はま/相沢沙呼『現代魔女の就職事情』

 

 

現代魔女の就職事情

 

作画:はま

原作:相沢沙呼

掲載誌:『月刊コミック電撃大王』(KADOKAWA)2015年-

単行本:電撃コミックスNEXT

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ヒロインの名は「玉城禰子(たましろ ねこ)」、職業は魔女見習い。

鼻水垂らしてるのは猫アレルギーだから。

 

 

 

 

しきたりに従い、田舎町へ修行にやってきた。

タロットカードでさっそく占いを披露するが、さほど感心されない。

 

伝統藝能みたいに、魔女が受け容れられる世界観。

『魔女の宅急便』と比較されるのは覚悟の上だろう。

スカート丈の短さに、アップデートの内訳を見て取れる。

 

 

 

 

赤のリボンと黒のワンピースも、キキを髣髴させる。

制服っぽく自分で仕立てた。

 

はまの描線は端麗で、脚線美は鈴木マナツに匹敵。

 

 

 

 

神社の娘「弥生」を紹介される。

お調子者の禰子に対し、クールな性格。

魔女vs巫女のライバル関係が勃発した。

 

 

 

 

弥生はやさしい面もあり、財布をなくした禰子に下宿先を提供。

彼女の家が管理する、風呂もトイレも共同の格安物件だけど。

 

魔女宅はキキのかぼちゃパンツでひたすら押しまくるが、

2015年の日本が舞台なら、下着もこれくらい可愛くなければ。

 

 

 

 

探し物やお届け物をこなしつつ、町の住人からの信頼を得てゆく。

OLを辞めてパティシエになった「陽向さん」など、

田舎のくせにスタイル抜群の美人ばかりでうれしい。

 

 

 

 

箒にのって空から町を見下ろすお約束の場面だって、

百合とゆう新たな魔法をかければほら、こんなに瑞々しい。






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タグ: 百合 

うかみ『ガヴリールドロップアウト』2巻 非-日常のハルマゲドン

 

 

ガヴリールドロップアウト

 

作者:うかみ

掲載誌:『コミック電撃だいおうじ』(KADOKAWA)2013年-

単行本:電撃コミックスNEXT

ためし読み/1巻の記事

 

 

 

ネトゲ廃人にまで堕落した天使「ガヴリール」に、

世話焼きな悪魔「ヴィーネ」がツッコむ作法のコメディ。

第2巻は、天然ボケの悪魔「サターニャ」が物語をひっぱる。

はたしてどんな事件がおきるのか。

 

 

 

 

夏は勿論、水着にきがえて海水浴!

無理やり連れられたガヴは、パラソルの下でネットの海を泳ぐ。

 

 

 

 

遊び疲れて、帰りの電車で眠りこける四人組。

ガヴもガヴなりに楽しんだらしい。

 

天使や悪魔である必然性のないエピソードであり、

たとえば桜高軽音部におきかえても成立する。

 

 

 

 

物語の鍵となる12話。

ガヴとヴィーネの出会いについて語られる。

天使学校を主席で卒業し、地上に派遣されたばかりのガヴは、

いまとは天と地の差がある優等生だった。

 

ただ、なにが原因で「駄天使」となったかは謎のまま。

読者としては、キーインシデントをおあづけにされて残念。

 

 

 

 

15話はハロウィン回。

大はしゃぎするサターニャがカワイイ。

 

「セカイ」が終わっちゃいそうな設定の「日常系」である本作は、

話数を重ねるなかで、このジャンルの本質を炙り出す。

日常系は、日常でなく月ごとのイベント、つまり一種の非日常を描く。

インシデントの粒子が融解してゆく、イベント中心主義の文化。

 

 

 

 

イベント帝国主義の暴威に対し、その内側で叛旗をひるがえす、

ガヴの孤独な戦いの記録でもある。

トリック・オア・トリートに節分の豆で抵抗したり。

 

 

 

 

合言葉はトリック・アンド・キュート。

怠惰な天使のアンチテーゼは、支持しないわけにゆかない。






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タグ: 百合 

渡邉ポポ『ふらら一人でできませんっ』

 

 

ふらら一人でできませんっ

 

作者:渡邉ポポ

掲載誌:『コミックハイ!』『月刊アクション』『漫画アクション』(双葉社)2015年-

単行本:アクションコミックス

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なんでもひとりで出来る女は、可愛気がない。

ちょっと甘えん坊な方が魅力的。

他力本願を、知的障碍を疑われるレベルまで推し進めたのが、

本作のヒロイン「甘宮ふらら」である。

 

幼なじみ「琴平錦」との待ち合わせに母親同伴。

高校入学初日から手を焼かせる。

 

 

 

 

毎話ふららちゃんはミッションに挑む。

記念すべき第1話は「コンビニのトイレを借りる」。

僕も抵抗を感じるので絶対つかわない。

 

 

 

 

独り立ちを促したい錦は傍観する。

店員の前で硬直したふららの腿を、一筋の水滴がつたう。

本人は汗と言い張るが。

 

コンビニの棚やスカートのプリーツなど、『よつばと!』なみに細密な描写が、

ちょっと極端な物語のリアリティを確保。

 

 

 

 

ふららちゃんは一言も発しない。

他者の話は理解できるし、LINEなどのテキスト交換はできるけど。

かわりに本作は表情が雄辯に語る。

仮病をつかった娘をみる母の虚無感は、ハトポポコの諸作に匹敵。

 

 

 

 

行動力ゼロのヒロインに読者が共感できるのは、彼女が感受性豊かだから。

砂時計の様に液体が落ちる「ドロップモーション」のうつくしさに夢中になったり。

ふららは水滴に縁があるらしい。

 

