得能正太郎『NEW GAME!』2巻 カラフルな空気

 

 

NEW GAME!

 

作者:得能正太郎

掲載誌:『まんがタイムきららキャラット』(芳文社)2013年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

ためし読み/1巻の記事

 

 

 

コンピュータだらけのゲーム会社は夏ヤバい。

特に液タブは発熱するので、グラフィッカーはなやましい。

 

そんなコウさんの苦労や、季節感を、髪をたばねる手つきであらわす。

 

 

 

 

逆にマスターアップの安堵感は、ほどく仕草や表情で。

 

僕がもし漫画家だったら、おしゃれなデザインのシュシュとか描きそうだが、

あえてシンプルなゴムひもにして、ひととなりを伝える。

 

 

 

 

これは16話の扉絵。

引用ではカットしたが、青葉の髪は下段へながれる。

重力すら愛おしくなる可憐さ。

 

 

 

 

16話で社員たちは健康診断をうける。

日本独特の企業文化とおもう。

ブラやら胸の大きさやらのお約束もちょっと新鮮に。

 

ナースコスとか定番の萌えと、きらら流の女子同士のイチャイチャを、

「かわいすぎる社畜」とゆうテーマでパチンとたばねるのが本作。

 

 

 

 

開発終盤、青葉の親友でいまは大学生の「桜ねね」が、

デバッグのアルバイトをするため会社へやってきた。

 

以前『NEW GAME!』の特徴として、「パーティションによる百合空間」をあげたが、

作者はこちらの想定の上をゆき、ねねっちに飛び跳ねさせる。

分断された空間のシャッフルがはじまった。

 

 

車窓の描写がさりげなくうまい

 

 

徹夜や休日返上はあたりまえ。

ものづくりは楽しいから我慢できる。

そんな「かわいすぎる社畜」の人生観を、「自由すぎるバイト」は理解できない。

 

 

 

 

マスターアップ前日、停止バグを発見したねねっち。

自分はテストプレイしただけで、なにも悪くないのに怒られる。

 

 

 

 

かわいすぎる社畜たちは、ともに責任をわかちあい、

毎日全力でとりくむなかで、強くたくましく育ってゆく。

百合色の空気に染まった女子を、刮目して見よ!

 

 

 

 

1巻は、おそらく史上最高のパンツ漫画のひとつだが、

職場は人員増強され、おいそれと脱げなくなった。

作者が描き飽きたのかもしれない。

 

単行本冒頭のカラーページで、パンツファンの期待にこたえる。

得能正太郎の前作『こもれびの国』はオールカラーだし、

ソファの柄などでの達者な色使いはあいかわらず。

かたやテレビリモコンの4色ボタンのダサさといったら!

赤と青はともかく、緑と黄は意味不明、原色がどぎつく最低のデザイン。

 

だがそれと対比される、淡い水色が印象ぶかい。

パンツは絵としてこんなに映えるのか、こんなにうつくしいのかと感動。




NEW GAME! (2) (まんがタイムKRコミックス)NEW GAME! (2) (まんがタイムKRコミックス)
(2015/03/27)
得能正太郎

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小説13 「兄妹対決」

『フリーダム・シスター』


登場人物とあらすじ


全篇を縦書きで読む







 ジョージとジュン、四歳ちがいの暁兄妹が、真剣をふるい斬り結ぶ。

 幕張にある高校の剣道場での訓練にあたり、司令官のジョージは妹に助太刀をたのんだ。自分が知る一番の遣い手だからだが、結局後悔した。

 雪風流でならった型どおりの組太刀は、家族同士の気安さからか徐々に加速。ジョージは気迫におされ、道場の隅へ追い詰められる。兄である手前、スピードを落とせとも言えない。ジュンはギャラリーに心配げな本城フランをみつけウィンクした。余裕綽々の態度が、一層焦りをさそう。

 そのとき喉元への突きを、妹は躱しそこなった。あやうく頸動脈を切断しかけた。

「馬鹿野郎!」めづらしくジョージが激昂。「真剣をもって余所見をするな!」

「はあ?」冷笑するジュン。「わざとだっつうの。アニキが咄嗟に止められるか試したんだよ。お父さまがいつもやってたろ」

 驚愕の事実だった。毎日横で稽古しながら、父と妹が半分命を捨てる様な真似をしていたと知らなかった。

「もうやめた。アニキと立ち合ってると、ヘタクソがうつる」

 緑のジャージを着たジュンは指導にもどり、職業軍人だろうとおかまいなく叱咤。「踏み込みは床を踏み抜くつもりで!」などと言い、実演する。爆発音が道場にひびく。

 薙刀をもつフランに抱きつき、手取り足取り動きをおしえる。すっかり彼女になついており、過剰なスキンシップをもとめる。

 ジョージの人生設計は狂ったが、この争乱を生きのびれたら、妹と流派を再興するのもいいと思った。ジュンは短気で依怙贔屓もひどいが、弱点を一瞬でみぬく観察眼がある。教え方の部分は、温厚な自分がおぎなえばいい。繁盛するのではないか。




「まさにぐうかわ!」

 デジタル迷彩の戦闘服を着た大井スルガが、幕張メッセの会議室でiPadをスワイプしている。向かいには呆れ顔の羽生アリアが。稽古の途中で呼び出されたジョージは、隻眼の女剣士の隣にすわる。

「なにを見てるんですか?」ジョージが尋ねる。

「司令官からいただいた」元陸軍大尉が答える。「じゅんじゅんの画像です。ほら、これなんか百万リツイートされましたよ」

 バーバリーでおめかしした幼いジュンが、よそ行きの笑顔を見せている。親戚の結婚式での写真だ。年は十歳ぐらい、本人のゆう「あたしの全盛期」だ。

「それにしても」スルガが驚嘆する。「お母さん美人だなあ。じゅんじゅんにそっくりだけど、娘よりキレイじゃないですか?」

 兄妹と和服の母のほかに、陸軍の礼服を着た父も写っている。バラバラになった家族をおもうとジョージの胸は痛む。

「ウチは兄妹がそれぞれ別に、父母の外見を受け継いだので」

「暁中佐は、笑顔の写真が皆無なのがすごい」

「父は陸軍でも厳しいですか?」

「ほとんど面識ないですが、噂はよく聞きます。部下が精神を病んで入院したとか」

「ありえますね」ジョージは苦笑した。

 テーブルに編制表と大井の情報カードが散らばっている。

 師団長の「転落死」のあと、近衛師団の三分の一をしめる三千人と、学生剣士百人が合流、革命の旗を堂々かかげた。クーデタに失敗した以上、民兵を募らねば政府軍に対抗できない。

 それでも「暁兄妹起てり」のニュースは反響をよび、軍の規模は一万八千人に達した。早急に組織をつくり、訓練をほどこす必要がある。

「僭越ながら」アリアが本題にもどす。「わたしが副官をつとめる。君の右腕として使ってくれ。大井さんが参謀長だ」

「異存はない」ジョージはうなづく。

 しかし、参謀部の枠に記された名前に虚をつかれた。「先任参謀:本城フラン」「参謀:暁ジュン」とある。

 ジョージは声を荒げた。「これを書いたのはだれだ?」

「僕ですけど」参謀が訝る。「ふたりの希望ですし、司令官の許可を得たと言ってたので」

「そんなバカな。大井さん、妹まで戦争に巻きこまないでくれ!」

 先日言われて思い出したが、ジョージはイザナミ作戦より先に、この二十六歳の参謀将校と顔をあわせていた。ネトウヨ兼ネットアイドル「じゅんじゅん」の最初期からのファンで、自宅を訪問したこともある。

 だがそんな軽いノリで、妹を危険にさらすのは許せない。




 夕方、ジョージが道場にもどると稽古はおわり、いるのはジュンとフランだけ。壁に背をもたせて座り、汗だくの体を密着させ談笑する。ジュンはポカリスエットの二リットルのボトルをがぶ飲み。

