ほっけ様『専門学校JK』完結
専門学校JK
作者:ほっけ様
監修:代々木アニメーション学院
掲載媒体:『デンプレコミック』(KADOKAWA)2017年-
声優や漫画家などを目指し、代々木アニメーション学院でがんばる、
個性的すぎるJKたちの漫画が、ネタを使い切って(?)堂々完結。
もちろん最終第2巻もおもしろい。
まともに作品を仕上げたことのない大宮が、コミケに出展。
講師のアドバイスにもとづき、若さと愛嬌を武器にのし上がってゆく。
幼稚園児の様なメンタリティだった辻堂が、講師を誘惑しようと試みる。
オクテなアニメーター科講師にはまったく通用しないらしいが。
YOANI祭にやってきた、声優志望のななこも腹黒かわいい。
キャラをつくった痛々しい言動が、いかにもリアル。
2巻表紙を飾った本作のシンボル、訛りが抜けない声優の卵の岡山。
無口でまじめな性格のせいで溜めこんだストレスが、ついに爆発する。
最終2話は、6年経過してからの後日談。
いろいろあったJKたちは、現実社会のなかで、それぞれのポジションに落ち着く。
まだ落ち着いてない者もいる。
サブカルの現場を描きつつ、そこでの悲喜こもごもが感動をよぶ傑作だ。
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鍵空とみやき『ハッピーシュガーライフ』8巻
ハッピーシュガーライフ
作者:鍵空とみやき
掲載誌:『月刊ガンガンJOKER』(スクウェア・エニックス)2015年-
単行本:ガンガンコミックスJOKER
さとうとしおが二人で築いた楽園が崩壊。
じわじわ追い詰められ、殺人の罪まで犯し、もはや逃亡せざるをえない。
さとうは心ならずも、敵か味方かわからない「おばさん」への依存をふかめる。
案山子みたく非人間的に見えるときがあるおばさんは、
『ダークナイト』三部作のスケアクロウさながらの怖さ。
さとうは持ち前の知能を発揮し、行方をくらます計画をたてる。
ダークファンタジー風のヤンデレ百合だった本作は、犯罪小説風のあじわいに。
変装のためかぶったハンチング帽が似合っている。
本人たちなりに「現実世界」とむきあうなか、
さとうとしおの関係はさらに親密になってゆく。
風呂場でむつみあうシーンは、本作屈指のうつくしさだ。
一途に自分を慕うすみれを呼び出し、偽装用のパスポート二冊を借りる。
さとうは愛のため愛を利用する、百合のマキャベリストになる。
世界一可憐なフィルムノワール。
さとうのハードボイルドなたたずまいが鮮烈だ。
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橘オレコ『プロミス・シンデレラ』
プロミス・シンデレラ
作者:橘オレコ
掲載サイト:『裏サンデー』(小学館)2018年-
単行本:裏少年サンデーコミックス
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主人公は27歳の「早梅(はやめ)」。
専業主婦をしていたが、わけあってホームレスとなり、公園で生活している。
きっかけは、誠実そうな夫の浮気。
問いただしたら離婚を切り出されたので、家をとびだした。
そうしたら路上でスリにあい、窮地に立たされる。
しかし本作は、ホームレス生活がテーマではない。
くわしい経緯の説明は省くが、イケメンで金持ちだが性格最悪な、
男子高校生の「壱成」に目をつけられ、早梅はそのペットとなる。
たとえばゴージャスなドレスを着せられ、会員制の高級クラブに同伴したり。
ジェットコースター的に激しいアップダウンをたのしむ漫画だ。
美人だが女の武器にたよらない早梅の、媚びない言動が魅力的。
絵柄は等身高めで繊細なのに、漫画的誇張がきいている。
ひとことで言うと、これほど絵の巧い作家はそういない。
画力に関しては、引用画像で十分つたわったろう。
気になるのはストーリー・キャラクター・世界観あたりだろうが、
1巻時点では、読者の圧倒的な共感をよぶほどの深みはない。
ただ壱成は、優秀な兄へのコンプレックスに苛まれてるらしい。
文無しになったとき実家に縋らなかった早梅も、親との問題を抱えてそうだ。
また高校時代の早梅の、タバコとかナイフとか危ないたたずまいに惹かれる。
本作は作者の初連載。
単行本帯によると、ツイッターなどで人気の描き手であるらしい。
そうゆうキャリアならではの構成の荒さはあるけれども、
ときおり発揮する瞬発力に心を鷲掴みされる。
