ビーノ『女子高生の無駄づかい』2巻
女子高生の無駄づかい
作者:ビーノ
掲載サイト:『コミックNewtype』(KADOKAWA)2015年-
単行本:角川コミックス・エース
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即売会で、「ヲタ」(キャラ名)が同人作家の新刊を購入する。
しかし何かに幻滅している。
ヲタはすぐ何かにハマってしまう体質だった。
あるBL作家が18歳の男で、しかも自撮り詐欺名人なので、勝手に恋していた。
ビーノは2巻でも上手に、オタクJKあるあるを料理している。
百合の花を背負って登場したのは、転校生の「リリィ」。
モデルみたいな美貌だが、男が大嫌い。
「男の人に触られると蕁麻疹が出ちゃう」などと、
言動は処女営業カマトトぶってたころの佐倉綾音みたいだが、
生物学的には女であるはずの「バカ」の手を握ると、急にブツブツが。
予測不可能なオチで笑わせる。
中二病キャラ「ヤマイ」も、出番少なめながら活躍。
高いところから飛び降りるシーンを演じたくて木に登ったのに、
怖くて降りれなくなるまではネタとして予想の範囲内だが、
パーカーのフードに鳥が巣をつくるのには面食らう。
あらたな中二病キャラである、オカルトマニアの「マジョ」。
これまた可愛くて、キャラ造形の巧みさに舌を巻く。
シュールなギャグ、時代を反映したあるあるネタ、日常系のキャッキャウフフ、
テンプレキャラに陥らずに「典型」を提示するデザインセンス……。
作者は3巻刊行に悲観的で、カバー下で擬似的最終回を描いているが、
みなぎるエネルギーは2巻購入者を幻滅させてないはず。
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仲谷鳰『やがて君になる』3巻
やがて君になる
作者:仲谷鳰
掲載誌:『月刊コミック電撃大王』(KADOKAWA)2015年-
単行本:電撃コミックスNEXT
『やがて君になる』には、百合漫画の長短がわかりやすく表れている。
短所から言うと、叙情的な雰囲気に流され、内容が乏しいこと。
電撃は今月に百合アンソロジーを刊行するなど、
最近掘り当てた百合とゆう乳白色の鉱脈に力をそそいでおり、
その看板コンテンツである『やが君』が長期連載となったのが、
ストーリーの希薄化に影響しているとおもわれる。
百合漫画は俳句や短歌やパンクロックみたいなもので、
短ければ短いほどよいのだけど。
梅雨といえば相合傘。
13話はただそれだけの回だ。
どっちが傘をもつかで言い争いとなり、バカらしくなってふきだす。
いかにも打ち解けた表情のすばらしさ。
軒先で雨宿り。
仲よくベンチにすわって燈子の体温を感じた侑は、手を重ねようとする。
恋愛に興味はないが、肉体的接触によわい。
でも自分から相手にさわることの「意味」をかんがえ、ひっこめる。
これが百合漫画の長所だ。
宙をさまよう指先が、人生の真理をあきらかにする。
メインのふたりが煮え切らない関係をつづける一方で、
作者はサブプロットで百合色を濃厚にするとゆう手法をとる。
箱崎先生が女の恋人と同棲しているとか。
一種の恋敵である沙弥香は、中学時代に女の恋人がいたとか。
レズカップルマシマシの、狂い咲きの百合空間だ。
15話、体育倉庫で燈子がひさしぶりに侑の唇をもとめる。
最初は侑もうれしそう。
普段はつれない態度だが、キスそれ自体はすきだから。
つづけて2回め。
侑の表情がこわばる。
ガツガツと貪られるといやになる。
まるで恋人同士みたいだから。
唇をぎゅっとむすび、燈子をつきはなす。
唇をかさねるときの横顔だけで、響きわたるシンフォニー。
仲谷鳰が偉大なコンポーザーなのは、どうにも否定できない。
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鍵空とみやき『ハッピーシュガーライフ』4巻
ハッピーシュガーライフ
作者:鍵空とみやき
掲載誌:『月刊ガンガンJOKER』(スクウェア・エニックス)2015年-
単行本:ガンガンコミックスJOKER
さとうの自宅に司直の手がはいる。
異臭がするとの通報があったので調べさせてくれと。
おばを殺害してその死体を隠匿している、と匂わせる描写があった。
めづらしく動揺するさとう。
いつもは口が達者で、たやすく大人を翻弄できるのだが、
本丸が急襲されると予想してなかったらしい。
通報したのは、さとうをストーキングしている変態教師。
さとうの怯える表情を見ただけで恍惚となる。
4巻は友人のしょうことの関係が中心。
さとうがトラブルに巻き込まれたと察し、手を差しのべる。
親友なら悩みを共有するのが当然と思っていたしょうこは、
その闇の深さを知り、虚無的なさとうの視線からつい目を逸らす。
傷つけたくないが、本能的に反応した。
おばについての謎は明かされたが、ストーリーが前進した感じはない。
しょうこは可愛いくていい子だけど、本筋ではない。
4巻終了時点でもまだ、作者は「風呂敷を畳みはじめてない」様にみえる。
悪く言えば、引き伸ばしている。
それでもなお、キラキラした女の子にちらつく「影」をえがくカットの数々が、
この百合サスペンスを特別なものにしている。
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ちさこ『北陸とらいあんぐる』
北陸とらいあんぐる
作者:ちさこ
掲載誌:『月刊コミックフラッパー』(KADOKAWA)2016年-
単行本:MFコミックス フラッパーシリーズ
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石川・富山・福井……北陸3県出身の少女たちが、
お国自慢したり、どっちが上か議論したりする漫画。
手前のおしゃれな女の子が、石川県生まれの「加賀ひまり」。
たとえば金沢駅がえらく現代的なデザインで、
新幹線の発車メロディを地元出身の中田ヤスタカが作曲したとか、知ってた?