「スポーツドリンクは太るぞ」

 兄の忠告に妹は舌をだす。

 ジョージは気をひきしめる。なんとか日本一のワガママ娘を説得しなくては。

「本城さん」ジョージが言う。「妹と話があるから、ちょっと外して……」

「ここにいてね」ジュンが兄の発言を遮る。「フランちゃんに聞かれて困ることなんて、あたしには何一つない」

 板挟みとなり狼狽するフランの、明るい色の髪をなぜた。

「どうせ」ジュンが続ける。「革命軍にはいるなって話だろ。自分の彼女を副官にしたくせに」

「お前はまだ十五歳だ」

「剣術であたしに勝ったことないアニキがそれを言う?」

 フランがくすくす笑う。目にジュンへの崇拝心がやどる。

 ふたりは熱に浮かされている。戦争は野蛮で醜怪で邪悪だ。思春期の突発的な感情にうごかされ踏みいるべき世界じゃない。

 ジョージは木刀を二本つかみ、片方を妹にむかい滑らせた。

「そうきたか」ジュンが立ち上がる。「まあ、わかりやすくて良いんじゃね。で、奥義の使用はあり? ほとんど使えないアニキは瞬殺されるけど」

「そのくらいのハンデはくれてやる」

「トラッシュトークかよ。はあ、めんどくさ」

 嘆息をもらしつつ、ジュンは木刀を後ろへ振り上げていた。予備動作がはじまっている。

 雪風流【脱兎】。

 瞬きの何万分の一の速さで、時空をねじまげる斬撃が襲った。かろうじて受けたジョージの木刀が床で跳ねる。

「やるじゃん!」ジュンは素直に感心。「【脱兎】を受けられる様になったんだ。受けたところで無意味とはいえ」

 二百の骨が砕かれる様な衝撃で、ジョージは突っ伏した。全身が麻痺し、声もでない。自分の技量が倍増した一方で、妹は四倍強くなっていた。

「あたしの勝ちでいい? それともトドメ刺す? あ、しゃべれないのか。ゴメンゴメン」

 ジュンは峰で自分の右肩をたたく。勝利を確信したときの癖だ。

「随分甘くなったな」ジョージは余力をふりしぼり顎をうごかす。「下半身がだらしないのは知ってたが、頭にまで回ったか」

 ジュンは犬歯を剥き出しに。この表情を人間以外に喩えるなら、悪魔しかない。

「心底うぜえ。挑発すれば、あたしが隙をさらすと思ってるらしいのが」

 剣をはなさず器用にジャージの上着をぬぎ、Tシャツ一枚となる。『ダンガンロンパ』のモノクマが不敵に笑う。

 雪風流【千仞】。

 観戦するフランが怯えるほど床を踏み鳴らし跳躍。天井をかすめた切先が急降下する。床板を叩き割った木刀は、真中で折れた。

 怒っているジュンは【千仞】を使いたがる。予測があたったジョージは転がって回避。急所に当たれば絶対死んでいた。

 ジュンは折れた剣を兄へ投げつけ、立てかけた愛刀にむかい駆ける。朱塗りの鞘を捨て、壁を蹴り反転し、猿みたく叫びながら肉親へ本身の刃をむけ突進。

 完全に頭に血がのぼっている。スピードは光速にちかづいたが、動きが直線的になり読みやすい。

 雪風流【無声】。

 暁ジョージが唯一会得した奥義は、カウンター戦術だった。敵の剣筋と呼吸を見切り、前のめりで木刀を平正眼にかまえ待つ。

 ジュンは真剣を床に突きたて静止した。

「アニキ、とうとう狂ったか」顎を柄にのせジュンが言う。「【無声】はよくて相撃ちで、実戦じゃ使えないって、お父さまに教わったろう」

「何を言う、リーチの分だけ俺が有利だ。これぞ最強奥義」

「ざけんな、こんなの剣術じゃねえ!」

 観客のフランはおもわず拍手する。練習か殺し合いかはわからないが、同門対決ならではの高純度の攻防なのはつたわった。

 ホウホウと鳥の鳴き声が玄関から聞こえる。白いミミズクがよたよた歩いている。

「あっフランちゃん、『くもたん』来たよ!」

 ジュンは刀を放置して走った。

 おとめ山公園で出会ったミミズクはジュンを気にいったのか、わざわざ幕張までついてきて、時折顔をだす。「白雲」の名で可愛がられていた。

 フランはジョージに会釈し、ジュンの刀や荷物をもち去っていった。

 ジョージの思いは乱れる。幼いころの妹は従順だが、まるでロボットだった。思春期をむかえ自我が目覚めるが、心身のバランスを崩していた。

 いまが一番イキイキしている。家族として、どう支えればよいのだろう。



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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

ちろり『箱庭ひなたぼっこ』

 

 

箱庭ひなたぼっこ

 

作者:ちろり

掲載誌:『まんがタイムきららミラク』(芳文社)2014年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

ゲーム会社からよさこい部まで、よりどりみどりの「きらら」がおくる、

新種の文化系女子、それは高校の植物同好会。

ヒロイン「鈴谷陽向(ひなた)」は勢いこんで入会する。

 

 

 

 

植物を愛する、いまが見ごろの少女たち。

花をせおって登場し、紙面から香りまでただよわす。

 

 

 

 

「千堂ゆかり」のイメージフラワーは桔梗。

華道の家元の娘で、クールビューティ。

東アジア原産の、気品あふれる花影がにあう。

 

 

 

 

会長をつとめる「橘翠子」。

ダリアの様に優雅でミステリアス。

 

 

 

 

狂い咲きすることもあるので油断ならない。

 

 

 

 

「一之瀬蘭」は虫大好き少女。

イメージはハイビスカス、夏の日差しみたく力づよい。

 

能天気・クール・母性・サバサバ。

たとえば『けいおん!』とも共通する、きらら的に鉄壁の布陣だ。

 

 

 

 

本作は可憐な少女のキャッキャウフフを愛でる漫画だが、

艶姿をながめながら、自然の摂理もまなびたい。

 

花と虫の共生関係は「助け合い」だとおもう3人を、蘭が鼻で笑う。

生きとし生けるものの営みのすべては、エゴイスティックな生存戦略。

花の色のあざやかさや、かぐわしい匂いは、繁殖のためにある。

自然界って、慾得づくのシビアな場所でしょ。

 

 

 

 

キレイな花には棘が、いや毒すらあるかもしれない。

光のはやさで乙女は進化しつづける。

 

 

 

 

むせかえるほど咲きほこる、花、花、花。

こめかみにかかる一本の後れ毛さえ、こちらを誘惑するたくらみ。




箱庭ひなたぼっこ (1) (まんがタイムKRコミックス)箱庭ひなたぼっこ (1) (まんがタイムKRコミックス)
(2015/03/27)
ちろり

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テーマ : 4コマ漫画
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東雲太郎『あねくらべ』

りお姉もいい

 

 

あねくらべ

 

作者:東雲太郎

発行:白泉社 2015年

レーベル:ジェッツコミックス

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成年向けから一般誌に進出後は、『キミキス』に『アマガミ』と、

エンターブレインのギャルゲー専門だった、東雲太郎のオリジナル作。

やや淡白な、高山箕犀によるキャラデザの鎖から解き放たれ、

ミサイルみたいなおっぱいが読者へ照準あわせる。

 

 

 

 

主人公「瞬」の高校入学を、年上の幼なじみが勢ぞろいで祝う。

そして私達のなかからひとり、恋人をえらべと要求。

「紳士協定」をむすんで我慢してたけど、もう限界なの!

 

生徒会長の「ゆり姉ちゃん」以下4名が、全方位から襲いかかる。

 

 

 

 

料理部員の「みく姉」は、家庭的な大和撫子。

三角巾でかいがいしく世話をする。

めざとくエッチな本をみつけたり。

 

精神面から攻めたてる航空戦だ。

 

 

 

 

僕がすきなのは、PC部でオタクな「なな姉」との秋葉原デート。

ネコをあしらうニーソ姿は街の視線をひとりじめ。

 

 

 

 

ネカフェの個室でまったりイチャイチャ。

籠城戦もまたよし。

 

 

 

 

メインヒロインのゆり姉ちゃんが一番積極的。

瞬の前だと甘えんぼで、生徒会室でデレデレに。

後ろから抱きかかえられつつ、自分から唇をもとめる。

髪の房も、指先も、膝頭も、なにもかもうつくしい。

そしてなにより、輪形陣の中央に配置されたおっぱい!

