大堀ユタカ『花降り宿のやどかり乙女』

 

 

花降り宿のやどかり乙女

 

作者:大堀ユタカ

掲載誌:『まんがタイムきららキャラット』(芳文社)2017年‐

単行本:まんがタイムKRコミックス

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温泉街を舞台とした4コマ漫画である。

ちなみに上の引用画像は、きらら単行本お約束のカラーページ。

 

主人公は「千歳六花」。

さびれた旅館の娘で、高校入学を機に、老舗で仲居の修業をはじめる。

新生活への期待でつぶらな瞳はかがやく。

 

 

 

 

はじめてお座敷へ上がるときのドキドキ感など、よく描けている。

ヒロインがくせっ毛なところも造形的な魅力がある。

 

 

 

 

大堀ユタカは、前に『re:teen』を当ブログでとりあげた。

メカやアクションもいける画力の高い作家だが、それはそれとして、

ぴちぴちと弾ける様な女の子のかわいさが印象的。

着物だけでなく、学校制服でも目をたのしませる。

 

 

 

 

電撃コミックスの『re:teen』ではロリータエロスが炸裂していたが、

きらら系の本作ではレーベルカラーを反映し、そちら方面はおとなしめ。

せっかくの題材をいかせてないのは正直不満だ。

 

 

 

 

初の4コマ連載だとかで、読んでいて窮屈さは否めない。

現役トップクラスの画力の無駄遣いと言えなくもない。

そして掟破りの見開きページで、作者はフラストレーションを解消するが、

下にエクスキューズ的な4コマがあり、いかにも2018年的な作品だとおもう。





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テーマ : 4コマ漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: きらら系コミック 

仲谷鳰『やがて君になる』5巻 水族館デート

 

 

やがて君になる

 

作者:仲谷鳰

掲載誌:『月刊コミック電撃大王』(KADOKAWA)2015年-

単行本:電撃コミックスNEXT

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5巻所収の第24話は、あなめづらしや、侑が燈子を誘っての水族館デート。

人間関係では冷めてるくせに、クラゲをみると目をかがやかす。

 

ラブコメや百合において、デートシーンは最大の見せ場。

アカデミックな要素のある水族館は、世界観をどことなくハイブラウに演出する。

 

 

 

 

クラゲとメンダコをまちがえた燈子に怒ったり、

ふだん可愛げのない侑がやけに可愛らしい。

 

さいきんダイオウグソクムシとか、海洋生物が女子の人気をあつめている。

『スプラトゥーン』がウケてるのもその一環だろう。

 

 

 

 

ウェットな海洋生物は、性的な匂いをただよわす。

イルカショーの最前列でふたりがびしょ濡れになる場面は、

仲谷の淡白で乾いた絵柄においては、もっともエロティックなもの。

 

 

 

 

トンネル型水槽の描写は圧巻。

仲谷はカラーが非常にうまいが、モノクロでも深い「色彩」をほどこす。

閉塞感と開放感、不安と希望がからみあい、消失点にすいこまれる。

 

 

 

 

すでに本作は、ストーリーをたのしむ作品ではなくなっている。

葛藤がはっきりしないし、成功や挫折や、主人公の成長はえがかれない。

セリフつきの画集みたいなものだ。

 

それでもこの水族館デートは、可憐で繊細なのに、やけにひんやりとした、

仲谷の作風にぴったりで、読んでてため息が出てしまう。





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テーマ : 百合漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合 

鬼八頭かかし『たとえ灰になっても』4巻

 

 

たとえ灰になっても

 

作者:鬼八頭かかし

掲載誌:『ヤングガンガン』(スクウェア・エニックス)2016年-

単行本:ガンガンコミックス

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「思考型鬼ごっこ」篇も佳境である。

プレイヤーは、がむしゃらに追いつ追われつを繰り広げるのではなく、

辯舌を駆使し、命懸けのゲームでのサバイバルをはかる。

 

 

 

 

「麗奈」と「姫蘭」の激突が、4巻のおたのしみ。

特に後者の壊れっぷりは見ものだ。

しかし、主人公「ユキ」が傍観者の立場におかれたせいで、

丁半ダウト篇とくらべ、感情移入しづらくなったのは否めない。

 

主人公をはっきりさせるのがストーリーの要だ。

たとえば僕は、さいきん『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』をみたが、

有象無象があっちこっちでウロチョロする、ダメな脚本の典型だった。

むろんスターウォーズは、40年の歴史と、世界規模のファンのコミュニティと、

たっぷりの時間と予算がある、一種のお祭りだからあれで許されるのだろうが。

 

 

 

 

ただし、サブプロットそれ自体はあじわいぶかい。

31・2話は、自己犠牲的に麗奈をたすける「ルセット」の回想シーンが中心。

 

 

 

 

カニバリズムが描写される。

これ以上強い刺激はないと言えるテーマだ。

 

露悪的な表現と、かわいたユーモアと、

可憐な絵柄が渾然一体となった、特異な世界観を堪能できる。

 

 

 

 

「本名を呼ばれたら即死亡」とゆう風変わりなルールも、ここで効を発する。

寄り道したのも納得できるエピソードの完成度だ。

やはり本作はすばらしい。





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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

コナリミサト『凪のお暇』3巻

 

 

凪のお暇

 

