椿あす『綴‐目を開けて見えた景色‐』/草野紅壱『純潔戦線』

 

 

椿あす『綴‐目を開けて見えた景色‐』(ガンガンコミックスJOKER/ためし読みは、

あかるい髪色の少女「綴(つづる)」が主人公。

ワンピースがうれしいらしく、鼻歌まじりで舞い踊る。

 

 

 

 

綴がゴキゲンなのは、夢がかなったから。

彼女は自殺者だった。

いわゆる性同一性障害に苦しみ、

生物学的にあたえられた「男」とゆう性別での人生を放棄した。

ところが心肺停止状態だった体をある研究者に拾われ、

脳だけ移植したサイボーグとして、女のカラダで生まれ変わった。

 

 

 

 

本作のストーリーはSF風だが、未来的なテクノロジーは描写されない。

たとえば、顔の表面をパカッとはづして中の機械を見せる様なシーンはない。

そのかわり「ぼく」と言うときの綴の表情などで、独特の浮遊感を表現する。

 

 




 

 

草野紅壱『純潔戦線』(バーズコミックス)は、連載8年単行本全12巻と息の長かった、

『お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!』につづく新作。

 

夜の市街地で、コスプレっぽい格好の少女たちが銃撃戦をくりひろげる。

PSVRと電動オナホを装備した、あからさまな変態が相手。

作者お得意の下ネタが冒頭から炸裂する。

 

 

 

 

彼女たちは「紅羽」と「琴子」、魔法少女である。

「妹もの」だった前作とくらべると随分スケールアップ。

 

 

 

 

よくある「魔法少女もののパロディ」とおもいきや、あらたな世界観も提示。

マスコットのペンギンがわらわらと湧き、

戦闘によって破壊された建造物を修復したりしておもしろい。

 

 

 

 

モブキャラ同士のキスシーンを必要以上に念入りにえがくなど、

作風は「ちょっとエッチなラブコメ」の引力に絡め取られたまま。

車輪をまわすハムスターみたく、作家たちは全力疾走する。

 

 




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外海良基『生きてますか? 本田くん』

 

 

生きてますか? 本田くん

 

作者:外海良基

掲載誌:『月刊少年ガンガン』(スクウェア・エニックス)2016年-

単行本:ガンガンコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

このラブコメは、最初のページからクライマックス。

ブアイソで左頬に傷のある「本田くん」が、小柄で能天気な「有栖さん」に告白。

交際を申し込まれた有栖さんは、いまはそれどころじゃないと困惑する。

 

 

 

 

だって、世界はゾンビに支配されてるから。

乙女心がくすぐられる環境じゃない。

 

 

 

 

有栖さんは食べ物にうるさいタイプ。

炊飯器を持ち歩き、食材探しに余念がない。

おいしいものを食べてるとき、人は生きてると実感できる。

 

 

 

 

ゾンビを撃退したあと、ふたりは山の上の避難所へむかう。

放課後の仲良し高校生カップルに見えなくもない。

 

外海良基は『Doubt』『JUDGE』『Secret』といった、

ソリッドシチュエーションスリラーで知られる作家。

『JUDGE』は2013年に有村架純主演で映画化されている。

 

 

 

 

藝風をかえて密室から飛び出しただけあり、本作はロケーションが魅力的。

たとえば千葉県の名山である、鋸山の日本寺大仏とか。

 

 

 

 

こちらは、東京湾アクアラインの海ほたるパーキングエリアにある、

掘削にもちいるカッターフェイスをあしらったモニュメント。

はしゃいでる有栖さんがかわいい。

 

 

 

 

タイトルで婉曲に表現されてるとおり、本田くんも実は一種のゾンビらしい。

危険な道中のなか、おそるべき秘密が徐々にあきらかとなり、

併行してふたりの恋も進展する個性的なストーリーだ。

たしかにすべて成功してるとは言えないけれど、

アクアラインを背景に切り取る手際とか、異彩を放っている。





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くま『オークが女騎士を育成してみた』/華々つぼみ『クロちゃん家の押入れが使えない理由』

 

 