皿からこぼれおちそうな肉の横溢ぶり。

 

21世紀の大艦巨砲主義、これぞアートだ。




あねくらべ (ジェッツコミックス)あねくらべ (ジェッツコミックス)
(2015/02/27)
東雲太郎

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テーマ : 漫画
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金田一蓮十郎『ゆうべはお楽しみでしたね』

 

 

ゆうべはお楽しみでしたね

 

作者:金田一蓮十郎

掲載誌:『ヤングガンガン』(スクウェア・エニックス)2014年-

単行本:ヤングガンガンコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

MMORPGのビッグタイトル『ドラゴンクエストX』のプレイヤー同士の、

リアルでの悲喜こもごもを描く異色のラブコメだ。

 

職場にちかいところへ引っ越したいとゆう「ゴローさん」に対し、

一軒家にひとり住まいの「パウダー」が、部屋を提供することに。

直接会ったことはないが、一年以上つきあいがあるから信用できる。

 

 

 

 

プクリポ♀でチームのマスコット的存在である、パウダーの中の人は22歳の男。

「ネカマ」なのは公言してるので問題ないはず。

 

 

 

 

版元がスクエニだし、依存症とか不正行為とか運営への不満とか、

ネトゲ特有のネガティヴな側面は描写されない。

マイペースだけど互いの都合は尊重する空気が、居心地よさそう。

 

金田一蓮十郎はDQXプレイヤーであるだけでなく、熱烈なドラクエファンらしい。

ゲームへの愛が、どこを切ってもジュワッとあふれる。

 

 

 

 

ゴローさんの中の人はギャルだった。

「ネカマ」とゆう言葉をしらず、女同士とおもいシェアハウスに同意した。

自分が男だと勘違いされてるのも知らない。

 

 

 

 

美人とはいえ、相手はオタクの天敵である派手なギャル。

女性が苦手なパウダーはお引き取りねがおうとするが、

ゴローさんは「このまま住む」と言い張る。

だってパウさんがいい人だって、知ってるもの。

 

胸がキュンとなる名場面。

アストルティアで毎晩の様に接してれば、ひととなりはわかる。

短気とか、お金に汚いとか、困ってる人を放っとけないとか。

性別や、ネットとリアルの差なんて、そんな重要じゃないよね?

 

 

『おジャ魔女どれみ』の瀬川おんぷ?

 

 

ゴローさんの職業はネイリスト。

客の要望とあれば「痛ネイル」もこなす。

勤務態度はマジメだが、頭のなかはDQXで一杯だったり。

 

作者は「蓮十郎」を名乗るも、実は女性。

地に足つけて生きる女子の日常がリアルで、共感できる。

 

 

 

 

唐突にはじまった、オタクとギャルの同居生活。

ひとつ屋根の下なのに、ゲームでコミュニケーションとる方がおおい。

この距離感は新鮮だ。

 

漫画史上、もっともWiiUの登場頻度がたかい作品でもある。

 

 

 

 

たまに顔をあわすことも。

すっぴんのゴローさんは超好みのタイプだった。

 

女の子とゆう「キャラメイクの天才」がウヨウヨする現実世界の方が、

よっぽどMMORPGっぽいんじゃない、ってメッセージがつたわる。

 

 

 

 

1巻の白眉は、クリスマス回の第9話。

恋愛経験のないパウダーが、無理して恋バナの相手をつとめる。

 

4年つきあって別れた元カレから、復縁要請のメールがきた。

DQXにハマりすぎてフラれたのは仕方ないとして、

このタイミングで声かけるなんて、軽く見られていてムカつく。

あんな男は忘れて、今年のクリスマスはみんなでドラクエするんだ!

 

 

 

 

その夜、となりの部屋から泣き声がきこえた。

女の子が、本気で恋愛よりゲームを優先するなんて、ありえない。

ドラクエXはたのしいけど、このさびしさは埋められない。

 

やさしさ、あたたかさ、せつなさ。

作中の感情の流れが、読者の心をつかむ。

古典的魅力をそなえた、最新バージョンのラブコメだ。




ゆうべはお楽しみでしたね(1) (ヤングガンガンコミックス)ゆうべはお楽しみでしたね(1) (ヤングガンガンコミックス)
(2015/03/25)
金田一蓮十郎

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テーマ : 漫画
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小説12 「イザナミ作戦」

『フリーダム・シスター』


登場人物とあらすじ


全篇を縦書きで読む







 羽生アリアは恋人の暁ジョージと、ピザ食べ放題のシェーキーズ高田馬場店にいた。痩せの大食いである彼女の行きつけの店だが、きょうは残念ながらデートでなく、ほかの男も一緒だった。

 向かいに座る眼鏡をかけた男が、5×3インチの情報カードに火をつけた。大皿に灰となって落ちる。

 彼は陸軍大尉・大井スルガ、二十六歳。カードにしるされていた計画は驚愕に値した。

 名づけて「イザナミ作戦」。

 安倍晋三首相の暗殺と同時に、いつわって正規の対テロ作戦を発動、動員された予備兵を近衛師団が傘下におさめる。官庁・報道機関・基幹施設を占拠し、桜井誠SS全国指導者などの幹部を拘束。怒涛のいきおいで政権を掌握する。

 下戸のアリアは烏龍茶を飲み干し、眼帯のない右目でパートナーを見やる。ジョージは思案に暮れ、くすぶる灰をながめている。

「あなたがたクーデタ部隊は」アリアが大井に言う。「決行後の宣伝に、われわれの知名度を利用したいんですね」

「そうです」若い大尉がピザにかぶりつく。「使えるものはなんでも使います。やるかやられるかの大博打ですから。国防軍はSSに吸収される寸前なんですよ」

「近衛師団長の望月ダイゴ少将は、信頼できる人ですか?」

「『タイコモチ』って悪口言われてます。いかにも小役人タイプです。まあ作戦は僕が仕切るんで心配いりません」

 先日の暴動では、朝鮮人・中国人を中心に二千人をこす死者がでた。ほとんどが自警団や親衛隊によるが、治安出動した国防軍も手を血で染めた。軍内部に深刻な動揺がはしった。目のほそい大井大尉はポーカーフェイスだが、内心は憤慨してるのだろう。

「さっきから黙りこくってるな」アリアが恋人を肘でつつく。「これは義挙だと私はおもう。だが最終的には君の決断にしたがう。どうする、ジョージ?」

 長身の十九歳は怯えていた。暗殺やクーデタは、自分の人生で想定していたイベントではない。リリホワ騒動でさえ、勇敢なジュンやアリアとちがい、なにもできなかった。臆病と言われようが、無理なものは無理だ。