富山出身の「黒部りつ」は、石川県を異様にライバル視する。
加賀百万石だかなんだか知らないけど、あんたら偉そうなのよ!
目くそ鼻くそ(失礼)の争いがおかしい。
福井出身の「越前和花」はマイペース少女。
犯人の自白シーンで有名な東尋坊の断崖絶壁で、
火曜サスペンスごっこをするのが好き。
ちなみに1巻に原発ネタは出てこない。
北陸の名所・名物・名産やあるあるネタを、
全篇にわたり可憐な絵柄で丁寧にえがく。
しゃなりしゃなりと古都を和装であるく姿など、北陸は女子が似合う。
どちらかと言えば文化系の漫画だが、体育ネタも披露。
地域ごとに授業内容やイベントはさまざま。
福井県は運動能力が全国1位で、富山県の中高にプールはないんだとか。
基本的に、東京の高校で故郷を思い出しながらおしゃべりするスタイルで、
物語としてドラマ性が不足ぎみなのが難点だけど、
富山県のアニメ制作会社P.A.WORKSがアニメ化してもおかしくないくらい、
ピュアな地元愛とかわいさが炸裂している。
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肋兵器/鈴木大輔『文句の付けようがないラブコメ』
文句の付けようがないラブコメ
作画:肋兵器
原作:鈴木大輔
掲載サイト:『となりのヤングジャンプ』(集英社)2016年-
単行本:ヤングジャンプコミックス
高価そうな椅子にすわる銀髪の少女が「神鳴沢セカイ」。
ホンモノの神である。
手前の少年が高校2年生の「桐島ユウキ」。
神への生贄に差し出されたその日、ヤケクソで結婚をもうしこむ。
あっさりプロポーズは承諾された。
神と生贄のおかしな新婚生活がはじまる。
セカイは見ためどおり純朴。
夜の営みのことなどよくわからぬまま結婚した。
聞きかじった知識で、さっそく夫婦らしい関係をもとうとする。
本作は、現在5巻まで刊行されているラノベシリーズを漫画化したもの。
小説版のイラスト担当者自身が手がけているのが珍しい。
ヒロインの神がかり的な可愛さが、主人公と読者を翻弄する。
さらに原作者の鈴木大輔が、脚本を一から書き起こしてるそうで、
「コミカライズ」より「アップグレード版」と呼ぶべき作品だ。
あとは珍妙な設定さえうけいれれば、濃密なセカイ観を堪能できる。
大ゴマを多用する作風は、イラストレーター的発想が感じられる。
各話が短かめで軽めの、ウェブ連載の形式にあわせてるのかもしれないが、
肋兵器の優美な描線をたのしめる点で成功している。
個人的に、1巻のなかでドカンともうひとつ事件が起きた方がよかったと思うが、
とにかくヒロインの可愛さが印象的で、ラノベ移植作の最良のひとつとなっている。
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金田一蓮十郎『ゆうべはお楽しみでしたね』3巻
ゆうべはお楽しみでしたね
作者:金田一蓮十郎
掲載誌:『ヤングガンガン』(スクウェア・エニックス)2014年-
単行本:ヤングガンガンコミックス
『ドラクエX』を通じてネット上で知り合った男女が、
たがいを同性とかんちがいしてルームシェアをはじめたとゆう、現代的ラブコメ。
あいかわらずゲームの話ばかりしている。
パウは基本、なんでもドラクエにたとえる。
唯一の共通の話題だから。
その卑屈な人生観に、ゴローさんのするどいツッコミがはいる。
毎度感心させられる、会話のたのしさ。
「ゴローさんをデートに誘う」が、3巻最大のミッション。
行き先はやっぱりドラクエミュージアムだけど。
春麗みたいな髪型が可愛く、意外と似合いのカップルにみえる。
ゲームでも日常でもドラクエ漬けのふたりを描きつづけた結果、
作風が微妙に変化しはじめる。
そこはかとなく鳥山明風なのだ。
ゴローさんの笑顔とか、ドラクエのモンスターみたいでステキ。
すっぴんで部屋着のまま、食卓でとりとめなくおしゃべりするだけなのに、
さりげない表情や仕草や角度で、不思議と読者を飽きさせない。
女の子の魅力は、まるでパルプンテ。
ゴローさんがふと、いつまで自分はここにいていいのか尋ねる。
好きなだけいていいとパウは答える。
一軒家で一人住まい、同居人のひとりやふたり問題ないし、
それが可愛いくて趣味の合う女の子なら、追い出す理由がない。
わかってないなと、ゴローさんは思う。