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小菊路よう/春原ロビンソン『佐伯さんは眠ってる』
佐伯さんは眠ってる
作画:小菊路よう
原作:春原ロビンソン
配信アプリ:『パルシィ』(講談社)2018年-
単行本:KCDX Palcy
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ヒロインは学級委員長の「佐伯さん」。
才色兼備で、周囲からの信頼もあついが、居眠りが大好き。
胸の谷間に定規を挿し、そこに顎を乗せてこっそり寝ている。
ところがある日、となりの席の「時宮」にバレてしまう。
『となりの関くん』などと同様、教室のすみっこを舞台とする作品だが、
「居眠り」とゆうテーマは、教師に対するレジスタンスである点でドラマチック。
佐伯さんは教師それぞれの特性を把握し、戦略を練る。
前から順に当ててゆく場合、机をすこし前へうごかし、「目覚まし時計」を仕込む。
計画が崩れる場合もある。
小テストのとき惰眠をむさぼるつもりが、教師の雑談が長引いて悶える。
睡眠好き女子はエロい。
そんなこんなで時宮と佐伯さんは、秘密を共有する仲となる。
毎日寝顔を観察されるうち、佐伯さんは心をひらいてゆくが、
つい時宮がおっぱいに関して口をすべらせ、恥をかかせる。
睡眠にこだわりのある佐伯さんは、いかに創意工夫してるかを熱く語る。
言ったあとで、男に打ち明けるべき内容でないと気づき、真っ赤になるが。
おまけページでは佐伯さんのきょうだいも登場。
ポニーテールが似合う凛とした容姿なのに、
おもしろかわいいヒロインを、存分に堪能できる佳作だ。
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コト/深見真『ライター×ライター』
ライター×ライター
作画:コト
原作:深見真
掲載誌:『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)2017年-
単行本:まんがタイムKRコミックス
アニメ脚本家の世界をえがく漫画である。
『ゆるゆり』や『ベルセルク』などを手がけた深見真が原作なので、
原稿用紙の使い方から、この業界の基礎知識をまなべる。
主人公は18歳の「橋本カエデ」。
高校在学中にデビューし、その勢いで熊本から上京したが、
デビュー作は酷評されて自信喪失、いまはコスプレ喫茶で働いている。
デビュー作でお世話になったプロデューサーから、
23歳の人気脚本家「十文字ユキカ」を紹介される。
カエデは藁にもすがる思いで、住み込みのアシスタントとなる。
アニメファンなら、業界話を興味ぶかく読めるだろう。
原作をめちゃくちゃにされた経験のあるラノベ作家に嫌われたり。
予算やスケジュールの都合で、どうしても原作を改変せざるをえない場合がある。
そんなとき脚本家は「原作レイプ」などと言われ、批判の矢面に立たされがち。
僕も安易に叩いてたかもしれないと、読んでて反省した。
体系的に脚本術を学んだことのないカエデは、
「三幕構成」などの作法を一からじわじわ吸収してゆく。
ストーリーをつむぐ女の子のストーリーが、かわいくさわやかに展開される。
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櫻井リヤ『瀬戸際女優!白石さん』
瀬戸際女優!白石さん
作者:櫻井リヤ
掲載誌:『まんがタイム』(芳文社)2017年-
単行本:まんがタイムコミックス
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35歳独身の女優、「白石薫」を主人公とする4コマ漫画。
「清純派」と称されるが、実は元暴走族のリーダーで、そのギャップが笑える。
プライベートでは、イケメン俳優に食事に誘われることも。
勉強は苦手な薫だが、元ヤンなので妙に漢字にくわしかったり。
シングルマザー役で出演したドラマで、子役の少年とコンビをくむ。
幼い外見に似合わない、現実的なキャリアプランを聞いて唖然。
撮影現場で手を焼かされるのは、動物の相手をすること。
しかし薫は恐怖とゆう本能に訴え、一瞬でおとなしくさせる。
女優としてトウが立っている薫の、年齢いじりネタが多い。
華やかな世界を描いているが、バランスはとれている。
姉御肌なところとか、事故死した恋人に未練たらたらとか、エピソードも魅力的。
今年にはいって休刊が相次ぎ、母屋を「きらら系」に乗っ取られそうな勢いだが、