作者:コナリミサト

掲載誌:『エレガンスイブ』(秋田書店)2016年-

単行本:A.L.C.DX

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『凪のお暇』の特色は世界観だ。

レディコミ誌連載だが、恋愛やセックスの比重はひくく、題材に広がりがある。

広すぎるくらい。

 

3巻では、凪を不幸にした元カレ・慎二の実家を訪問したことが回想される。

お母さんはキレイで天然キャラで、みな仲がよく、

わざとらしさは若干感じるけれど、理想的な家族にみえた。

 

 

 

 

ほかの登場人物とおなじく慎二の家族も、心に空洞をかかえている。

作者はそこへ容赦なく手をつっこみ、ガリガリかきむしる。

あれほど読者のヘイトをあつめた慎二が、主人公におもえる瞬間すらある。

 

 

 

 

本作の重要テーマのひとつは家族。

3巻でいよいよ凪の母親が登場する。

北海道のトウモロコシ畑ではたらいているなんて、

ドロップアウト前の凪のイメージからかけ離れており、衝撃的。

 

 

 

 

凪と母親の外見は、髪質以外は似ている。

外ヅラのよさも同様。

ただ母親は支配欲がつよく、電話で娘をねちっこく責める。

凪が絵に描いた様な優等生となり、結局ポキッと折れたのも納得。

 

 

 

 

イベントオーガナイザーだかなんだかをしている、

うさんくさいお隣さんのゴンと、レディコミらしくことにおよぶ。

28年の人生で一番の快楽で、凪は身心ともに満たされる。

 

 

 

 

ところが余韻にひたりつつ振り返ると、ゴンはソシャゲをしていた。

日常と「背中合わせ」の虚無感が、ぱっくり口をあけて主人公と読者をのみこむ。

 

 

 

 

このあまりに世知辛い世の中をいきぬくための「節約術」も健在。

パーカーを即席のバッグにし、図書館に本を返却後、

着て帰ってくるなんて窮極のテクニックも披露される。





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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

『群狼のプリンセス』 第8章「枯山水」


登場人物・あらすじ(準備中)


全篇を読む(準備中)






 千駄ヶ谷のアカツキセキュリティ本部は、禅寺を改修した建物だ。敷地の左側にある道場の前に、石庭がつくられている。石や砂で自然の風景をあらわす、いわゆる枯山水様式だ。

 ジュンは庭の奥で、木製の熊手をひく。砂紋をととのえると同時に、足跡を消す。蛇行しながら縁側へむかう。若手隊員が持ち回りで石庭を手入れしており、隊長のジュンも例外でない。きょうはミカにやり方を教える予定だったが逃げられた。

 一番高い石は「主石」と呼ばれ、その山から水が流れ出しているとみなす。砂紋には流れ紋・さざ波紋・渦巻紋など、さまざまな種類があり、それらを使い分けて繊細な表現をおこなう。

 正直アホらしい、とジュンはおもう。

 こんなの公園の砂場とおなじだ。若手隊員はみな当番を嫌がっている。別に高尚なものではない。

 ジュンは周囲を見回す。まだ午前八時半。隊務の前に父の見舞いをするため、早めに出社している。道場に人影はない。ズルをするチャンスだ。

 ジュンは途中で石に乗り、手をつかって足跡を消す。熊手を逆さまに持ち、柄を庭に突き立て、棒高跳びの要領でほかの石へ跳びうつる。さらに跳んで縁側へたどりつく。作業終了。

