あららぎあゆね『リンナ警部は呼吸ができない』

 

 

リンナ警部は呼吸ができない

 

作者:あららぎあゆね

掲載誌:『月刊ComicREX』(一迅社)2016年-

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現代のロンドンが舞台の、ホームズインスパイア系の漫画。

鹿撃帽をかぶってるのが私立探偵の「メイシ」だが、言動は見かけ倒し。

左の金髪はロンドン警視庁警部の「リンナ」。

まだ17歳の天才少女だ。

 

 

 

 

殺人などの凶悪事件はおきず、ラブコメ寄りの作風。

お堅い性格のリンナ警部は、天然なメイシに一目惚れ、

いちいち過剰反応して照れ顔をみせる。

 

 

 

 

立てこもり事件で、メイシが人質に。

リンナ警部は部下を率いて現場へ急行、犯人と交渉をはじめる。

 

 

 

 

人質救出作戦にはマニュアルがあるが、乙女の恋はアットランダム。

動揺したリンナ警部がグロックを乱射し、事態は急転直下の様相を帯びる。

 

 

 

 

メイシは名探偵なのかバカなのかわからないが、誠実なのは確か。

レイトン教授さながらの決め台詞で一件落着。

 

 

 

 

博物館の宝石をいただくと、「怪盗ミラー」を名乗る人物から予告状がとどく。

その正体は期待どおりの美少女。

ズッコケぶりがおもしろかわいい。

 

 

 

 

手に汗握るストーリーとは言えないが、全体的に丁寧に描かれており、

「ロンドン×探偵×美少女」のキーワードに反応する人におすすめ。





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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

理央『彼女の腕は掴めない』

 

 

彼女の腕は掴めない

 

作者:理央

掲載サイト:『ゼロサムオンライン』(一迅社)2016年-

単行本:ゼロサムコミックス

 

 

 

主人公はセーラー服の女子高生。

生まれつき両腕がない。

「四肢欠損」とゆう厄介なテーマをあつかう作品だ。

 

 

 

 

通りすがりの人々は、彼女に好奇や憐憫の眼差しをそそぐが、

異常と思われても彼女はちっとも気にしない。

だって、これが自分の正常だから。

 

主人公のドライな世界観が、冒頭の4ページで端的に提示される。

 

 

 

 

小洒落た身なりの男が定期券をひろい、紐をむすんで主人公の首にかける。

だが、この男こそ異常者だった。

話しかけるきっかけを得るため、すれ違いざまカミソリで紐を切った。

 

 

 

 

男は主人公を自宅へ誘拐し、監禁する。

自力では通報すらできない弱者に対する、あまりに卑劣なふるまい。

 

主人公は抵抗らしい抵抗をしない。

男がイケメンで態度が紳士的で、しかも金持ちらしいので、ある意味容認する。

抵抗しても無意味とはいえ、主人公が冷静すぎると僕は感じた。

 

 

 

 

誘拐犯と被害者が結束する、いわゆるストックホルム症候群が発生。

引用画像は主人公がみた夢。

ある朝目覚めたら両腕が生えていたので、

それを男に見せると興味をうしなわれ、あっさり捨てられる。

主人公は誘拐されたのに、フラれるのを恐れている。

 

こんがらがった心理や人間関係がみどころ。

 

 

 

 

主人公は本棚に古代ギリシア美術の本をみつける。

男は『ミロのヴィーナス』の様な四肢欠損に、性的興奮をおぼえるタチらしい。

それらは壊れているがゆえに、美的感覚をするどく刺激する。

 

反社会的人格は、インテリでないといけない。

たとえば『羊たちの沈黙』のレクター博士みたく、

サイコパスに衒学趣味のスパイスをかけると、不思議とマイルドな味わいに。

 

 

 

 

尖った作品ではある。

実際に四肢を欠損した女性が読めば、不愉快になるのでは。

でも日常性をおもいきり逸脱したテーマを、

サブカルのフォーマットへうまく落としこんでるのに感心する。

こんな漫画があってもいい。





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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

内々けやき『グレートヤンキーみちるくん』

 

 

グレートヤンキーみちるくん

 

作者:内々けやき

掲載サイト:『チャンピオンクロス』(秋田書店)2016年-

単行本:少年チャンピオン・コミックス エクストラ

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男子高校を舞台とするショタものである。

読者は子猫みたいな美少年、「大河みちる」を愛でることになる。

 

 

 

 

私立京北高校は、地元でも有名なヤンキー校。

みちるは転校初日から不良に絡まれる。

 

 

 

 

ショタは乙女っぽい言動で、不良の巣食うジャングルを生き抜く。

本格的なティーセットを用意し、スコーンにはクロテッドクリームを塗り、

屋上にむさくるしい男どもをあつめてお茶会をひらく。

 

 

 

 

本作は『しょたせん』と世界観を共有している。

「ショタ×ヤンキー」のミスマッチ感が、かわいさを増幅。

 

 

 

 

ケンカの場面も、パンチの重さなどをリアルにえがく。

版元である秋田書店のヤンキー漫画に引けをとらない。

 

 

 

 

内々けやきは、評論家っぽく論じるのがむつかしい。

「意味」を読み取ったり、「解釈」されるのを嫌いそうな作風だ。

ただヌイて笑って泣いてくれればそれでいいと。

今後の研究課題である。





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タグ: 男の娘 

『ナデシコ女学院諜報部!』 第2章「家庭訪問」


登場人物・あらすじ(準備中)


全篇を読む(準備中)







