが実は鬼っ娘で、あいらのライバルとなる。
「心を鬼にする」「勝負の鬼」「鬼に金棒」「鬼のいぬ間に洗濯」……。
鬼は日本文化の深いところに棲みついている。
そしてときにはコケティッシュに、僕たちを誘惑する。
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TALI『ナナジン』
ナナジン
作者:TALI
掲載誌:『別冊ドラゴンエイジ』(KADOKAWA)2018年-
単行本:ドラゴンコミックスエイジ
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ショートカットの女子高生「ナナ」が、墓地で祖父に挨拶をしていると、
何者かと戦闘をくりひろげる長い髪の少女がフッ飛ばされてきた。
血まみれの少女の名は「イツカ」。
ナナとは中学時代の親友だが、行き違いがあって疎遠になっていた。
イツカが誰と、そしてなぜ戦っているのかはわからない。
それでもナナは助太刀すると即断。
「ナナジン」とは七神、つまり七福神のこと。
毘沙門天などが憑依した少年少女たちによる、
命懸けのバトルロイヤルが本作のテーマだ。
ツインテだったり不良だったり、ナナジンたちのデザインが凝っている。
天真爛漫でキラキラした、ナナのたたずまいが本作のウリ。
ころころ変わる表情をながめるだけで楽しいヒロインだ。
ラブコメの要素もある。
ナナジンはたがいに殺し合うのだが、そこに恋愛感情もからむ。
イツカと堅い友情でむすばれたのは、いじめから守ったのがきっかけ。
この中学時代のエピソードにおけるナナも印象ぶかい。
作者TALIは、原作担当のタカフミと作画担当の銀子によるコンビ。
言われてみると確かに、ストーリーとデザインのそれぞれでフックを感じる。
その分、統一感は比較的弱いかもしれないが。
とにかく、百合要素ありのバトルロイヤルものとして、
江島絵理『少女決戦オルギア』ファンなどに推薦したい。
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綿桐さや『須波優子と百合な人びと』
須波優子と百合な人びと
作者:綿桐さや
発行:KADOKAWA 2019年
レーベル:MFC
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テーマは「軽率な百合」。
女子校にかよう9人(ひとりは教師)が、真剣な感情をともなわぬまま、
ひたすら無目的にいちゃいちゃする様子をえがく掌篇集。
初出はツイッターだったらしく、長さはいづれも4ページ。
主人公を明確に立て、その思考や感情や行動を読者に疑似体験させる、
リニアでクラシックな物語ではまったくない。
いちおう「須波優子」というタイトルロールは存在するが、
ぼんやりしたメガネ女子だし、あまり主人公っぽくない。
9×8で72通りの、いや3人以上で絡めば無数のカップリングの、
微妙なあじわいの差をくらべてたのしむ作品である。
「女の子9人とか覚えられないし、つまらなそう」とおもうのは早い。
本作の工夫は、各話ごとに人物相関図を掲載してること。
だれがだれだっけ状態になることは絶対ない。
たとえば25話で、楚々として上品な「帆夏」が気になったとする。
相関図を参考にし、帆夏の登場回を読み直すことになる。
そして5話でのサイコパスなふるまいを見て、あらためて戦慄するわけ。
僕のおきにいりは写真部の「怜奈」。
とぼけてる様で発言はけっこう辛辣。
百合大好きな「懸先生」に依頼された怜奈は、校内で撮影に励むが、
優子より地味な「萌歌」にカメラをむけたところ、意外な反応が。
じつは萌歌はコスプレイヤーで、反射的にポーズを決めてしまった。
ミルフィーユ的に折り重なるかわいさの層に、
ぐさりとフォークを突き刺してじっくり堪能したい一冊だ。
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マウンテンプクイチ『球詠』5巻
球詠
作者:マウンテンプクイチ
掲載誌:『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)2016年-
単行本:まんがタイムKRコミックス
モノローグの形で珠姫が野球観をかたる第25話は、非常に重要な回。
かつてバッテリーをくんだ和美が堅実なチーム戦術にとりこまれ、
打たせて取るオトナな投手に変貌したことを残念がる。
そして、現在のパートナーであるヨミへの愛着を再確認する。
あまり感情をあらわにしないシャイな性格の珠姫だが、
いやだからこそか、気迫で敵をねじふせるタイプを好むのだった。
良くも悪くも、アマチュアリズムが新越谷のフィロソフィだ。
データにもとづく戦術を採用するのは当然として、
いざというときは感情を爆発させ、おのれの力を最大限にひきだす。
団体競技ゆえキャラクター数が多すぎるのが欠点かもしれないが、
しかしだれがなんと言おうと、『球詠』はタマとヨミの物語だ。
大ピンチの場面でヨミは、未完成の秘密兵器を初披露した。
その名は「強直球」。
実態はなんの変哲もない単なるストレート。
新魔球がストレートって、ほかの野球漫画にあるだろうか?