 いくつか穴が開いてるが、バレやしない。

「猿みたいに身軽だな」

 右側から声がした。

 おどろいたジュンがふりむくと、道着をきた日野源三が縁側であぐらをかいている。

 ジュンが叫ぶ。「し、師匠!」

「庭の手入れは面倒か」

「そりゃまあ」

「なら久しぶりに俺がやろう」

「すんません、やり直します」




 日野の指導をうけつつ、ジュンは枯山水の手入れをおわらせる。熊手を片づけてから縁側へもどる。

 目を細めて皺をつくり、日野が言う。

「御苦労。みちがえるほどの絶景になったな」

「うーん」

「わからんか」

「子供の砂遊びとおなじでは」

「水のないところに水を見る、幽玄美の世界。高度な文化だろう」

「枯山水って誰が考えたんですか。水が見たいなら、池をつくればいいのに」

「室町後期、応仁の乱で京都は荒れ果てた。庭に水を引くなんて贅沢はできない。そこで知恵をしぼったのがこれさ」

「なるほど。それなら納得」

 ジュンは日野の隣に腰をおろす。ビニール袋から、駅前のコンビニで買ったツナサンドをだす。

 サンドイッチを差し出し、ジュンが言う。

「師匠もどうぞ」

「いただこう」

「室町時代の後期って、戦国時代ですよね。パパが戦国オタクだから、あたしも興味ある」

「あいつは昔からそうだ」

「戦国時代って、お城がいまのコンビニと同じくらいあったって本当ですか」

「四、五万はあったと言われてるな」

「想像するとワクワクする」

「民衆はたまったものではないが」

「パパは現代は乱世だと言ってます。下剋上の時代だと」

「どこまで本気なのやら」

「おかしいですか」

「暁は口が達者だからな。お嬢は信じるのか」

「どうだろ。似てるところもあるし、似てないところもあると思う」

「それが真実だ」




 サンドイッチとおにぎり三個をたいらげ満腹になったジュンは、縁側で仰向けに寝そべる。遠い雲を見上げながら、日野に尋ねる。

「警察にいたころのパパはどんな感じでしたか」

「直属の部下だった時期はみじかい。一年に満たないか。生活安全課にいた」

「生活安全課?」

「ひらたく言えば売春の取り締まりだ」

「へえ、おもしろそう!」

 ジュンはがばと身をおこす。

「とんでもない。ただひたすら不愉快な仕事だ。それでも暁は熱心だったが」

「わかる。パパはいつも全力だもん」

「当時は公衆便所で売春をするのが流行っていた。ラブホテルをつかうとヤクザがうるさいから」

「ふむふむ」

「暁は、駅のトイレの個室を片っ端からこじ開けて、摘発していった。そしたら中で署長が用を足していた。あとで俺が大目玉をくらった」

「まさに尻拭いですね」

「笑いごとではない。とにかく言うことを聞かないし、あつかいづらい部下だった」

「社長としてのパパは?」

「いい上司なのだろうよ。俺はやりたいことをやって、高給をもらえてるのだから」

「昔と今と、どっちが楽しいですか」

「警官ほど嫌な稼業はないとおもっていた」

「はあ」

「人間の醜さを毎日見せつけられたら、誰でもうんざりする。でも今は、あのころが懐かしい」

「やりがいがあった?」

「誰かがやらねばならない仕事だからな」

 苦虫を噛みつぶす様な顔で、日野がつぶやく。昔も今も、楽しい日々を送れてないらしい。

「ママの若いころは知ってます?」

「仲人だから当然知っている」

「やっぱモテましたか」

「洋子さんと個人的な付き合いはない。暁に聞け」

「照れくさいのか、あんま話してくれないんですよ」

「そうか」

 日野は、うつくしく整った石庭を見やる。

 道場に五番隊の隊員があつまりだす。稽古のはじまる時間だ。

 ジュンは散らばったゴミをかたづけ、隊務へもどる。




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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

吉沢雅『クロユリ学園 大奥学科』

 

 

クロユリ学園 大奥学科

 

作者:吉沢雅

掲載誌:『アワーズGH』(少年画報社)2017年-

単行本:YKコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

主人公は新高1の「水無月美雨」。

勉強はできないが、なぜか超名門の「黒百合学園」に合格した。

まわりはお嬢さまばかりで、なじめない。

 

 

 

 

美雨はストレスをためこみながらも、適応しようと努力する。

ヒロインの過剰な感情表現がみどころ。

 

 

 

 

美雨は連日、精神的な攻撃をうけつづける。

ただしこれはイジメではない。

なんの変哲もない庶民なのに、スクールカーストの上位12名による、

生き残りをかけてのバトルロイヤルに巻きこまれた。

 

 

 

 

美雨に特別な能力はない。

育ちが悪いからと自分をみくだす女たちと正面からむきあい、

ひとりひとりの心をひらかせてゆく。

 

太めのくっきりした描線が魅力的だ。

 

 

 

 

ライバルにはさまざまなタイプがおり、上級生の「葉月梢」などは、

指と道具で絶頂へみちびくテクニックをもちい、じわじわ美雨にせまる。

 

 

 

 

本作が初単行本だそうで、あちこち荒い部分はあるけれど、

表情や動きや構図など、絵面のはなやかさは注目に値する。





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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合 

2018年冬アニメ(OPを中心に)

 

 

『citrus』はサブロウタの百合漫画が原作で、アニメ自体がひとつの事件だ。

義理の姉妹の、複雑ではげしい恋愛感情をえがく。

闊達な竹達彩奈と、なぜか百合姫作品に縁がある津田美波の、

緊迫感と親和性を両立させたやりとりが水際立っている。

 

 

 

 

親の再婚がどうとか、ストーリーは荒唐無稽だが、

アニメ版はいまのところ忠実に原作をなぞっている。

カメラワークや声優の演技により、『citrus』の時空が現出するのに感動した。

 

 

 

 

EDでは、サブロウタのイラストをつかっている。

原作のタッチを活かすとゆう宣言だろう。

キャラデザなどでアニメに最適化した変更をほどこすのはよくあるし、

決して間違いではないが、本作はその道をえらばない。

芽衣の憂いをふくんだうつくしさは、見ていてため息がでるほど。

 

 

 

 

OPテーマはnano.RIPEが担当。

ナイフの様にするどく、それでいてエモーショナルな楽曲を提供している。

尖っていて取り扱いは要注意だけど、時代の先端にふれられるアニメだ。

 

 

 

 

『三ツ星カラーズ』は、カツヲが『コミック電撃大王』に連載する漫画のアニメ化。

女子小学生3人からなるグループが、わちゃわちゃ大騒ぎしながら、

地元である上野の街におこる事件を解決する。

 

 

 

 

本記事でとりあげる4作品のOPでは、楽曲の質が一番高いかもしれない。

サビの部分のコーラスなどヘッドホンで聞いていると、

畑亜貴による歌詞もあいまって、かるくトリップできる。

 

 

 

 

僕の好みから言うと、話のテンポがやや物足りない(シリーズ構成:ヤスカワショウゴ)

でも、丹念にロケハンしたであろう上野の風景などはアニメむきの題材で、

見ていてたのしい作品にはちがいない。

 

 

 

 

『スロウスタート』は篤見唯子原作

『まんがタイムきらら』連載の4コマ漫画だ。

 

 

 

 

OPテーマの作詞はベテランの岩里祐穂。

「ポップコーンみたいにね めざめてく細胞」なんて、

キラーフレーズがとびだす冒頭からゴキゲン。

 

 

 

 

主要キャストは、近藤玲奈・伊藤彩沙・嶺内ともみ・長縄まりあと若手をそろえる。

近藤は18歳だし、嶺内は新人にちかい。

しかしこれがまあ、ぴったしの配役なのだ!