なかなかどうして、人情味ゆたかな「タイム系」も捨てがたい。
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かろちー/原田重光『女神のスプリンター』
女神のスプリンター
作画:かろちー
原作:原田重光
掲載誌:『月刊ヤングマガジン』(講談社)2017年-
単行本:ヤンマガKC
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高校生である主人公の「高瀬浩太」は、義理の姉「恭子」の家に下宿し、
陸上競技のコーチをしてもらうことになる。
兄は海外へ単身赴任中なので、ふたり暮らしだ。
大学でスポーツ科学を研究する恭子は、独自の理論をもつ。
そのテーマは「性欲の管理」。
射精を9日に1回に制限し、テストステロン値を維持するとゆうもの。
それは高校生の浩太には酷なトレーニング法だ。
恭子は「絶対服従」を求めるかわりに、一線を超えない程度に射精をてつだう。
成年漫画出身のかろちーの技巧がさえわたる。
本気なのか、年下の男をもてあそんで楽しんでるのか、判然としないが、
計測したデータをみて目をキラキラ輝かせるあたり、研究熱心なのは確か。
浩太を24時間監視するとゆう名目で、恭子はおなじベッドで寝ることにする。
うっとりして、かつ意地悪な表情は、支配欲に駆られての行動にみえる。
浩太は、優秀な陸上選手だった兄に引け目を感じており、
その妻である恭子をモノにしたいとゆう動機がある。
一方、兄が陸上のキャリアを捨てて海外へ逃げた原因は、
恭子の「性欲の管理」理論にあるらしい。
とにかく、気合いのはいった女体の描写に唸らされる。
バカな話を大まじめに語る、値段分の価値は絶対ある作品だ。
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米田和佐『悪役王子は恋ができない』
悪役王子は恋ができない
作者:米田和佐
掲載誌:『月刊ComicREX』(一迅社)2018年-
単行本:REXコミックス
子役出身の15歳で、校内一の美貌をほこる「若菜」を、
どうにか口説き落とすのを目標とするラブコメ。
主人公はおなじく15歳の「夜城」。
イケメンで成績優秀で家が大金持ちなのでモテる。
ただしはべらせるのはギャルばかりなので、さほど羨ましくない。
父は大企業の経営者で、兄ふたりも超エリート。
その重圧で、夜城は自分がつまらない存在だと感じている。
だから夜城が若菜に執着するのは、純粋な恋心ではなく、
美少女とゆうトロフィーを獲得し、箔をつけたいから。
子役経験のある若菜はそんな葛藤を察し、強がる夜城の内面に興味をもつ。
米田和佐は、女の子の描写をある意味すでに極めており、
先輩にみえない先輩である「茉莉」など、期待どおりに可愛い。
放課後にニンテンドースイッチを、テーブルモードでイヤホンを挿してあそぶなど、
小道具としてのゲームの手慣れたあつかいは、『だんちがい』をおもわせる。
本作は、非4コマとしては初めてのオリジナル連載。
『えこぱん』と『だんちがい』で力をたくわえ、
ついに狭いコマからとびだした美少女たちを堪能できる。
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佐々木ミノル『中卒労働者から始める高校生活』10巻
中卒労働者から始める高校生活
作者:佐々木ミノル
掲載誌:『コミックヘヴン』(日本文芸社)2012年-
単行本:ニチブンコミックス
「グレーでいい事っていっぱいあるんだよ!!」とあかりが言う。
あえて白黒はっきりさせないのも、世間を渡るための知恵。
空気の読めなさに定評ある莉央は、妙に得心する。
運動会についての会議で、莉央が勇気をだして発言。
自分も活躍できそうな綱引きを推す。
本巻の最高の萌えポイントだ。
恋人であるまことと自宅でイチャイチャ。
言葉数はすくないが、目力の強さで雄辯にうったえる。
長期連載のなかで、キャラの個性が際立ってきている。
遺影とゆう形で、まことと真彩の亡母の姿があらわれる。
いよいよ次巻から、兄妹の生い立ちが語られるらしい。
どちらかと言えば脇役だけど、真彩は重要なキャラクターだ。
本巻では、女1男2の「ドリカム状態」(たとえが古い)に胸をときめかす。
素直にうれしいらしい。
青春の光と影に挟まれたモヤモヤした空間を、手探りですすんでゆく。
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