 「そば処 ひらて」は、新宿区富久町にある創業三十年の蕎麦屋だ。ナデシコ女学院から歩いて一分の距離にある。特に地元で愛される老舗などではなく、閑古鳥が鳴いている。

 二階は居住空間となっており、平手ミキが母とふたりで暮らす。六年前まで岩手県大船渡市に住んでいたが、震災を機に母は実家にもどり家業を継いだ。創業者である祖父が昨年亡くなってからは、ますます流行らなくなっている。

 無断で早退したミキは黒のジャージに着替え、ゲームのコントローラをにぎる。アクションゲームの『フリーダム・シスター』で、八対八のオンライン対戦に没頭している。日本刀を背負うセーラー服の少女が、雪の降る街で銃を乱射する。ミキがお気にいりの武器はH&K社のMP7。アサルトライフルとくらべるとパワー不足だが、神出鬼没の機動でキル数を稼ぐ。「死の天使」とゆうアカウントは、ゲーマーのあいだで知られた顔だ。

 エリア中央の倉庫の屋上にいるスナイパーが、味方をつぎつぎとヘッドショットで斃している。

 ヘッドホンから味方の声が届く。

「天使ちゃん、屋上のアイツどうにかして」

 ミキが答える。「おっけー」

 ミキがあやつるキャラクターは敵陣へ突入し、グレネードを投げてからビルへ踏みこむ。屋上まで階段を駆け上り、さらに隣のビルの屋上へ飛び移る。電線を伝ってスナイパーの背後に回り、刀を一閃して屠る。

「よし」ミキがつぶやく。「スナイパー殺った」

 七名が歓声で答える。「うおーっ!」

 ミキの副腎がアドレナリンを分泌する。充足感に満たされる。ここには自分を必要とする人々がいる。ゲームに感情移入していれば嫌なことを忘れられる。人生になにも不満はない。

 ヘッドホンが剥ぎ取られた。

 紺の作務衣を着た母が、眼尻を上げて仁王立ちしている。

 母が言う。「さっきから呼んでるでしょ!」

「聞こえなかった」

「並木先生がいらしてるから、早く来なさい」

「ボクが話すことはないよ」

「いい加減にしな!」

 母はミキの耳をつかむ。壁だけでなく天井までアニメやゲームのポスターが貼られた部屋から、力づくでミキを廊下へ引っぱり出す。




 手狭なミキの家に応接間はなく、担任の並木はリビングルームの食卓へ通された。並木はスカート丈の長いグレーのスーツを着て、髪型はアシンメトリーのボブ。生徒からあまり親しまれない教師で、家庭訪問でも愛想笑いひとつ浮かべない。

 母が山菜そばの丼を置いて言う。

「店のもので申しわけないですけど」

「どうかお構いなく」並木が答える。「お忙しいところお邪魔してすみません」

「ちょうど仕込みの時間ですから」

「いえいえ」

 そっけない口調で並木は受け答えする。ミキが無断早退したせいで外回りを強いられ、不機嫌なのだろう。

 並木は合皮のバッグから成績表をとりだす。向かい側にならぶ母娘の前に広げて言う。

「期末テストの結果です。成績は五百点中三十七点。全科目赤点です。数学にいたってはテストを受けてすらいません」

 ミキにも言い分はある。彼女は数学の記号に対するアレルギー体質をもつらしく、fやΣを見つめてるだけで試験中に意識を失ったくらいだ。でもそれを申告せずに逃げたのだから問題だ。

「単刀直入に申し上げます」並木が続ける。「平手さんは三学期の成績がどれだけよくても、進級できる見込みはありません」

 母がつぶやく。「そんな」

「手紙などで何度もお知らせしましたが」

「すみません……店が忙しくて」

「留年とゆう選択肢もあります。でも学院としては、よりふさわしい環境に移って、充実した高校生活を送られるのをお勧めします」

「転校しろってことですか」

「そう受け取っていただいて構いません」

「困ります。特待生でタダだから高校へ通わせられるのに。言いたかないけどウチは貧乏なんです」

「お母様。残念ですが生徒さんが留年した場合、特待生制度は適用されなくなります」

 勉強ぎらいのミキが特待生試験に合格したのは、彼女が「神のサイコロ」と呼ぶ鉛筆の出目が、高確率で的中したおかげ。小論文や面接で演じた優等生キャラも評価されただろう。入学後すぐにメッキが剥がれたが。

 母が早口でまくし立てる。

「先生、この子の兄は勉強ができたんです。震災で亡くなってしまったけど。この子もやればきっとできます。もうしばらく見てやってくれませんか」

「教育者としては非常に心苦しいですが……」

「でしょう。テストの点数が悪いから追い出すなんておかしいもの」

 並木は母の意見を考慮する素振りすら見せず、単調な声で言う。

「われわれが心配するのは学業成績ではありません」

「はあ」

「平手さんは他の生徒とのコミュニケーションがうまくいってない様です。職員の一致した見解です」

「それは……」

「思春期の子供にとって友人関係は重要です。学習環境を変えるのがベストだと、われわれは判断しました。平手さんのためを思っての提案です」

 並木は、黒のジャージを着たミキを見遣る。着替える暇がなかったので眼帯だけつけている。母と担任教師の真剣な会話のあいだ、ずっとアイフォンでツイッターをやっていた。コミュニケーション不全のうごかぬ證拠だ。

「ミキ!」母が叫ぶ。「いつまで携帯いじってるの。先生に謝って、勉強がんばりますと言いな!」

 ミキは画面から目を離さない。激昂した母がミキのおさげ髪を引っぱる。ミキはその手を振り払う。母は爪を立てて娘の後頭部をつかみ、食卓へ押しつける。箸をつけてない山菜そばの汁がこぼれる。