原作を読むとき脳内再生されていた音声が、テレビから流れてきて仰天。

音響監督は明田川仁だが、いったいどうゆう秘術を駆使してるのか。

 

 

 

 

きらら系アニメはOPがすべて、みたいなところがある。

パワーポップ的なイントロに、流麗なストリングが重なり、画面に桜吹雪が舞い、

そしてサビの「ne!ne!ne!」でキャスティングの妙を存分にしめす。

本篇もよいが、このOPはまさしく「きららポップ」の完成形だ。

 

 

 

 

『刀使ノ巫女』は、Studio五組制作のオリジナルアニメ。

刀をふるって戦う少女たちの物語だ。

 

 

 

 

Studio五組はゴンゾから独立した会社で、

かつて『ストライクウィッチーズ』に関わっていたそうだ。

ストパンファンの心をくすぐるOPになってるし、

チャンバラの動きのよさは『織田信奈の野望』を髣髴させる。

 

 

 

 

女の子の横並びとか、「日本刀×JK」とかの絵に、僕はよわい。

先鋭的だったり誘惑的だったり、革新的だったり迎合的だったりする、

深夜アニメのもののふたちが、あらたな時代へ斬りこんでゆく。



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テーマ : アニメ
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合  きらら系コミック 

ボマーン『魔法少女は笑わない』

 

 

魔法少女は笑わない

 

作者:ボマーン

発行:双葉社 2018年

レーベル:アクションコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

魔法少女を題材とする、1巻完結の4コマ漫画である。

美少女たちは超常的なパワーで妖獣とたたかう。

 

 

 

 

主人公はポニーテールの「鬼道イオリ」。

彼女の魔力は、ふだん笑顔をつくることで充填される。

しかし人前で笑うのが苦手で、活動に支障をきたしている。

 

 

 

 

お約束のマスコットキャラは、フクロウと自称する「ホー助」。

イオリの相棒である「エミ」もまじえ、ドタバタの日常がえがかれる。

 

 

 

 

ボマーンは4コマを中心に12冊の単行本がある。

どちらかと言えばギャグよりの作風らしいが、萌え4コマとしても十分機能する。

マイペースなお嬢さま「ノドカ」もいいキャラだ。

 

 

 

 

一方で『魔法少女まどか☆マギカ』に作者はいれこんでるらしく、

本作はまどマギへの真剣なオマージュでもある。

4コマとしてはストーリードリブン傾向がつよく、非日常が日常を侵蝕してゆく。

 

 

 

 

ストーリーは終盤に加速する。

イオリが笑うのが苦手だった理由があきらかに。

記憶をめぐるどんでん返しに胸をゆすぶられる。

 

紙幅こそ130ページにすぎないが、1クールのアニメにひとしい読み応え。

これは傑作だ。





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テーマ : 4コマ漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 萌え4コマ 

『群狼のプリンセス』 第7章「習志野駐屯地」


登場人物・あらすじ(準備中)


全篇を読む(準備中)






 グレーのメルセデスが、警視庁本部庁舎へむかい外堀通りを走る。アカツキセキュリティの社用車だ。後部座席にジュンが、教授と一緒に座る。頬杖をつき、赤坂御用地の白壁をながめる。車内の空気は張りつめている。教授との確執のせいとゆうより、運転手の存在が問題だった。

 ハンドルをにぎるのはミカ・トーレス。フィリピン出身の十六歳。ダンの妹だ。短い髪を金色に染めている。幹部のだれも入社をみとめてないはずだが、勝手にアカツキの制服を着ている。十六歳でもフィリピンは普通自動車免許を取れるのか、そしてそれが日本で通用するのか、ジュンは知らない。鼻歌まじりで運転しているから、とりあえず任せている。

 教授が気まづい沈黙をやぶる。

「あの娘をいれたのはお嬢か」

「ちがう」

「採用に関しては俺の裁可が必要だ。いくら非常時でも、最低限のルールは守ってくれ」

「だからちがうと言ってるでしょ。チャンコに運転たのんだら、なぜかあのコが来た。あたしだってきょう初めて会った」

「何者なんだ」

「知らんちゅうの。ダンの妹ってことしか。あとフィリピンの棒術がつかえるらしい」

「女は雇わないぞ。お嬢は特例だ」

「本人に言ってよ」

 メルセデスが赤信号で停まる。ミカが後部座席を振り返る。二重まぶたで、目鼻立ちがくっきりしている。

 鼻にかかった声で、ミカが教授に言う。

「そこの暁ジュンが入社を許可した。問題ない」

 ジュンが言う。「許可してねえよ」

「ダンがスカイプで教えてくれた。暁ジュンが日本に来いと言ったと。ダンは正直者。だからミカは信じて来た。いまさら帰れない」

「考えておくと言っただけだ」

「暁ジュンは嘘つき。ミカが一番隊のリーダーになる。ミカの方が強い」

「図に乗るなよ。お前就労ビザとかもってんの?」

 走り出していたメルセデスが路肩に停まる。ミカはサイドブレーキを引き、車から降りる。

 ジュンと教授は顔を見合わせる。ジュンは運転できない。ペーパードライバーの教授は、高級車をうごかすのは気がひける。このままでは立ち往生だ。ジュンは毒づきながら降車する。

