ウロ『ぱわーおぶすまいる。』完結

 

 

ぱわーおぶすまいる。

 

作者:ウロ

発行:芳文社 2012-16年

レーベル:まんがタイムKRコミックス

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ぱわすまと言えば、うつくしすぎる噛ませ犬こと、虎道環だ。

あまりに魅力的なため、最終巻ではカルト宗教の域に達する。

 

 

 

 

信者に対する、虫けらの様に蔑む視線。

こうやって様々な表情がみれるから、われらは姫を追いかける。

 

 

 

 

ただ、作者の絵柄が変わってきた。

ちょっと淡白な、あまり歓迎できない方向へ。

姫のおっぱいも、初期ならもっと強調したろう。

 

 

 

 

終着点にむけ物語が加速する。

おさない印象の妹キャラである宮乃さえ、焼肉屋でナンパされ、

恋が芽生える……とおもったら、小学生と間違えられていた。

 

 

 

 

宗馬とまゆが結ばれる。

 

まゆにとって、絶望的なまでに不利な戦いだった。

顔・スタイル・育ちの良さ……すべて劣っていた。

せめて性格だけでも肩を並べたいが、

姫は絵に描いた様なツンデレ、こちらも旗色が悪い。

優勢なのは、物理的な距離だけ。

隣に住んでるから、単純に会う回数が多い。

 

 

 

 

そしてそれが、勝敗を決した。

恋愛のカタチとして、ある意味リアルだとおもう。

泣き顔もみれたし、信者は満足すべきかも。

 

 

 

 

ウロは誠実な態度で、物語を決着させた。

この作品に出会えてよかったと思った。

きらら系ラブコメの最高峰ではないだろうか。

 

そして僕らはあらたなゲームをえらび、スタートボタンを押す。





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テーマ : 4コマ漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: きらら系コミック  萌え4コマ 

めの『あとで姉妹ます。』

 

 

あとで姉妹ます。

 

作者:めの

掲載誌:コミック百合姫(一迅社)2016年-

単行本:百合姫コミックス

ためし読み/『かわいさ余って好きさ100倍!!』の記事

 

 

 

高校生と小学生の姉妹百合である。

「ちかみ」は大人っぽくて容姿端麗、妹の「るみか」にとって自慢の姉。

 

 

 

 

あくまで外ヅラ的に。

家の中では、ゴロゴロぐーたらルーズでゆるゆる。

るみかが世話しないと何もできない、ダメお姉ちゃん。

 

 

 

 

ただ、好きな魔法少女系アニメのコスプレをするときだけ、

自力でメイクも衣装もばっちりキメる。

普段からおしゃれも頑張ればいいのにと、妹は嘆く。

 

 

 

 

3話扉絵。

さらっとしたシンプルな描線だが、めのは腕の達者な作家だ。

構図がキマっている。

6本の足とか、カバンの持ち方の差異とか。

手前の「さわ」だけショルダーバッグをかけ、ポケットに手を入れてたり。

 

 

 

 

クラスの男子へのさわの態度が、やけに高圧的でおもしろい。

「おしゃれ系女子とオタク系男子」とゆうスクールカーストの反映だけでなく、

あとがきによると、中学が同じだから打ち解けた会話ができてるらしい。

 

 

 

 

めづらしくおめかしして外出。

ツイッターで知り合ったコスプレ仲間とのオフ会へ。

ある意味デートより、緊張と期待で胸がときめく。

ここでの噛み合わない会話も、読んでてたのしい。

 

 

 

 

百合業界は過渡期にある。

 

つまり「別に百合姫じゃなくても良い百合あるし」だとか

「ソフト百合&日常系? 別にきららでよくね」とか言われると

否定する材料が全く無いということが問題なんです。

 

『コミック百合姫』7月号のレビュー

 

「重い百合」と「軽い百合」。

どちらを看板に据えるべきか、百合の老舗は迷っている。

 

ただ、過度に百合を期待される方は

他の方もレビューされている通り若干肩透かしを食うと思います

きらら系の漫画に近いですね。

百合の定義とか言い出したらキリがありませんが

明確な恋愛描写はありません

 

『あとで姉妹ます。』のレビュー

 

そして百合姫的な繊細さと、きらら的なポップさを兼備するめのは、

折衷的な作家とみなされている様だ。

けれども僕は、いい意味で百合姫寄りの作風だとおもう。

 

女子の外面と内面と周囲との関係の描写によって、

そのかわいさを表現するのが百合だ。

(これがユニバーサルな定義だと主張する気はない)

めのの伸びやかな描線からは、匂う様な百合のフィロソフィーがたちのぼる。





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テーマ : 百合漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合姫コミックス    百合 

米田和佐『だんちがい』5巻

 

 

だんちがい

 

作者:米田和佐

掲載誌:『まんが4コマぱれっと』(一迅社)2011年-

単行本:4コマKINGSぱれっとコミックス

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米田和佐の単行本は現在12冊。

4コマ中心のため数は少なめだが、キャリアは20年ちかい。

位置づけ的には中堅作家か。

 

 

 

 

作風は、いい意味で保守的。

たとえばスマートフォンを、ある種の「異物」としてあつかう。

利便性にとみ、安価な娯楽を提供するメディアなのは否定しないにせよ、

どちらかと言えば、家族のコミュニケーションや学業の障害物として描かれる。

2016年なのに。

 

 

 

 

スマホ批判のテーマを、弥生のお風呂スマホにつなげ、

さりげないエロスに昇華する段取りは、『だんちがい』ならではの絶妙な湯加減。

 

 

 

 

米田和佐は「底が割れてない」作家だとおもう。

巻を重ねるごとに絵が上達し、いまだピークに達してない。

 

あと、趣味がいい。

表紙から水着回を期待させる本巻で、水着を披露するのは扉絵だけ。

しかも弥生には着せない。

必要以上に肌をさらさない。

 

 

 

 

『だんちがい』全巻のお約束と言えば、

双子姉妹の世界観を表現する、台詞のないサイレント回。

 

 

 

 

絵だけで勝負するサイレント回の試行錯誤の成果が、

5巻では作品全体に浸透してきた様に感じられる。

あちこちのコマに詩情がただよう。

 

兄に服を褒めてもらいたくて、自宅でおしゃれする弥生。

かつてファッションセンスのなさを自嘲していた作者は、弱点を克服したらしい。

 

 

 

 

僕のお気にいりは、クーラーが壊れて薄着ですごす弥生。

下品じゃないけど、あられもない。

媚びてないけど、しどけない。

 

 

 

 

今日は昨日よりもかわいく。

明日はきっと、もっとかわいく。

なんの事件もおきないけど惹きこまれる、唯一無二の作品だ。





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タグ: 萌え4コマ  ロリ   

『高天原ラグナロク』 第10章「処刑」


登場人物・あらすじ


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 翌日も細民街に、憂鬱な雨が叩きつけてくる。

 養育院の門前に、アマテラス専用の黒塗りのトヨタ・センチュリーロイヤル、いわゆる「御料車」がとまる。無反動砲をくらい廃車になったのとは別の車輌だ。ジュン・アマテラス・玉依の順に乗りこみ、ならんで座る。戦力を確保するため与一も連れて行きたいが、宮内庁の役人に拒否された。ジュンは紅梅学院武術科の制服を着ている。詰襟の上着の下にM1911を、ショートパンツを穿いた腰に鬼切を携行する。

 玉依は車内でタブレットの画面を見せ、アマテラスと打ち合わせする。はやくも摂政気取りで、自身の就任式や、今後の政策について意見交換する。

 ジュンはアイフォンで『新世紀エヴァンゲリオン』をストリーミング再生する。台詞をほとんど覚えるほど馴れ親しんだ作品だが、転戦の合間に暇をもてあましたとき視聴している。第拾参話「使徒、侵入」まで見た。第十一使徒イロウルが、NERV本部のコンピュータ「MAGIシステム」をハッキングする筋書きだ。