「すみません。ほかに適任者をさがしてください」




 数日後の深夜三時。ジョージは十人の若者をつれ神田の万世橋にいた。

 彼らがスプレーで落書きするあいだ、周囲を警戒する。侍所が学生の剣士にあたえた正式の任務だ。目的をたづねても回答なし。忠誠心を試しているのだろうか。

 煉瓦の壁に描かれるアルファベット風の図像を、ジョージは解読できない。グラフィティ・アートとゆう藝術の一種らしいが、街の景観を破壊する、ただの愚行におもえる。

「おつとめ御苦労さま」

 M65ジャケットを着た、隻眼の女剣士があらわれた。薄笑いをうかべている。

「からかいに来たのか」ジョージが舌打ちしながら言う。

「私はきのう」アリアは自嘲する。「畑のカボチャを盗みに茨城まで行ったよ。ハロウィーンの普及につかうらしい」

 アメリカ文化で国民を啓蒙するため、日本政府は公金を投じていた。猿真似で意味不明の落書きが蔓延する理由がわかったが、愉快な事実ではない。

 アリアが「アーティスト」のひとりにツカツカ歩みよる。

「おい、その絵はなんだ!?」

 藝術家がどもりながら答える。「さ、最近ニューヨークではやってるグラフィティで……」

「嘘をつくな! 見覚えがあるぞ。日本のアニメだろう」

 彼女の口調は冷静だが視線は険しい。腰にさがる刀が何より恐ろしい。男はスプレーやフェルトペンを置いて逃げた。気づけば落書き軍団はだれも残ってない。

「よくもまあ」アリアが壁に顔をちかづける。「短時間でこんなキレイに描けるもんだ」

 ジョージがつぶやく。「『ラブライブ!』の矢澤にこってキャラだな」

「へえ。私とおなじで無趣味とおもってたが、くわしいじゃないか」

「い、妹がアニメばかり見てるから知ってるだけだ!」

 アリアが哄笑する。笑うしかなかった。彼らの同僚が、命令に逆らったため殺されている。つぎは自分たちだ。

「なあ、ジョージ」女剣士が真顔にもどる。「もう起つしかないんじゃないか?」

「ああ。俺たちの忠義にも限界がある」

 ピンクのカーディガンを着たツインテールの少女が、ふたりを笑顔で見守っていた。




 午後七時、幕張メッセ。

 近衛師団がここに駐留する。師団長公室に高級将校があつまり夕食をはじめようとしている。

 規則的に釘をうつ様な足音をたて、望月ダイゴ少将が入室。恰幅がよく、白い口髭をはやし髪をきっちり分け、軍人らしい堂々たる風貌。起立した十二名の部下に迎えられる。

「ワインはどうした?」

 グラスの中身が水なのに少将は気づいた。

「本日より」大井スルガ大尉が返答。「イザナミ作戦は発動しています。計画どおり食糧補給も変更しました」

「つまり酒は出ないのか」

「御要望とあれば調達しますが」

 にわかに「タイコモチ将軍」は心許なくなった。参謀将校に担がれ叛乱の頭目になったはいいが、メシも満足に食えないとは話がちがう。

「近衛師団は」少将が不快を露わにする。「陸軍の栄光ある最精鋭部隊だ。それにふさわしい食事でないと士気にかかわろう」

 大尉は表情をかえない。「了解しました。いますぐ手配いたします」

「ところで大尉、この作戦を中止することはまだ可能か?」

「師団長! いまさら何を言うんですか!」

 副官の少佐が椅子を蹴り立ち上がる。

「聞いただけだ。そういきり立つな」

 あきらかにタイコモチは臆している。

 新宿の擾乱で妻と娘が親衛隊に殺され、一時的に謀反へ傾いたが、また生来の従順さがもどったのだろう。

 参謀たちは目配せをかわす。コイツが司令官じゃ勝てっこない。




 早朝の光がそそぐ海浜幕張駅南口に、百名の大学生がたむろする。みな佩刀している。ジョージとアリアがあつめた、クーデタ部隊に合流する剣士たちだ。

 だが彼らは、数で倍する軍人に包囲された。近衛師団長・望月ダイゴはすべてを反故にし、リスクを負って参加した若い男女を追い返そうとする。

 潮の香りと殺気がまじりあう。

「ふざけるな!」アリアの怒号が二百人の身をすくませる。「私たちが学生だとおもって舐めてるのか!?」

「こちらも伊達や酔狂でやってない」大井スルガが応対する。「職業軍人は刻々と変化する状況に即応する。くりかえす、作戦は中止だ。いや、そもそも作戦は存在しなかった」

 不誠実な態度に激したアリアが鯉口を切る。敵味方に抜刀するものも出た。

 政府はとっくに、このイザコザを察知したろう。暗殺計画は夢のまた夢に。それどころか幕張につどう学生剣士は全員、叛乱分子として記録されたはず。売られたも同然だ。

 棘をふくむ視線が、無言のジョージに集中する。彼が抜き放てば、死闘がはじまる。背をむければ、近衛師団は満足する。

 妹に「ウドの大木」と称されるジョージは、非常時でもめったに動揺しない。大井大尉が思わせぶりな顔つきをする理由をぼんやり考えていた。

 大尉はさりげなく情報カードを手渡し、兵をひきい基地へもどった。

「なにが書いてある? みせろ!」

 カードを恋人にひったくられた。




□蹶起部隊は暁ジョージ氏(以下暁氏)を司令官に迎える。

□蹶起部隊の将兵は暁氏の命令に従う。違反者は軍法会議にかける。

□暁氏は所有するじゅんじゅん(暁ジュン)の写真をすべて提供する。

□暁氏は握手会など、じゅんじゅんが蹶起部隊のイベントに参加できるよう努力する。

 同意できる項目すべてにチェックを記した上で、2時間以内にこのカードを近衛師団の将校へ返送されたし。




「なんだこれは!」アリアが絶叫する。「ジョージ、一体どうなってるんだ!?」





 タイコモチこと望月ダイゴ少将は、マリンスタジアム内野席の最上部で報告をうけている。はげしい浜風がうづまく。

 野球場は朝鮮人の強制収容所にもちいられ、近衛師団が警備を担当したが、昨日のイザナミ作戦発動により全員解放された。各地で建設中の別の収容所にはいる運命かもしれないが。

 大井大尉の簡潔な復命がおわった。

「よくやった」師団長は御満悦。「流血沙汰を予想してたんだが。噂どおり君は優秀な参謀だな。これからもよろしく頼むよ」

「閣下の判断が的確だったのでしょう」

「それは勿論だ。秩序をまもってこそ軍人。不平屋にこの国はまかせられん」

 大井は、駆け寄ってきた兵士から情報カードをうけとる。四つのチェックボックスすべてにマークがついていた。

 ほそい目を左右にくばる。風が一層つよまり、立ってられないほど。兵にむかい顎をしゃくった。

 階段へ突き落とされたタイコモチ将軍は、脳や頸椎を損傷し即死した。

「ふらふらしやがって」参謀は吐き捨てる。「一万人の命をあづかる仕事をなんだと思ってんだ。あの世でたらふくワインでも飲んでろ」



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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

米田和佐『だんちがい』2巻 妄想する女子とゆう妄想

髪の流れがいい

 

 

だんちがい

 

作者:米田和佐

掲載誌:『まんが4コマぱれっと』(一迅社)2011年-

単行本:4コマKINGSぱれっとコミックス

[Kindle版/1巻の記事/同作者の『えこぱん』]

 

 

 

小中高の女きょうだいとの団地暮らしをえがく4コマ。

発売まで2年待ったが、その分かわいさは倍増。

長女「夢月」の胸やお尻もよりリアルに。

7月からアニメもはじまるし、やや地味だがツバつけときたい作品だ。

 

 

 

 

フィジカルな「売り」の部分だけでなく、

五人きょうだいのなにげない日常の一コマが印象にのこる。

 

高1の「春輝」が、足をくじいた姉をおぶったとき、軽さと柔らかさにおどろく。

4コマめでグッとちかよるカメラワークがあざやか。

 

 

 

 

小3の双子、「咲月」と「羽月」。

あまり似てないが仲はいい。

階段を駆け下りるふたりの背中を追うショットに、独特の情緒がある。

せまい団地からあふれそうなウキウキ感。

 

 

 

 

咲月は早熟なオタクで中二病。

悪魔くノ一(?)になりきり、折紙の手裏剣をばらまいて一人遊び。

「妄想する女子」のテーマは、『えこぱん』以来の作者のおハコ。

 

 

 

 

おてんばな羽月がめづらしく憂鬱そう。

「自分はこの家の子じゃないかも」と、子供らしい危惧をいだいている。

だったら正体は魔法少女的なお姫様かなとか、あくまでポジティヴだけど。

 

 

 

 

中3の次女「弥生」が、ラブコメ要素の中軸をなす。

兄が「妹と恋する」PSPのギャルゲーをしてると知り、衝撃うける。

 

 

 

 

まあ高校生なんだから、現実とゲームの違いくらいわかってるよね……。

でも気になってしかたない。

2コマにまたがり、いけない妄想が暴発!