 

 

 

それは錦が自分の用事をすますための策略だったけど。

「ヒロインの視点で世界を再起動させる」のは『よつばと!』のテーマだが、

意外なギミックでたのしませる本作は、そのアップグレード版。

 

 

 

 

ひとりじゃなんにも出来ないくせに、一丁前に桜を愛でるふらら。

イラッとくるけど、同胞意識も感じる。

四季の美を解する心、それが大和撫子の条件だから。







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佐原ミズ/楠みちはる『神様のジョーカー』

 

 

神様のジョーカー

 

作画:佐原ミズ

原作:楠みちはる

掲載誌:『イブニング』(講談社)2015年-

単行本:イブニングKC

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6ページめ、ヒロイン「茉洋(まひろ)」の登場シーン。

腰の入ったいいキックのあと、気安く甘える。

そして、きょうは家飲みしようと誘う。

童顔だが、大きめのピアスは学生っぽくない。

このコはいったい何者か、だれでも気になる。

 

 

 

 

テキパキと服を脱ぎ、ヘアバンドで短い髪をまとめる。

斜め後ろから見る耳がセクシーだ。

 

 

 

 

ビールの空き缶が積み上がってゆく。

茉洋は出版社の広告局ではたらいている。

ストレスのたまる仕事だ。

 

正面むいた女子の笑顔は、かわいくて当たり前。

疲れた横顔もうつくしく描けるがゆえに、

佐原ミズはデビューから13年の中堅作家となれた。

 

 

 

 

恋人の「希和(きわ)」が茉洋と出会ったのは、大学のオープンキャンパス。

1歳上の女子大生の笑顔がまぶしくて、恋に落ちた。

こいつが自分の物になってほしいと、フェンス越しに願った。

 

佐原ミズは僕の好みからすると線が細すぎるし、

楠みちはるは車に興味ないしと、作者両名とも縁がなかった。

ただ、この組み合わせはいい。

アニメ原作の『ほしのこえ』に対する驚くほど高い評価から判断すると、

佐原は作画に集中した方が、繊細な個性が際立つらしい。

 

 

 

 

希和は、女流作家にありがちなモヤシ野郎でなく、やることはやる。

佐原はあまりセックス描写が得意じゃない様だが、

左ページ2コマめで茉洋が布団をひきよせる手つきとか色っぽい。

 

もともと楠によるネームが存在したが、

なんと彼は38年の漫画家人生でネームを描いた経験がなく、

汚すぎて判読不能のため、佐原が自由に描いてるとか。

 

 

 

 

就職した希和の同期である「友里」はクールな黒髪美女だが、

ピアスが女らしい潤いを確保。

女の手や耳や横顔が織りなすサスペンス。

 

 

 

 

先輩で、恋人で、少女の様で、少年の様で。

自由奔放だけど、しっかりしたOLでもあり。

ストーリーもおもしろいが、茉洋の多面的な魅力の前では霞む。






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ジャンル : アニメ・コミック

もすこ『久住くん、空気読めてますか?』

 

 

久住くん、空気読めてますか?

 

作者:もすこ

掲載誌:『月刊ガンガンJOKER』(スクウェア・エニックス)2015年-

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学校で一番モテてるヒロイン「佐倉えりか」が、

無表情な謎の男子「久住くん」に惹かれる様子をえがくラブコメ。

男キャラの空気読めなさが『となりの関くん』に似ているが、

本作の位置関係は「斜め前」だから観察し放題!

 

 

 

 

久住くんは、超人的な器用さで内職したりしない。

シャーペンのノックが人よりちょっと速いくらい。

でも気になる。

 

 

 

 

好意をもってるのは友人の「ゆっこ」にバレバレで、からかわれる。

言い訳がやたらくわしく、久住くん博士状態。

要するにツンデレだが、恋愛対象とのコミュニケーションが皆無なので、

ハムスターホイールなみの空回り感をかもしだす。

でも恋って大抵、ひとり相撲かもしれない。

 

 

 

 

横長の4コマを縦にぶち抜く、細身のスタイル。

ニーソックスで強調された長い脚、朝6時に起きてセットした髪。

廊下をあるけば皆が注目する。

 

 

 

 

夏祭り回では浴衣姿を披露。

ツインテがトレードマークだが、アップにした髪も似合う。

友人たちの私服もかわいい。

 

 

 

 

乙女にとっては春夏秋冬、いつだって恋の季節。

梅雨時だったら相合傘のチャンス。

 

 

 

 

鈍感男子には華麗にスルーされるけど。

 

本作はもすこの初連載だが、オシャレさやかわいさと、

とぼけたギャグのハーモニーが、はやくも個性とゆう花を咲かせる。






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ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 萌え4コマ 

アントンシク『恋情デスペラード』

 

 

恋情デスペラード

 

作者:アントンシク

掲載誌:『ゲッサン』(小学館)2015年-

単行本:ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル

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旅先で草鞋を脱ぐとき、渡世人は仁義を切る。

本作の主人公「紋子」もビシっと決めた。

『木枯し紋次郎』などの股旅物をモダナイズ。

 

 

 

 

拳銃・保安官・蒸気機関車……。

西部劇の要素もあり。

 

 

 

 

飛び道具に対し、紋子は刀主体でたたかう。

笠と合羽は防弾仕様。

アメコミ風の擬音語も、ごった煮感をかもしだす。

 

 

 

 

魑魅魍魎が跋扈するファンタジーでもある。

うるさい編集者なら「詰め込みすぎ」とボツにしそうな世界観。

 