くま『オークが女騎士を育成してみた』は、

『となりのヤングジャンプ』でウェブ連載されているファンタジー系のコメディ。

冒頭で主人公の「女騎士」が、醜悪なオークにつかまる。

18禁のファンタジーものではメタメタに陵辱されるのがお約束だが、

デブで髪もボサボサの女騎士にオークたちは興味をしめさない。

 

 

 

 

見るに見かねたオークの「若頭」が、女騎士を更生させると宣言。

トレーニングや食事制限を課すなど、きびしいダイエットにとりくむ。

 

 

 

 

王道ファンタジーの設定をひねったラノベっぽい世界観だが、

スポ根漫画的に熱い場面などに個性が発現している。

 

 




 

 

華々つぼみ『クロちゃん家の押入れが使えない理由』(ためし読み)は、

『コミックキューン』で連載中のSF系コメディ。

自宅の押入れがワームホールにつながっていて、

そこから宇宙人がわんさか訪問してくるとゆう話。

 

 

 

 

宇宙人といっても、ハムスターみたいな外見だったりしてかわいい。

コマ割りは比較的自由だが、4コマ漫画専門誌らしくほのぼのした作風。

 

 

 

 

主人公の「黒美」が触手でおそわれるサービスシーンもあるけれど……

 

ええ、もちろん表紙買いですよ。

内容は、、、いかがわしさのカケラも無いので、

そういうのを求めてはいけません。

また、表紙詐欺とか騒がないでください、このロリコンども!

 

アマゾンレビュー

 

……熱心なファンの多い「触手もの」としては中途半端かもしれない。

 

 

 

 

ファンタジーが日常になったり、日常がSFになったりして大変だだが、

なんだかんだで彼女たちの暮らしは平穏にすぎてゆく。

家族やクラスに美少女があつまるのが天文学的奇跡なのだから、それで満足。

 

 




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卯花つかさ『アニマエール!』1巻/如意自在『はるかなレシーブ』3巻

 

 

きらら系コミックを2作紹介。

卯花つかさ『アニマエール!』(ためし読み)は、チアリーディングもの。

単行本が5巻まで出た『はじおつ』の作者による新作だ。

 

 

 

 

チアリーダーはかわいい。

そして、きらら作品の女の子はかわいくないといけない。

ゆえに相性のよい題材と言える。

 

 

 

 

軽音楽部とかSNS部とか、きらら系作品は「文化部」をおもな舞台としてきたが、

最近は女子野球をとりあげたマウンテンプクイチ『球詠』に代表される様に、

スポーツで汗をながす少女たちの爽やかなセックスアピールを追求する。

 

 




 

 

如意自在『はるかなレシーブ』ためし読み/当ブログの関連記事は3巻突入。

競技性と女性美の両立とゆう点で、ビーチバレーにまさる種目はないだろう。

 

 

 

 

後輩やコーチなどの新キャラが登場したせいもあり、3巻はストーリー面が薄い。

きらら最大の弱点である。

かわいさなら世界一だが、プロットらしいプロットをもつ作品がほぼ皆無。

 

 

 

 

それでも夕刻の海を背景に肩をならべて絆をたしかめあう、

水着姿の少女たちはやっぱり絵になるし、心惹かれる。

 

 

 

 

買ったけど短すぎてはけないスカートも、水着にあわせれば問題なし。

可憐な娘をえがくため各種スポーツを利用してるだけな気もするが、

そんな貪欲さもきらら作品の魅力だ。

 

 


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タグ: 百合  きらら系コミック  萌え4コマ 

江島絵理『柚子森さん』2巻

 

 

柚子森さん

 

作者:江島絵理

掲載サイト:『やわらかスピリッツ』(小学館)2016年-

単行本:ビッグスピリッツコミックス

[当ブログの関連記事はこちら

 

 

 

小4の少女に本気で恋した女子高生をえがく百合漫画の第2巻は、

主人公の親友「栞」をからませて緊張感のあるはじまり。

 

 

 

 

みみかは敬語をつかうなど、7つ年下の柚子森さんに卑屈な態度をとる。

その美貌と、子供らしいプライドに対し、崇拝的な感情をいだく。

しかし栞の登場により、無愛想だった柚子森さんの言動が変化。

 

 

 

 