 アマテラスがアイフォンを覗きこみ、ジュンにたずねる。

「そちの好きなエヴァンゲリオンか」

「二十年以上前のアニメだけど、いま見ても普通におもしろいっす」

「ロボットと怪獣が戦う話と聞いたが」

「イロウルはマイクロマシン型の使徒なんすよ。それこそ細菌みたいに、メルキオール・バルタザール・カスパーの順序で感染させます」

「東方の三博士じゃな!」

「開発者である赤木ナオコ博士の異なる人格が、それぞれのコンピュータに移植されてるんです。科学者・母・女としての」

「結末はどうなるのじゃ」

「女であることを優先したって、リツコさんが最後に言いますね。あの辺よくわかんないけど」

「深いのう」

 玉依がわざとらしく咳払いする。神に低俗なアニメの話をするなと言いたげに。しかし神に神アニメの話をしてなにが悪いのかと、ジュンは思う。

 アマテラスが尋ねる。「好きなキャラはおるか」

「やっぱレイですかねえ」

「綾波レイのことか。包帯をしてる」

「そうそう」

「あれは人間なのか」

「むづかしい質問だなあ。魂がどうとか、ちらっと言及されるけど……」

「わらわも見ておくべきかのう」

「なら新劇場版がいいですよ。なんだかんだでよく出来てるし。今度一緒に見ましょう」

「たのしみじゃ」

 いま現在、実質的に政権の中枢となっている赤坂御用地に、御料車は到着した。ツクヨミの住居がある広大な施設だ。

 降車したジュンは、サブマシンガンのMP7をもつカブロから、武器を提出するよう求められる。

 玄関へむかうアマテラスに目配せする。陛下、本当にあなたを信じていいんですか? アマテラスはかすかに頷く。

 ジュンはM1911を引き渡す。おかっぱ頭のカブロは洗脳のせいか、綾波レイみたく無表情で受け取る。ジュンは仲間を二十人殺した敵なのだが。

 鬼切の提出は頑として拒む。朱塗りの愛刀が手許にないとミカヅチがつかえない。もし事がおこれば、ジュンに為す術はなくなる。




 ジュンは「日月の間」に入る。前任の兵部卿らが蝦夷の侵入をゆるした罪で粛清されたとき以来、二度めだ。檜の壁の弾痕は修理されてない。窓から見える庭で、象の様に巨大な狼のガルムとフェンリルが、雨を避けて木立の下で眠る。

 裾のみじかい黒のドレスを着たツクヨミがあらわれる。ピンクのツインテールの夜刀神をともなう。アマテラスに駆け寄って叫ぶ。

「姉上さまッ! 会いたかった!」

 アマテラスが答える。「気苦労をかけたな」

 ツクヨミはひざまづき、小柄な姉を抱きしめる。号泣している。アマテラスは妹の腕のなかで微笑するが、喜びより悲しみがにじむ。

 ツクヨミが言う。「ようやく茶番もおわりね」

「ヨミちゃんも気がすんだろう」

「あらやだ。お楽しみはこれからよ」

 ツクヨミは、赤のカラーコンタクトをしたカブロのリーダーを指差し、あらたな従臣である夜刀神に言う。

「この無能はガルムとフェンリルの餌にしなさい。小娘ひとりに手こずらされて、胸くそ悪いったらありゃしない!」

 夜刀神の部下である陸軍特殊作戦群の二名が、カブロのリーダーを両脇から拘束する。

「ツクヨミさま」リーダーが言う。「話を聞いてください」

「私は忙しいの」

「お腹に赤ちゃんがいるんです! ツクヨミさま、あなたの子供です!」

「あらそう。珍味だって、あのコたちが喜ぶでしょうよ」

「ひ、ひどい」

 抵抗するリーダーが屋外へ連れ出される。

 ジュンと玉依は青褪め、天井の高いホールに立ち尽くす。ツクヨミは極度に敵対的だ。自分たちは罠にはまったのか。

「殿下」ジュンが言う。「あまりに残酷な仕打ちではないですか」

「中臣ジュン。神に仇する者。きょうがあなたの命日よ。来年からは国民の祝日にするわ」

 端正なツクヨミの顔が醜く歪む。辞書の「憎悪」の項に参考図として載せたくなるほど。見るだけで心が狂気に汚染されてゆく。

 ジュンは左手を鬼切の鞘にかけ、刃を下にむける。おのれの恐怖心ごと断ち切るつもりで。

 大胆に右足を踏み出し、ツクヨミの懐へ飛びこむ。はげしく上体を前傾させ、鬼切をつかんだ右腕を振り上げる。

 抜けない。

 セーラーワンピースを着たアマテラスが、真横で右の手のひらをジュンにかざしている。

 神術【ニチリン】。

 太陽神のカリスマが、電撃となりジュンを襲う。崩れ落ちたジュンは寄木張の床で痙攣する。

 ジュンは突っ伏したまま、かろうじて首だけアマテラスの方にむけて言う。

「あ……あんたもグルか」

「すまぬ。国のため犠牲になってくれ」

「ざけんな……平和の神が聞いて呆れる」

「言い訳はせぬ。ただただ面目ない」

 もがき苦しむジュンを見るのに耐えられず、アマテラスは背をむける。

 怒ったときの癖で両腕を振り回しながら、玉依が叫ぶ。

「ツクヨミさま! 私は抗議いたします!」

「あなたはお利口さんなんだから黙ってなさい。権力はくれてやるから」

「中臣氏は忌部氏にならぶ名流。この様なあつかいは国家全体の権威をそこない……」

「しつこい」

 ツクヨミは夜刀神に対し顎をしゃくる。夜刀神はルガーの回転式拳銃の銃把を、背後から玉依の首筋に振り下ろす。

 夜刀神と特戦群は、抵抗力をうしなった二人の少女を日月の間から引き摺り出した。

 ツクヨミは控室から持ち出した二着のウェディングドレスを両腕にかかえ、鼻歌まじりで言う。

「姉上さまに似合いそうなのをたくさん用意したわ。さっそく試着してみて」

「結婚の儀は明日か」

「ええ。私が主神になって、姉上がお妃さま。子供もいっぱい作りましょうね。八百万くらい産んでもらって、神を倍増させたいの」

「大仕事じゃな」

「とっても楽しくてステキな作業よ。初夜は今夜……いえ、このあとすぐ。姉上さまを抱く日を二千七百年も待ち焦がれたのよ。もう我慢できない」

「そのために内戦まで起こす必要はなかった」

「普通にプロポーズしたら受けてくれた?」

「無理じゃ」

「上部構造は下部構造の反映にすぎないの。だから暴力で社会基盤を破壊した。姉上さまもマルクスくらい読むといいわ」

 ツクヨミはアマテラスの小さな顎を持ち上げ、口づけする。舌と舌をからめ、唾液を味わう。アマテラスはなすがまま、妹による陵辱をうけいれる。

「心の底から愛してる」ツクヨミは続ける。「姉上さま、本当にいいの? 宇宙一かわいい姉上さまを、本当に抱いていいの?」

「かまわん。それでヨミちゃんが幸せになるなら」

「ああ! ああ! 想像しただけで絶頂に達しちゃう!」




 鬼切を奪われたジュンは、壁に黒いタイルが張られた広い浴室へ連れられた。両腕を二つある蛇口にロープで縛りつけられている。夜刀神がジュンの顔や腹を殴りつづける。ジュンは昂然と睨み返すが、すでに心は折れていた。

 自分は丸腰。浴室の外にHK416をもった特殊作戦群の隊員が五名。だれも救出に来ないし、来てもあっさり撃退されるのがオチだ。あきらめの悪さに定評あるジュンだが、あらゆる可能性を考慮しても八方塞がり。より苦痛のすくない死に方をえらぼうと、思考のスイッチを切り替えた。

 夜刀神が、皮膚の爛れた右手でジュンの首筋を撫でながら言う。

「透きとおったキレイな肌ね。血管が浮いてる。ロシア人でもそうそういない」

「お礼を言えばいいのかな」

「ずっと妬ましかった。あなたの美しさが」

 特戦群が、ポリエチレン製の容器にはいった硫酸を浴槽へそそぐ。二十リットル容器十個を空にする。肩まで浸かれるほど、なみなみと満たされた。

 ジュンは歯を食いしばるが、歯がカチカチと音を立てるのを止められない。涙がタイルにこぼれる。

「くそ……くそ……」

「あら」夜刀神が笑う。「泣き顔もキレイね。ゾクゾクするわ」

「地獄に落ちろ!」

「ええ。いつかまた再会しましょう」

 意外に落ち着いた表情の玉依が、浴室にはいって夜刀神に言う。

「ジュンさんは私の友人です。最後にお別れをさせてください」

 夜刀神は特戦群に視線を投げる。特戦群はうなづく。玉依が武器を持ってないのは確かめた。どんな会話をするか興味をひかれた夜刀神は、玉依に接触を許可する。

 玉依は、痣だらけのジュンに言う。

「どうか許してください。愚かな私を」

「たまちゃんは悪くない」

「親のため、家のため、国のため、神のため。私はいつも人に言われたとおり行動してきました。そしてそれを人に押しつけた」

「マジメだもんね」

「自由に生きるジュンさんを羨ましいと思いながら、自分で自分を鎖に縛りつけていました」

「物理的に縛られるよりマシでしょ」

 おどけて緊縛された手首をもちあげるジュンを見て、玉依は複雑な微笑を目許にあらわす。玉依は呼吸が荒く、額にびっしり汗がうかんでいる。具合が悪そうに見えるが、いまさら他人の体調を気遣うのもバカらしいとジュンはひとりごつ。