 並木は席を立ち、醜悪な母娘ゲンカの仲裁に入った。




 並木が学校へ戻ったあと、ミキは自室でゲームを再開する。おもわぬ邪魔がはいってランクが下がったし、クランの仲間に迷惑をかけた。がんばらないといけない。

 母がドアを開け、鼻息荒く言う。

「あんた明日から学校行くのやめな」

「別にいいけど」

「転校もしないでいい。これからは店を手伝いな」

「やだよ」

「借金あるのに学費なんて払えない。転校しても、どうせあんたは勉強しないし」

「ウチで働くのはやだ。コンビニかどこかでバイトする」

「嫌なら家を出てけ」

 ミキは母と視線をあわせる。ヒステリックな母だが、脅しで言ってる様子ではない。すこし卑屈な態度をとる必要がある。

「ごめんなさい」ミキが言う。「学校でうまくいってないのを相談すべきだった」

「あんたは大人しいくせに意外と口が達者だから、お母ちゃんは騙されてきた。やるやると言って何もしたことがないじゃないか」

「でも高校は卒業しときたいよ」

「どうせゲームして、変な服買って、そればっかりだろ。すこしは苦労しな」

 風向きが悪い。嘘泣きでなく、不安でミキの目に涙がにじむ。

「お母ちゃん、お願い。お金はかならず返すから」

「返せるもんか。お金を稼ぐのがどれほど大変か。大体あんたは将来何になりたいんだい」

 ミキがなりたい職業はプロゲーマー。それが無理ならユーチューバー。でも本心を言い出せる雰囲気ではない。

 しどろもどろにミキが言う。

「学校の先生とか」

「あっはっは、バカじゃないの! それはお兄ちゃんの夢だろ。なんにも考えてないんだね。本当にあのとき……」

 本当にあのとき、津波にさらわれたのがお兄ちゃんでなく、あんただったら。

 母は口をつぐむ。親として言ってはならないことを口走りかけた。

 ミキは母を部屋から押し出して、ドアに鍵をかける。ジャージを脱ぎ、震える手でブラウスのボタンをとめる。精一杯おしゃれして、街を練り歩きたい。トレーから真紅のカラーコンタクトをえらぶ。

 怒りの炎で、世界を焼け野原にしてやるんだ。




 学校ではさすがに遠慮しているミニハットや、スパンコールがきらめくスカートを身につけ、ミキは夕刻の靖国通りを闊歩する。数年前まで新宿はロリータファッションの聖地だったが、いまでもすれ違う人々は物珍しそうな一瞥をくれる。外国人観光客などは遠慮なくカメラのシャッターを切る。

 きっといま、ボクはかわいい。

 言語化せずとも、肯定的評価がつたわる。ツイッターでいいねボタンを押してもらうより嬉しい。

 カラオケパセラから、一年ゆり組のクラスメート五名が眼前にあらわれた。歯を見せて笑い声を立てていたが、ミキに気づいて一瞬硬直する。ミキが実質的に退学になったのを知ってるのだろう。女子校ではオンラインとオフラインの両面で、光より速く噂が伝播する。

 ミキはナイフで抉られる様な胸の痛みをこらえ、視線をそらせたクラスメートに微笑をうかべて会釈する。歩道を大股で前進し、ドン・キホーテの前の信号で立ち止まる。タイトーステーションで音ゲーを遊ぶのが日課だ。

 ヤマダ電機の外壁にあるユニカビジョンで、ハリウッドの戦争映画の予告篇がながれている。主演のジェーン・カラミティが、史上最年少の十八歳でオスカーを獲得した作品だ。いま彼女は日本の高校に短期留学してるので、世間が騒いでいる。

 横断歩道の中ほどで、ミキは背後から手首をつかまれる。クラスメートの寒椿氷雨が追ってきたと、振り向いてわかった。小柄で、水色のパーカーのフードをかぶっている。未完成のルービックキューブを左手にもつ。

「平手さん」氷雨が言う。「転校するって本当?」

 ミキが答える。「まあね」

「よかったらちょっと話せないかな」

「うーん、ここだと危ないかも」

 ミキは周囲を見渡す。歩行者用信号が赤になり、ふたりは交叉点の中心に取り残されていた。




 ミキは中央分離帯のコンクリートに腰を下ろし、金網に背をもたせる。氷雨は安心できる居場所を見つけられずキョロキョロする。

「こっち来なよ」ミキが言う。「そんなとこに突っ立ってたら轢かれるよ」

「平手さんは自由な人だね」

「べつに」

 ミキのすぐ隣に座り、氷雨が言う。

「残念。転校しちゃうなんて。平手さんとアニメの話とかするの楽しかった」

「そうだね。ありがとう」

「どこの高校へ行くの?」

「わかんない」

「えっ」

「ボクは成績が悪すぎて退学なんだ」

 氷雨の細い眉が寄り、動揺と憐憫で表情が曇る。パーカーのフードをおろし、頭を振る。学年トップの氷雨には理解できない悩みだろう。なにせ数学オリンピックに出場し、日本を初優勝にみちびいた頭脳の持ち主だ。