 スキニーデニムを穿いたミカが、車道を逆向きに歩く。身長は百六十センチほどで、ジュンよりひとまわり小さい。右手に木の棒を隠し持ってるのに、ジュンは気づく。不意打ちするつもりだろう。ジュンも特殊警棒を手にする。

 案の定、振り向きざまにミカがスティックを突き出す。そして連打する。ジュンは特殊警棒で受ける。乾いた音が車道に響きわたる。通りすぎる車列のなかには、クラクションを鳴らすものもある。

 ジュンは舌を巻く。

 ミカの打撃は異様に速い。受けたとおもったら次が、そしてその次がくる。自分がスピードで押されるなんて、記憶にない。

 カーボンスチール製の特殊警棒は四百グラムあり、軽い木の棒に手数で劣るのはしかたない。しかし防戦一方になるとは予想外だ。ミカは複雑なステップを踏みつつ、ジュンの膝を打ったり、みぞおちを突いたりする。洗練された技術だ。

 ミカが左足を一歩引く。バックハンドに構え、するどくジュンの顔を突く。受けは間に合わない。ジュンは左手を右目の前にかざす。手のひらにスティックの先端が軽く当たる。寸止めだ。たぶん。

 ジュンは口笛を鳴らし、つぶやく。

「やるじゃん」

「ミカの方が強いと思い知ったか」

「さあね。でもエスクリマもあなどれないな」

「フィリピンはマニー・パッキャオを生んだ国。格闘技がすごく盛ん」

「ああ、六階級制覇したボクサーね」

「フィリピン人は侵略者であるスペイン人を撃退した。戦士の血が流れてる。日本人よりずっと強い」

「へえ」

 たがいの汗の匂いを嗅げるほど密着した状態から、ミカは身を離す。スティックをスキニーデニムの背中の側に挿す。凛々しい少女剣士の風情だ。

 こいつは即戦力になりそうだと、ジュンは指揮官として興味をもつ。

「なあ」ジュンが尋ねる。「ミカはなんでアカツキに入ろうとおもったの」

「ダンがいるからだ」

「ウチの仕事は危険だよ。お給料はいいけど」

「関係ない。ミカはダンを見張りにきた」

「は?」

「ダンはスカイプでいつもお前のことを話す。お前はダンをたぶらかしている」

「いやいや、それはない」

「ダンはハンサム。すごくモテる。でもフィリピン人と結婚しなきゃダメ。お前なんかに渡さない」

 両の拳を突き上げ、ミカが熱辯をふるう。

 ジュンはひとりごつ。

 感情が先走って空回りする、この感じ。なんだか親近感がある。

 あたしの同類だ。

 年下で整った顔立ちのミカは、男ウケのよさそうなスタイルでもあり、仲間にするのをためらっていた。でもこの調子なら対抗馬にならない。

 採用決定。




 中型輸送機のC‐1がジェットエンジンを轟かせ、薄墨色の空を切り裂く。数百メートル上空で後部の貨物ドアから、つぎつぎ空挺団員が飛び降り、パラシュートをひらく。陸上自衛隊の第1空挺団が、千葉県の習志野駐屯地で降下訓練をおこなっている。

 ジュンは地上の煉瓦塀の前に立ち、苛立たしげに髪を掻きむしる。正式採用されたミカや、クビをまぬがれたチャラ男をふくむ一番隊十名が、駐屯地の正門前に勢揃いしている。ヲタはスマートフォンでゲームをする。

 ほかに、警視庁と千葉県警から派遣された八名の警官が、バリケードを築いている。89式小銃を装備した自衛官が、内側からそれを白眼視する。一触即発の緊張した雰囲気だ。

 アカツキセキュリティの実行部隊は、警視庁が音頭をとる対テロ作戦に駆り出された。公安の捜査によって炙り出された、官庁や与党やマスコミに巣食う般若党の同調者を、強制的に排除するのが目的。警察権力による一種のクーデターだ。

 ジュンは首をボキボキ鳴らす。

 損な役回りだ。一番隊がここに配置されたのは、あきらかに教授による嫌がらせだ。

 駐屯地の自衛隊員は怒っている。武装した警察官と警備員に、縄張りを荒らされてるのだから当然だ。なのに、こちらの味方が十八名しかいないのは心許ない。しかもアカツキの十名は火器を装備してない。自衛隊が暴発したら虐殺される。

 ジェットエンジンの残響を聞きながら、ジュンは空を見上げる。父ならこの状況に、どう対処するのか考えている。多分、身の危険を感じたら即逃げるだろう。自分もそうするつもりだ。

 黒の三菱アウトランダーが、バリケードの前に停まる。警視庁の警部補が近寄って事情を説明する。会話は次第に白熱し、口論となる。迷彩服を着た五十歳前後の男が、運転していた車から降りる。警衛をつとめる陸士がしゃちほこばって敬礼する。

 今回の作戦のターゲットである、林剣介一等陸佐だ。身長は百八十センチメートル台後半で、尋常でなく痩せている。顔など、皮膚が骨に貼りついてる感じだ。ただ身のこなしは力強く、きびしく鍛錬した肉体とわかる。