パウがアニメイトの正社員に登用されて転勤にでもなったら、
自分がこの家を独占するわけにゆかない。
やっぱ男の人って、先のことちゃんと考えないよね。
ネトゲみたくカジュアルにはじまった二人暮らしは、
たがいの存在を真剣に考えはじめたとき、距離を再設定する必要が生じた。
ゴローさんは不動産屋で部屋探しをする。
心がちかづいたから、あえて物理的な距離をおく。
男女の機微がここまで表現されてる漫画って、ほかにあるだろうか?
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えびさわまよ『LiLy』
LiLy
作者:えびさわまよ
掲載サイト:『裏サンデー』(小学館)2016年-
単行本:裏少年サンデーコミックス
秋葉原にあらたなメイドカフェ誕生!
看板娘は手前の「かなで」。
小柄だがアイドルなみのルックスで人々を癒やす。
けれどもかなでは、キラキラした笑顔の陰で悩んでいる。
メイドなんてやめたいと。
だって彼女の本名は「奏(そう)」、高1の男子だから。
喫茶店を営む親がつくった借金1億円を返済するため、
店をメイドカフェに改装し、そこで働きはじめた。
元凶は姉だった。
弟をオモチャにし、女装させて楽しむ悪趣味にふりまわされてきた。
奏は外見はともかく、内面は男らしいタイプ。
しかし嫌がれば嫌がるほど、恥づかしがれば恥づかしがるほど、
ますます可愛く見えるとゆう魔のサイクルにはまる。
そして侠気を発揮してがんばる姿が、これまた健気でいじらしい。
「男の娘」の世界は、まるでアリ地獄。
こんな可愛いコを人が放っとくわけない。
街をあるけばナンパされるし、チンピラに襲われることも。
屈辱のあまり、かなでは涙ぐむ。
男の娘はぺったんこな胸もいいが、ぷりぷりのお尻もいい。
作者は新人だが、よくわかっている。
かなでが危機に陥ると飛んでくるのが、幼なじみの「心葉(このは)」。
メイドカフェの同僚でもある。
古武術の道場の娘で、ケタ外れの強さの持ち主。
萌え系漫画はおろか、バトル系漫画でもそうそう目にしない、
チンピラが気の毒になるほど残虐な攻撃のあと、啖呵を切る。
かよわい女子に暴力をふるうなんて許さないと。
男たちを天国へいざなう、これが本当の「冥途カフェ」ってな具合に、
切れ味するどいギャグにしびれる。
巨熊や大王イカとの戦いなども笑えるので、ぜひ単行本で。
とびきりの可愛さ、ドタバタアクション、頭のネジが外れてるギャグ……。
『わぁい!』休刊でやや下火になった感のある「男の娘もの」だが、
ここにきて大本命ヒロインが爆誕したのだった。
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フクハラマサヤ『ウィーンで歌ってみて』
ウィーンで歌ってみて
作者:フクハラマサヤ
掲載サイト:『ニコニコ静画 きららベース』(ドワンゴ)2016年-
単行本:まんがタイムKRコミックス
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金髪の少女の名は、16歳の「リーナ・アイヒホルン」。
声楽家の卵で、ウィーン国立歌劇場に立つ日を夢見て練習にはげんでいる。
王宮庭園のベンチで休んでたら、モーツアルト像の足許で、
パソコンでの作曲に没頭する黒髪の少女をみつけた。
日本からの留学生らしい。
彼女の名は「奏手歌音(かなで かのん)」。
おもにボカロPとして活躍している。
ドイツ滞在経験があり、ドイツ語も堪能だ。
リーナは伝統派、歌音は現代派。
ふたつの対照的な個性が、音楽の都で交錯する。
セーラー服っぽい服装のかわいさは、
水兵さんの漫画『水瀬まりんの航海日誌』の作者ならでは。
あいかわらず作画は充実しており、狭い4コマのフォーマットから解放され、
特に風景描写で彩管をふるっている。
ウィーンのうつくしい町並みは、そよ風さえメロディを奏でそう。
ウィーンの魅力は音楽だけじゃない。
名店のザッハートルテを前にしたら、女の子はテンションあがる。
舞台はヨーロッパでも、いつものきらら的日常。
眼鏡でショートカットの「ソフィー」は、SNSで知り合った歌音の友人。
日本のオタク文化に精通しており、リーナをコスプレでステージへあがらせる。
ウィーンやクラシック音楽など題材は高尚だが、
それらを消化した上で、独自の世界観を提示している。