 ミキは黒いバッグからアイフォンをとりだす。メルカリの通知が届いていた。狙っていた木底の靴を落札できたとわかり、ニンマリする。

 氷雨が別れを惜しんでくれたのは感謝している。やさしい性格の彼女は、風変わりなミキに話しかける唯一のクラスメートだった。でももう、ちがう世界の住人だ。

 氷雨が、ミキの顎に食らいつく様に顔をちかづけ、じっと目を見つめながら言う。

「ねえ、平手さん」

「顔ちかいな」

「諜報部に入らない?」

「ぷっ」ミキが吹き出す。「なに言ってんの」

「諜報部員は特待生扱いになるから、進級は問題なくなる。しかもスパイ甲子園で優勝したら、どこでも好きな大学へ進学できるんだよ」

「スパイ甲子園って、すごいネーミング」

「正式名称じゃないけどね。興味ないかな」

「好きな大学って、たとえば東大でも?」

「もちろん。学院はいま二位」

 ずっと真顔の氷雨は、ふざけてる様に見えない。

「マジで。ボクみたいなバカが東大に行けるの」

「マジだよ。文部科学省のお墨つきだから。入部には部員と顧問の同意が必要だけど」

「じゃあダメじゃん」

「ダメじゃない。私が推薦する」

 なめらかな頬を紅潮させ、氷雨がほほえむ。

 言わんとすることを察し、ミキが言う。

「寒椿さんも諜報部員なんだ。意外」

「私は機械が好きだから、そっちで貢献してる。家が剣道の道場で、運動も苦手じゃないし」

 氷雨の手許に目をやると、会話しながらいじっていたルービックキューブが六面とも完成している。すべてのキューブの位置を記憶し、ほぼ無意識で解いたらしい。

 都道4号線の七車線を、自動車がはげしく往来する。大型トラックが通るたび、ミキのおさげ髪が煽られて揺れる。

 ミキの鼓動が高鳴る。

 FPSでたとえるなら、味方が航空支援を要請した様なもの。このチャンスを逃しちゃいけない。




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ジャンル : 小説・文学

内海瀬戸『君に贈るロードショー』

 

 

君に贈るロードショー

 

作者:内海瀬戸

発行:集英社 2017年

レーベル:ヤングジャンプコミックス

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大学生の「涼太」が、古い一眼レフのデジカメをひさしぶりに触ると、

モニターに幼なじみの「ひまり」が、小学生のころの外見で映った。

 

 

 

 

表示されてるのは自分の部屋だが、実際はだれもいない。

ひまりとモニターごしに会話もできる。

 

 

 

 

それはありえないことだった。

なぜならひまりは、小学校卒業の翌日に交通事故で世を去ったから。

女優を夢見ていた彼女の魂がカメラにのりうつったのだろうか。

 

 

 

 

そして涼太は、ひまりと生き写しの少女に出会う。

彼女は二歳年下の妹「すみれ」で、姉の遺志を継いで役者をめざしている。

涼太とすみれは、ひまりの夢をかなえるため映画をつくりはじめる。

 

 

 

 

体が弱かったすみれは、明るく元気な姉に劣等感をいだいていた。

嫉妬心からケンカになり、仲直りしないまま生き別れとなった。

このエピソードはせつない。

 

 

 

 

「三人」で完成させた作品は、学生映画祭で上映される。

夢をもつことの大切さをえがく、やさしいストーリーだ。

 

 

 

 

明治大学のサイトに作者へのインタビューが掲載されている。

この春に明大を卒業したらしい。

作風は、たとえば新海誠みたいに青臭いところがあるけれど、

40すぎて純情ぶるのではなく、本当に若いのでいいと思う。





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カズミヤアキラ『闇女-ヤミ・カノ-』

 

 

闇女-ヤミ・カノ-

 

作者:カズミヤアキラ

掲載誌:『月刊キスカ』(竹書房)2016年-

単行本:バンブーコミックス

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主人公は大学生の「佐々木潤」。

アパートで一人暮らしをしており、隣には超美人な「美咲さん」が住んでるが、

引っ込み思案な性格なので自分からアプローチできない。

 

 

 

 

本作のギミックは「憑依能力」。

原因はわらかないが、潤はいろいろな男にのりうつり、

普段は小奇麗にしている女たちの本性を目の当たりにする。

美咲さんはアラサーの焦りもあって、浮気した同棲相手をめった刺しに。

 

 

 

 

大学とゆう舞台もよく描けている。

日本のサブカル作品は中学や高校が多いので新鮮だ。

清楚で知的な黒髪美女は、准教授の「速水さん」。

 

 

 

 

教授と不倫していると噂される速水さんだが、実際はもっとひどかった。

弱みを握り、SMプレイで奴隷にして弄ぶ。

 

 

 

 

カズミヤアキラは画力が高く、エロティックな描写に見応えがある。

たとえば、潤の古くからの女友達である「由妃」が乱交に耽るシーンも、

汚くなりすぎないギリギリのバランスに仕上げている。

 

 

 

 

サバサバした性格で話しやすい由妃には自傷癖があった。

誰でもいいから男を必要としていて、見つからないときは手首を切る。

列伝形式で女のカルマを丸裸に。

 

 

 

 

ここまでは他に似た作品があるかもしれない。

僕が本作に興味をもった理由は、ヒロイン格である主人公の妹「雛」の存在。

くせっ毛、吊り目、泣きぼくろ……造形がすばらしい。

 

女はみな欲深くて、自堕落な生き物なのは、残念だが事実なのだろう。

でも妹だけは例外であってほしい。

藁にもすがる様な主人公の願望がストーリーをつらぬいていて、

ただペシミスティックなのではない、複雑な読後感をもたらす。





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絵本奈央/岡田麿里『荒ぶる季節の乙女どもよ。』

 

 

荒ぶる季節の乙女どもよ。

 