「お願いがあるの」ジュンが言う。「おそらくツクヨミは、ほかのメンバーに報復する。できるかぎり助けてあげて。特に後輩のよいっちゃんは。あと浅草凌雲閣に、半蔵先生の奥さんが幽閉されてる」

「心配いりません」

「たまちゃん、耳をもっと近くに」

「はい」

「外にいる兵士を買収して、あたしを射殺させて。死ぬのは怖くないけど、拷問だけは嫌だ」

「大丈夫です。拷問なんてさせません」

 玉依は大量に発汗している。制服のブラウスが絞れそうだ。第一国立銀行でアマテラスを乗り移らせたときと同じだと、ジュンは思い出す。

 苦痛にうめきながら、玉依はスカートの中に両手をいれ、棒状のものを取り出す。蛭巻塗の赤い鞘。見間違え様がない。ジュンの愛刀である鬼切だ。

 神術【カミガカリ】。

 玉依は憑依能力で、自身の子宮に鬼切を宿らせた。血にまみれた鞘を捨て、ジュンをいましめる二本のロープをすばやく切る。予期せぬ事態に反応が遅れた特戦群の兵士が、HK416を慌てて発砲。ライフル弾が玉依の後頭部や脊柱を壊す。

 玉依はジュンに鬼切の柄をにぎらせ、凭れ掛かりながらささやく。

「これが……忌部の女がズボンを穿いてはいけない理由です」

「たまちゃん、バカなまねを」

「言ったでしょう……私は愚かだと」

「死んじゃダメだ。たまちゃんが摂政になって、あたしはその右腕になって支えるのが夢だったのに」

「うれしい……あなたは私の初めての親友……嫌われたまま死ぬなんて耐えられない」

「ダメだ! 死んじゃダメだ!」

 ジュンにしがみつく腕の力が弱まり、玉依は白いタイルの床に倒れる。無慙に砕けた後頭部を見て、それが致命傷だとジュンは悟る。ひざまづいて玉依のなきがらを仰向けにし、睫毛の長いまぶたをそっと閉じる。

 さよなら、あたしの親友。そしてありがとう、命をくれて。

 ジュンは立ち上がり、ドアのところにいる夜刀神をにらむ。夜刀神の隻眼の視線がさまよう。

「夜刀神」ジュンが言う。「お前に頼みがある。たまちゃんを家族の墓に丁重に葬ってくれ。葬儀はしないでいい。あとであたしがやる」

「あなたに命令される筋合いはなくってよ」

「そうゆう筋合いなんだよ。いまはまだ殺さないでやる。もし約束を破ったら、硫酸風呂の百億倍残虐な方法で痛めつける」

「な、生意気な口を……」

 自分の声が裏返っているのに気づき、夜刀神は沈黙する。

 ジュンは鬼切を鞘に納め、黒のショートパンツを穿いた腰に提げる。特戦群はHKを構えるが、あえて銃口は向けない。向けた瞬間にミカヅチで挽肉にされると認識しているから。

 大股で浴室から出るとき、ジュンは振り返って玉依のなきがらを最後に一瞥したくなったが、その思いをどうにか堪える。

 可憐で自信に満ちて、いつもキラキラ輝いていた玉依の姿を覚えていれば、それで十分だ。一生忘れるはずがない。




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アニメ『NEW GAME!』最終回 ゴルゴねねっち

 

 

NEW GAME!

 

出演:高田憂希 山口愛 竹尾歩美 戸田めぐみ 日笠陽子 茅野愛衣 朝日奈丸佳

監督:藤原佳幸

副監督:竹下良平

シリーズ構成:志茂文彦

原作・9話脚本:得能正太郎

キャラクターデザイン:菊池愛

アニメーション制作:動画工房

放送:2016年7月4日-

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結局なんだったんだ、このアニメ。

テーマがない。

ひょっとして青葉とコウのライト百合?

ならコウとりんの関係はどうなってるの?

メインプロットは存在しないとゆう認識でいいとおもう。

 

 

 

 

勿論、ねねっちを例外としてだけど。

『フェアリーズストーリー3』発売日、限定版をもとめ新宿西口界隈をめぐる。

ダッフルコートの似合いっぷりが尋常じゃない。

 

 

 

 

デバッガーとして散々プレイしたゲームなので、

行列客の前でストーリーの核心部分をネタバレしてしまう。

情報は光の速さで拡散してゆく。

 

 

 

 

喫茶店で吊るし上げられる。

もともとねねっちは、バイトをはじめた当初からスパイと疑われていた。

機密漏洩が事実なら銃殺刑か。

 

 

 

 

人民裁判で糾弾される真っ只中でさえ、リークはとまらない。

いよいよ怪しい。

 

 

 

 

こぼれるばかりの愛嬌で銃殺は免れた。

打ち上げ会場でのビンゴ大会でまたも見せ場到来。

驚異的な引きの強さで賞品ゲット。

 

 

 

 

M16のモデルガンを渡される。

「なにこれ……いらない……」

思っても言っちゃいけないことを口に出す。

 

稚気愛すべし。

ねねっちは天使の様に純真なだけ。

 

 

 

 

まあ、悪魔かもしれないが。

興醒めなエンディングのあと、M16で首都の治安を紊乱。

世界はねねっちを中心にまわっている。





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ヤス/久米田康治『なんくる姉さん』

 

 

なんくる姉さん

 

作画:ヤス

原作:久米田康治

掲載誌:『ヤングマガジンサード』(講談社)2016年-

単行本:ヤンマガKC

[ためし読みはこちら

 

 

 

うつくしいが無造作な、長い黒髪。

シンプルな白のワンピース。

手許には、画面がバキバキに割れたスマホ。

 

いったい何者なんだ。

主人公は彼女を追いかける。

 

 

 

 

カレーうどんがはねて、ワンピが染みだらけに。

でも気にしない。

「なんくるないさー」とつぶやき、すべてうけいれる。

 

 

 

 

主人公の妹である「輝夜」。

不安神経症ぎみの兄に対し、こちらはコストパフォーマンス至上主義。

コスパが悪いから、彼氏もつくらない。

 

 

 

 

私服をもたないのも、コスパが理由。

うん、それはわかる。

制服かわいいし。

 

 

 

 

つねになにかに怯え、スマホ片手に情報をチェックし、

目の前にある現実世界とむきあえない現代日本人。

そんな「気にしすぎ」の兄妹は、なんくる姉さんと暮らすことに。

 

それはいいんだけど、「なだそう荘」って。

 

 

 

 

ヤスと久米田康治の『じょしらく』コンビは、あいかわらず相性抜群。

日常的なあるあるネタを、トゲのある風刺にふくらませる、

久米田のギャグセンスはさすがなのだけど、

たとえば「ステレオタイプな沖縄のイメージに安易に頼ってる」とか、

ある種のこすっからさを感じさせる作風ではある。

頭良さげで、案外そうでもないと言うか。

「北朝鮮ネタやるくらいなら基地問題も風刺しろよ」とか、つい思ってしまう。

 

そんな読者のモヤモヤを、ヤスの洗練をきわめた絵柄がふきとばす。

ま、かわいけりゃいっか。

なんくるないさー。

 

 

 

 

かわいさと毒気の、高次元での融合。

だれもが憧れる境地だけど、このふたりしか到達してない。





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abua『嘘八百景シタタラズ』

 

 

嘘八百景シタタラズ

 

作者:abua

掲載誌:『アワーズGH』(少年画報社)2016年-

単行本:YKコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

ヒロインは「魅秤 普賢(みはかり ふげん)」、高校1年生らしい。

ニャル子さんとおなじく、バールのようなものが似合う。

釘でもなんでもヌイてくれそう。

 

 

 

 

普賢さんは「十王」の一員。

地獄で死者を裁く、閻魔の仲間である。

本作では、人間に取り憑いて嘘をつかせる魔物「二枚舌」を引っこ抜く。

 

 

 

 

人はみな、呼吸する様に嘘をつく。

たいてい自分のため、ときどき他者のため。

魔物はその弱さにつけこむ。

 

日常生活にひそむ「怖さ」をえがく物語だ。

 

 

 

 

普賢さんの胸を強調したハイウエストスカートや、

自由奔放な言動は、『だがしかし』の枝垂ほたるを髣髴させる。

 

 

 

 

でも少年誌連載のあちらにくらべ、こちらは青年誌。

お風呂でスキンシップをはかるなど、子供だましの漫画ではない。

この点もニャル子さん寄り。

 

ただしニャル子さんは、戦略的に真尋を落とそうとしていたが、

普賢さんは天然で、ピュアな好奇心から主人公に接近する。

 

 

 

 

僕は作者abuaにくわしくないので、アマゾンレビューを引用。

 

 2.バトルシーンでの迫力・スピードが感じにくい

作者の持ち味のひとつとして丁寧な作画があると思いますが、

線がハッキリした絵柄なので

動きのある漫画に仕上がり辛くなっていると思います。

 3.コマ割の仕方

これは作者のデフォルメ漫画のクセが強く出ているせいだと感じます。

 

的外れな批評じゃないと思う。

だが逆に言えば、学園生活の一コマをきりとるラブコメパートは秀逸。

 

 

 

 

人間のエゴイズムにむきあう重いテーマや、激しいアクションは、

本作が初オリジナルであるabuaには、やや重荷だったかもしれないが、

それを補って余りある、キャラデザや表情の愛くるしさ。

 

ちなみに髪飾り的なアイテムは、嘘を感知して光るスグレモノ。

 

 

 

 

本作はいま一番、ヒロインがかわいい漫画のひとつだ。

これが嘘じゃないのは、見ればわかるでしょう?