 

 

 

それでも本作が読ませるのは、各エピソードにメリハリが利いてるから。

紋子はイケメンに弱く、ちょっと優しくされるとすぐ靡く。

 

 

 

 

一宿一飯の義理と、惚れた男のため、剣をふるう。

直接の影響はないにせよ、劇画っぽい、望月三起也などを想起させるアクション。

いろいろ混ぜたら、かえって古風にみえる不思議。

 

 

 

 

もちろん最後は寅さん的なオチがつき、紋子はまた旅路の人となる。

わかっていても泣かされる黄金律。

視覚的にストーリー的に、贅沢な読書体験をもたらす佳作だ。






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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

中村佑介『みんなのイラスト教室』

 

 

みんなのイラスト教室

 

著者:中村佑介

発行:飛鳥新社 2015年

 

 

 

アジカンや『謎解きはディナーのあとで』などで知られるイラストレーター、

中村佑介がツイッターでおこなっているイラスト講座をまとめた書籍。

 

創作系の授業では「お手本」をしめす必要があるが、

自作ばかり挙げたらナルシストと思われるため、他者の作品もとりあげる。

たとえばWeezer青盤の安定した構図とか。

しかし気前よく手札を晒せば、同業者に研究されるリスクをともなう。

 

 

 

 

ポップアートのロイ・リキテンスタインは、「手間をかけること」の重要さの例として。

洋モノはとりあえず無難な教材だ。

 

 

 

 

鳥山明が手がけたドラクエ4のパッケージをとりあげ、

「色と大きさ」をもちいる視覚のトリックを解説する。

発売当時、著者は12歳。

影響とゆうより、血肉となっている作品だろう。

 

 

 

 

なかでも崇拝するのがビックリマンシールの米澤稔。

わざわざパクリ商品と比較し、単純化された絵における、

人体の構造の理解にもとづく立体的表現について語る。

 

ビックリマンシール収集にハマった小学校時代の情熱が、

現在の中村佑介の画業の骨格をなしている。

 

 

 

 

逆に言うと彼は、すくすくのびのび成長したおぼっちゃま。

父は建築家で母はファッションデザイナー、ふたりとも絵がうまい。

 

ちなみに僕が両親にしてもらってとても嬉しかったことは、

学校で描いた絵が、次の日に額装されて、家の壁に飾られていたことです。

プロの父母からしたら、僕の絵なんて下手っぴだったろうに。

それは「自分もプロになれるかも?」という大きな自信となり、

よりいっそう絵を頑張ることへ繋がりました。

 

ただの親馬鹿エピソードに思えるが、本人にとっては貴重な思い出。

まあ僕は親に褒められた記憶がないから、こんなにヒネくれてしまったのかも。

 

高3のときのデッサンを見せ、「僕に勝てるかな?」とうそぶくイノセンス。

幸福な少年期を送ったからこそ描ける、幸福な世界。

本書を読んでも、あなたは中村佑介になれない。

いまその場で葛藤し、苦悶し、心に立ち籠める暗雲を払わねばならない。

親ではなく、自分の力で。






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テーマ : イラスト
ジャンル : 学問・文化・芸術

堂本裕貴『りぶねす』3巻 終わらないアスカ時代

 

 

りぶねす

 

作者:堂本裕貴

掲載誌:『マガジンスペシャル』(講談社)2014年-

単行本:講談社コミックス マガジン

ためし読み/以前の記事→1巻/2巻

 

 

 

表紙を飾った、カスミのまぶしい水着姿。

93センチGカップがゆれる。

いま一番かわいい妹キャラだろう。

 

 

 

 

本作は「ダブルヒロイン」のシステムを採用する。

サッカー界じゃ時代遅れのツートップ戦術に、なぜか固執。

 

ある意味レアな78センチAカップ。

テツのリアクションは真剣そのもの。

本作のウリである巨乳を、貧乳が駆逐する。

 

 

 

 

正ヒロインが文字どおり霞んでしまう。

プカプカと浮かぶしか能のない、ただの乳袋になり果てた。

 

ポストプレイで相棒を活かす役割のエミール・ヘスキーが、

マイケル・オーウェンより自己主張したら、チームバランスは崩壊する。

サポーターとしては心配せざるをえない。

 

 

 

 

1巻はひたすらカスミをかわいく描き、2巻はライバルにスポットをあてた。

3巻も引き潮のまま、アスカ無双がつづく。

たとえば温泉宿での誘惑。

 

 

 

 

縁日でリンゴ飴を頬ばりながら、思いを吐露する。

しっとりした名場面。

夏のもっともうつくしい記憶としてのこるはず。

 

 

 

 

水着と浴衣ではアスカ圧勝。

最後に下着姿をくらべよう。

G的なアレを発見し、パンツまるだしで全力疾走。

勿論カスミだってかわいい。

 

 

 

 

対するアスカは、雨宿り中の透けブラ。

絶妙なトーンワーク。

最近のリアル女子は夏でもキャミソールを着るが、あれはちょっと野暮かも。

 

3戦全勝、アスカ時代はおわらない。






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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

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平山優『真田信繁 幸村と呼ばれた男の真実』

信州上田合戦図(上田市立博物館蔵)

 

 

真田信繁 幸村と呼ばれた男の真実

 

著者:平山優

発行:KADOKAWA 2015年

レーベル:角川選書

 

 

 

『長篠合戦と武田勝頼』『検証 長篠合戦』で「信長中心史観」を粉砕した著者が、

14か月かけて資料を読み、昌幸・信繁の真田父子の像を炙りだして、

こんどは「家康中心史観」に挑む書物。

 