 重低音で林一佐が言う。

「バリケードをどかせてくれ。私は仕事がある」

「ですから」警部補が答える。「今日のところはお引き取りねがいます。本作戦は、警視総監がじきじきに指揮を取っており……」

「くどい。非があると言うならこの場で逮捕しろ」

「ことを荒立てるつもりはありません」

「いま私は寸鉄も帯びてない。撃ちたければ撃てばよい。腰に提げてるそのS&Wは飾りか?」

「一佐。言葉を慎んでいただきたい」

「信義のため死ぬなら、国士にとり本望である」

 林は右拳を警部補の腹へ叩きこむ。ボクシングをやっていたのか、目にとまらぬ一撃だ。警部補は無言で崩れ落ちる。同僚を倒された警官七名が、S&Wを抜く。口々に警告を叫ぶ。

 林は自衛官としての活動とは別に、政官財の有志からなる「グループ1905」とゆう組織に属している。大日本帝国憲法を復活させ、日本を明治時代の体制へもどそうと主張する政治団体だ。人権を軽視する思想が般若党と似通っており、公安によってマークされていた。

 ツイッターやフェイスブックなどのSNSで、林はひろい支持をあつめている。昨年、埼玉に住む中学二年生の男子三名が、林間で女子小学生を強姦して殺すとゆう痛ましい事件がおきた。林は彼らを死刑にせよと説いた。それだけでなく、もし死刑判決がくだされなければ、隷下の特殊部隊「ブレイド」をうごかして制裁をおこなうと宣言した。沸騰する輿論におされ、裁判所はまったく異例の、法をねじまげた判決をくだした。

 ズダーン!

 銃声が響いた。

 ジュンは駐屯地の内側をふりむく。自衛官が89式小銃を真上にむけて掲げている。ほかに十数名がならび、雑多な種類のアサルトライフルを肩付けして構える。ブレイド隊員だろう。

 警官の四名がS&Wを構えて内側をむく。のこりの三名は照準を林にあわせたまま。

 内戦が勃発しようとしている。

 ジュンは一番隊の顔色をうかがう。ミカが昂奮しており、鼻息が荒い。はやくも木製のスティックを握りしめている。ジュンは横からスティックを奪う。

 ダンに棒を渡し、ジュンが言う。

「妹から目を離すなよ」

「オーケイ」

 三挺の拳銃の的になっている林に、ジュンは大股でちかづく。微笑をうかべ会釈し、話しかける。

「あ、どもども。アカツキセキュリティの者です」

 林が答える。「知らんな」

「警視庁と提携してる警備会社です」

「失せろ。警備屋ごときに用はない」

「言われずとも逃げるつもりでした。でもタイミングがむつかしくて」

「愚弄するか。女でも俺は容赦しないぞ」

 林はジュンのレザージャケットをつかみ、引き寄せる。ジュンは間近で林の顔を見上げる。爬虫類の様につめたい表情だ。しかしジュンは、若い女だからと舐められるのに慣れている。むしろこうやって容易に懐へ飛びこめるのを利用すればよい。

 なにしろあたしは、オジサンにはモテる方だ。若い男はさっぱりなのが悲しいが。

 ジュンが言う。「あたしツイッターで林さんをフォローしてるんですよ」

「世間話をしに貴様は銃の前に立ったのか」

「あれですか? どうせ当たんないでしょ。しょせん下っ端の警官だし」

「ふん」

「ブレイドみたいな精鋭とは、練度も装備もまるでちがう。これじゃ弱い者いじめですよ。あとでネットで叩かれますよ」

 きょうはじめて林が顔色を変える。いまの時代、ツイッターのフォロワー数こそが正義だから。

 ジャケットから手を離し、林が言う。

「度胸だけは認めてやる」

「じゃあ銃を下ろすよう命令してください」

「なんだと」

「自衛隊も警察も、この国の平和と安全をまもる仲間じゃないですか」

「小娘が俺に説教するか」

「テロリストの一味あつかいされて腹が立つのはわかります。でも憂国の志士であればこそ、軽挙妄動すべきじゃない。敵の思う壺です」

 林は尖った顎に手をそえ、眉を寄せる。

 ジュンは、ユーコクノシシやらケーキョモードーやらの意味を知らない。父親の口癖なので見様見真似でつかった。用法は間違ってなかったらしい。

 とりあえず四字熟語で攻めると、オジサンにはそれこそコーカテキメンなのだった。




 アサルトライフルの発砲とゆう支障はあったにせよ、それは訓練の一環だと言いつくろうとして、林一佐を駐屯地から穏便に締め出し、どうにか作戦目標は達成された。

 一番隊の十名は、ダークブルーのハイエースへ乗りこむ。運転席にチャンコが、助手席にジュンが座る。ジュンは後ろにいる部下をみる。たいして動いてないのに、みな憔悴している。ミカはダンの腿に頭をのせて寝ている。西南戦争以来となる内戦に巻きこまれかけたのだから無理ない。