作画:絵本奈央

原作:岡田麿里

掲載誌:『別冊少年マガジン』(講談社)2017年-

単行本:講談社コミックス マガジン

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高校の文芸部を舞台とする漫画である。

部員は女子が5名。

主たる研究対象は、文学よりセックス。

なにせ思春期だからしょうがない。

 

 

 

 

主人公は「小野寺和紗」。

ムッツリスケベの多い文芸部でもオクテな方。

近所にすむ幼なじみの「泉」はイケメンで人気があるが、

周囲の目を意識して学校では仲よくしない。

家族ぐるみの付き合いがあり、料理をおすそ分けすることも。

 

 

 

 

ある夜、泉の家に上がったとき、エロ動画をみてオナニーするのを目撃。

まったく言い訳できないくらいハッキリと。

 

岡田麿里は『あの花』『ここさけ』『オルフェンズ』などのアニメで知られる、

いま売れっ子の脚本家で、意外性のある設定やストーリーはさすが。

 

 

 

 

でもそれ以上に作画がいい。

泉のナニをみて悩乱した和紗は家を飛び出す。

セックスはしてみたい。

でもあんなの絶対入らない。

電車が駅構内へ入っただけでビクッと反応。

 

シナリオと作画の呼吸が完璧にあっている。

 

 

 

 

日常シーンもムダがない。

性の匂いがまったくしない母が台所にたつ後ろ姿をみて、

「でもお母さんは処女じゃないんだな」と、複雑な感情を抱いたり。

 

 

 

 

文芸部を暴走させた元凶である、部長の「曽根崎」が、

セックスで脳が腐ってるギャルに怒りをぶちまける。

 

男性作家は大抵ギャルに冷淡だが、本作は公平に描写している。

わかりやすく言うと、みんなかわいい。

 

 

 

 

たとえ表面は荒々しく波打っていても、内側はピュアでまっすぐな、

思春期女子の感情をユーモラスかつ、きめ細やかに描く傑作だ。





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『ナデシコ女学院諜報部!』 第1章「侵入者」


登場人物・あらすじ(準備中)


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 ナデシコ女学院に不審人物が侵入するのはめづらしくない。世間に変質者は掃いて捨てるほどおり、なかでも名門女子校は彼らを強烈に惹きつける。ただ今回のケースが特殊なのは、防犯カメラの顔認證システムが感知したのが成人男性でなく、十代の少女である点。おそらく他校の生徒が、学院の制服で変装している。

 高等部二年の千歳川千鳥は、教室棟と職員棟をむすぶ渡り廊下をいそぐ。黒髪のショートカットで、百七十センチちかい長身だ。サッカー部所属なので日焼けしている。制服のブレザーでなく、黒のレザージャケットを羽織る。服装に関する校則は学院にない。

 ガラス張りの自動ドアにたどり着いた千鳥は、四桁の数字をテンキーパッドに打ちこむ。数名の生徒しか教えられてない番号だ。木造の校舎だが機械的なセキュリティをそなえている。

 4649。

 ドアがひらいた。誰が設定したか知らないが、もうすこしヒネれよと千鳥は内心で毒づく。

 用務員室のドア越しに断続的な物音が聞こえる。引っ越しでもするかの様な。千鳥は覗き窓から中をうかがう。ピンクベージュのブレザーを着たおかっぱ頭の少女が、派手に室内を荒らしている。すべての引き出しが開けられ、椅子や仮眠用のベッドがひっくり返されている。千鳥はアイフォンのスリープを解除し、監視カメラが五分前にとらえた画像と照らし合わせる。画像は不鮮明だが同一人物だろう。

 千鳥は耳掛け式のヘッドセットで通話する。

「きらら先輩」

「名前で呼ばないで。部長と呼んで」

「きらら部長」

「……なによ」

「ターゲットを視認。行動から判断するに、敵対勢力の様です。どうしますか」

「難しいわね。正体がまるでわからない」

「敵のスパイだとあたしは確信してます。いま踏みこめば余裕で殺れます」

「あなたを信じるわ」

 千鳥はレザージャケットの下のホルスターからグロック19を抜く。左手でドアノブをまわし、ブーツの音を立てて勢いよく入室する。

「うごくな!」千鳥が叫ぶ。「ナデシコ女学院諜報部だ!」

 敵が不穏な反応をしたら発砲できるよう、背中に照準をあわせる。だが第二歩を踏み出したとき、足許にピンと張られた掃除機の電源コードに引っかかり転倒した。グロックが床で跳ねる。

 おかっぱ頭は持っていた引き出しを落とす。中の書類が部屋中に散らばる。罠にかかった千鳥に目もくれず、窓枠に手をかけて屋外へ飛び出した。

 はげしく顔を打った千鳥は膝立ちになり、手の甲で顔をぬぐう。赤く濡れている。

「チクショウ」

「どうしたの」きららが尋ねる。「大丈夫? ケガはない?」

「鼻血出てる。めっちゃ痛い」

「ターゲットは? 現状を報告して」

「窓から逃げられた。でも絶対つかまえる」

 千鳥はグロックを拾い、サッカーで鍛えた脚力で軽々と窓枠を飛び越した。




 そんなバカな。あたしは「韋駄天チドリ」だぞ。

 全速力で走っても、おかっぱ頭との距離がちぢまらない。年代別の代表チームにえらばれた経験もあるサッカー選手なのに。

 あいつは一体何者だ。

 おかっぱ頭は濃紺のスカートをひるがえして教室棟の角を曲がり、校舎裏へ姿を消す。出血で鼻が詰まり息を切らせた千鳥は、速度をゆるめる。待ち伏せを警戒し、ふたたびグロックを構えた。