昌幸は、徳川、上杉両氏の力を利用し、

労せずして上田城という要塞を手にいれたことになる。

まさに謀略家真田昌幸の面目躍如であった。

 

天正壬午の乱と二度の上田合戦をへた信州周辺の、

錯綜する力関係の糸をとくほぐす昌幸の智謀が印象ぶかい。

しかし、

 

いずれにせよ、第二次上田合戦における真田父子の勝利とは、

徳川方の作戦変更による攻撃続行中止の結果であり、

もっといえば転がり込んできた結果的な勝利と

みた方が実態に近いのかもしれない。

 

とある様に、「偶然の結果」を「個人の能力」に帰する慾望を抑制するあたり、

ノッてる歴史研究者のすごみも感じさせる。

 

そして快刀乱麻を断つがごとく、通説俗説を斬り捨てる。

「家康打倒の秘策の伝授」は109ページ、「犬伏の別れ」は117ページ、

「方広寺の『国家安康』の銘文」は163ページで否定される。

本書を読んだあと、卑劣な詐術により秀頼を追い詰めた、

「悪玉としての家康」を脳裏に描くのは不可能だ。

 

 

大坂夏の陣布陣図

 

 

大阪冬の陣での和睦成立後の「堀の埋め立て」は、豊臣方も望んでいた。

お堀さえなくなれば、勝ち目は薄いとみなした牢人たちが城を離れ、

厄介払いになると同時に、徳川方との和睦条件を守れると見越した。

だが目論見は外れ、再就職先の当てのない牢人は大阪城に留まる。

 

夏の陣では、信繁に本陣へ斬り込まれ、家康は切腹も考えたと言う。

逆転は、秀頼が大野治長を呼び寄せたのがきっかけ。

21歳の若さは言い訳になるけれども、その矛盾した行動、

味方の対立を放置した消極性、最後の判断ミス、

司令官の力量の差が豊臣家の滅亡をまねいた。

 

真田丸の戦いの直後、信繁は家康からの調略にあっているが、

節を全うし名を汚さなかったのは、煮え湯を飲まされる父を見てきたから。

 

つまり豊臣氏は、自らの問題で牢人問題を生み出し、戦時に彼らに依存し、

最後は彼らをコントロールできずもとろも道連れにされたといえる。

そうした中で、信繁は自身も牢人問題の当事者であるがゆえに、

豊臣氏存続の最後の手段として、夏の陣での野戦で、

徳川家康を討ち取るしかないと思い定め、あと一歩というところで戦死した。

 

著者は歴史から、芝居がかったエピソードや英雄崇拝を排除する。

そして、ヒーローなき世界のアンチヒーローを克明に描き、

ない袖を振りながら戦った男たちの時代の、

ある種の通史を、上掲2書と本書で完成させた。






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テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

あfろ『ゆるキャン△』

 

 

ゆるキャン△

 

作者:あfろ

掲載誌:『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)2015年

単行本:まんがタイムKRコミックス

ためし読み/『シロクマと不明局』の記事

 

 

 

本栖湖のキャンプ場に、お団子ヘアの少女「リン」がひとり。

シーズンオフのソロキャンプだから貸切状態。

 

 

 

 

行き倒れていた、同年代の「なでしこ」をたすけた。

ソロプレイが信条だが、やむなくカップヌードル・カレー味を分け与える。

 

 

 

 

学校へゆくと、行き倒れ娘がテントを張るのを発見。

キャンプのたのしさにめざめ、さっそく「野外活動サークル」へ加入したらしい。

 

 

 

 

なでしこは予期せぬ再会に昂奮、リンもサークルへ誘う。

露骨に煙たがるソロプレイヤー。

作者お得意のジト目女子の魅力が炸裂。

「男ウケが悪い」と言われるお団子ヘアなのも、キャラに合っている。

 

 

 

 

検索エンジン泣かせのペンネームゆえ自信ないが、

あfろのきらら単行本はこれで7冊めのはず。

でもレーベルの色に染まらない、読者を突き放すシュールな笑いは健在。

本作『ゆるキャン△』の女子は、『ヤマノススメ』みたくベタベタしない。

 

 

 

 

女子だからこそ、女子から離れたいときもある。

母なる大地に抱かれ、心の汚れを洗い流す。

 

 

 

 

フォトリアルな背景、凝ったカメラワーク、おしゃれでカワイイ女子、尖ったギャグ……。

独特の作風は、なにか大きなものとの交感により育まれたのだろう。






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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: きらら系コミック 

とこみち『ゆーあい』

 

 

ゆーあい

 

作者:とこみち

掲載サイト:『COMICメテオ』(フレックスコミックス)2015年-

単行本:メテオコミックス

 

 

 

すべての恋はストーキングからはじまる。

身長185cmの「高橋勇介」は高校の入学式当日、

小柄なクラスメートの「相沢あい」に一目惚れ。

話しかけるチャンスをうかがってたら、自宅までつけてしまう。

 

 

 

 

巨漢による尾行はバレバレだった。

あいはビビるどころか、翌日(入学2日め)に「なぜつけたのか」と直接尋ねる。

浮世の習いを超越した、エンジェリックなヒロインだ。

 

 

 

 

恋とはすなわち、相手を知りたい、観察したいとゆう思い。

それが本作のテーマ。

保健室へゆけばさっそく身体測定。

身長144㎝とわかり、ますます好きになる。

 

 

 

 

名場面の5話は、理科室での実験をえがく。

口のなかの粘膜を採取し、顕微鏡で観察する。

 

 

 

 

あいは細胞レベルでも天使だった。

科学の驚異にふるえる勇介。

 

 

 

 

そんなに言うなら、どっちか当ててみ?