女子が男子水準のプレーをしているというウソ以外、
技術的に戦術的にリアリズムを徹底するのが本作の特徴。
その制約のなかで、作者は知恵をしぼって話をもりあげる。
梁幽館戦でもっとも苦悩するのが、名参謀である芳乃。
こちらは部員9名、そのうち7名が1年生、しかも2名が初心者だ。
対する梁幽館は全国レベルの強豪。
采配はこの試合でも冴えてるが、地力の差でどうしても劣勢に。
そのたび自分の采配ミスだと気に病み、押し潰されそうになる。
藤井先生にまで客席から罵詈雑言が飛ぶから、つらい。
この重圧に耐えつづけるのが、芳乃のミッションなのだろう。
新越谷は彼女の頭脳がつくりあげたチームだ。
もし逃げ出したら、空中分解してしまう。
地力で劣るなら、地力を嵩上げすればいい。
新越谷ナインは試合のなかで成長してゆく。
このタッチアップは、息吹がはじめて見せた自主的判断。
芳乃と一緒にたくさん観戦してるから、戦術眼がないわけない。
それにしても走攻守、さらにはピッチングまでソツなくこなす、
マルチロールの息吹はすでになくてはならない存在だ。
白菊は、冷静に相手の守備位置をみてセーフティバント。
巨大な扇風機みたくブンブン振り回す印象のスラッガーだが、
もとは剣道日本一、むしろ駆け引きは得意中の得意。
新越谷が誇る天才バッター、中村希。
彼女はこの試合でくるしむ。
きびしく自問自答し、幼少期に植えこまれた深層心理までさかのぼり、
絶対の自信をもつ己の打撃哲学を捨てる決心をする。
そしてそれは、第10話で仕込んだ伏線の回収でもある。
なんてすごい漫画なんだ、『球詠』は!
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せうかなめ/赤松中学『チアーズ!』
チアーズ!
作画:せうかなめ
原作:赤松中学
キャラクター原案:こぶいち
掲載誌:『コミックアライブ』(KADOKAWA)2018年-
単行本:MFコミックス アライブシリーズ
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高校生のチアリーディングものである。
手前にいるツインテールの主人公「浅羽舞桜(まお)」は、
部員勧誘のためのパフォーマンスをみて興味をいだく。
人垣からニョキッと生えてくる様な、スタンツの描写があざやか。
しかし自分の高校のチア部は二名しかおらず、部員をあつめる必要が。
同学年に、ジュニア大会で優勝経験のある「川澄千愛(ちあ)」がいるが、
いまはチアを忌み嫌い、足許にあるポンポンを蹴飛ばしてしまうほど。
それでも舞桜は千愛を説得しようとする。
まだチアへの情熱を失ってないと信じて。
しかし拒絶反応は激烈だった。
千愛には姉がいて、彼女もチアリーダーだった。
非常に優秀で、最高峰であるアメリカのNFLで活躍した。
だがある事件がきっかけで、千愛は心に深い傷を負う。
こちらは、名門チームのエースである「伊蝶白亜(いちょう はくあ)」。
チアリーディングというと、にぎやかでアメリカンなイメージがあるが、
本作は繊細でたおやかな和風のテイストに特徴がある。
原作のライトノベルは、冒頭をためし読みしただけでくわしくないが、
作者はコミカライズにあたり、視覚上の工夫を凝らしている様だ。
たとえば、舞桜が側宙をきめるときのカメラワークでは、
この競技の三次元的な魅力が炸裂している。
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小鳥游ミズキ『死ぬときはまばゆく』
死ぬときはまばゆく
作者:小鳥游ミズキ
配信アプリ:『マンガUP!』(スクウェア・エニックス)2018年-
単行本:ガンガンコミックスUP!