フクハラマサヤの作品に悪人は出てこない。
主人公があからさまな逆境に置かれることもない。
大仕掛けの題材を好むわりに、ちょっと淡白な作風で、
それが美点ではあるが、インパクト不足の原因でもある。
でもコマとコマのあいだに耳をすませば、百合とゆうオペラを聞き取れるだろう。
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Got to Be Real
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マウンテンプクイチ『球詠』
球詠
作者:マウンテンプクイチ
掲載誌:『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)2016年-
単行本:まんがタイムKRコミックス
女子高生ふたりが、夜の川岸でキャッチボール。
硬球を素手で。
幼なじみが高校で偶然再会し、また野球をはじめた。
ちなみに水辺の風景のうつくしさは、作者の特長。
髪があかるくて長い方が、ピッチャーの「詠深(よみ)」。
大きく曲がって落ちる、特異な変化球を投げる。
ヨミが中学で無名だったのは、捕球できるキャッチャーがいなかったから。
それどころか「魔球」へのこだわりを嫌われ、部内で孤立していた。
思春期女子らしい内面の陰影の描写は、
百合姫コミックスから単行本2冊出している作者ならでは。
中学時代に全国経験もある「珠姫」は、最適の女房役となる。
おさないころの様に、ヨミの自由奔放な投球をうけとめる。
キャプテンの「怜」をキリキリ舞いさせた。
仲間をあつめて野球部を再建し、部内の対決で実力をみとめさせ、
9人そろってすぐ強豪校との練習試合にいどむ、スポ根定番の流れ。
ヨミと珠姫のバッテリーが中心の物語だが、
野手の守備での貢献など「チームプレー」を重視してえがく。
作中に「4000校あまりの頂点をめざす」とあるが、
実際の全国高等学校女子硬式野球連盟の加盟校は23しかない。
つまり本作は、「女子野球」を題材とする漫画ではなく、
男子の高校野球を性別だけ改変した「ファンタジー」だ。
本格的な野球の描写と、可憐な少女の取り合わせはやたら新鮮。
たとえばお尻へのデッドボールのエロス。
言うまでもなく野球漫画は一大ジャンルを形成している。
「キメのポーズ」などのストックが豊富で、
登場人物をカッコよくみせる手法にこまらない。
マウンテンプクイチはその伝統を、百合と融合させるのに成功した。
手塚治虫が『マァチャンの日記帳』でデビューしてから70年。
『球詠』は、漫画とゆう表現形式のひとつの完成形と断言できる。
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須藤佑実『ミッドナイトブルー』
『花が咲く日』
ミッドナイトブルー
作者:須藤佑実
発行:祥伝社 2016年
レーベル:フィールコミックス
7作をおさめる短篇集だ。
ストーリーはどれも練りこまれ、流れる様に読者をいざなう。
繊細さと親しみやすさが同居する絵柄とあいまって、
この作者独自の世界観をかたちづくっている。
結論を言うと、大傑作だ。
冒頭の『箱の中の想い出』が白眉とおもう。
居酒屋で偶然再会した、教師と元生徒。
5年前に卒業した元生徒は、ひそかに教師にあこがれていた……。
そんな典型的な恋愛モノのプロットに、「整形手術」とゆうテーマをからめ、
ミステリ仕立ての複雑なあじわいにしている。
『今夜会う人』
『流寓の姉弟』と同様に、作風は総じてノスタルジック。
そして寓話的でもある。
バーではたらく「キツネ目の女」がフックになってたり。
『白い糸』は、大学の女の先輩と男の後輩の話。
出会ったとき先輩はナース服を着ていた。
服飾系のサークルでモデルをつとめてたとか。
あざやかなセンスで情景を切り取り、浮遊感をもたらす。
『流寓の姉弟』で子供の世界をえがいた須藤は、
本書収録の『ある夫婦の記録』で、奇妙な夫婦のカタチを提示。
まだ単行本は2冊めだが、作風は幅広い。
あえて俗なレッテル貼りをすると、「現代文学」風の作品群と言えるが、
女子や風景のうつくしさで、漫画のポテンシャルを最大限にひきだす。
この眼差し、髪、服装。
だれが須藤佑実より魅力的な短篇を描けるのだろう?