 

 

 

 

この引用部分だけじゃ伝わらないかもしれないけど、

咲月と羽月が、弥生のはりめぐらす「不機嫌フィールド」へとびこむ。

 

心理描写を、物理的手ごたえのあるヴィジュアルに。

「狭いながらも楽しい我が家」とは、まさにこれ。

 

 

 

 

萌え4コマのお約束といえば夏祭り。

いかにあでやかにヒロインの浴衣姿をみせるか、技量がとわれる。

弥生の場合、ふりむいた途端に衿がはだけ、胸元と太腿があらわに。

そして4コマめで、すっきりきれいな肩甲骨をみせる。

 

兄の視線と逆向きにかまえるなど、計算ゆきとどいた撮影術。

最近はやりの「縦のぶち抜き」をひきたてる。

 

 

 

 

縦方向にながれてゆくスペクタクル。

かわいすぎる彼女たちは、きっと妄想の産物だけど、やけに存在感がある。




だんちがい (2) (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)だんちがい (2) (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)
(2014/12/22)
米田和佐

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テーマ : 4コマ漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ:   ロリ  萌え4コマ 

高畠エナガ『GODSPEED』

 

 

GODSPEED

 

作者:高畠エナガ

掲載誌:『ミラクルジャンプ』(集英社)2014年-

単行本:ヤングジャンプコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

天使と悪魔の物語だ。

彼女の名は「アマルダ」。

うしろでかがやく十字架状の光輪は武器になる。

 

 

 

 

幼稚園の園長みたいな仕事をしている。

天使らしく愛をこめて人間の子供を養育。

ただスキンシップは迷惑かも。

 

 

 

 

主人公「明」と仲間たちは、好奇心で外界をのぞきにゆく。

街には悪魔がいて、子供をさらうと聞くが本当か。

 

 

 

 

そこではアマルダが人間をムチで蹂躙していた。

いつもの微笑をたやさず。

 

 

 

 

大胆な恰好の「オリヴィエ」と遭遇。

影をあやつる悪魔で、天使の支配に対する抵抗運動をしているらしい。

これまでおそわった話とちがう。

 

 

 

 

「利乃」が卒園式をむかえる。

街でみたことは不安だが、やさしい天使様が裏切るわけないと、

純粋に信じこんだまま「楽園」へ旅立つ。

ドレスの可憐さに目をうばわれる。

 

 

 

 

のちに明はオリヴィエの手引きで、利乃の無慚な姿をみる。

剥製みたいに体中を縫われ、天使を生むための生贄となった。

人間は食い物にされていた。

 

 

 

 

「天使と悪魔」とゆう、わりと月並なモティーフを、

愛くるしい絵柄と、意表をつく残酷描写でカタチにする。

 

アマルダの従者である「イルヴィアの四天使」は、

ボスとことなり人間にちかい自我をもち、明の脱走からはじまる混乱に苦悩する。

衣装がフリフリではなやかで、「絵になる」作品だ。

 

 

 

 

本作は、二冊の短篇集を発表している高畠エナガが、

「代表作にしたい」と意気ごむ雄篇。

善悪の彼岸での戦いを目撃するため書店へはしれ!




GODSPEED 1 (ヤングジャンプコミックス)GODSPEED 1 (ヤングジャンプコミックス)
(2015/03/19)
高畠エナガ

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

佐倉アディクション 『矢作・佐倉のちょっとお時間よろしいですか』第129回

 

 

矢作・佐倉のちょっとお時間よろしいですか 第129回

 

パーソナリティ:矢作紗友里 佐倉綾音

構成作家:小林洋平 さいとうしゃん

ディレクター:森葵

配信サイト:超!A&G+

配信日:2015年3月18日

[第123回の記事はこちら

 

 

 

収録日は暑かったらしく、佐倉綾音がしきりに髪をバサバサする。

黒髪ショートボブがトレードマークの声優で、肩にかかるまで伸びたのは久しぶり。

21歳、そうゆう時期なのだろう。

 

 

 

 

ふつおたコーナーで、この番組のおかげで恋人ができたとリスナーが報告。

恋愛スキルが不足ぎみのあやねるのため、おなじシチュエーションで練習する。

プロとおもえぬ棒演技に悪寒がはしる。

彼女に春はおとづれるのか。

 

 

 

 

先輩後輩の関係についても、まなぶべき点はおおい。

矢作紗友里が貸した、女子むけライトノベル『封鬼花伝』第1巻を、

読まないまま「借りパク」していたことが判明。

 

あるある。

他人から本をすすめられても大抵迷惑だよね。

でもうまくゴマカさないと。

 

 

 

 

事務所の先輩として、きびしく指導しなくては。

あやねるは極度の寒がりだが、なぜか収録中は薄着をこのむ。

番組Tシャツを着て横をむくと、たわわなおっぱいが突き出る。

 

 

 

 

天然のクッションにパイセンがヘッドバット。

カラダばかり発育し、心の成長がおいつかない後輩をたしなめる。

 

 

 

 

あやねるもやる気満々な新コーナー、「サクラ・ア・ディクショナリー」がスタート。

世間と感覚がズレている彼女の脳内辞書を、リスナーのメールで編纂する。

単語が登録されれば、『家庭教師ヒットマンREBORN!』のED曲として有名な、

『Sakura addiction』(2007年リリース)がながれる。

 

 

 

 

最初のメール。

「【友達】 絵空事。幽霊の様なもの。架空の存在」

いきなりキツイのがきた。

 

コミュ障のぼっちキャラとはいえ、5年におよぶキャリアで築いた人脈がある。

りえしょん・のじょさん・みかこし・まれいたそ・いのすけ・ペ氏……。

かずかずの仲間の笑顔が脳裏をよぎる。

彼女たちは裏切れない、でも曲は聞きたい、いや聞かせたい。

 

 

 

 

……りえしょん、ごめん。

「登録されてまーす!!!」

 

桜咲く 舞い落ちる

何も無い ぼくの手の上

儚くて 優しくて

壊れそう きみみたいな花

 

浜松町のオフィス街に、開花予想よりはやく桜吹雪が舞う。

 

 

 

 

蕾のまま枯れてもかまわない。

そうのぞまれているのなら。

 

あやねるの予測不能な言動が、巷に中毒患者をはびこらせる。



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テーマ : 声優
ジャンル : アイドル・芸能

缶乃『サイダーと泣き虫。』

『花丸ハッピーエンド』

 

 

サイダーと泣き虫。

 

作者:缶乃

発行:一迅社 2015年

レーベル:百合姫コミックス

Kindle版/同作者の『あの娘にキスと白百合を』の記事→1巻/2巻

 

 

 

一迅社がこのごろ力をいれている、同人誌で発表した作品をまとめた一冊。

かなり修正したらしく「百合姫クオリティ」に仕上がっている。

充実してゆく百合アーカイヴは壮観だ。

 

 

 

 

中学1年で軽音部にはいった「夏子」は高校生となり、

髪型がかわり友達もふえ、幼なじみの「美冬」につれない態度をとる。

むかしはギターに背負われる様だったけど、持ち方までかわった。

 

 

 

 

でも親友への思いはおなじ。

とおりすがりに美冬の悪口を耳にし激怒。

愛情表現の仕方がかわっただけ。

 

「時間を超越した魔術的な百合空間」とゆう持ち味を、作者はすでに発揮。

 

 

 

 

2012年11月発表の『シンデレラ』は近未来SF。

女が男にみえる「ARメガネ」がひみつ道具。

 

 

 

 

月面在住のモテないふたりは、つかの間のリア充気分を満喫。

「ツインテ+メガネ」のフォルムが絶品だ。

 

 

 

 

缶乃といえば、見開きページのあざやかさ(例1/2

天蓋にうつる偽の夕空をかきけす、乙女の本心。

2014年に『あの娘にキスと白百合を』がはじまる前に、才能の蕾はほころんでいた。

 

 

『ようこそ! オカルト研究会』

 

 

全力で愛しあう少女たちを描きながら、『けいおん!』以降のポップさも兼ね備える『あのキス』は、

サブロウタ『citrus』とならぶ現代百合漫画の傑作だが、本書もエントリーモデルとして推薦できる。

きっとあなたを、せつなさのブラックホールへ引きずりこみ逃がさないだろう。




サイダーと泣き虫。 (IDコミックス 百合姫コミックス)サイダーと泣き虫。 (IDコミックス 百合姫コミックス)
(2015/03/18)
缶乃

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テーマ : 百合漫画
ジャンル : アニメ・コミック

原田泰『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』

 

 

ベーシック・インカム  国家は貧困問題を解決できるか

 

著者:原田泰

発行:中央公論新社 2015年

レーベル:中公新書

 

 

 

「日本は平等な国だ」、もしくは「平等だった」なんて、幻想にすぎない。

昔から格差は、先進国において中位にあった。

再分配政策で子供の貧困率がたかまる、OECDで唯一の国とゆう調査もある。

 

戦後の社会の変化や、超格差国家アメリカとの接触で、錯覚が生じたらしい。

平等が良いか悪いかはともかく、事実誤認はいけない。

 

公的扶助支出額のGDP比率は、OECD平均のわづか1/8。

一人あたりの給付額こそ大きいが、支給要件をきびしく設けてきた。

 

 

『シドニアの騎士』(テレビアニメ/2014年)

 

 