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『高天原ラグナロク』 第9章「細民街」


登場人物・あらすじ


全篇を縦書きで読む







 ジュンは四ツ谷駅前にある美容院「エスピオナージュ」でカットを終え、仲間のいる待合室へもどる。肩にかかる黒髪をバッサリとショートにした。服はグレーのパーカーと迷彩柄のカーゴパンツ。もともと背が高く、体を鍛えており、目尻の吊り上がった凛々しい顔立ちで、男にしか見えない。

 すでに変装をすませたアマテラスと玉依は、口をぽかんと開けてジュンを見つめる。

 ジュンが尋ねる。「変?」

「なんとゆうか」アマテラスがつぶやく。「イケメンじゃな」

「はあ。そりゃどうも」

 四つのプロペラで飛ぶ偵察用ドローンが横切るのが、店の正面のガラス越しに見える。テイザーガンを装備しており、潜伏中のジュンやアマテラスを発見したら攻撃できる。ただし顔認識システムはさほど有効でなく、逃亡者を心理的に圧迫するのが主目的らしい。実際、いい気分はしない。

 チーム・ミョルニルが天の岩戸からアマテラスを救出したあと、世界に太陽がもどった。一時期は東日本全体を支配した蝦夷は、アマテラスの妹であるツクヨミが陰であやつる傀儡だとジュンに暴かれ、窮地におちいる。

 ツクヨミは蝦夷を切り捨てると決断。すぐに政府が土蜘蛛の死亡と、掃討作戦の勝利と、秩序恢復を宣言した。蝦夷軍の将兵全員が処刑され、アマテラスが無事に保護されたと発表。そして政府は膨大なリソースを投じ、公式には確保したはずのアマテラスを捜索している。

 ジュンのカットを担当した女美容師が、中身のつまったボストンバッグをテーブルに置く。調布のドコモショップにいた、黒縁メガネの女だ。国内最王手の美容院チェーンであるエスピオナージュも、服部軍団の秘密組織のひとつ。髪を切りながらおしゃべりし、情報を盗み取っている。ジュンはバッグのファスナーをあけ、武器弾薬をたしかめる。

 背中に差していた拳銃のM1911を抜き、ジュンがくの一に尋ねる。

「四十五口径の弾ないすかね? こいつを使うことにしたんで」

 装弾数をふやし、アンダーレールにライトをとりつけるなどフルカスタムのM1911を見て、くの一が涙をながす。頭領の服部半蔵が愛用していた銃なのは一目瞭然だった。

 ジュンは口ごもりながら言う。

「すみません。半蔵先生を守れなくて」

「半蔵様の最期はどうでしたか」

「強かった。最強の戦士だといまでも思います」

「わたくしも同意見です」

 くの一は片膝をつき、頭を垂れて続ける。

「そのガバメントが形見分けされたのは、ジュンさまが後継者となられた證拠。われら忍び一同、絶対の忠誠をお誓い申し上げます」

 ジュンはくの一の手を取って言う。

「『ジュンさま』はやめてください。でも、ありがとうございます。やばくなったら助けを借ります」

「なんなりと。御存じの様に、われらは犠牲を厭いません。命さえも」




 装填したM1911をカーゴパンツの背中に差し、ジュンは待合室の椅子に座る。ペットボトル入りのウィルキンソンのジンジャーエールを飲み干し、長い息を吐きながら言う。

「あー、疲れた。美容院来たの生まれて初めて」

 アマテラスが尋ねる。「これまでどこで切ってたのじゃ」

「伸びたらお母さんに無理やり切られてた。お母さん元美容師なんで。お父さんとは美容院で知り合ったらしいです」

 ジュンは刈り上げぎみの髪をさわる。かつて母親に髪をいじられるのが嫌でしかたなかったが、いまはその感触がなつかしい。嫌と言いつつ切ってもらっていたのは、甘えたかったからかもしれない。

 カットが終わって以来ずっと熱っぽい視線をおくる玉依に、ジュンが笑って言う。

「恥づかしいから、じろじろ見ないで」

「えっ……あ、ごめんなさい」

「変装とは言え、そこまで男に見えるとはショックだなあ」

「いえ、その、ジュンさんって、キレイな顔をしてるんだなって。いままで気づきませんでした」

「お世辞はいいから」

「おもわず見惚れます」

「やめてってば。あたしそっちの趣味ないし」

 ジュンと玉依のあいだに座るアマテラスが、見上げながらジュンに尋ねる。

「そちは男が好きか?」

「はあ、まあ、どっちかと言えば」

「処女ではないのか」

「残念ながらまだ処女です。いつでも捨てる気満々ですけど」

「恋人はおるか」

「いまはいないっす。なんかめんどくさくなって、彼氏できてもすぐ別れちゃうんで」

 玉依が幾度も目配せする。現人神にふさわしくない話題だと言いたいのだろう。ジュンは底意地悪い微笑をうかべ、アマテラスに尋ねる。

「そうゆう陛下は経験ずみですか?」

「何を言う、わらわは処女神じゃ。民はわらわに清らかさを求めておるから、期待にこたえねば」

「そんだけ長生きすりゃ、好きな人のひとりやふたりいたでしょ」

「たしかに恋愛に興味はあるが……」

 玉依が椅子を蹴って立ち上がり、叫ぶ。

「ジュンさん! 陛下に低俗な話をするのをやめなさい!」

「テーゾクって……」

 ジュンは口許を押さえ、吹き出すのをこらえる。

 普段の長い金髪の上に、黒髪のウィッグをかぶるアマテラスが、目を丸くしてつぶやく。

「なぜ玉依は怒っておるのじゃ」

「あー」ジュンが言う。「たまちゃんは恋バナが嫌いな、珍しい女子なんですよ」

 玉依が叫ぶ。「あなたにだけは女らしくないと言われたくありません!」

「たしかに。で、たまちゃんのターン」

「は?」

「立川であたしが賭けに勝ったじゃん。恋バナする約束忘れてないよね?」

「あれは……その」

「国事科の先生が好きなんだっけ。告白したの?」

「告白なんて無理にきまってます……てゆうか、そもそも私は先生が好きとは一言も」

 前髪をいじりながら、上目遣いで玉依はつぶやく。紅潮している。柄にもなく恋愛の話ができて嬉しいらしい。

「じゃあ、どっちが早いか競争だね」

「競争? なんのですか」

「処女を捨てる競争」

「競い合ってどうするんですか!」

「たまちゃんだって捨てたいっしょ」

「そんな! 結婚するまで私たちは、しょ……処女なのが当たり前です! 審神者の家系は、国民の模範にならねばいけないんですから」

「あっはは、食いつきすげー」

 ジュンは椅子で仰け反り、足をジタバタして笑い転げる。玉依は、自分の恋愛にジュンが共感したのではなく、単にからかいたいだけだったと気づく。

 立ちっぱなしで憤慨する玉依が、鼻息荒くアマテラスの方を向いて言う。

「陛下、これからはジュンさんと別行動しましょう。言動が陛下に悪影響をおよぼします」

 アマテラスが答える。「玉依、おちつけ」

「私は側近として心配を……」

「いいから座れ」

「はい」

「わからぬか。ジュンが軽口を叩くのは、わらわたちの不安を和らげるためだと」

「…………」

「マジメなのはよいが、あまりに四角四面だと人の上に立てぬぞ」

「御賢察、恐れいりました」

 アマテラスはジュンに凭れかかり、頭を撫でられている。いつの間にか猫みたいになついた。ジュンはニヤニヤと憎たらしい表情を、玉依にむける。たしかに場はなごんだが、仲間を気遣ってと言うより、おもしろがった結果に思える。だとすればジュンは、天性のリーダーシップの持ち主なのか。