 ジュンはつとめて明るい声音で言う。

「いまから飲みにでも行くか」

 反応はない。

 ジュンは続ける。

「じゃあカラオケとか」

 ヲタが答える。「変な気をつかうなよ。お嬢の柄じゃないだろ」

「みんな元気ないからさ」

「あの場で平然としてるお嬢がおかしいんだ」

「…………」

「すまん。言いすぎた」

「いや、ヲタの意見はもっともだ。あたしはみんなとちがう。背負ってるものが」

 コンコン。

 サイドウィンドウがノックされた。

 ジュンが左をむくと、短く髪を刈りこんだ林一佐の顔が窓ごしに見える。車内は緊迫する。

 報復か。

 部下の動揺を目で制し、ジュンはドアをひらいてハイエースから降りる。

 ジュンは成田街道の歩道に立つ。はるかに長身の林と向き合う。かすかに右足を引き、潜在的リスクに対応できる体勢をとる。

 警戒を見抜いた林が、笑って言う。

「世間話をしに来ただけだ。身構えないでいい」

「そうですか」

「君らの会社に支倉新八とゆう男がいるだろう」

「ええ。二番隊の隊長です」

「あれは俺の元部下だ。迷惑かけてないか?」

「いえ、強いですよ。指揮能力も高い。信頼できる同僚です」

「酒癖が悪くて自衛隊を追い出されたのだが」

「あれくらいウチでは普通です」

「ははっ、そうか! あの問題児でもうまくやれてるのか。噂には聞くが、いい会社の様だな」

「さっきアカツキを知らないと言ってましたよね」

「気が立って、つまらぬことを言った。忘れてくれ」

「はあ」

 林は好奇の眼差しでジュンの全身を観察する。

「君はあの暁大五郎の娘か。どことなく似ている」

「母親似と言われますが」

「警備業界のスティーヴ・ジョブズ。なるほど、血とは濃いものだ。若いのに優秀なわけだ」

「ありがとうございます」

 ジュンはしらじらしい愛想笑いをうかべて答える。父がその異名をひどく嫌っているから。

 父はよく娘にこう語った。

 ジョブズなぞ、パソコンと電話を売っただけの男だ。所詮は商人にすぎない。

 俺は王になる。

 そしてお前はプリンセスになるんだ。




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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

マウンテンプクイチ『球詠』3巻

 

 

球詠

 

作者:マウンテンプクイチ

掲載誌:『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)2016年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

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僕は『球詠』を傑作とおもうが、ふだん野球を全然みないし、

野球漫画にもくわしくないので、比較考量できないのが恨めしい。

たとえばこうゆうまとめ記事を参考にすれば、

リアリティや理論をおもんずる『おおきく振りかぶって』系統に、

百合とゆうファンタジーを融合させた作品と推定できるが、

われながら知ったかぶりをしている感が否めない。

 

ただ逆に、きららや百合姫を愛好する野球漫画ファンもそういないはずで、

的外れな内容にならないよう留意しつつ、3巻について語ってみよう。

 

 

 

 

ついに埼玉県大会が開幕する。

初戦のマウンドにたつのはヨミでなく、急造ピッチャーの理沙先輩。

強豪とおなじブロックにはいったのでエースを温存した。

 

それはともかく後ろ姿がキマってる。

 

 

 

 

新越谷最大の武器はおそらく、データを駆使するマネージャー芳乃の頭脳。

しかし、初戦の相手である影森はまったく情報がない。

「鎖国」的なチームプレーで翻弄してくる影森を攻略するさまを、

あいかわらず緻密に、そして爽快にえがく。

 

 

 

 

4回1死二塁で、初心者の息吹に投手交代。

双子の妹のオモチャとして野球をやらされており、度胸もないが、

ここにきて仲間の信頼にこたえたいとゆう気持ちにめざめる。

 

息吹がはじめてみせる引き締まった表情は、本巻のハイライト。

なんてかわいいんだろう。

 

 

 

 

本作の特色は「絵になる」につきる。

たあいない日常や、まじめな技術や戦術の描写をつみかさねても、

素材がJKなので地味になるどころか、すべてのページにぱっと花が咲く。

僕が画期的な傑作とよぶ所以である。





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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合  きらら系コミック 

山崎零『恋せよキモノ乙女』

 

 

恋せよキモノ乙女

 

作者:山崎零

掲載誌:『月刊コミック@バンチ』(新潮社)2017年-

単行本:バンチコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

和服がテーマの漫画である。

ふだん受付嬢として働く「野々村もも」は、祖母の影響で着物がだいすき。

休日のたのしみは、行き先や季節にあわせ、

丹念にかんがえたコーディネートでお出かけすること。

 

 

 

 

ももには現在、恋人はいない。

ただ、老舗の喫茶店でみかけた美青年が気になっている。

ゆっくり進展してゆく恋模様も、本作のエッセンスだ。

 

 

 

 

公式サイトによると作者は日本画をまなび、和服も着こなすらしい。

細部の描写は確かなのだろう。

ももは、いかにも着物が似合いそうな寸胴体型なのがほほえましい。

 

 

 

 

着物に興味のない姉のため、古風な妹が浴衣をみつくろい、

一緒に奈良のおふさ観音へ足をのばす。

姉はツバメ、妹はアサガオの柄で、さわやかな装い。

 

ここでえがかれるエピソードは、姉妹らしくてジンとくる。

あと関西弁も心地よい。

 

 

 

 

ちょっとした知識や投資や手間暇は必要だが、身にまとうだけで、

あでやかではんなりとした異世界へ人をいざなう魔法の服。

それが着物。

 

