はちこ『百合百景』
「幼馴染の女の子を好きになっちゃって段々普通でいられなっていく百合」
百合百景
作者:はちこ
発行:KADOKAWA 2017年
レーベル:MFC
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pixivなどに投稿した、おもに1ページの百合のイラストや漫画を、
フルカラーでなんと百篇も収録した作品集。
女子が女子の膝に乗る様子とか、学校に設置した定点カメラの映像みたい。
「相手の頭を引き寄せてチューする百合」
熱烈なキスは、さすがに女子校でもめったに見れなさそう。
百合はリアルで、かつファンタジックな概念だ。
「Yシャツの隙間から見えるアレに夏を感じる百合」
友達は胸がおおきいので、ブラウスに隙間ができ下着がみえる。
ついまじまじと観察してしまう。
他者の視線に無防備な女子校ではありがち。
「夏限定役得百合」
暑い日は制服なんて着てられない。
バサバサと扇いで熱を逃がし、さらに団扇で風を送ってもらう。
友達にとっては役得。
「ぱんつを毎日チェックするのが日課の百合」
斯様に、あけっぴろげになんでも共有するのが百合の美点である一方で、
たとえ女同士でも越えられたくない一線もある。
「今日のパンツ」は見せられないとか。
火に油を注ぐ結果にしかならないけど。
「鈍感な女子高の王子様と嫉妬する女の子の百合」
ストーリーを感じさせる作品も。
ネクタイを引っぱる右の少女は、同性からモテる友人に嫉妬している。
鈍感な友人は、もらったお菓子をあげるとか言って、ますます怒らせる。
制服の着こなしが個性を強調し、たあいない日常を長篇ラブコメに仕立てる。
「卒業百合」
百合は絵になる。
たとえば、男同士の「卒業BL」を描いてもつまらないだろう。
季節がめぐるなかでの悲喜こもごもをスナップ撮影し、
永遠にわすれられないピュアな思いをアルバムにしまう。
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タチバナロク『また、片想う。』
また、片想う。
作者:タチバナロク
掲載誌:『月刊少年エース』(KADOKAWA)2016年-
単行本:角川コミックス・エース
恋心を打ち明けられず、悶々とする乙女のストーリーとおもわせるタイトルだが、
主人公の「詩帆」は早くも第1話で、幼なじみの「司」と交際をはじめる。
ふたりきりの帰り道、司がペシミスティックな恋愛観を開陳する。
「両想いの恋」なんて存在しないと。
だって恋する者同士でも、その想いはイコールじゃない。
おたがい片想いしてる様なものだ。
憂鬱な予感をはらむ一方で、恋愛モノらしい見せ場もえがかれる。
3話でのういういしい初デート。
『可愛い上司を困らせたい』でもおもったが、
タチバナロクは女の服と肉づきのよいカラダにこだわりがあるらしい。
4話で、もうひとりの幼なじみである「元明」から告白され、板挟みに。
本作はここまで、よくある恋愛モノの範疇におさまっている。
ところが5話で物語は急展開。
ネタバレを避けるため具体的に書かないが、
制服のまま川に入りたくなるほどの事件がおきる。
本作は、『時をかける少女』(1967年)から『君の名は。』(2016年)まで、
日本のサブカルチャーで根強い人気を誇る「タイムリープもの」の系譜につらなる。
でも様子がおかしい。
元気な司をみて涙を流しながら駆け寄る詩帆の目に映ったのは、
恋人であるはずの男が見知らぬ女とやけに親しくする姿。
僕が「タイムリープもの」を好きじゃないのは、主人公が自動的に賢くなるから。
ゲームでリトライをくりかえすみたく単純で、興ざめする。
けれども『また、片想う。』の作品世界は、時間を遡るたび、
どうやら人間関係がまるごとリセットされるらしい。
人生は偶然の積み重ねであるわけで、それが当然とも言える。
どれだけ頭をつかっても、一寸先さえ誰にもわからないから、
恋ってステキなんでしょとゆう、明確なメッセージを発信する要注目作だ。
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神崎かるな/黒神遊夜『武装少女マキャヴェリズム』6巻
武装少女マキャヴェリズム
作画:神崎かるな