柚子森さんが露骨に嫉妬しはじめる。

みみかが他の女と仲よくする様子をみて気分を害し、

感情表現がとぼしいなりに、前から好意をもっていたのが判明。

 

 

 

 

1巻についての当ブログの記事から引用。

 

パンキッシュな疾走感と、

クールな構成力が共存する傑作『オルギア』とくらべたら、

ゆるゆるふわふわな『柚子森さん』は、江島にしては小品と言える。

さらっと一筆書きで描いた様な。

勿論、読者にそうおもわせる伎倆がすさまじいのだが。

 

我ながらイイ線いってるとおもった。

 

 

 

 

江島絵理は「闘争」をえがく作家だ。

その作品世界で少女らはクールに駆け引きしつつ、衝動的にヒートアップする。

 

 

 

 

間合いを測り、防禦し、回避し、相手の隙をみつけ、致命的な一撃をくわえる。

愛のために、身の破滅をおそれず闘う。

 

 

 

 

暗闇と血飛沫で黒々と塗りたくられた『少女決戦オルギア』とうってかわり、

『柚子森さん』の絵面はキラキラと華やか。

一方、たとえば下から4枚めの告白シーンにおいて顕著だが、

背景での写真の使い方や、ほかには各話のつなぎ方など、

あちこちで視覚的な工夫が凝らされてて感心しきり。

江島はもはや、現在の代表的作家に数えられるべきだろう。





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あずま京太郎/日向寺明徳『サクラブリゲイド』7巻完結

 

 

サクラブリゲイド

 

作画:あずま京太郎

原作:日向寺明徳

発行:講談社 2014-17年

レーベル:シリウスKC

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人型ロボットでの戦争をえがくSFと、学園ラブコメを融合させた傑作は7巻で完結。

超国家的な軍事組織「アルカディア」がたくらむ陰謀は最終段階へすすみ、

基地がまるごと巨大な機動兵器に変形して、ICBMで日本を核攻撃しようとする。

 

 

 

 

そんな手に汗握る展開でも、あずま京太郎は読者へのサービスをわすれない。

スパイとしてブリキの旅団に潜入していた「井手大尉」のおっぱいとか。

 

 

 

 

決戦の夜。

いま言わないと、悪いことがおきたとき後悔するとおもい、梓が桜に告白する。

古風な美人に似つかわしい口ぶりで。

2巻で張った伏線の回収でもある。

 

 

 

 

敵の新型「アルファ・オメガ」は、装甲も火力も桁外れ。

この強敵を斃さないと、核ミサイルはとめられない。

 

 

 

 

ところがライバルの積極性に煽られ、恋愛どころじゃないのに雛まで愛をさけぶ。

仲間に聞かれるのもかまわず、無線を通じ大声で。

元気で無邪気な雛らしい。

 

 

 

 

硬派なロボットSFと、軟派なハーレムラブコメの微妙なバランスを、

最後までたもちつづけたのは見事だ。

ロボットものに関心ない僕でさえ胸に迫るものがある。

 

 

 

 

本作はあとがきの類いがなく、このコンビが今後つづくのかわからないが、

特に作画のあずま京太郎は、ロボットの硬さと女の子の柔らかさを、

すみずみまで丁寧に描写して独自の世界観を提示しており、次回作もたのしみ。





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タグ: 近未来 

苺野しずく『とうげる! ヨツワちゃん』

 

 

とうげる! ヨツワちゃん

 

作者:苺野しずく

発行:日本文芸社 2017年

レーベル:ニチブンコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

主人公は「円陣ヨツワ」、女子中学生である。

紅いスバルBRZを駆って峠を攻める。

 

 

 

 

勿論、14歳で運転免許は取得できない。

財閥のお嬢さまなので、親に峠をまるごと買ってもらった。

私有地なら道路交通法の適用外だ。

 

 

 

 

ある夜、カネに物を言わせてチューニングしたBRZが、

アニメキャラの塗装がほどこされたランエボにぶっちぎられる。

痛車に乗るオタクに完敗し、ヨツワの自尊心はズタズタに。

 

 

 

 

ランエボに乗る「イチロー」は、普段はコックとして働く青年。

何度も勝負をいどんでいるうち、ヨツワの敵愾心は恋心にかわる。

 