 しばらく鳴りを潜めていた敵愾心が、玉依の内面に湧きおこる。将来の摂政はジュンで、自分はその下に立つ運命かもしれない。父親と同様に。

 忌部氏のためにも、それは許されない。

 自動ドアがひらき、めづらしくアジサイ柄のワンピースを着る与一が店に入ってきた。

 ジュンは食べかけのドーナツを半分ちぎり、与一をねぎらう。

「よいっちゃん、おつかれ」

「うす」

「偵察と別働隊の首尾は?」

「おーるぐりーん」

 返事を聞くやいなや、ジュンは立ち上がりボストンバッグをかつぐ。

 アマテラスを奪還し、蝦夷軍を壊滅させたのは、敵にとり大打撃だ。サッカーにたとえるなら、アウェーゲームで二点差で勝利したに等しい。相手チームはセカンドレグで、しゃかりきになって攻めてくる。そしてツクヨミが追跡部隊を直接率いるはず。

 自分も同類だから、わかる。




 四谷駅から西へ進み、若葉界隈まで歩くと、ジュンたちは「細民街」と呼ばれるスラムに紛れこむ。昼間なのにほとんどの商店にシャッターが下りている。不潔な恰好の男女が地べたに座り、むなしく時をすごす。その多くは、結核などの疫病を患う様に見える。堂々と覚醒剤を使用する者までいる。

 細民街に医師はいない。すくなくとも正規の医師は。住人は医療保険に加入してないし、してたとしても治療費を払えない。警察も近寄らないから、蔓延する犯罪をだれも取り締まれない。そもそも警察との接触を好まない人間ばかりだ。

 ちいさな中華料理屋の前に人集りができている。味が評判で行列に並ぶのではなく、店内のテレビを盗み見ている。画面には、蝦夷が出雲市から駆逐される前に発表した映像が流れる。

 映像では、蝦夷の兵士が路上でサッカーをしている。ボールにつかうのは人間の頭部だ。斬首した中臣栄一と忌部広正の頭を蹴りながら走り回り、ゴールを決めては雄叫びをあげる。

 ジュンはそっと玉依の手を握る。震えていた玉依の手に、強く握り返される。

 もはや怒りはおぼえない。これは狂気だ。人間らしい感情で反応する意味がない。

 月の女神ツクヨミが裏で糸を引いている。戦国時代・幕末・十五年戦争の頃とおなじく、日本は狂気が支配する国家となった。原因は神同士の権力闘争、つまり姉妹ゲンカと思われる。アマテラスに率直な疑問をぶつけねばならない。できれば神々を崇拝する玉依がいないタイミングで。

 上半身裸の浮浪児が、背後から玉依のショルダーバッグを引ったくった。

「きゃっ」玉依が叫ぶ。「か、返しなさい!」

 浮浪児はジュンたちの進行方向にむかってしばらく走り、振り返ってバッグを持ち上げる。

 ジュンは玉依をなだめ、歩いて浮浪児に追いつき、百円硬貨をわたす。浮浪児は礼も言わずに去った。

 玉依は、しかめ面をしてジュンに言う。

「お金を渡して終わりですか?」

「あれは『立ちんぼう』と言って、荷物を運ぶ仕事のつもりなんだ」

「犯罪行為は通報すべきです。まだ子供ですから、しかるべき機関に保護させて……」

「通報しても誰も来ない。むしろ事を荒立てたら、もっとロクでもないのが出てくる。見て見ぬふりが、ここじゃ正解なの」

「細民街にくわしいんですね」

「まあね。お父さんと何度か来た」

 一行は、鉄柵の設けられた古典風の建物にたどりつく。ジュンの父である栄一が私費を投じてつくった「養育院」だ。貧しい人々に食事や医療を提供する施設だが、内戦勃発後は閉鎖している。通りの向かい側には、五階建ての廃病院がある。

 門をくぐり、両側に芝生や低木の植えられた小道を歩く。院長の瀬島に玄関で迎えられる。眼鏡をかけた、痩せ型の四十歳くらいの男だ。

「お嬢さま」瀬島が言う。「このたびの……」

「ジュンでいいです」

「ジュンさま。このたびの御不幸に際しまして、申し上げる言葉もありません」

「ありがとうございます。あたしは大丈夫です。父の遺志を継ぐつもりです」

「われわれ部下はみな悲しみにくれて……」

「すみません。長話してる暇はないんで」

「はあ」

「いまこの施設に人の出入りはありますか?」

「入ってくるのは泥棒だけです」

「玄関のドアに爆薬をしかけるので、絶対触らないで。外に出たいときは言ってください」

 ジュンは与一に爆薬設置の指示を出したあと、会議室のある四階へ階段をのぼる。




 絨毯の敷かれた会議室には木製のテーブルが置かれ、椅子が十脚ならぶ。レースのカーテンが掛かった窓が二つある。窓は開いており、雨上がりの湿った空気を入れ替えている。窓辺の棚には、ロボットアニメを中心に約五十体のフィギュアが陳列する。ジュンの私物だ。母に捨てられそうになったとき、父に頼んでここに移させてもらった。

 ジュンはボストンバッグから札束を取り出し、テーブルに積む。一千万円分ある。向かいに座る瀬島は、帯でまとまった束の数を目算する。

「これを」ジュンが言う。「運営資金の足しにしてください」

「お電話では二千万とうかがいましたが」

「いまはこれだけです。残りもすぐ手配します」

「かしこまりました」

 瀬島は札束を自分の書類鞄におさめる。

 こいつ、売ったな。ジュンは思う。

 瀬島は父の政策秘書をつとめていたが、金銭トラブルが発覚し、半年前に現職に追いやられたと聞く。カネに汚い男が、報酬の減額を素直に受け容れるはずがない。それを確かめるため、わざと半額だけ渡した。

 瀬島は立ち上がり、窓辺の棚に歩み寄る。雷が鳴ってまた雨が降りだすが、窓は閉めない。棚の扉を開け、エヴァンゲリオン初号機のフィギュアを手に取る。

「ここのコレクションは」瀬島が言う。「お嬢様が集めた物だそうですね」

「ええ」

「僕も好きなんですよ。この初号機は自分で最近買ったやつで」

「ポジトロンスナイパーライフルを装備してるから、ヤシマ作戦仕様だ」

「さすが。他にもいろいろあります。どうぞ御覧になってください」

「遠慮します。狙撃されたくない」

 初号機の肩が外れた。瀬島の手が震えている。

 神術ミカヅチの威力はすでに知れ渡った。ジュンを斃す手段は、狙撃か爆殺か波状攻撃しかない。アマテラスを取り戻すのがツクヨミの目標なら、ジュンひとりを狙撃で確実に仕留めようとするだろう。

 ジュンは振動するアイフォンをとり、秘話通信アプリで応答する。

「はいジュンです。おっけー、了解。ケガはない? こっちはプランどおり。じゃ、気をつけて」

 ジュンは通話を切り、席を立って窓辺に近づく。面と向かって瀬島に言う。

「廃病院の五階にいたスナイパーは、別働隊が排除した」

「お嬢さま。なにを言ってるのか私にはさっぱり」

「てめえが最低の裏切り者だってことだよ」

「……俺を左遷したのは、あんたの父親だ」

「クズが。なんでてめえみたいなのばかり生き残るんだ」

 瀬島は雨が吹きこんでくる窓から顔を出し、小道の方へむかい叫ぶ。

「危険だ! 玄関に爆弾がある!」

 数秒後。屋外で爆音が轟き、建物が揺れた。

 瀬島が見下ろすと、真紅のゴスロリ衣装を着た少女たちが五人、アプローチの中程の芝生に横たわる。ツクヨミが私物化する諜報機関の「カブロ」だ。全身をズタズタに引き裂かれ、うめいている。

 瀬島がつぶやく。「あんたは玄関のドアに爆弾をしかけると言ったはずだ」

「演技だっつの」ジュンが答える。「本当は外に指向性地雷を設置した」

 瀬島は棚の引き出しから、黒いスミス&ウェッソンの回転式拳銃を取り出し、ジュンへむける。

 銃声が二発。

 頭部を撃たれ絶命した瀬島が、青い絨毯を複雑な色に染めている。砕けた眼鏡のレンズが散らばる。ジュンの右手は、背中に差したM1911のグリップをつかんだだけ。

 会議室のドアのところに、銀髪と紫のワンピースをぐっしょりと濡らした与一が、拳銃のグロック22を構えて立っている。

 与一がつぶやく。「おかしら、遅すぎ」

「居合なら、よいっちゃんより速えよ」

「私がいなかったら百回死んでる」

 与一は平民出身で、愛想も悪いため受けていたイジメから救われて以来、ジュンを一途に慕う。だからって自分は甘えすぎてるとジュンは思う。二つ下の後輩に人殺しを手伝わせるのは間違いだ。肉親を殺されたわけでもない与一にとり、この戦いは負担だろう。