 スピーカーから校内放送が流れる。

「一年ゆり組の平手ミキさん。職員棟二階の進路指導室まで来てください」

 のんきな教員たちは通常営業のまま。侵入者への対処は、諜報部所属の学生にまかせている。

 四階建ての教室棟の二階の窓から身を乗り出し、女生徒数名が手を振って声援をおくる。

「千鳥センパイ、がんばれぇ!」

 凛々しい顔立ちでスラリとした体躯の千鳥は、学院で断トツの人気がある。同性からアイドル視されるのを本人が喜んでるかはともかく。

 千鳥は木の壁に身を寄せ、顔とグロックの銃口だけ出して校舎裏を覗く。ダサいエンブレムがついた制服の警備員と、おかっぱ頭が口論している。警備員は侵入があったのを知らされてないが、ドタバタ走り回る生徒を怪しんで誰何したのだろう。明日から国宝が学院に寄託される予定で、もとより厳重な警備がさらに増員されている。

 警備員がおかっぱ頭の肩をつかむ。おかっぱ頭はその手を引き剥がし、手首を極め、肥満体を投げ飛ばす。仰向けになった警備員に馬乗りになり、体重を乗せて肘を顎に叩きこむ。警備員は声もなく気絶した。おかっぱ頭は立ち上がり、また駆け出す。

 やりすぎだ。諜報部の活動の範疇を超えている。

「いい加減にしろ!」千鳥は叫ぶ。「両手を上げてそこに膝をつけ!」

 振り返らず、おかっぱ頭は金網のフェンスへ殺到する。右手をかけた瞬間、アッと悲鳴を漏らして草叢に崩れ落ちた。ナデシコ女学院のフェンスには百万ボルトの高圧電流が流れている。

「調べが足りないな」千鳥が続ける。「勝負ありだ。ギブアップしろ」

 おかっぱ頭は痙攣しながら、かろうじて動かせる左手をブレザーの懐に差しこむ。銃での反撃が予想される。千鳥は覚悟を決め、グロックを二発連射した。おかっぱ頭のブラウスが赤く染まる。

 ただし外傷はない。発射したのはペイント弾だ。

 千鳥がいま参加している「スパイゲーム」は、文部科学省が普及につとめる新種のスポーツ。頭脳明晰で勇敢な、幅広い分野で役立つ人材を育てるのが表向きの狙いだが、特に優秀な者はスパイとして正式採用されるとゆう噂がある。職業の特性上、噂の真偽を確かめようがないけれど。

 千鳥はおかっぱ頭のブレザーをたくし上げ、FNファイブセブンを奪う。五・七ミリの新型弾薬をもちいる高価な銃だ。さらに左の袖をめくり、手首に描かれたQRコードを露出させる。レーザーでプリントされたもので、スパイゲーム参加者の義務のひとつだ。おかっぱ頭は下着をつけておらず、第二ボタンまで開けたブラウスから胸の谷間が見え、濃厚な香水の匂いがたちのぼる。

 千鳥はアイフォンにインストールしてある専用アプリで、手首のQRコードを読み取る。画面に表示された名前は「チャオ・アルテミシア」。通学先はセレブリテ学園で、学年は千鳥とおなじ二年。登録された顔写真とも一致する。事務局のデータベースへのハッキングなどで、偽の経歴を仕込むのも不可能と言い切れないが、銃の選択が成金学校らしいし、千鳥は事実だと直感した。

 千鳥が尋ねる。「ひょっとして中国人?」

「アメリカ人だ」アルテミシアが答える。「サンフランシスコの高校から留学している」

「そう言えば、有名なハリウッド女優も来てるんだってね。ミーハーな子たちが噂してる」

「いづれ彼女と今日のお礼をさせてもらう」

「サインをもらおうかな。迎え撃ったあとで」

 アルテミシアは皮肉を黙殺し、目尻の吊り上がった目で千鳥の背後を凝視している。足音を聞き取った千鳥は、背面攻撃をうけたと思い戦慄した。




 振り向くと同時に、千鳥は足音の主に対しグロックを構える。闖入者はいきなり銃口を向けられ、あくびをしたまま硬直する。

 異様な風体だ。

 髪をツインテールにむすび、ごてごてとフリルがついた黒のブラウスを着ている。スカートは指定のものだが、パニエでふくらませてある。いわゆるゴシックロリータのスタイル。青白い顔の左目を眼帯で隠している。右目には紫のカラーコンタクト。自由な校風とは言え、あまりに突飛なファッションだ。

 彼女は高等部一年の平手ミキ。「中二病のコ」と陰で呼ばれる、千鳥とちがい悪い意味での有名人だ。校内放送で呼び出されたのに、まだ校舎裏をうろついてるあたり、問題児の評判を裏切らない。

「君は一年の平手さんだね」千鳥が言う。「こんなところで何してる」

「ははっ」ミキが笑う。「不審者はどっちですか。警備員のおじさんが倒れてるし、そこの人は血まみれだし、先輩なんてグロック持って鼻血出してるし」

「これは部活動だ」

「ああ、あれね。学校公認のサバゲ」

「スパイゲームはサバゲじゃない」

 生意気な口調にいらついた千鳥はトゲのある声で言い返すが、ミキはすでに会話に関心を失ったらしく、通りすぎてフェンスへちかづく。

「おい」千鳥が叫ぶ。「知らないのか。フェンスには高圧電流がながれてる」

「毎日の通学路ですけど。ボクんちは裏の蕎麦屋なんで」

 ミキが地面の敷物を引くと、フェンスの下に約一メートルの深さの穴があらわれる。草をくくりつけたカモフラージュネットで隠されていた。

 やりとりを見守っていたアルテミシアがよろけながら立ち上がる。潜ろうとするミキに体当たりし、自分が先に小さな穴を掻いくぐった。

 ミキは、走り去るアルテミシアに「ふざけんな死ね」と呪詛を投げつけたあと、四つん這いで穴を通り抜ける。慎重に、かつ手際よくネットを元にもどす。ゴスロリ服についた土埃を払う。