原作:黒神遊夜
掲載誌:『月刊少年エース』(KADOKAWA)2014年-
単行本:角川コミックス・エース
女帝・天羽斬々との戦いに決着がつく。
ひたすらボコりあったあと、女帝がダウンし、デレておわり。
武術の巧妙な駆け引きを、詰将棋みたく緻密にえがける、
この作者たちにしてはぞんざいなセットピースだったかもしれない。
そして前作を象徴するキャラ、鳴神虎春が登場。
『しなこいっ』オールスター化が加速する。
神崎&黒神ファンで、虎春を嫌いな者はいない。
孤高の天才ぶりが彼女の魅力。
心臓がやぶれそうな緊迫する場面でも微笑をたやさず、
こんがらがった詰将棋を瞬時に解き、痛烈な一撃をくりだす。
闇夜にはしる迅雷の様に、世界をおのれの色に塗りかえる。
その色は、黒々とした赤。
「骨の髄まで病んだ血脈」とゆうテーマが、武リズムでも復活した。
打ち切られた前作の信奉者としては複雑な気分だ。
どうかんがえてもストーリーが破綻している。
主要キャラの輪やメアリがあっさり端役に降格したのを許容するのはむつかしい。
新章突入で新キャラも続々とあらわれる。
容貌、服装、口調……あいかわらず冴えてる。
連載を打ち切られようが、ストーリーが破綻しようが、
作者が癌で大腸全摘出しようが、ビクともしない世界観。
4月からアニメがはじまるが、あまり期待しない様にしている。
だってファンの理解すら超える異色の作家の特異な作品を、
手際よく料理できるアニメ職人なんてそういないでしょう。
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椿あす『綴‐目を開けて見えた景色‐』/草野紅壱『純潔戦線』
椿あす『綴‐目を開けて見えた景色‐』(ガンガンコミックスJOKER/ためし読み)は、
あかるい髪色の少女「綴(つづる)」が主人公。
ワンピースがうれしいらしく、鼻歌まじりで舞い踊る。
綴がゴキゲンなのは、夢がかなったから。
彼女は自殺者だった。
いわゆる性同一性障害に苦しみ、
生物学的にあたえられた「男」とゆう性別での人生を放棄した。
ところが心肺停止状態だった体をある研究者に拾われ、
脳だけ移植したサイボーグとして、女のカラダで生まれ変わった。
本作のストーリーはSF風だが、未来的なテクノロジーは描写されない。
たとえば、顔の表面をパカッとはづして中の機械を見せる様なシーンはない。
そのかわり「ぼく」と言うときの綴の表情などで、独特の浮遊感を表現する。
草野紅壱『純潔戦線』(バーズコミックス)は、連載8年単行本全12巻と息の長かった、
『お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!』につづく新作。
夜の市街地で、コスプレっぽい格好の少女たちが銃撃戦をくりひろげる。
PSVRと電動オナホを装備した、あからさまな変態が相手。
作者お得意の下ネタが冒頭から炸裂する。
彼女たちは「紅羽」と「琴子」、魔法少女である。
「妹もの」だった前作とくらべると随分スケールアップ。
よくある「魔法少女もののパロディ」とおもいきや、あらたな世界観も提示。
マスコットのペンギンがわらわらと湧き、
戦闘によって破壊された建造物を修復したりしておもしろい。
モブキャラ同士のキスシーンを必要以上に念入りにえがくなど、
作風は「ちょっとエッチなラブコメ」の引力に絡め取られたまま。
車輪をまわすハムスターみたく、作家たちは全力疾走する。
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外海良基『生きてますか? 本田くん』
生きてますか? 本田くん
作者:外海良基
掲載誌:『月刊少年ガンガン』(スクウェア・エニックス)2016年-
単行本:ガンガンコミックス
[ためし読みはこちら]
このラブコメは、最初のページからクライマックス。
ブアイソで左頬に傷のある「本田くん」が、小柄で能天気な「有栖さん」に告白。
交際を申し込まれた有栖さんは、いまはそれどころじゃないと困惑する。
だって、世界はゾンビに支配されてるから。
乙女心がくすぐられる環境じゃない。
有栖さんは食べ物にうるさいタイプ。
炊飯器を持ち歩き、食材探しに余念がない。