これから65歳以上の無年金者が続出する。

「払ってないやつがもらえないのは自業自得」と庶民はかんがえる。

なにもわかってない。

老人は生活保護の支給要件「働けないこと」を容易に證明可能。

とにかく現行の制度は維持できない。

 

 

 

 

本書はベーシック・インカム(BI)制度導入についての、ふみこんだ主張だ。

仕組みはシンプルで、「所得×0.7+BI84万」がすべての人の年間所得となる。

費用は2兆円、つまり生活保護費1.9兆円をおきかえれば貧困問題がまるっと解決。

 

給付額は低すぎないか、金持ち優遇ではないか、労働意慾を阻害しないか、

ミュージシャン志望者など「夢追い人」を増やさないか、地方軽視にならないかといった、

想定可能なあらゆる反論への具体的回答もしるされる。

日本社会を持続させる方法はBIしかない、と読者は納得するだろう。

 

 

つくみず『少女終末旅行』(バンチコミックス)

 

 

BIの負の面は、移民を制限せざるをえないこと。

貧しい国の人間にとって84万円は魅力的に映るので、

年500万円以上稼げる人にしか門戸をひらかない。

相応のコストがかかる福祉国家は、地上の楽園ではない。

 

 

 

 

BIは革命的だが、破壊的な性格はまるでない。

ほかのすべての制度と共存するか、または手直しするだけですむ。

右も左もとりこむ思想的な懐のふかさがある。

 

新自由主義のミルトン・フリードマンもBI支持者だ。

政府が貧しい人を教育し、正しい生活態度を身につけさせるのは非効率的だし、

密偵をおくり不正受給を調査させた橋下徹など論外。

 

 

タツヲ『アルノサージュ 生まれいずる星へ祈る詩』(シリウスKC)

 

 

21世紀の政府に、国民の生活をあれこれ指図する、家父長的な能力はない。

ないものはないのだから、嘆いてもしかたない。

政府さん、いままでありがとうございました。

これからは自分たちでやってゆきます。




ベーシック・インカム - 国家は貧困問題を解決できるか (中公新書)ベーシック・インカム - 国家は貧困問題を解決できるか (中公新書)
(2015/02/24)
原田泰

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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

七六『魔法少女ここねはかく語りき』

 

 

魔法少女ここねはかく語りき

 

作者:七六

掲載誌:『月刊ドラゴンエイジ』(富士見書房/KADOKAWA)2014年-

単行本:ドラゴンコミックスエイジ

ためし読み/PV

 

 

 

この世界で「魔法少女」は忌み嫌われている。

総力あげて殲滅にかかる自衛隊。

 

 

 

 

中学生の「瑠々色(るるしき)ここね」がえた魔法は、ゴーレムをつくる力。

90式戦車さえ、雄々しい人型ロボットに!

あたらしいけど軽量コンパクトな10式をえらばないのがミソ。

 

 

 

 

制服・魔法少女・メカ・おっぱい・パンツにくわえ、鬱展開も盛りこむ。

『なのは』や『まどマギ』以降の、「苦悩する魔法少女」の系譜につらなる。

 

 

 

 

自転車の描写も特色にかぞえたい。

ここねが乗るのは、ロード系のミニベロ。

ホイールは小径で街乗りむきだが、スピードはでる。

みじかいスカートが映えること!

 

 

 

 

自転車の場合、サイズ的に巨大ロボットでなく、パワードスーツに変形。

「女子×メカ」を高度に融合させる、視覚的に充実した作品だ。

 

 

 

 

七六の名は、2012年に東京都が『制服×征服×性服=世界大戦』を、

「不健全指定図書類」に指定したときから記憶にある。

表現の自由を一顧だにしない都政府の弾圧にまけず、力をつけた。

 

本作は雑誌連載では初オリジナル作品らしい。

それゆえ好きなものを詰めこんだと七六もかたっているが、

なかでも「お尻とサドル」の関係で作家性が突出している。

柔らかいものへ食いこむ、硬いもの。

 

 

 

 

はじめて魔法で大暴れしたあと、とぼとぼ帰宅するここね。

ドアノブをにぎるときの心細さ。

わたしは無事に日常へもどれるんだろうか?

 

女子とメカニズムが接触するその瞬間、詩情が炸裂する。




魔法少女ここねはかく語りき (1) (ドラゴンコミックスエイジ)魔法少女ここねはかく語りき (1) (ドラゴンコミックスエイジ)
(2015/02/06)
七六

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

小説1 「快楽原則」(改稿)

『フリーダム・シスター』


登場人物とあらすじ


全篇を縦書きで読む







 午前一時。新宿区の大半は寝しづまる。

 夜行性の鳥みたく、暁ジュンは活動をはじめた。十五歳の女で、顔は蒼白い。鼻がたかく顎がとがり、鋭角的な横顔。左手首から流れる大量の血が、なめらかな肌を濡らす。

「手当てして」

 自室をでて、ふたり暮らしの相棒である兄のジョージに腕をみせた。彼はさほど驚かず、テレビをけし救急箱をとりだす。

「説教はしたくないが」ジョージが素っ気なくゆう。「親からもらった体を傷つけるのはよくない」

「あたしの体の所有者は」ジュンが答える。「最初からあたしだ。親にも親がいる。さかのぼれば全人類がアダムとイヴの持ち物になる。与太話はいいから、はやく治療すませて。傷跡のこしたくない」

 消毒液の刺激に反応しつつ妹は言い返す。頭の回転がはやく、朴訥な兄をよせつけない。

「こんなことして」ジョージは依怙地になっている。「だれがなんの得をするんだ」

「ねえアニキ、フロイトって知ってる?」

「まあ名前くらいは」

「精神分析に『快楽原則』と『現実原則』って概念がある。リスカは多分前者だね。スッとして気持ちいいもん。アニキにゃわからないだろうけど」

 妹が読書するのを見たことないから、ネットでえた知識だろう。ウィキペディアから生まれた哲学者の第一世代がいるなら、そのひとりが暁ジュンだった。

 会話に倦んだ彼女は右手でiPhoneをいじりだす。足でPS4のコントローラをうごかし、録りためたアニメをみる。感想を即ツイッターでつぶやく。LINEの通知をうけとり「彼氏と会ってくる」と立ちあがる。常備してあるクロレッツのボトルから二粒つまむ。「手当てしてくれてありがと」と言い、兄にも分けあたえる。

 羽ばたく様に夜の街へきえた。門限がどうとか釘をさしても、耳にとどいたかどうか。



 お留守番のジョージは懐紙を口にはさみ、ポンポンと刀に打粉をかけている。蒼龍大学一年生の彼は、最難関の国家試験「剣士考査」の合格者で、つまり世襲でないサムライだ。剣の手入れは毎日缺かさない。

 玄関の錠前をあける音がきこえ、ジュンが帰宅。出てから三十分もたってない。

「はやかったな」ジョージが刀をおさめる。

「警察がウヨウヨいて職質された」ジュンは機嫌が悪い。「きょう二・二五事件のだれかが処刑されたんだっけ?」

 ことし二月末、陸軍の青年将校がクーデタをおこした。押入れに隠れた安倍晋三首相は難を逃れるも、数名の要人が惨殺された。叛乱部隊は三日後に投降。すみやかに軍法会議がひらかれ、七月に十五名の死刑を執行。翌月、「国家改造2・0」を説く思想家の東一輝らもついでに処刑されたが、政府がおそれるほど市民は動揺していない。

「愚かしい騒乱だった」ジョージが吐き捨てる。「テロにはしった結果、皇道派は陸軍から一掃された。自業自得だよ」

「国を憂いての行動をコケにすんな」

 目の前でショートパンツに着替えたジュンが、ソファからテーブルへ長い足を投げだす。中学生のくせ生意気に『シナチョン撲滅ブログ』とゆうサイトを運営し、狂信的な青年将校を讃美していた。

「平成維新は」ジュンが大きな瞳でにらむ。「困窮する庶民の救済が目的なのも知らないのか、バカアニキ」

 三十パーセントに上がった消費税、大企業優遇の経済政策などを、たしかに蹶起将校は糾弾していた。だがジョージは興味がない。国民を守るべき軍が、人々が安心して外を歩けない原因となるのはおかしい。

「お前と議論する気はない」ジョージが言う。「さっさと寝るなり、宿題するなりしろ」

「クソバカアニキ、ちっとは社会の現実をみやがれ」

「お前は自分の現実をみろ!」

 ジョージがラックから封筒をとりだす。

「きょう中等部から手紙がきた」兄はつづける。「出席日数や成績について書いてある。このままじゃ内部進学は不可能だと。今年度も学校へゆくフリしてたんだな」

「知ったこっちゃねえ!」ジュンは書類を引き裂く。「あたしはだれの指図もうけない」

「カッコつけるな。たかが不登校で」

「ふん、図体はデカいのに、人間はメチャクチャちいさいな」

 ジョージは身長百八十六センチある。ジュンはソファから腰をあげ兄を見下ろす。

「カッコつけない人生に」妹は腕をくみ胸をはる。「生きる意味なんてない。あたしはそう信じる。いつかアニキにも理解させてやる」


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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

田村茜『たそがれメモランダム』

 

 

たそがれメモランダム

 

作者:田村茜

掲載誌:『月刊!スピリッツ』(小学館)2014年-

単行本:ビッグコミックス

[ためし読みはこちら]

 

 

 

「高取エリ」は新聞記者をめざす高校2年生。

公園でやすんでいても人間観察に余念がない。

むかいのベンチにすわる男女が、かれこれ1時間コミュニケーションなし。

どうゆう関係なんだろう?