 千鳥はわざとらしく両手を上げて首を振り、金網ごしにミキへ言う。

「さっき校内放送で呼ばれてたぞ。進路指導室に来いって」

「どうでもいいです。いまさらボクに関係ない」

 ミキは鼻で笑うが、眼帯に覆われてない紫の瞳が虚ろになったのを、千鳥は見逃さなかった。




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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

長門知大『将来的に死んでくれ』

 

 

将来的に死んでくれ

 

作者:長門知大

掲載誌:『別冊少年マガジン』(講談社)2016年-

単行本:講談社コミックス マガジン

[ためし読みはこちら

 

 

 

まづ表紙を見てみよう。

「膝乗り」は、JK同士が睦みあう風景の典型と言える。

椅子がわりに太腿を提供してるのが、黒髪でクールな「小槙」。

いつもジャージを羽織っている。

あかるい色の前髪ぱっつんボブの「俊(しゅん)」が、

小槙の胸元に一万円札をたくさんねじこむ。

 

 

 

 

表紙は本作のオープニングシーンを再現したもの。

俊は小槙が好きなのだが、相手のつれない態度に業を煮やし、

金銭をちらつかせて肉体関係を要求する様になった。

 

 

 

 

愛情表現が歪みきると、美少女はただのエロオヤジと化す。

百合漫画は、どちらかと言うと文学的で高尚なジャンルであるが、

本作はそれを即物的で下世話なレベルに引き下げたコメディだ。

 

 

 

 

小槙も果敢に反撃する。

俊の「処女厨」的言動が気持ち悪いので、幻想を打ち砕いたり。

 

 

 

 

過剰なスキンシップをもとめられ、ヤられるよりヤッた方がマシと胸をさわる。

俊は着痩せするタイプで、意外なボリュームにおどろく。

 

 

 

 

下校途中にとおったラブホの前で、ちょっと休んでこうと懇願される。

いつものことなので小槙は取り合わないが、ポロッと本音をもらす。

原理原則を語ってるだけだが、場所が場所なだけに合意と解釈できなくもない。

 

 

 

 

女がふたりいれば、関係はさまざま。

親密だったり、普通だったり、冷淡だったり。

いづれにせよそこには女同士でしかありえない特異性があって、

人によってはそれを百合とよぶ。





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テーマ : 百合漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合 

コーエン/デロング『アメリカ経済政策入門』

著者:スティーヴン・S・コーエン J・ブラッドフォード・デロング

訳者:上原裕美子

発行:みすず書房 2016年

 

 

 

おもにアメリカにおいて、どんな経済政策が成功してきたかまとめている。

右や左のイデオロギーに関係なく、現場における生産性向上だけを目的とし、

幾度も政策を再設計しつづけることによって、経済成長がもたらされた。

 

 

アメリカ経済は最初からそうだった。

設計者の名はアレグザンダー・ハミルトン。

 

アレグザンダー・ハミルトンは、アメリカ合衆国の経済を、

もっとも大胆、もっとも独創的、

そしてもっとも重大かつ意図的に作り変えたアーキテクトである。

 

誰がなんと言おうと、ジェファーソン的理想主義がこの国で主流だったことはない。

 

 

首尾一貫性が本書の美点。

たとえば20世紀なら、ニューディール政策はケインズ主義でないのを確認したり、

軍人出身で右寄りのイメージがあるアイゼンハワーについても、

ニューディール期以上に「大きな政府」だったと指摘する。

記述に背骨がとおっている。

iPhoneを構成する技術のほとんどは、政府が開発に関与したものらしいが、

「がんばる息子をやさしく見守るお父さん」のイメージで、アメリカ政府が語られる。

 

 

そしてドイツや日本はハミルトンに学んだ。

実際に彼の著書が、工業化を達成するための理論として重要な役割を果たした。

1960年において日本車の性能は、外国ブランドとくらべて痛ましいほど劣っていたが、

輸入車が日本の道路を走ることはまったくなかった。

保護貿易のおかげである。

「三菱や住友にとってよいことは、日本にとってもよいことだ」とゆう信念のもと、

高級官僚たちは産業を育て、見返りに天下り先を提供された。

この癒着のせいで、現在の官僚はつぎに育てるべき産業を見極められないが。

 

 

アメリカ経済政策における最新の設計図は「金融の成長」。

惨憺たる失敗におわった。

それ自体たいした富を生み出さず、派生的な経済活動にもつながらない。

商用飛行機・半導体・コンピュータなどがもたらした高価値産業と比較にならない。

過去30年に金融業界で生じたイノベーションはATMくらいのもの。

ウォールストリートにとってよいことは、メインストリートにとってよいことではなかった。

 

 

わかりやすいシンプルなストーリーのあとに皮肉なエンディングをむかえる、

あらゆる人に勧めたい良書だ。





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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

梶谷きり『輝きのミニョン』

 

 

輝きのミニョン

 