 ジュンは専用のベルトで鬼切を腰に帯び、サブマシンガンのP90をもって左側の窓へ走る。予備の弾倉を足許に置く。カブロたちは罠を警戒しつつ玄関に寄せてくる。目視できるだけで十三人。

 フルオートで真鍮の雨を降らせる。カブロは小道の脇に立つ低木の陰に隠れる。

 右の窓に張りついた与一が、アサルトライフルのM16A4を発砲する。長銃身でM4より反動が軽く、初速も速いため命中精度が高い。ジュンが乱射で敵の足を止め、与一がスコープをつかった精密射撃で急所を撃ち抜く。それはぴたりと息の合った、死のデュエットだった。芝を濡らす雨に、血と脳漿が混じってゆく。

 五十発全弾撃ち尽くしたジュンが叫ぶ。

「ローディング!」

 マガジンキャッチを押し、フレーム上部にある弾倉を引き抜こうとするが動かない。

「あれ」ジュンがつぶやく。「マガジンとれない」

 与一が叫ぶ。「そっと持ち上げてスライドさせる感じで!」

「くそっ……くそっ……おかしいな」

「馬鹿力でやっちゃダメ!」

 ジュンはP90を床に投げ捨てる。戦闘ではほんの数秒が勝敗を、そして生死を分ける。鬼切を抜き、窓枠に左手と右足をかける。

 与一は隣で唖然とする。中臣ジュン、ついに発狂したか。

「おかしら、ここ四階」

 ジュンは言われてはじめて、地上まで十メートル以上あると認識する。下でカブロがアサルトライフルのHK416の狙いを定めている。

 逃げたら、死ぬ。

 ジュンは宙に身を躍らせる。よく考えてみれば、ミカヅチは時間をとめられるのだから、重力だって無効化できるのではないか?

 神術【ミカヅチ】。

 静止にひとしい緩慢な時の流れのなかで、ジュンは前転しながら着地する。全国の美少女から選抜され、洗脳と訓練をほどこされたカブロたちのおかっぱ頭を、首から切り離す。小枝の様に細い腕を断ち切り、紙の様に薄い胸を貫きとおす。フリルの赤と黒の切れ端が、嵐に吹き飛ばされて漂う。

 一呼吸がおわりミカヅチの効果が切れるが、アンコールにこたえて残酷な舞踊はつづく。

 ツクヨミが手塩にかけて育てた、最精鋭部隊の二十名は全滅した。




 雷鳴の合間に、拍手が音高く響く。

「ハラショー!」

 左目に眼帯をした顔に、ピンクの髪が濡れて貼りつく。ジャンパースカートの様なロシアの民族衣装である、青いサラファンを着ている。HK416を両腕に乗せて手を叩く。

 憂いに満ちた碧眼をもつ十七歳の女の名は、夜刀神。蝦夷軍の幹部だったが、いまは日本政府に雇われ兵部卿をつとめる。廃病院から出たチーム・ミョルニルの別働隊の五人が、M4カービンを構えて背後から夜刀神を包囲している。

「完敗だわ」夜刀神が言う。「中臣ジュンを殺すには一個師団が必要みたいね」

 ジュンが答える。「てめえが指揮官なら一個艦隊でも楽勝だ」

「調子に乗らないで。わたくしは降伏ではなく、交渉がしたいの」

「なめんな。スナイパーにあたしを狙わせたくせに」

「狙撃も選択肢のひとつね。でも、先に攻撃したのはそちらでしてよ」

「ふん」

 ジュンは鬼切を振るい、ゴスロリ少女の血液を飛ばす。ハンカチでさっと刃を拭い、音もなく鞘におさめる。

 ツクヨミが追跡部隊の指揮をとるとジュンは予想したが、実際は安全器として部下を派遣し、自身への直接の危害を避ける消極的手段にでた。ツクヨミは交渉のカードをもってるらしい。それがなにか探る必要がある。母と妹の仇をとるのは後回しだ。

「あんたは」ジュンが言う。「土蜘蛛を崇拝してたろ。自分を騙してたツクヨミになぜ従う」

「ツクヨミさまはわたくしを抱いてくださった」

「はぁ!?」

「この醜いわたくしを一晩中、情熱的に愛してくださった。女の喜びをはじめて知りましたわ。それだけで忠誠を尽くすのに十分でなくって」

 夜刀神は皮膚のただれた自分の腕に、愛おしそうにキスする。十四歳のとき、北海道で内戦に巻きこまれ政府軍の捕虜となり、左目をえぐられ、首から下を硫酸の浴槽に漬けられるなどの拷問をうけた。

「噂で聞いたことある。ツクヨミは両性具有、いわゆるふたなりだって」

「神との交わりは信じられないほどの快楽よ。毎晩子宮が疼いてしかたないわ」

「キモいな」

「話の続きは中でしましょう。体が冷えてきたの」




 養育院四階の会議室のテーブルに、交渉担当者が着席している。政府側が夜刀神、チーム・ミョルニル側が玉依とジュン。オブザーバー的な立場として、アマテラスがミョルニル側にならぶ。

 院長の瀬島の死体は片づけたが、血痕は消えてない。与一が会議室を、のこりの五人が建物の内外を警護する。

 紅茶のカップを傾けながら、夜刀神が言う。

「あらかじめ言っておきますわ。ツクヨミさまは寛大なお方です。アマテラスさまを解放しさえすれば、あなた方の罪は一切問わないと」

 ジュンが言う。「ありがたくて涙が出るぜ」

「そして提案があります。忌部玉依さん。われわれ日本政府は、あなたを摂政として迎える所存です」

 玉依が叫ぶ。「えっ」

「あなたは十八歳とお若い。しかし血筋は由緒正しく、人望も篤いと聞いています。ぜひ力を貸してください」

「そんな……いつかは摂政として国家に貢献したいと思ってましたが、まだあまりに経験不足で」

「ツクヨミさまが後見人としてバックアップします。また家柄だけでなく、御両親を亡くされた悲劇にも、象徴的意味があります。内戦で傷ついた国民の心を癒やし、一つにまとめるための」

 ジュンは玉依の横顔を見て、小さく舌打ちする。あからさまに昂奮している。年来の夢が実現しそうなことに。

 これは「位打ち」だ。権力をエサに敵の分断をはかる政略だ。なぜわからないのか。

 ジュンは背中のM1911を抜き、銃口を夜刀神にむけてテーブルに乱暴に置く。小賢しい駆け引きは通じない、とゆう意志表示だ。

「なにが内戦の傷だ」ジュンが言う。「てめえが言うな。あたしの家族を殺したのは誰だ」

「殺戮の責任に関しては、あなたもどっこいどっこいでしてよ」

「かもね。で、最大の戦争犯罪人がツクヨミだ。あいつが絞首台に上るんなら、手打ちしてもいい」

 顔面蒼白となった玉依が、ジュンにむかい叫ぶ。

「なんてことを! 神を呼び捨てにするなんて! いますぐ謝罪しなさい!」

 くそ、ツクヨミの思う壺だ。いともたやすく人間の欲望を刺激し、親友ですら仲違いさせる。

「たまちゃん、いまケンカはやめよう」

「前から思っていました。あなたには敬神の念が缺けていると。あなたにとって神とは、そして日本とはなんなのですか」

「知らないよ。考えたこともない」

「アマテラスさまやツクヨミさまを崇敬する気持ちはないのですか」

「アマテラスさまは好きだよ。かわいいし、話すと面白いし」

「神々は友達ではありません! ジュンさん、あなたは少し増長してるのではないですか!?」

 ジュンは天井を仰いで歎息する。玉依は責められない。こうゆう神学論争になるのを嫌い、土蜘蛛の正体がツクヨミだと教えなかった自分が悪い。当人たちすら気づかない亀裂を突いてくる、ツクヨミの策略こそ恐るべきだ。

 あたしたちは、神の操り人形にすぎないのか。

 自分と玉依の間に澄まし顔で座るアマテラスに、ジュンはたずねる。

「陛下は知ってたはずです。ツクヨミが黒幕だと。半蔵先生と内緒話をしてた」

「ジュンよ。わらわはそちに言いたいことがある」

「なんですか」

「そちの払った犠牲についてじゃ。家族や仲間を失った悲しみ、傷だらけになって戦う苦しみ。わらわは申し訳なく思っておる。そして感謝しておる」

「別に感謝してほしくて戦うわけじゃ」

「だがそれでも、そちにすべてを打ち明けることはできない。神には神の事情がある。人間であるそちには理解できないし、してほしくもない」

「ヘタな逃げ口上ですね」

「そう思われてもかまわん」

 アマテラスはテーブルの上のM1911を手に取り、サムセフティを下げ、銃口を自分のこめかみに当てる。

 玉依が叫ぶ。「アマテラスさまッ!」

「わらわは平和の神じゃ」アマテラスが言う。「もしわらわのせいで民の血が流れ続けるなら、存在意義がない。この場で死ぬとしよう。二千七百年も生きた。もう飽き飽きじゃ」

「ジュンさん!」玉依が叫ぶ。「這いつくばって謝りなさい! 『神殺し』になりたいのですか!?」

 ジュンは身長百十五センチのアマテラスと視線を合わせる。虚ろな目には絶望が感じられるが、真意は計り知れない。数千年の歴史を背負う存在の思惑を、どう忖度すればよいのか。

「陛下は」ジュンが言う。「ニチリンとゆう神術をつかえるそうですね。太陽の威光で、他者を命令に従わせることができる」

 アマテラスが答える。「物知りじゃな」

「てことはツクヨミも服従させられるのでは」

「左様」

「約束してください。ツクヨミの暴走を止めると」

「誓おう。日本の全歴史にかけて」




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カメラの季節到来

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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長月みそか『そこテストにでます!』完結

 

 

そこテストにでます!