 

 

 

 

毎話8ページで謎がしめされ、意外な解決がもたらされる。

ヒロインがJK、ミステリ仕立て、ただようローカル感……。

石黒正数『それでも町は廻っている』を髣髴。

 

 

 

 

ベンチのふたりはプロポーズするかしないかで迷っていた。

胸キュンエピソード中心なのが『それ町』にない特色。

 

 

 

 

第10話。

電車がとまり、待ち合わせ時間におくれそうな制服の女の子。

大慌てでスカートをたくしあげ、髪をセット。

 

相手はだれだろう?

同世代の男じゃヒネリがない。

たとえば百合とか、そもそも人間と会うのではないとか。

 

 

 

 

正解は、父の再婚相手との初顔合わせ。

必死に身だしなみを整えたのは、失礼がないようにするため。

それとちょっと背のびしたい、対抗意識。

 

 

 

 

なにげない街の風景は、乙女心のミステリーをかくしている。

鏡にうつるキラキラしたときめきが、つぶぞろいの物語へ変貌。




たそがれメモランダム 1 (ビッグコミックス)たそがれメモランダム 1 (ビッグコミックス)
(2015/03/12)
田村茜

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

服部省吾『戦闘機パイロットの空戦哲学』

 

 

戦闘機パイロットの空戦哲学

 

著者:服部省吾

発行:光人社 1999年

 

 

 

航空自衛隊の戦闘機パイロットの手記。

結構ふるい本だし、著者に実戦経験があるわけでもないが、

数しれぬ飛行訓練と、空戦史研究にもとづく思想は強靭だ。

 

たとえば、パイロットに反射神経は必要ない。

坂井三郎に「風でとんだ帽子をパッとつかんだ」などの伝説があるが、

風を感じて予測しただけの話で、エース級ならだれでもできる。

 

太平洋戦争の「特攻」をしらべた結果、命中率が過大評価されており、

願望が現実とすりかわった作戦だと断ずる。

 

空中指揮は英語でおこなう。

日本語は「単数/複数」が曖昧で、「肯定/否定」「過去/現在/未来」「断定/推定」なども、

センテンスを最後まで聞かないとわからず、しかも音節がながい。

戦いにむかない言語だ。

 

 

(Bundesarchiv/Hoffmann, Heinrich)

 

 

「柔軟な心」の大切さを著者は説く。

104機撃墜のアドルフ・ガーランドは、混戦のなか背後に食いつかれたとき、

敵機にあわせ自分も虚空へ全砲門をひらいた。

銃口からのぼる煙をみて、敵はガーランド機を撃破したと誤認し去っていった。

 

ギラギラした闘志より、人を食った機知の方が生存に役だつ。

 

 

名古屋港上空で旋回

 

 

パイロットは「浮気者」がむいている。

恋人がいてもつねに周囲に目をくばり、いい女を探すくらいでないと、

空の上で膨大な情報を処理するのは不可能。

 

 

 

 

国家を守る。同時に国民を守ろうとする。

その人が無政府主義者であろうと自由主義者であろうと、

暴力団員であろうと平和産業の従業員であろうと、

クリスチャンであろうと仏教徒やイスラム教徒であろうと、

老人であろうと女子供であろうと、

いっさい差別せずに、日本人全部を守ろうとする。

 

自分の悪口をかいた左翼的な新聞記者であっても、

日本人は日本人だとみとめ、命をかけ守る。

空で引き金をひく2秒に、だれかを贔屓する余裕はない。

政治で頭を濁らせた人間は弱いし、戦士にふさわしくない。




戦闘機パイロットの空戦哲学―トップガンの素顔 (光人社NF文庫)戦闘機パイロットの空戦哲学―トップガンの素顔 (光人社NF文庫)
(2007/09)
服部省吾

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テーマ : 軍事・安全保障・国防・戦争
ジャンル : 政治・経済

詩原ヒロ『ナイショの戸黒さん』

 

 

ナイショの戸黒さん

 

作者:詩原ヒロ

掲載誌:『ゴーゴーバンチ』(新潮社)2013年-

単行本:バンチコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

中学1年の「戸黒マイ」は寒がりで、給食の時間もマフラーをまく。

体がよわいのか、ごぱっと嘔吐。

 

 

 

 

四六時中、カタツムリをつれている。

ネトネト、ベタベタ、ドロドロ、グッチャグッチャ。

粘液系の学園ラブコメだ。

 

 

 

 

女子をカタツムリに見立てた先行作品に、中山敦支『ねじまきカギュー』がある。

不器用だが迷いのない乙女心を象徴させた。

 

 

 

 

戸黒さんは、カギューたんとちがい弱い。

天敵のニワトリにおそわれると『ゼルダの伝説』みたくフルボッコ。

 

 

 

 

彼女はファイターでなくヒーラーだ。

ケガした主人公を青い舌でなめると、大量の唾液でなおった。

「癒し系ヒロイン」としてかなりハイスペック。

 

 

 

 

本作が初単行本となる山形県出身の詩原ヒロは、恋愛描写がさえる。

ライバルキャラ「柿崎さん」のブアイソな佇まいがいい。

 

 

 

 

柿崎さんは乾燥肌で、唇がガサガサ。

女は潤ってないといけない。

心にも口にも性器にも粘膜が必要。

 

 

 

 

見るに見かねた戸黒さんが、天然のリップグロスをわけあたえる。

百合は保湿効果たっぷり。

 

 

 

 

いまや「擬人化ヒロイン」とゆう趣向に新鮮さはないが、

おなじ生物をとりあげても、まだ多様な解釈がありうる。

きっとそれは、硬い殻のなかの真実への有効なアプローチだ。




ナイショの戸黒さん 1 (BUNCH COMICS)ナイショの戸黒さん 1 (BUNCH COMICS)
(2015/03/09)
詩原ヒロ

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合  中山敦支 

あずま京太郎/日向寺明徳『サクラブリゲイド』2巻 布陣完成

 

 

サクラブリゲイド

 

作画:あずま京太郎

原作:日向寺明徳

掲載誌:『月刊少年シリウス』(講談社)2014年-

単行本:シリウスKC

ためし読み/1巻の記事

 

 

 

ミリタリーロボットSF、好調の第2巻。

微妙な造形の「ヒトガタ」がアメリカ軍相手に奮闘する。

 

 

 

 

米軍代表は、M1A2SEPを極限までチューンナップした特殊戦車。

チョロQばりの挙動をみせる。

 

 

 

 

神経系の手術をうけた三人の幼女が操縦。

ロリ戦車兵ってのはいいものだ。

 

 

 

 

われらが「ブリキの旅団」も本格的に作戦行動開始。

ローアングルでぐいぐい攻める。

 

 

 

 

ヒトガタのパイロットは、2対1で女の方がおおい。

戦場の残酷な現実を目の当たりにし錯乱。

アグレッシヴで、わけもわからず熱い、それが『サクラブリゲイド』。

 

 

 

 

入浴シーンが本巻のウリのひとつ。

日本軍に敬意を表する、イルコパ軍の粋なはからいだ。

 

 

 

 