「同中のヒロキの細胞との識別」とゆうお題を与えられる。

 

授業が、愛の強さをテストするリトマス試験紙に。

学園ラブコメの無限の可能性をものがたるエピソードだ。

 

 

 

 

くわしく紹介できなかったが、美咲やヒロキのツッコミもたのしく、

絵はシンプルかつオシャレで、瑞々しい四重奏を聞かせる。






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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

金田陽介『寄宿学校のジュリエット』

 

 

寄宿学校のジュリエット

 

作者:金田陽介

掲載誌:『別冊少年マガジン』(講談社)2015年-

単行本:講談社コミックス マガジン

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「ジュリエット・ペルシア」と「犬塚露壬雄(ろみお)」が戦う。

寄宿学校の寮同士の抗争だ。

『ロミオとジュリエット』を下敷きとする物語ではあるが、

可憐なヒロインが矢面に立つのが当世風。

 

 

 

 

刃をまじえるうち、犬塚は宿敵に恋してしまう。

不毛な争いを終わらせるため、勇気をふりしぼり告白。

 

 

 

 

恋心は国境や党派をこえる。

ふたりの禁断の関係がはじまった。

 

金髪とか、ブレザーの皺のより方とか、剣の装飾とか、

丁寧な描き込みがラブコメをもりあげる。

 

 

 

 

ロミジュリといえば、バルコニーへの侵入。

本作は「ペルシアの着替えを覗く」とゆう解釈で、世界文学史にケンカを売る。

 

 

 

 

4話から登場する「シャル」は王女さま。

目隠れのショートカット・ティアラ・長身・巨乳……。

いきなり観客の注目を掻っ攫う。

 

 

 

 

シャルはペルシアを好きで、独占しようとする。

ふわふわでサラサラの金髪が画面に舞う華やかさ。

睫毛までうつくしい。

百合の導入によりシェイクスピアをこえた。

 

 

 

 

400年前の戯曲をいま読むと、さすがに古さを感じる。

昔の女は随分と不自由だな、とか。

たとえばもしジュリエットがツンデレキャラなら、もっと魅力的じゃない?






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テーマ : 漫画
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タグ: 百合 

矢野耕平『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』

(イラスト:平井さくら)

 

 

女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密

 

著者:矢野耕平

発行:文藝春秋 2015年

レーベル:文春新書

 

 

 

左から順に、東大合格者数と制服のダサさで名を轟かす桜蔭、

私服通学で自由放任の女子学院(通称JG)、

セーラー服が憧れの的となっているお嬢様校の雙葉。

 

女子校文化を知らねば、日本は理解できない。

本書は「女子御三家」について学ぶための参考書だ。

 

 

 

桜蔭といえばジャンパースカートの制服。

夏服と冬服のデザインがほぼ同じなのも、野暮ったさを増幅する。

あまりにダサすぎ、どんなに可愛い子が着ても可愛くならないので、

最初は抵抗する生徒たちも、高2くらいになると諦めてしまう。

 

桜蔭生がオシャレのかわりに熱中するのは勉強。

先生の人気は話のおもしろさでなく、授業のレベルで決まる。

修学旅行でさえ事前に徹底調査し、学びの場とする。

東大寺のガイドは彼女らの知識量に恐れをなし、

「桜蔭が来る」となれば毎年勉強し直すのだとか。

 

 

 

JGは制服がない。

ほかの私服通学の女子校は大抵スカート指定だが、それすらない。

化粧も許される。

 

行事や部活も生徒主導。

JGのクラブ活動は「部」でなく「班」とよばれ、

練習メニュー・スケジュール・荷物の手配など全部自分でやる。

顧問の先生は顔を出さないのが当たり前。

対外試合で、先生に叱られる他校生を見るとカルチャーショックをうける。

 

ただし、学年間の上下関係はきびしい。

自由とゆう伝統を守るには秩序が必要だ。

そんなこんなで、JG生の多くは先輩に恋してしまう。

自立した立ち居振る舞いがまぶしすぎるから。

 

 

 

雙葉は、幼稚園からの一貫教育をほどこすのが、他の二校とちがう。

それゆえ内部生と外部生の軋轢、イジメなどが発生する。

担任の教師を標的にして辞めさせた事例まであるとか。

 

比較すると、桜蔭やJGほどの個性はない様だが、

先輩に恋する文化は雙葉にも勿論ある。

 

 

 

 

 

 

豊島岡女子学園などの台頭で、「女子御三家」の地位は揺らいでいる。

時代遅れの幻想となりつつある。

それでもやはり彼女らは、僕たち私たちが憧憬する存在。






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テーマ : 教育
ジャンル : 学校・教育

斉木久美子『かげきしょうじょ!!』

 

 

かげきしょうじょ!!