 

作者:長月みそか

発行:芳文社 2015-6年

レーベル:まんがタイムKRコミックス

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かえでが柊に、川縁の土手で告白する。

2週間前に断られたばかりなのに、くりかえして。

この思いは止められない。

 

 

 

 

2巻で完結した『そこテストにでます!』は、一種のハーレムラブコメだ。

女子ばかりの学習塾の夏合宿に、柊は講師として参加。

恋のライバルである、もみじとかえでの水着は、

前者がストライプのビキニ、後者がきらら読者好みのタンクトップビキニ。

 

左下で塾長が鍛えた肉体を誇示する。

長月みそかは、大人の男をやたらリアルに描く癖がある。

あきらかに、コロコロした絵柄とのバランスがとれてない。

狙ってるんだろうけど、異様だ。

 

 

 

 

逆にもみじは、絵に描いた様なツンデレ少女。

「わたしは性格悪い」と卑下する性格のよさが、いじらしい。

 

 

 

 

かえでと柊は交際をはじめる。

マジメなかえでにしては珍しく、柊にすすめられた狩りゲーであそぶ。

「あなたとつきあう様になってから、毎日すごく新鮮で楽しいの」なんて、

彼女に言われたいランキング推定ナンバーワンのセリフを言われたり。

 

 

 

 

つきあいはじめる前の、ふたりのやりとり。

「高校生のおつきあいがどうゆうことかぐらいは、ちゃんと考えたし……!」

つまりキスや、それから先を覚悟してるの?

恋愛にまったく興味なさそうな、あのかえでが?

 

本作は昔のギャルゲーを髣髴させる、テンプレ的ダブルヒロインが看板だが、

彼女らの言動はテンプレートどおりでなく、ときおり生々しい。

 

 

 

 

早朝の灯台の下で、海風に抱かれながらファーストキス。

物語の最大の見せ場だが、波の様にさらっと流す。

 

 

 

 

『あ でい いんざ らいふ』全1巻(茜新社/2004年)

『HR~ほーむ・るーむ~』全2巻(芳文社/2006-8年)

『少女素数』全5巻(芳文社/2010-3年)

『のぞむのぞみ』全2巻(少年画報社/2012-4年)※不定期連載

『そこテストにでます!』全2巻(芳文社/2015-6年)

『でいとりっぱー』既刊1巻(KADOKAWA/2016年-)

 

単行本刊行状況からみる、長月みそかのキャリアである。

おそらく芳文社としても、もうすこし長い連載を期待してたろう。

必要以上に腰の入ったしーなのパンチとか、

アンバランスな作風を編集部も持て余してるのかもしれない。





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アニメ『NEW GAME!』11話 プラシーボねねっち

 

 

NEW GAME!

 

出演:高田憂希 山口愛 竹尾歩美 戸田めぐみ 日笠陽子 茅野愛衣 朝日奈丸佳

監督:藤原佳幸

副監督:竹下良平

シリーズ構成:志茂文彦

原作・9話脚本:得能正太郎

キャラクターデザイン:菊池愛

アニメーション制作:動画工房

放送:2016年7月4日-

[当ブログの過去記事はこちら

 

 

「……正解っ!!」

 

OPでも採用された、ねねっちの名台詞である。

ポーズもびしっと決める。

 

 

 

 

激怒するうみこ。

なぜこの娘は、アホそうな顔のくせに、つぎつぎとバグを発見するのか。

それが仕事だから構わないが、マスターアップ当日にまで発見しなくても。

 

 

 

 

ねねっちはわづか数日で、イーグルジャンプの台風の目となったが、

買い出しにきたドラッグストアで、きょうがバイト最終日だと青葉に告げる。

いつもの様に元気だが、言葉の端々にさみしさがにじむ。

 

 

 

 

2858円の栄養ドリンクをひとくち舐める。

おこちゃま舌には刺激がつよすぎた。

 

 

 

 

単純な性格だけに、プラシーボ効果が発動したらしい。

テンションはゲージをふりきり、深夜のねねっち劇場がはじまる。

 

 

 

 

夢をかなえようと頑張るあおっちを応援したい。

あおっちの大好きな職場に、わたしもいたい。

でもわたしは、ただの大学生。

 

ねねっちの小柄な体からあふれだした感情が、社屋をみたす。

ヒロインの魔法で全体攻撃。

 

 

 

 

魔法がきれて、辺境へとばされるオチもつく。

中央線に無人駅なんてないのに。

まったく、なんてマジカルなヒロインなんだ。

 

 

 

 

2巻で僕が好きな、コウが束ねた髪をほどく仕草。

パンツよりエロティック。

 

偽ヒロインとパンツで気を引き、真ヒロインと繊細な描写で虜にする。

アニメ『NEW GAME!』は周到にしかけられたトラップだ。





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関谷あさみ『千と万』完結

 

 

千と万

 

作者:関谷あさみ

発行:双葉社 2013-16年

レーベル:アクションコミックスコミックハイブランド

ためし読み/当ブログの過去記事

 

 

 

3巻で完結なので、いくつかのプロットが決着。

詩万の片思いは、失恋におわる。

この24話で、前話の「足跡トリック」を解き明かす技巧も心憎い。

 

関谷あさみは短篇の名手であり、今後もそうだと思われるが、

いまのところ唯一の長篇である本作は、長尺の物語の醍醐味をあじわえる。

 

 

 

 

悪友にちかい親友(結局名前は明かされない)は、

姉が自宅の前まで彼氏を連れてきたのを目撃。

恋人がいたと知らなかった。

 

 

 

 

親に、特にお母さんに内緒にしてくれと懇願される。

しっかり者の姉が、やたら取り乱して必死なのがおもしろい。

恋愛って不思議なイベントなんだなあと思いつつ、姉を足蹴にしてあそぶ。

 

 

 

 

お隣の波ちゃんは高校へ入学。

セーラー服姿をみせる表情は照れくさそうだが、誇らしげでもある。

 

 

 

 

関谷あさみは制服のマエストロだが、おしゃれしすぎない私服も巧い。

世界一かもしれない。

足回りに若干の小学生っぽさを残しているけれど、

ひとりで買い物をたのしむなど、女らしく成長。

 

 

 

 

父の妹である那由は、父子家庭で育つ詩万の世話をした。

「おばさん」だがオシャレでかわいく、ちっとも「オバサン」ではない。

エゴイストばかりの本作の良心と言える存在。

 

恋人に会ってくれないかと、兄にもちかける。

両親は他界しているので。

本来は気のおけない関係の兄妹なのに、

いつもより気合のはいった恰好をしていた理由がわかる。

 

 

 

 

おもわず踊りだすくらい、年をとるのがうれしい時期。

17歳くらいまでだろうか?

雛が巣から飛び立つ瞬間に、本作はすっと幕を下ろす。

 

女の子の女の子らしさを全3巻に凝縮した、不朽の名作だ。





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タグ: 関谷あさみ 

水瀬るるう『大家さんは思春期!』6巻 チエちゃん迷宮入り

 

 

大家さんは思春期!