おいしいものを食べてるとき、人は生きてると実感できる。
ゾンビを撃退したあと、ふたりは山の上の避難所へむかう。
放課後の仲良し高校生カップルに見えなくもない。
外海良基は『Doubt』『JUDGE』『Secret』といった、
ソリッドシチュエーションスリラーで知られる作家。
『JUDGE』は2013年に有村架純主演で映画化されている。
藝風をかえて密室から飛び出しただけあり、本作はロケーションが魅力的。
たとえば千葉県の名山である、鋸山の日本寺大仏とか。
こちらは、東京湾アクアラインの海ほたるパーキングエリアにある、
掘削にもちいるカッターフェイスをあしらったモニュメント。
はしゃいでる有栖さんがかわいい。
タイトルで婉曲に表現されてるとおり、本田くんも実は一種のゾンビらしい。
危険な道中のなか、おそるべき秘密が徐々にあきらかとなり、
併行してふたりの恋も進展する個性的なストーリーだ。
たしかにすべて成功してるとは言えないけれど、
アクアラインを背景に切り取る手際とか、異彩を放っている。
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くま『オークが女騎士を育成してみた』/華々つぼみ『クロちゃん家の押入れが使えない理由』
くま『オークが女騎士を育成してみた』は、
『となりのヤングジャンプ』でウェブ連載されているファンタジー系のコメディ。
冒頭で主人公の「女騎士」が、醜悪なオークにつかまる。
18禁のファンタジーものではメタメタに陵辱されるのがお約束だが、
デブで髪もボサボサの女騎士にオークたちは興味をしめさない。
見るに見かねたオークの「若頭」が、女騎士を更生させると宣言。
トレーニングや食事制限を課すなど、きびしいダイエットにとりくむ。
王道ファンタジーの設定をひねったラノベっぽい世界観だが、
スポ根漫画的に熱い場面などに個性が発現している。
華々つぼみ『クロちゃん家の押入れが使えない理由』(ためし読み)は、
『コミックキューン』で連載中のSF系コメディ。
自宅の押入れがワームホールにつながっていて、
そこから宇宙人がわんさか訪問してくるとゆう話。
宇宙人といっても、ハムスターみたいな外見だったりしてかわいい。
コマ割りは比較的自由だが、4コマ漫画専門誌らしくほのぼのした作風。
主人公の「黒美」が触手でおそわれるサービスシーンもあるけれど……
ええ、もちろん表紙買いですよ。
内容は、、、いかがわしさのカケラも無いので、
そういうのを求めてはいけません。
また、表紙詐欺とか騒がないでください、このロリコンども!
……熱心なファンの多い「触手もの」としては中途半端かもしれない。
ファンタジーが日常になったり、日常がSFになったりして大変だだが、
なんだかんだで彼女たちの暮らしは平穏にすぎてゆく。
家族やクラスに美少女があつまるのが天文学的奇跡なのだから、それで満足。
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卯花つかさ『アニマエール!』1巻/如意自在『はるかなレシーブ』3巻
きらら系コミックを2作紹介。
卯花つかさ『アニマエール!』(ためし読み)は、チアリーディングもの。
単行本が5巻まで出た『はじおつ』の作者による新作だ。
チアリーダーはかわいい。
そして、きらら作品の女の子はかわいくないといけない。
ゆえに相性のよい題材と言える。
軽音楽部とかSNS部とか、きらら系作品は「文化部」をおもな舞台としてきたが、
最近は女子野球をとりあげたマウンテンプクイチ『球詠』に代表される様に、
スポーツで汗をながす少女たちの爽やかなセックスアピールを追求する。
如意自在『はるかなレシーブ』(ためし読み/当ブログの関連記事)は3巻突入。
競技性と女性美の両立とゆう点で、ビーチバレーにまさる種目はないだろう。
後輩やコーチなどの新キャラが登場したせいもあり、3巻はストーリー面が薄い。
きらら最大の弱点である。
かわいさなら世界一だが、プロットらしいプロットをもつ作品がほぼ皆無。
それでも夕刻の海を背景に肩をならべて絆をたしかめあう、
水着姿の少女たちはやっぱり絵になるし、心惹かれる。
買ったけど短すぎてはけないスカートも、水着にあわせれば問題なし。