 

 

 

ヨツワの財力は桁外れで、ステルス戦闘空母(?)まで所有している。

ルーズソックスを履いてたりとか、魅力的なキャラ造形だ。

 

 

 

 

豪雨で地盤が崩れて危機一髪……など、ドラマチックな場面もあり。

峠レースとボーイ・ミーツ・ガールとギャグを贅沢に盛りこむ。

 

 

 

 

ストーリー面は、公道バトルに挑戦する動機の描写がよわく、

設定こそ興味ぶかいが1巻で完結となっている。

でも女性作家による自動車漫画は珍しいし、個性的な作品としておすすめ。





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葉賀ユイ『サクラ*ナデシコ』2巻/高橋哲哉『ドキドキしすたー♡葵ちゃん』3巻完結

 

 

「百合とふたなりとアイドル」がテーマの葉賀ユイ『サクラ*ナデシコ』は、

ちょっとばかり詰め込みすぎの漫画だが、2巻でさらに輝きをました。

不自然なくらい。

 

 

 

 

表紙と単行本扉絵では、脇の下を大々的にフィーチャー。

さわやかなフェロモンで読者を殺しにかかる。

 

 

 

 

百合方面も進展をみせる。

過剰なスキンシップで、浴場が欲情の空間に。

 

 

 

 

葉賀ユイのえがく女の子はコロコロとお人形の様に可憐だが、

どことなくデッサン人形風に無機質でもある。

ベッドで淫らに交わる姿と、道場で寝技を仕掛ける姿に大差がない。

かわいさの表現は洗練と抽象性をきわめ、記号論の域に達している。






 

 

高橋哲哉『ドキドキしすたー♡葵ちゃん』は、3巻で堂々完結。

横たわって満ち足りた笑顔で兄と「恋人つなぎ」する、カバー下の葵ちゃん。

記号的な妹像の最高到達点か。

 

 

 

 

最終巻でも作者はサーヴィス精神をゆるめない。

学園祭でメイドカフェをひらくのはまあ定番だとして、

われらが葵ちゃんはなぜかなんとなくなりゆきでノーパンでお給仕。

コーヒーポットをもちいた熱い視線誘導のトリックに幻惑される。

 

 

 

 

がむしゃらにひたすらにまっしぐらに、お兄ちゃんがだいすき。

不純物ゼロの兄妹愛をえがいた傑作として歴史にのこるだろう。




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okama『Do race?』

 

 

Do race?

 

作者:okama

掲載誌:『ヤングアニマル増刊Arasi』(白泉社)2016年-

単行本:ヤングアニマルコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

セクシーで優雅なドレスを着てたちならぶ、5名の淑女。

これからなにがはじまるのか。

 

 

 

 

彼女たちは、「ドレース」とゆう競技に参加するレーサー。

華麗なドレスはジェット戦闘機の様な乗り物に変形し、

宇宙空間にはりめぐらされたチューブのなかを超音速でとぶ。

 

 

 

 

星間国家同士の対立を、戦争のかわりにレースでけりをつけるなど、

スペースオペラ的な設定がなされている。

主人公の「キュウ」がスパイ容疑で収監されたりも。

 

 

 

 

一方、ファンシーな絵柄で女子のたわいない日常もえがかれる。

okamaならではの世界観と言うほかない。

 

 

 

 

ドレースは肉体への負担がおもい。

加速Gにより色が見えなくなったり(グレーアウト)、気絶したり(ブラックアウト)する。

死と隣り合わせのスピード感をつたえる表現力は、ベテランらしい藝のこまかさ。

 

 

 

 

キュウは孤児院でそだった苦労人。

レース中もドロドロした人間関係がまとわりつくが、

それも駆け引きの一部とわりきって再加速し、ぶっちぎる。

 

 

 

 

はげしいレースの描写、スタイリッシュな絵づくり、乱調子のギャグ、

ぶっとんだ近未来設定などが渾然一体となった個性的な作品だが、

浅田弘幸『BADだねヨシオくん!』に似ていると僕はおもう。

作者の世代的にも直接影響をうけてるかもしれない。





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