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田舎の漁村の家族の風景。
主人公である高3の「美麗」は、うつくしい母や妹とくらべ、
自分の容姿に深刻なコンプレックスをいだいている。
ダイエットしてるのに、さっぱり痩せられない。
学校でもトラブルにまきこまれる。
教育実習生の青年に憧れる美麗が、プレゼントを渡したところ、
スクールカースト上位の女子に目をつけられ、いじめの対象に。
居場所をうしなった美麗は、引きこもりの生活におちいる。
そして美麗はある決断をする。
整形手術でコンプレックスを解消するという。
43万円でまぶたとフェイスラインと鼻をいじり、ダイエットも成功。
まるで別人と化し、大学生としてひとり暮らしをはじめる。
美麗の日常は一変する。
かわいくなったという、それだけの理由でちやほやされる。
引っ込み思案な性格も、「ウブでかわいい」と好意的に解釈される。
はじめての飲み会のあと、一目惚れした相手と一夜をともにする。
よくある「大学デビュー」の話をドラマティックに描いている。
本作の世界観はダークで、美麗の好きになった相手も闇をにじませる。
どうもサイコパスっぽい。
それはそれとして、「初体験」のあとに見た朝焼けのうつくしさは、
後戻りできない別世界へ足を踏みいれたのを、みごと表現している。
この鮮烈さは、作者の実体験にもとづくからかもしれないし、
ネームが通るまで一年半かかった苦労のおかげかもしれない。
本作は作者の初連載だそうで、完成度はあまり高くないが、
主人公に共感しながらきびしい試練を疑似体験し、
倫理観をふくめた世界観を享受する、漫画のたのしみが詰まっている。
それはたとえば、このサウナのシーンの引用からもつたわるだろう。
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イガラシユイ『先生、俺にかまわずイッてください!!』
先生、俺にかまわずイッてください!!
作者:イガラシユイ
掲載誌:『ヤングガンガン』(スクウェア・エニックス)2018年-
単行本:ヤングガンガンコミックス
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漫画制作のアシスタントをつとめる26歳の「芦田マモル」は、
あたらしい現場へ入ったとき、信じられないものを目にする。
そこで銀髪の美少女が、オナニーに夢中になりながら漫画を描いていた。
彼女の名は「真城まどか」、まだ16歳だがプロの漫画家である。
あられもない姿を初対面の人間に見られたのは、
油断したからではなく、これが通常の制作手法だから。
なにしろまどかは、オナニーしてないと絵を描けない。
よっていつもアシスタントに逃げられてしまう。
芦田は優秀なアシスタントとして覚悟をきめる。
まどかが局部をまさぐりながら絶頂に達するその隣りで、
全神経を集中させてペンを走らせる。
芸術をうみだす作業の崇高さは肉欲に優る、というテーマをくみとれる作品だ。
まどかはライブドローイングのイベントに駆り出された。
さすがに公衆の面前でオナニーはできない。
なので、リモコンつきのローターを膣中にしこみ、
芦田に操作させて快感を得ることで乗り切る。
後輩アシスタントの「筒井めぐ」もかわいい。
マジメでオクテで、いまの職場にまったく不向きだが、
一生懸命エッチなことがらについて勉強している。
めぐのショートパンツなど、垢抜けたファッションが本作の魅力。
まどかの下着もおしゃれなので、単行本でたしかめてほしい。
服もいいが、中身のカラダもきれいな線で描かれる。
そしてドタバタギャグのたのしさ。
総合力において卓抜している作品だ。
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