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作楽ロク『ブスに花束を。』
ブスに花束を。
作者:作楽ロク
掲載誌:『ヤングエース』(KADOKAWA)2016年-
単行本:角川コミックス・エース
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「喪女モノ」のラブコメだ。
主人公の「田端花」は地味でぽっちゃりで、自分をモブとみなしているが、
ふとしたきっかけでスクールカースト最上位の「上野陽介」と親しくなる。
ちなみに名前を山手線の駅名から取っていておもしろい。
田端が毎朝早くにこっそりと教室の花を替えていると知り、
上野は彼女に興味をもちはじめた。
ただの美化委員の仕事だが、これはこれで秘密の共有となる。
少女漫画的フラグが立った。
田端の日常が変わりはじめる。
放課後にみんなでラウンドワンへ行くとか、
最底辺のブスには縁のないイベントに巻きこまれる様に。
どちらかとゆうと、いやかなり迷惑。
天使みたいに可憐なリア充女子「鶯谷」にも、誤解される。
自分と上野が付き合っていると。
こちらとしては女子高生らしいことをせず、ひたすら目立たず、
自己主張せず、波風立てずに高校3年間をやり過ごしたいだけなのに。
誕生日に家族とお好み焼き屋で食事とゆう、微妙なイベント。
偶然、そこでアルバイトしている上野と出くわす。
娘がイケメンと仲が良いと知った母は舞い上がり、マシンガントークをはじめる。
いいシーンだ。
鶯谷も、敵役としての本性を徐々に発揮。
美貌ゆえにチヤホヤされ、幼いころから人生イージーモード。
欲しいものは全部、楽勝で手に入れてきた。
漫画の世界では、かわいい女主人公が溢れかえっているため、
喪女はテーマとして差異化を図るのにうってつけ。
ただし、主人公がネガティヴすぎて話が転がらないとゆう難点もある。
脇役や舞台を丁寧にえがく本作は、バランスのとれた佳作だ。
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らぐほのえりか『すくりぞ!』
すくりぞ!
作者:らぐほのえりか
掲載誌:『まんがタイムきららMAX』(芳文社)2015年-
単行本:まんがタイムKRコミックス
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とある女子高の宿直室をのぞいたら、パンツ丸出しの女の子がいた。
随分とくつろいでいる。
寝るのが大好きな「寝子」、その親友で意識高い系の「蒼」、
宿直室を不法占拠していた「にゅう」、理事長の孫である「リン」の4人は、
その場の勢いで「スクールリゾート部」を結成。
学校を快適なホテルにかえるため、活動をはじめる。
「部活モノにすれば大体いける」(はまじあき『きらりブックス迷走中!』)とゆう、
きららメソッドを確信犯的に踏襲している作品だ。
4人は、それなりに真剣にホテルのいろはを学ぶ。
たとえばバスローブの下は何もつけないとか。
身も心も裸になり、オトナへの階段をのぼる。
ためしにホテルらしいサービスを提供してみる。
予算の都合で、ディナーは購買のパン(半額)だけど。
パンばかりでは起業できそうにないので、カレーを自作。
試食したら、集団食中毒みたいな大惨事に。
コロコロした絵柄だが、ギャグは破壊力がある。
らぐほのえりかは、『けいおん!』の二次創作などで有名らしい。
ひとりだけ日焼けしすぎた蒼などに、あずにゃんテイストが滲み出る。
「『すくりぞ!』の特色を1パラグラフでまとめろ」と求められると難しいが、
この平和なマンネリズムもふくめ、きららの優等生であるのは確か。
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