マウンテンプクイチ『球詠』2巻
球詠
作者:マウンテンプクイチ
掲載誌:『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)2016年-
単行本:まんがタイムKRコミックス
女子が本格的な(つまり男子の)高校野球をしている以外、
あらゆる面でリアリズムを追究する野球漫画の新刊である。
とにかく『球詠』は情報量がおおい。
マネージャーで野球オタクの芳乃は、アプリで成績を管理しつつ、
圧倒的な知識量でチームを訓練し、編成し、指揮する。
百合的にも野球的にも「女房役」である珠姫は、
緻密かつ大胆なリードや守備でチームをひっぱる。
第1巻からつづく、練習試合の柳大戦も終盤へ突入。
打席に立つのは交代が確定したピッチャーで、打つ気がまるで感じられない。
つねに合理的に配球を組み立てる珠姫は、
バッターの内面の虚脱感まで見抜けず、困惑する。
相手は打つ気がないのでなく、ただ単にボーッとしていた。
ふと我にかえりバットを振ったら、出会い頭でホームラン。
これが決勝点となる。
高度な戦術と、あっさりそれをくつがえす偶然性。
球技の醍醐味がつまっている。
第10話は、上級生コンビの怜と理沙にスポットライトをあてる。
学校制服姿も絵になる。
中学時代からはぐくんできた、ふたりの絆。
合宿の夜に語らいながら、過去と現在と未来を共有する。
髪型や顔つきで、年格好のちがいを表現。
第2巻は、主人公がストーリーを牽引しておらず(なんか幸せそう)、
スポーツ漫画にありがちな群像劇の散漫さに陥っているが、
それでも描き分けの巧みさで、本作を傑出した水準にたもっている。
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