主人公の不器用な恋にやきもきしながら、いつのまにか読者は、

お気にいりの画集のなかに迷いこんだ様な心地になるはず。





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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ:  

糸川一成『空男 ソラダン』

 

 

空男 ソラダン

 

作者:糸川一成

掲載誌:『モーニング』(講談社)2017年-

単行本:モーニングKC

[ためし読みはこちら

 

 

 

高校3年の「空賀(くが)カケル」は飛行機で、修学旅行先の長崎へむかっていた。

厚い雲につっこんだ機体がはげしく揺れる。

自分にやさしくしてくれたCAの「妃さん」をみると、絶望的な表情で首を横にふる。

カケルは恐怖のあまり絶叫する。

 

 

 

 

飛行機はなんともなかった。

妃さんの態度は、離陸前に「別にきょう死んでもいい」とうそぶいていた、

生意気なカケルをからかっただけ。

 

母子家庭で生活がくるしく、将来に希望をもてなかったカケルは、

雲の世界をながめながら妃さんと話したのが動機となり、進路をきめる。

つまり男性CAとして「日本アイランド航空」へ就職する。

 

 

 

 

単行本折り返しのコメントによると、作者の母親がCAで、

自宅は同僚のCAたちがよく出入りしていたらしい。

おそらくそれが理由で本作は、われわれ一般人がいだきがちな、

CAにまつわるステレオタイプを避けるのに成功している。

キャピキャピしておらず、職業人としてのリスペクトがある。

 

勿論、みなうつくしいのだが。

 

 

 

 

カケルの同期となった「八雲はな」。

美人で優秀で、大手にも余裕で就職できそうなのに、

消滅寸前のいまの会社につよくこだわる。

親会社から出向した教官に食ってかかるほど。

 

 

 

 

はなの思い入れのきっかけをえがくエピソードは短いが、心あたたまる内容。

華やかで、だれもが気になる存在であろうCAの世界の、

簡単に踏みこめない舞台裏をのぞけて興味ぶかい。





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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

成家慎一郎『まなかの杜』

 

 

まなかの杜

 

作者:成家慎一郎

掲載誌:『コミックヘヴン』(日本文芸社)2017年-

単行本:ニチブンコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

杜の都・仙台にある神社を舞台とする物語。

主人公である女子高生「日下まなか」は、雪降る夜にたまたま通りかかる。

そこで、ある出会いを経験する。

 

 

 

 

まなかは母子家庭のひとり娘。

病弱な母にかわり、バイトで家計をささえている。

正直、放課後にはたらく毎日はつらいし、もっと遊んだり恋をしたりしたい。

でも根がマジメで優しいので、ついがんばってしまう。

 

 

 

 

神社で出会った相手は、雪の様に白い髪をした美青年「近臣(ちかおみ)」。

その正体は、仙台を守護する神様。

ファンタジー色のつよい作品である。

 

 

 

 

まなかは近臣の、浮世離れした雰囲気にひかれてゆく。

正体は知らないまま。

 

不器用で健気なツインテール女子。

これほど心をつかむヒロインは稀だ。

 

 

 

 

魅力的な脇役たちが、メインプロットにからむ。

たとえば、おっちょこちょいな母親との関係性のたのしさ。

 

 

 

 

もしくは「伊達政宗」を名乗る中二病男子。

まなかは知らないが、ホンモノである。

 

 

 

 

ラブコメ・恋愛もの・青春もの・御当地もの・ファンタジー……。

いくつかのジャンルにまたがる本作は、ひとことで特徴を言い尽くせない。

ただヒロインの、思春期女子らしく繊細でピュアなたたずまいに、

多くの読者を支持をあつめるポテンシャルを感じる。





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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

渡邉嘘海『エデンの処女』

 

 

エデンの処女

 

作者:渡邉嘘海

掲載サイト:『COMICリュエル』(実業之日本社)

単行本:リュエルコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

生物兵器によって男が死滅した世界をえがく、SF要素のある百合漫画だ。

作者の初連載で初単行本らしい。

 

 

 

 

舞台は「白咲耶学園」。

園藝部の處女たちは、百花繚乱の庭園をつくりあげている。

 

ジャンル的には、マリみて系のクラシック百合に分類できるか。

 

 

 

 

1巻で印象的なキャラクターは、長い黒髪がうつくしい「藍宮葵」。

スカートの下にいくつも鋏をしのばせている。

無口で、ときに攻撃的。

 

 

 

 

園藝部をひっかきまわす主人公に、葵はつらく当たる。

言葉で責めても折れないので、肉体を征服しようとする。

 

作品世界で生殖は、女同士でおこなう。

そのいとなみを「恋」とよぶ風習はのこっているが、まがい物の匂いもただよう。

 

 

 

 

双子の様にそっくりなふたりが実は双子じゃなく、表面的には仲よしだが、

せつない運命をうけいれた上であかるくふるまっていたりする。

 

草花や少女などキレイキレイなもので画面をうめつくしつつ、

その影の部分も濃密に描写するのが本作の特色だ。

 

 

 

 

いかにも新人らしく、好きなものを目一杯つめこんだ作品となっている。

主人公の動機づけが弱かったり、世界観を供覧する手際がよくなかったり、

そこかしこに拙さは感じるものの、この熱量は貴重なものだ。





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テーマ : 百合漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合 
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苑田 謙

苑田 謙
漫画の記事が多め。
たまにオリジナル小説。

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