 

作者:斉木久美子

掲載誌:『メロディ』(白泉社)2015年-

単行本:花とゆめCOMICSスペシャル

ためし読み/集英社版『かげきしょうじょ!』1巻/2巻

 

 

 

歌劇団のスターをめざす少女たちの物語が再起動。

掲載誌の休刊をうけ版元が変わり、青年誌から少女誌へ。

それでも目的地はおなじ。

 

 

 

 

典型的な学園ドラマは、集英社版の全2巻でひとまず終了。

いよいよ予科生も実演にとりくむ。

2週間準備して『ロミオとジュリエット』の一場面を演ずる。

 

 

 

 

4人ごとの班にわかれ、じゃんけんで役を決める。

勝った千夏が、奈良っちのオーラに気後れし脇役をえらんだ。

仲間を蹴落としてでも役を得るのが藝能の世界なのに。

重要な伏線になりそう。

 

 

 

 

集英社版2巻でトラウマを克服、髪ものびてデレ期突入した奈良っちに、

作者はあきらかに肩入れしており、一挙手一投足から目を離せない。

漢字が読めない事実の告白など、いちいち劇的で愛おしい。

 

 

 

 

狭き門を突破した生徒たちはみな優秀だが、

2週間の自主練のみではマトモな芝居にならない。

ただ元アイドルの奈良っちは、さすがに華がある。

可愛気はないけど。

 

日常生活でデレても、舞台ではクールなままとゆう、新鮮なギャップ萌え。

 

 

 

 

さんざん大口を叩いてきた「さらさ」が、ついに演技を披露。

憑依型の天才役者だと證明する。

先生には弱点を見抜かれるが。

 

女子の目ヂカラだけで一変する空気。

こんな漫画はほかになく、連載継続を心から祝いたい。






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櫻井しゅしゅしゅ『ラブコメのバカ』

 

 

ラブコメのバカ

 

作者:櫻井しゅしゅしゅ

掲載誌:『ARIA』(講談社)2015年-

単行本:KCx ARIA

[ためし読みはこちら

 

 

 

ジャージ姿のうすぎたない女が、トイレで暴れる。

彼女は若手少女漫画家の「佐倉すず」。

筆が遅く、いつも編集部で缶詰にされ、ついに光熱費まで請求される。

ちなみに作者は最長一か月泊まったとか。

 

 

 

 

あわてて身繕いするのは、あたらしい担当編集がイケメンだったから。

しかし、ごまかしは通用せずゴミ扱いされる。

 

 

 

 

批判にいちいちヘコんでたら、この稼業はつとまらない。

「イケメンに罵られて快感♡」くらいに思わねば。

作者の体験をまじえた、ずぶとい漫画家魂がリアルだ。

 

 

 

 

大御所作家の豪邸へ、臨時のアシスタントにゆく。

緊張して武士言葉になるすず。

イケメンと権威によわい。

 

 

 

 

本作は業界にイケメンしかいない設定なので、アシスタントもイケメン。

腕はいいが口が悪く、少女漫画をバカにする。

 

 

 

 

我慢していた先生もキレた。

ジャンルがなんであろうと、作者と読者の真剣勝負なのはおなじ。

どっちが上とか下とか、そうゆう問題じゃないだろ!!

情熱的な名場面だ。

 

 

 

 

女を捨ててるけど、女の幸せだって手にいれる。

殺したくなるほど可愛いヒロインは注目の的。






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小説22 「終戦」

『わーるど・うぉー!! かれらの最高のとき』


登場人物・あらすじ・用語集


全篇を縦書きで読む








 半袖の黒のワンピースを着るドロシー・マッカーサーは、ハンカチで額を押さえながらホワイトハウスの階段をのぼる。八月にゴスロリ服ですごすには忍耐力が必要だ。

 三階のトレーニングジムで、上半身裸のルーズベルト大統領がベンチプレスをする。ドロシーに気づきバーベルを置く。

「汗を拭いてくれるか」

 ドロシーは無視した。自分はもう奴隷じゃないと、エメラルドの瞳が訴える。

「ナデシコに対し」ドロシーは言う。「隕石魔法を使うそうですね。あれは無益な大量殺戮です。止めてください」

「魔法はすでに発動した。落下までちょうど二十四時間」

 ルーズベルトはドロシーに支えられ、松葉杖で休憩室へ移る。開いたノートPCに「23:57:40」の表示が。落下地点は東京。

 黒衣の少女は蒼ざめる。

「停止するにはどうすれば?」

「騎士道精神を現代戦に持ち込むな。我が軍の百万の死を回避するため必要な犠牲だ」

「それほど死者は出ません。せいぜい三、四万人。あなたはスターリンを恐れてるんだ」

 エイダ・ヒトラーの自殺のあと、長野はサスーリカ軍に占領された。さらにユリア・スターリンは対ナデシコ参戦の準備を進める。もし東京まで取られたら、戦後の世界は彼女の物に。

 ルーズベルトは笑う。「さすがは次期大統領候補の洞察力だ」

「いづれスターリンはボクが斃す。決着は通常戦力でつけるべきだ」

「君はもう五年、いや十年戦争を続ける気か? 厭戦気分の国民がそれを支持するとでも? チャーチルでさえ失脚したのに」

「そこに正義があれば、リバティア国民は後押ししてくれる」

「ハウ・ナイーヴ! 話にならない」

 ドロシーは椅子に座り、テーブルに右肘をつく。腕相撲を取る姿勢だ。

 ルーズベルトが言う。「私を病人と思ってるのかもしれないが、かつて……」

「ボクシングチャンピオンのジャック・デンプシーが、肉体美を褒めてくれた。あなたの自慢の種だ」

「随分と挑戦的だな。いいだろう、受けて立つ」

 ルーズベルトはドロシーの華奢な手を握る。骨が砕けるほどの力で握り返される。全身の筋肉を収縮させるがビクともしない。

 手の甲を叩きつけられた大統領は、体ごと回転しテーブルで仰向けに横たわる。泡を吹き痙攣する。心停止していた。重度の障碍をもつ身体で、史上最大の戦争を史上最長の任期で指導してきた。とっくに限界が来ていた。