 

作者:水瀬るるう

掲載誌:『まんがタイム』『まんがタイムファミリー』(芳文社)2012年-

単行本:まんがタイムコミックス

ためし読み/当ブログの過去記事

 

 

 

ヒロインのプロフィールをつくってみた。

 

名前:里中チエ

年齢:12歳

職業:中学生、アパートの大家さん

特徴:かわいい

得意分野:家事全般

苦手分野:色恋沙汰、スポーツ

 

連載は4年におよぶが、チエちゃんが苦手を克服する気配はない。

たとえば会話がまるで噛み合わない、せっかくのバレンタイン回。

カラカラと空転する、物語の歯車。

 

 

 

 

不在である家族についても語られない。

作者は物語の進展を放棄したらしい。

 

たしかに本作は「21世紀のサザエさん」になるポテンシャルがあったが、

アニメ化がわづか2分間だったため、その芽は摘まれた。

着地点が見つからず、時空の狭間でさまよってる感じだ。

 

 

 

 

6巻も朴念仁エピソード満載。

下駄箱にラブレターを発見したら、落とし物と勘違いして張り出したり。

 

 

 

 

チエちゃんの対人関係のモデルは、つねに大家と店子。

目配りは行き届くが、思春期らしい葛藤がない。

タイトル倒れなのは否めない。

 

 

 

 

チエちゃんの第1学年がおわる。

卒業してゆく3年生たちが熱い視線をおくる。

手料理の味をおもいだしながら。

 

 

 

 

男たちは学校を去る前に告白もする。

恋愛感情は理解されないので、料理部部長としての活躍に感謝する形式をとる。

その光景はアイドルの握手会さながら。

 

 

 

 

ファッション音痴のチエちゃんのため私服をもちより、

2巻以来のファッションショーを開催。

 

結局、里中チエとはなんだったのか。

要するに偶像、アイドルだったのか。

でもただの着せ替え人形にしては、かわいすぎる。

21世紀最大のエニグマは未解決のまま。





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タグ: 萌え4コマ 

アニメ『NEW GAME!』10話 メタルギアねねっち

 

 

NEW GAME!

 

出演:高田憂希 山口愛 竹尾歩美 戸田めぐみ 日笠陽子 茅野愛衣 朝日奈丸佳

監督:藤原佳幸

副監督:竹下良平

シリーズ構成:志茂文彦

原作・9話脚本:得能正太郎

キャラクターデザイン:菊池愛

アニメーション制作:動画工房

放送:2016年7月4日-

[当ブログの過去記事はこちら

 

 

イーグルジャンプがある阿佐ヶ谷へ、中央線に乗るねねっちと紫ツインテ。

ねねっちは、紫ツインテがしきりにあくびをするのが気になる。

休日出勤がつづいており、過労で倒れるかもしれない。

 

あおっち、無理しない方がいいよ。

そんなに働かせる会社もおかしいと思う。

 

 

 

 

好きな仕事とは言え、紫ツインテも現在の労働環境に疑問を感じなくもない。

わかってるからこそ、指摘されるとカチンとくる。

 

大学生がヒマすぎるんじゃない、ちょっとは勉強すれば?

 

 

 

 

「ばかーっ!!!!!!」

 

車内で絶叫するねねっち。

親友を心配して言ってるのに、イヤミで返すなんて。

 

たしかにわたしはヒマをもてあましてる。

ヒマすぎて、友達に会うためバイトしに来るくらい。

でも、だからって、その言い方はないんじゃない!?

 

 

 

 

紫ツインテは機嫌がなおらず、ひとりで昼食をとる。

無神経で、いつまでも子供っぽいねねっちなんて、知ったことか。

 

社員食堂なのに女ばかりで、女子大の学食みたい。

『NEW GAME!』の作品世界は、狂った空間だ。

 

 

 

 

食堂を偵察するねねっち。

紫ツインテに話しかけるタイミングをうかがう。

 

 

 

 

紫ツインテが視線に反応したので、さっと身をかくす。

ステルスゲームばりの移動テクニックで離脱に成功。

 

 

 

 

溜息つきながら、デスクで惣菜パンを口にする。

人一倍さびしがりやなのでつらい。

 

やっぱり悪いのはわたしだ。

あおっちのプライドを傷つけてしまった。

自分から謝らなきゃ。

 

 

 

 

うみこにも背中をおされ、駆け出す。

感情をほとばしらせる姿はまさにヒロイン。

 

 

 

 

アニメーターにとっての諸刃の剣、それがねねっちだ。

良い面は、表情ゆたかでアクションが多くて、かわいいこと。

悪い面は、ねねっちが出るとつい描写に力がはいること。

脇役なのにキラキラ輝きすぎてしまうこと。

 

 

 

 

結局のところ、紫ツインテも、あざとい根暗女も、半端なレズカップルも、

ただ生活費を得るためゲームをつくらされてる社畜にすぎない。

ピュアな愛に突き動かされ疾走するねねっちとくらべたら、かすんでしまう。





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志摩時緒『夜にとろける』

 

 

夜にとろける

 

作者:志摩時緒

掲載メディア:『楽園 web増刊』(白泉社)2015年-/同人誌

単行本:楽園コミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

白泉社のサイトや同人誌で発表した連作をあつめたもの。

表題作『夜にとろける』が単行本のタイトルとなったが、

そこに巻数がふられたせいで、ちょっとややこしい。

 

要するにJKのいちゃラブを、よりどりみどりで堪能するための一冊。

 

 

 

 

『夜にとろける』は、高校生の「純香」と大学生の「新太」の話。

最初からラブラブで、ケンカもすれ違いもなく、最後までラブラブ。

 

マンガ的記号のない

ふつーの子が好きです

 

リアル女子高生集団見ても

みんな似た髪型してるよね

 

作者コメント

 

ツインテやゴスロリやギャル系みたいな「マンガ的記号」はリアルじゃない。

街を闊歩するJKはもっと透明な存在だから。

 

 

 

 

ふたりはバイト先のドラッグストアで知り合った。

無地のTシャツ一枚の、純香の清潔感に惹かれる。

 

 

 

 

純香と新太は、すでにカラダも結ばれている。

セックスシーンは純香のモノローグと併行して描かれ、端正ですらある。

 

自分は絵が上手いわけではないし、

漫画の描き方についてしっかり習ったことがあるわけではないので、

出来る範囲で丁寧に描くことを意識しています。

枠線からはみ出た線はちゃんと消すとか、

吹き出しはセリフと画面に合わせて適切なサイズにするとか。

パッと見て読みやすい画面になるように気をつけて作画してい ます。

 

作者インタビュー

 

たとえホムンクルスみたいな画力がなくても、

丁寧に消しゴムツールをつかったりするだけで、絵に緊張感がみなぎる。

 

 

 

 

衣服を剥ぎ取られる純香。

でも恋人の言葉が心に侵入したため、露出した胸より顔をかくす。

 

 

 

 

事後、枕元のスマートフォンへ手をのばす。

9月15日17時52分。

日没前に抱き合ってたら、まだ汗だくになる季節だ。

隣で伸びをする純香がかわいい。

 

 

 

 

髪を櫛でとかし、スカートの皺をのばす。

本作のテーマはセックスだが、それは前後のコンテクストにつながっており、

ぱっと炎の様に燃え上がっては、さらさらと水の様に流れてゆく。





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アニメ『NEW GAME!』9話 ねねっち「初登場」

 

 

NEW GAME!

 

出演:高田憂希 山口愛 竹尾歩美 戸田めぐみ 日笠陽子 茅野愛衣

監督:藤原佳幸

副監督:竹下良平

シリーズ構成:志茂文彦

原作・9話脚本:得能正太郎

キャラクターデザイン:菊池愛

アニメーション制作:動画工房

放送:2016年7月4日-

[当ブログの過去記事はこちら

 

 

くそマジメなプログラマーのうみこにとって、

デバッガーとして雇われた大学生の桜ねねは、理解しがたい存在だ。

いつもたのしげ、いやそれどころか、ふざけて遊んでる様にみえる。

けど仕事は一応こなしてる。

優秀なんだから、もっと集中すればいいのに。

 

 

 

 

集中力は、ねねっちにもっとも缺けてるもの。

おもしろそうな話題が耳に入れば、作業をほっぽり出して飛んでくる。

幼なじみが職場にいるとはいえ、新人のバイトとしては目に余る勤務態度。

 

 

 

 

ねねっちのふるまいは、会社の業務に悪影響をおよぼしており、

うみこの管理責任が問われるレベルだ。

イーグルジャンプに来た理由を尋ねる。

返答によっては解雇するつもりで。

 

 

 

 

つぶらな瞳を潤ませ、ねねっちは親友への思いを語る。

お調子者で誤解されやすいけど、その震える声は、言葉に嘘がない證拠。

 

 

 

 

ヒョウタンツギみたいな顔で反省されたら、いくらうみこでも、これ以上叱れない。

得なのか損なのか、わからない性格。

 

 

 

 

9話は、原作者の得能正太郎が脚本を担当。

OPで一瞬しか登場しないなど、アニメでとことん冷遇されるねねっちを、

愛情たっぷりに引き立て、生みの親としての鬱憤をはらす。

 

 

 

 

1秒ごとに表情が変わり、生きる喜びを全身であらわす。

見る者をしあわせにする。

紫ツインテとか、あざとい根暗女とか、どうでもよくなる。

まったく、ねねっち、君はそんなに可愛すぎるから、9話まで干されてたんだよ。





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苑田 健

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