可憐な娘をえがくため各種スポーツを利用してるだけな気もするが、
そんな貪欲さもきらら作品の魅力だ。
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江島絵理『柚子森さん』2巻
柚子森さん
作者:江島絵理
掲載サイト:『やわらかスピリッツ』(小学館)2016年-
単行本:ビッグスピリッツコミックス
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小4の少女に本気で恋した女子高生をえがく百合漫画の第2巻は、
主人公の親友「栞」をからませて緊張感のあるはじまり。
みみかは敬語をつかうなど、7つ年下の柚子森さんに卑屈な態度をとる。
その美貌と、子供らしいプライドに対し、崇拝的な感情をいだく。
しかし栞の登場により、無愛想だった柚子森さんの言動が変化。
柚子森さんが露骨に嫉妬しはじめる。
みみかが他の女と仲よくする様子をみて気分を害し、
感情表現がとぼしいなりに、前から好意をもっていたのが判明。
1巻についての当ブログの記事から引用。
パンキッシュな疾走感と、
クールな構成力が共存する傑作『オルギア』とくらべたら、
ゆるゆるふわふわな『柚子森さん』は、江島にしては小品と言える。
さらっと一筆書きで描いた様な。
勿論、読者にそうおもわせる伎倆がすさまじいのだが。
我ながらイイ線いってるとおもった。
江島絵理は「闘争」をえがく作家だ。
その作品世界で少女らはクールに駆け引きしつつ、衝動的にヒートアップする。
間合いを測り、防禦し、回避し、相手の隙をみつけ、致命的な一撃をくわえる。
愛のために、身の破滅をおそれず闘う。
暗闇と血飛沫で黒々と塗りたくられた『少女決戦オルギア』とうってかわり、
『柚子森さん』の絵面はキラキラと華やか。
一方、たとえば下から4枚めの告白シーンにおいて顕著だが、
背景での写真の使い方や、ほかには各話のつなぎ方など、
あちこちで視覚的な工夫が凝らされてて感心しきり。
江島はもはや、現在の代表的作家に数えられるべきだろう。
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あずま京太郎/日向寺明徳『サクラブリゲイド』7巻完結
サクラブリゲイド
作画:あずま京太郎
原作:日向寺明徳
発行:講談社 2014-17年
レーベル:シリウスKC
人型ロボットでの戦争をえがくSFと、学園ラブコメを融合させた傑作は7巻で完結。
超国家的な軍事組織「アルカディア」がたくらむ陰謀は最終段階へすすみ、
基地がまるごと巨大な機動兵器に変形して、ICBMで日本を核攻撃しようとする。
そんな手に汗握る展開でも、あずま京太郎は読者へのサービスをわすれない。
スパイとしてブリキの旅団に潜入していた「井手大尉」のおっぱいとか。
決戦の夜。
いま言わないと、悪いことがおきたとき後悔するとおもい、梓が桜に告白する。
古風な美人に似つかわしい口ぶりで。
2巻で張った伏線の回収でもある。
敵の新型「アルファ・オメガ」は、装甲も火力も桁外れ。
この強敵を斃さないと、核ミサイルはとめられない。
ところがライバルの積極性に煽られ、恋愛どころじゃないのに雛まで愛をさけぶ。
仲間に聞かれるのもかまわず、無線を通じ大声で。
元気で無邪気な雛らしい。
硬派なロボットSFと、軟派なハーレムラブコメの微妙なバランスを、
最後までたもちつづけたのは見事だ。
ロボットものに関心ない僕でさえ胸に迫るものがある。
本作はあとがきの類いがなく、このコンビが今後つづくのかわからないが、
特に作画のあずま京太郎は、ロボットの硬さと女の子の柔らかさを、
すみずみまで丁寧に描写して独自の世界観を提示しており、次回作もたのしみ。
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苺野しずく『とうげる! ヨツワちゃん』
とうげる! ヨツワちゃん
作者:苺野しずく
発行:日本文芸社 2017年
レーベル:ニチブンコミックス
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主人公は「円陣ヨツワ」、女子中学生である。