 ドロシーが叫ぶ。「ルーズベルト、パスワードを言え!」

「君にはわかるまい。単細胞の軍人には……」

 虚空に手をのばし、なにかを操縦しようとしながら、フランクリン・ルーズベルトは息絶えた。




 八月六日、午前七時。

 紅の着物をきたヒロヒトが、京葉線舞浜駅から出る。頭にリボンつきのミニーマウスの耳が。

 きょうはお忍びで「ひとりディズニー」に来た。開園一時間前に並ぶのは当たり前。「敵性施設」ではあるが、年間パスポートを保有するヒロヒトの肝煎りで営業している。戦時中でも現実逃避したい日はあるから。

 見覚えある赤毛の「少女」が鉄柵に寄り掛かっている。ヒロヒトは舌打ちした。ウチのスパイ網はなにをやってるのかしら。

 ヒロヒトは言う。「あなた、まだ女装を続けてるんですね」

「だって」赤面したドロシーが答える。「陛下がプロポーズを受けてくれないから……いやいや、それどころじゃないんです!」

 サイゼリヤに場所を移し、ドロシーはPCを見せて事情を説明。隕石が落ちるまであと三十分。止めるには十文字のパスワードを入力しないといけない。本物の政治家にしか分からないとルーズベルトは言った。

「そんなの簡単です」ヒロヒトは言う。「こう打ち込んでください。C・O・M・P・R・O・M・I・S・E」

「コンプロマイズ、妥協……あっ、認証された!」

 しかしすぐカウントダウンの画面へ戻る。何度入力しても同じ。ディスプレイを覗くヒロヒトの顔を間近に見てドロシーはときめく。

 残り五分。

「なぜだ!」ドロシーは叫ぶ。「パスワードは正しいはずなのに!」

「おそらく騙されてたんでしょう。この魔法は止めることが可能だと」

「そんな馬鹿な。最高司令官である大統領に嘘をついたら、それは叛逆だ」

「ルーズベルト大統領さえ、軍が担ぐ神輿にすぎないんですよ」

 残り一分。




 捻じ曲がった時空がリアリティを恢復したとき、ヒロヒトは自分が灯台の下にいると認識した。馴染みのある横須賀の近く、観音崎だろう。隣にいるドロシーが転移魔法をつかった。

 東京湾の向こうで爆煙が上がる。五十キロ離れたこちらにも衝撃波が伝わる。数え切れない人々が一瞬で消滅。津波などの災害も起きるだろう。ヒロヒトは目をつぶり、深く息をつく。

 ドロシーがうつ伏せで号泣する。

「ひどすぎる……こんなの戦争じゃない。リバティアの軍人であることが恥づかしい……」

 和装の天子は跪き、黒衣の少女の手を取って立たせる。

「ナデシコはリバティアに降伏します」

「陛下……ボクはそんなつもりじゃ」

「現状、サスーリカを含めた二正面作戦は遂行できません。わたしの身柄はあなたに委ねます。よろしければ、妻としてください」

「な、なんだって!」

 ドロシーのエメラルドの瞳は、喜びより驚きの色の方が濃い。

 ヒロヒトは苦笑する。「プロポーズしておいて、その反応はないでしょう」

「でも、陛下はボクが嫌いだって……」

「結婚は好き嫌いでするものじゃないですから」

 ヒロヒトは、五歳年上の花婿の小さな顔に左手を添えて口づけする。そばかすの浮かぶドロシーの頬があざやかに染まる。

「ひょっとして」ヒロヒトは続ける。「ファーストキスでした?」

「陛下は違うのですか」

「年頃の女なら、恋愛のひとつやふたつ経験して当然ですよ」

 頬を膨らませ嫉妬の炎を燃やすドロシーを見て、可愛いと思う感情が芽生える。

 ミニーマウスの耳をつけっぱなしだと気づき、外して袂に入れた。おっちょこちょいな、わたしらしい。後世の歴史家は、この出来事を想像すらできないだろうな。

 背の高いドロシーの左の肩に頭を預ける。おづおづと背中に彼の手が回る。

 わたしはいま、それなりに幸せ。




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ジャンル : 小説・文学

横田卓馬『背すじをピン!と ~鹿高競技ダンス部へようこそ~』

 

 

背すじをピン!と ~鹿高競技ダンス部へようこそ~

 

作者:横田卓馬

掲載誌:『週刊少年ジャンプ』(集英社)2015年-

単行本:ジャンプコミックス

ためし読み/『戦闘破壊学園ダンゲロス』の記事

 

 

 

鹿鳴館高校の体育館で、部活動紹介が繰り広げられる。

なかでも注目をあつめるのが、華やかな「競技ダンス部」。

いわゆる社交ダンス、ソシアルダンスだ。

 

 

 

 

キレイな衣装を着て、イケメンな先輩のリードで踊る……女子なら憧れる世界。

「ボディタッチし放題」と言われたら、男子も黙ってられない。

 

 

 

 

しかし残ったのは、一年でもっとも地味でちんちくりんの二人。

「つっちー」と「わたりさん」。

ある意味似合いのペアではある。

 

 

 

 

スケベ男子やミーハー女子が駆逐されたのは無理ない。

競技ダンス部は、文化系の皮をかぶる体育会系だから。

 

『戦闘破壊学園ダンゲロス』で、女子の愛くるしさから残虐なバイオレンスまで、

なんでも描きこなした外連味たっぷりの作風は、題材にぴったり。

 

 

 

 

堂々と女子を迎え入れ、リードし、彼女をうつくしく魅せる……。

日本男子がなにより苦手とする分野。

そんな無粋で甘ったれた文化後進国に活を入れる物語だ。

 

 

 

 

衣装を試着するとき、妙に互いを意識してドキドキ。

おとなしいけど、礼儀正しく頑張り屋のわたりさんが、とにかくカワイイ。

日本の誇る文化「ラブコメ」のよさを再認識。

 

 

 

 

『ダンゲロス』と同様に、あまりに巧すぎ、なんでも描けるがゆえ、

「結局なにを読者に訴えたいんだろ?」とゆう作者への疑問は、本作でも感じる。

 

おそらくそれは、昭和っぽい過剰な作風で活写する、

現代の高校生のリアルなソーシャルネットワーク。






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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

もこやま仁『百合な私と悪魔な彼女(?)』

 

 

百合な私と悪魔な彼女(?)