作者:梶谷きり

掲載誌:『good!アフタヌーン』(講談社)2016年-

単行本:アフタヌーンKC

[ためし読みはこちら

 

 

 

吹奏楽ものと思わせつつ、本作はれっきとしたアイドル漫画だ。

髪を三つ編みにした少女は、14歳の「千鳥きみこ」。

オーディション前の緊張をやわらげようと、得意のトランペットを吹いている。

 

 

 

 

ヒロインのピュアなたたずまいが、本作のウリ。

田舎育ちで垢抜けないが、いきなり公園で歌い出したり、

アイドルになりたいとゆう一途な思いがほとばしる。

 

 

 

 

きみこは事務所と契約し、3人組ユニットをくむ。

メンバーはみなかわいい。

 

梶谷きりはアフタヌーン四季賞出身の作家で、

ラノベのコミカライズで単行本を4巻だしている。

描線はすっきりしている一方で艶があり、

これまでチェックしてなかったのが悔やまれるほど。

 

 

 

 

ストーリーは、アイドルの日常を淡々と追う感じ。

18歳の「茉莉亜」は秋葉原のメイドカフェで働いてたりとか、

地下アイドルあるあるネタをたのしめる。

あとメイド服がよく描けている。

 

 

 

 

男の手を握った経験すらないきみこは、握手会が不安だったが、

相手とじっと視線を合わせるのが大事と気づいてファンの数をふやす。

 

 

 

 

作品全体としてはすこし地味かもしれない。

1巻終了時点でこれと言った事件はおきないし、ライバルもいないし、

「なぜアイドルになりたいのか」「なぜ育てたいのか」の動機づけも弱い。

 

 

 

 

それでも僕は本作を推す。

だって女の子がとびきりかわいいから!

容姿も、服装も、性格も。

アイドル漫画である以上、購読継続にはそれで十分だ。





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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

相崎うたう『どうして私が美術科に!?』

 

 

どうして私が美術科に!?

 

作者:相崎うたう

掲載誌:『まんがタイムきららMAX』(芳文社)2016年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

本作の舞台は高校の美術

美術ではない。

主人公の「桃音」は願書の記入をまちがえ、普通科のつもりで入学した。

ちゃんとした絵なんて描けないし、描く気もないのに。

 

「きららの次世代を代表する」とのキャッチコピーが単行本帯にある。

2コマめのデフォルメを3コマめのクロースアップにつなぐ手並みなど、

萌え4コマの表現技法に習熟した、きららネイティヴ世代の作家らしい。

 

 

 

 

粘土をつかい自分の手の塑像をつくることに。

「手をつないでる構図」をモチーフにすると決め、早速スケッチ開始。

おそろしく描きづらいけど。

 

美術科・百合・ギャグの三原色のトーンをたのしむ漫画だ。

 

 

 

 

きららと言えば学校制服。

かわいいJKが、かわいい制服を着てれば、10000%かわいい。

一方で差別化がむつかしい。

本作は作業用のつなぎで美術科らしさをアピール。

 

 

 

 

みんなで美術館へ。

前衛藝術を愛する「紫苑」は、いつもはクールなのに気負いこみ、

謎めいたオブジェをみつけて評論家みたく解説するが、

それはクラスメートの「蒼」がうっかり落とした定期入れだった。

 

 

 

 

写真の課題のため、足をのばし野外撮影。

山にのぼって大好きな街の全景をおさめる。

 

本作は相崎うたうにとって初連載かつ初単行本だが、

ハッとする様なシーンをいくつか切り取るのに成功している。

 

 

 

 

美とゆう理念の周縁でたわむれる美少女たち。

そこは鑑賞者に幸福をもたらす百合色の展覧会だ。





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テーマ : 4コマ漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 萌え4コマ  きらら系コミック  百合 

青木U平『妹はメシマズ』

 

 

妹はメシマズ

 

作者:青木U平

掲載誌:『まんがライフSTORIA』(竹書房)2016年-

単行本:バンブーコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

黒縁メガネをかけて頭がよさそうな「チヨリ」が、兄のアパートにやってきた。

開口一番、料理をおしえるよう要求。

 

 

 

 

優等生であるチヨリの唯一の弱点はメシマズ、つまり料理がヘタなこと。

その腕前は、包丁をもたせると死者が出かねないほど。

居酒屋のバイトで料理をおぼえた兄は、先生にうってつけ。

 

 

 

 

萌え系作品においてメシマズ属性は大人気。

「女は料理ができて当然」とゆう、いまだ根強い社会通念が、

皮肉な味のスパイスとなって素材を引き立てる。

米研ぎだけで大騒ぎになったり、わざわざ水平器をつかって水量を計ったり。

あまりに几帳面な性格のせいで、手順を教わってもおにぎりすら作れない。

 

 

 

 

兄は芸人を目指して家を出たが、12年たってもさっぱり売れず、

惰性でつづけているバイトで料理の腕だけ上達した。

そんなの自慢できるスキルじゃないと、メシマズ妹は鼻で笑う。

決して馴れ合わない、兄妹の距離感が独特だ。

 

 

 

 

文化祭の屋台では、「名状しがたいたこ焼きの様なもの」を生成。

それでも悪戦苦闘するチヨリは愛くるしい。

何度失敗してもめげない、一生懸命さが胸を打つ。

 

 

 

 

「妹」と「メシマズ」……どちらも定番メニューと言える属性だが、

この組み合わせは妙にクセになる。

セブンイレブンが1983年に、ツナマヨおにぎりを発売したのに匹敵する発明かも。





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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

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