紅いスバルBRZを駆って峠を攻める。
勿論、14歳で運転免許は取得できない。
財閥のお嬢さまなので、親に峠をまるごと買ってもらった。
私有地なら道路交通法の適用外だ。
ある夜、カネに物を言わせてチューニングしたBRZが、
アニメキャラの塗装がほどこされたランエボにぶっちぎられる。
痛車に乗るオタクに完敗し、ヨツワの自尊心はズタズタに。
ランエボに乗る「イチロー」は、普段はコックとして働く青年。
何度も勝負をいどんでいるうち、ヨツワの敵愾心は恋心にかわる。
ヨツワの財力は桁外れで、ステルス戦闘空母(?)まで所有している。
ルーズソックスを履いてたりとか、魅力的なキャラ造形だ。
豪雨で地盤が崩れて危機一髪……など、ドラマチックな場面もあり。
峠レースとボーイ・ミーツ・ガールとギャグを贅沢に盛りこむ。
ストーリー面は、公道バトルに挑戦する動機の描写がよわく、
設定こそ興味ぶかいが1巻で完結となっている。
でも女性作家による自動車漫画は珍しいし、個性的な作品としておすすめ。
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葉賀ユイ『サクラ*ナデシコ』2巻/高橋哲哉『ドキドキしすたー♡葵ちゃん』3巻完結
「百合とふたなりとアイドル」がテーマの葉賀ユイ『サクラ*ナデシコ』は、
ちょっとばかり詰め込みすぎの漫画だが、2巻でさらに輝きをました。
不自然なくらい。
表紙と単行本扉絵では、脇の下を大々的にフィーチャー。
さわやかなフェロモンで読者を殺しにかかる。
百合方面も進展をみせる。
過剰なスキンシップで、浴場が欲情の空間に。
葉賀ユイのえがく女の子はコロコロとお人形の様に可憐だが、
どことなくデッサン人形風に無機質でもある。
ベッドで淫らに交わる姿と、道場で寝技を仕掛ける姿に大差がない。
かわいさの表現は洗練と抽象性をきわめ、記号論の域に達している。
高橋哲哉『ドキドキしすたー♡葵ちゃん』は、3巻で堂々完結。
横たわって満ち足りた笑顔で兄と「恋人つなぎ」する、カバー下の葵ちゃん。
記号的な妹像の最高到達点か。
最終巻でも作者はサーヴィス精神をゆるめない。
学園祭でメイドカフェをひらくのはまあ定番だとして、
われらが葵ちゃんはなぜかなんとなくなりゆきでノーパンでお給仕。
コーヒーポットをもちいた熱い視線誘導のトリックに幻惑される。
がむしゃらにひたすらにまっしぐらに、お兄ちゃんがだいすき。
不純物ゼロの兄妹愛をえがいた傑作として歴史にのこるだろう。
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okama『Do race?』
Do race?
作者:okama
掲載誌:『ヤングアニマル増刊Arasi』(白泉社)2016年-
単行本:ヤングアニマルコミックス
[ためし読みはこちら]
セクシーで優雅なドレスを着てたちならぶ、5名の淑女。
これからなにがはじまるのか。
彼女たちは、「ドレース」とゆう競技に参加するレーサー。
華麗なドレスはジェット戦闘機の様な乗り物に変形し、
宇宙空間にはりめぐらされたチューブのなかを超音速でとぶ。
星間国家同士の対立を、戦争のかわりにレースでけりをつけるなど、
スペースオペラ的な設定がなされている。
主人公の「キュウ」がスパイ容疑で収監されたりも。
一方、ファンシーな絵柄で女子のたわいない日常もえがかれる。
okamaならではの世界観と言うほかない。
ドレースは肉体への負担がおもい。
加速Gにより色が見えなくなったり(グレーアウト)、気絶したり(ブラックアウト)する。
死と隣り合わせのスピード感をつたえる表現力は、ベテランらしい藝のこまかさ。
キュウは孤児院でそだった苦労人。
レース中もドロドロした人間関係がまとわりつくが、
それも駆け引きの一部とわりきって再加速し、ぶっちぎる。
はげしいレースの描写、スタイリッシュな絵づくり、乱調子のギャグ、
ぶっとんだ近未来設定などが渾然一体となった個性的な作品だが、
浅田弘幸『BADだねヨシオくん!』に似ていると僕はおもう。
作者の世代的にも直接影響をうけてるかもしれない。
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