 

作者:もこやま仁

掲載誌:『ヤングエース』(KADOKAWA)2015年-

単行本:角川コミックス・エース

[ためし読みはこちら

 

 

 

高校1年の転校生「西園寺みこと」のうつくしさは、全校の話題を掻っ攫う。

なかでも驚いたのが同級の「野々山やしろ」。

カノジョとは小学校以来の再会だから。

 

 

 

 

トロいやしろは、いつも男子にいじめられていた。

助けてくれるみことに恋心を抱く様に。

 

「男子=悪魔」とゆう思想が、本作の土台。

 

 

 

 

高校生になってもみことは、かわいくて優しくてカッコイイ。

やしろは求められるまま唇を許す。

男の子は大嫌いだけど、女の子ならあり。

むしろうれしい。

 

 

 

 

でも、カノジョは男だった。

先天的なホルモン分泌の異常で女らしく見えるだけ。

女体化を止めるには、だれかと毎日キスしないといけない。

 

つまり本作は、百合風味の男の娘モノ。

 

 

 

 

やしろは二重に騙された。

相手が女子とおもい安心してたら男子だった。

それ以上に、情熱的なキスが治療目的だったのに傷つく。

 

 

 

 

ここからの心理描写と駆け引きが読みどころ。

いくら騙され、利用されても、惚れた弱みでついつい流される。

嫌々してあげてるつもりなのに、キス顔のまま放置される屈辱とか。

 

作者は少女漫画出身(2007年に講談社『別冊フレンド』でデビュー)で、

純情乙女が恋に惑うラブコメ展開はお手のもの。

 

 

 

 

女心をたやすく手玉に取る、みことの小悪魔ヒロインぶりが印象的。

「男子=悪魔」としたら、最強の小悪魔は「男の娘」にきまってる。






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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合  男の娘 

篤見唯子『スロウスタート』2巻 女子の戦場

 

 

スロウスタート

 

作者:篤見唯子

掲載誌:『まんがタイムきらら』(芳文社)2013年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

ためし読み/1巻の記事

 

 

 

不器用系女子が送る、彼女たちなりに頑張ってる、ゆるゆるライフ。

2巻もさらにスローダウン。

制服のスカートを穿き忘れるくらいは御愛嬌。

 

 

 

 

本巻の視覚的主題はファッション。

ヘアピンがトレードマークの栄依子は、

誕生日プレゼントが被りすぎて「ピン子」とあだ名をつけられる。

 

 

 

 

たまちゃんは、押し入れで見つけたゲームボーイアドバンスであそぶ。

10年前のギャルゲーがなつかしい。

日本文化はゼロ年代から進歩がないと、

ベテラン作家である篤見は言外に匂わせる。

 

 

 

 

やってることはおなじでも、着る服は変わった。

ファッションショー状態の扉絵の魅力が尋常じゃない。

 

 

 

 

作者が脇役の栄依子に執着してるのが、ひしひしと伝わる。

僕はくわしくないが、『咲-Saki-』の竹井久への偏愛が作用してるらしい。

商業誌で同人活動するフリーダム。

 

 

 

 

こんなにめかし込んで地元をぶらぶら歩くのは、

さすがにオシャレ過剰だが、リアルすぎると漫画としてつまらない。

斜めの構図で腰から上のシルエットをすっきり見せる。

 

 

 

 

ドアをあけたら、そこは読者とゆうスナイパーが狙う戦場。

武装した上で応戦する。

目的地は、ちょっとコンビニまで。






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テーマ : 4コマ漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: きらら系コミック  萌え4コマ  百合 

鳩也直『ただいま清争中につき!』

 

 

ただいま清争中につき!

 

作者:鳩也直

発行:少年画報社 2015年

レーベル:YKコミックス

 

 

 

あえて分類するなら「サイキック・ファンタジー」。

心の扉をひらき、中をキレイに浄化する「掃除屋」の活躍をえがく。

 

 

 

 

くるくる変わる表情、神道要素のある髪飾り、お掃除ロボットで空を飛ぶ……。

ヒロイン「縫」は造形的魅力に富む。

 

 

 

 

掃除屋は、ただキレイにするだけの仕事じゃない。

やりすぎるとリバウンドが起き、悩み解決どころか状況悪化。

 

 

 

 

悪質な掃除屋もいる。

かわいい女の子に目をつけ、こっそり「部屋」へ侵入、

自分を好きになる様に細工をしたり。

 

 

 

 

テーマはやや難解だが、描線のうつくしさで読ませる。

主人公の妹「いと」のクールなたたずまいとか。

 

 

 

 

物語の終盤、兄妹は縫の内面へ潜りこむ。

淡々とした縫は、感情を持たないと言われるだけあり、

たしかにそこは虚ろな空白の世界。

 

 

 

 

「部屋」は入れ子構造となっており、さらなる深層へむかう。

ゴミとして処理するには惜しい、記憶のカケラをもとめて。

 

体調不良による活動休止からの復帰を飾る、1巻完結の佳作だ。






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苑田 健

苑田 健
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たまにオリジナル小説。

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