『ラブライブ!』でゆうなら「のぞえり」的なカップリング成立。

まあこのあたりは、流行にあわせたお約束かも。

 

 

 

 

桜と梓が月をながめる場面の方が、本作の特色がでている。

夏目漱石への言及があったりして、しっとりした風情をかもしだす。

 

 

 

 

第2ラウンドは中国軍がたちはだかる。

少年漫画的かつプロレス的な超展開をみせる物語と、

女子のゆたかな表情とカラダを両翼にすえ、快進撃はつづく。




サクラブリゲイド(2) (シリウスKC)サクラブリゲイド(2) (シリウスKC)
(2015/03/09)
あずま京太郎

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: ロリ  近未来 

柳原満月『軍神ちゃんとよばないで』

 

 

軍神ちゃんとよばないで

 

作者:柳原満月

掲載誌:『まんがタイムファミリー』(芳文社)2013年-

単行本:まんがタイムコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

もし越後の虎・上杉謙信が女の子だったら、とゆう趣向の4コマ。

甲冑につつんだ細身の体、たなびく黒髪。

凛々しい姫武将だ。

 

 

 

 

しかしこの虎千代ちゃん(幼名)、ひきこもりのニートだった。

大名家の一員としての自覚ゼロ。

 

 

 

 

布団から出る気すらない、ダメダメな日常がえがかれる。

家臣がなにを言おうが虎の耳に念仏。

 

 

 

 

戦国時代の姫は勿論、政略結婚の道具となる。

虎千代も嫁ぐ意志はあるが、望みが不相応にたかく見込み薄。

のちに史実どおり出家させられるが、すぐドロップアウト。

 

 

 

 

当主である兄の晴景は、厄介払いしようと妹を戦場へおくる。

初陣の「栃尾城の戦い」では4倍の敵と対峙。

あしたから本気だす系の斬新なニート戦術で完勝した。

兵は彼女を「毘沙門天の生まれ変わり」とたたえる。

 

 

 

 

柿崎景家や鬼小島弥太郎など、おなじみの武将も登場。

4コマにしておくのが惜しいほど大暴れ。

 

 

『ヤンかの!』(ヴァルキリーコミックス)

 

 

では、僕のすきなくりきまる『のぶながちゃん公記』1巻/2巻などと比較して、

本作の特色はなにか。

それは女体の描写につきる。

前作『ヤンかの!』をみてもわかる様に、柳原満月はエロい線をかく作家だ。

キルタイムコミュニケーションから成人漫画を発表してもいる。

 

 

 

 

蒸し風呂や糠袋など、歴史物らしく小ネタをとりいれるが、

それらの習俗は、ヒロインのうつくしいカラダをみせるため奉仕。

 

 

 

 

パンツ(?)まるだしの虎千代たんを愛でられるから、グータラな毎日も退屈しない。

ちいさなコマに長い脚をおさめるセンスがひかる。

 

 

 

 

雪によろこんだり、ときおりみせる宮崎アニメばりの純情可憐さも、

直截なエロスとゆう核があるからこそ、読者はときめく。

ノースリーブ風のインナーからチラ見せする、腋や二の腕がたまらない。

 

 

 

 

また本作は「妹もの」でもある。

虎千代が武勲をあげるたび、兄・晴景の立場はあやうくなる。

天然な妹はそれに気づかず甘え、いっそう苛立ちをさそう。

お家騒動をおこすくらい、妹の存在はドラマチック。

 

 

 

 

あざといほどカワイイ軍神。

萌え4コマ戦国時代の天下をとりにいざ出陣!




軍神ちゃんとよばないで (1) (まんがタイムコミックス)軍神ちゃんとよばないで (1) (まんがタイムコミックス)
(2015/03/07)
柳原満月

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テーマ : 4コマ漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ:   萌え4コマ 

小説 第2部「乱花篇」 11「新宿炎上」

『フリーダム・シスター』


登場人物とあらすじ


全篇を縦書きで読む







 暁ジュンは下落合のおとめ山公園にいた。テレビやインターネットから遠ざかりたかった。すわっているのは、みづからが惨劇の主役となったベンチ。素朴な拵えの大小を、違法なのは承知で差している。

 リリホワは、転校したばかりの彼女に一年間の停学処分をくだし、寮から追い出した。「生徒の動揺がはげしい」との理由で。悲涙に濡れながら恋人を斬首する姿は壮絶で、たしかに同級生にトラウマを植えつけた。

 日本は三つに割れた。政府のプロパガンダを盲信するもの、日和見主義者、反体制運動の支持者。暁兄妹は叛乱のシンボルとなる。「反消費税」をかかげる暴徒と、「リベラル」や「左翼」とよばれる知識人が、連帯するための部品として二人を利用した。エリートであるジョージやネトウヨのジュンは、もともと保守的なのに皮肉だ。

 白い羽毛の大きな鳥が、よたよた歩いているのに気づく。

「わあ、フクロウだ」ジュンはめづらしさに独り言をゆう。

「耳みたいな羽角があるから」背後からソプラノがひびく。「ミミズクですね。日本に棲息する種じゃなさそうですが」

 iPhoneで位置情報を共有している本城フランが、ジュンをさがしにきた。情報を遮断してもGPSが地の果てまで追いかける。相手がフランだから不快ではないが。

「ステキな公園だなあ」フランが隣に腰かける。「フクロウの時計もあるし、なにが棲んでてもおかしくないですね」

 生徒会長は四月から一年休学している。いくら止めても、ジュンの活動を支援すると強情に言い張った。

「あたしね」ジュンがかしこまる。「ここで長谷部って人にひどいことしたんだ。謝らなきゃいけないけど、いまはまともに街も歩けない状況だし。だからさ、もしあたしが死んだらフランちゃんに……」

「そんなこと言わないで!」

「……びっくりしたあ」ジュンがギョッとする。「急に大声ださないでよ。でも死亡フラグぽかったね。大丈夫、あたしが簡単に死ぬもんか」

 フランがみじかい両腕をジュンの背にまわす。位置情報だけでなく、恋人を斬ったとゆう苦悩も共有するため。それで傷が癒えはしないが、自分の感情がまだ凍え死んでないのをジュンは確認できた。

「あたしは幸せ者だ」ジュンはさらに強く抱きしめる。「フランちゃんみたいな友達がいて。心配してくれてありがと。痛いほど気持ちがつたわるよ」

「力になりたいんです。できることは何でもします」

「じゃあ、コタカのかわりにカラダで慰めるってのは? ねえ、キスとかしたことある?」

「ななな……ないですよ! そ、そうゆうのは心の準備が……はわわわ……」

 フランは友人を突き放し身構えた。真っ赤な顔で上目づかいでうかがう。ベージュのワンピースをまとう華奢な体が可憐だ。

 ジュンは獰猛な笑みをうかべる。彼女は普通に男が好きだが、恋愛対象から女を除外する理由は特にない。コタカと距離をおいたせいで性的接触に飢えてもいる。脳裏に別のフラグがたった。

 いきなり白い羽をひろげたフクロウが襲いかかるのを、ジュンは反射的に腕でふせいだ。爪が紺のパーカーをつらぬき肌を刺す。

「痛ッ!」ジュンは猛禽と一緒にベンチから転げ落ちる。

「あはは……おかしい!」

 フランは息がとまるほど笑った。邪魔がはいったのを、ちょっと残念がりながら。




 理事長の斯波トモコと合流するため、高田馬場駅前のビッグボックスへむかう。新大久保側から山手線沿いにくだる人の列が絶えない。流血するものもいる。ペットボトルの水とトイレットペーパーを、手押し車にぎっしり積んだ老婆がころぶ。フランが手助けした。

 貧しい時代の日本をしる老人はペシミストで、政府を信じない。彼らは内戦勃発を予感し、必需品を買い占めた。身勝手な行動はますます流通を混乱させる。

 消防車が行列と逆方向へ急行。ジュンはリュックから双眼鏡をとりだす。

「さすがです」フランがゆう。「サバイバル道具を持ち歩くなんて」

「声優のイベントとかで使うやつだよ」

 おそらく擾乱は大久保でおきている。「在日朝鮮人が浄水場へ毒を投げこみ、各地に爆弾をしかけた」との噂が都内にはびこる。政府は「調査中」と発表するだけで否定しない。民衆は牙を剥き出しにした。

「クソッ」ジュンが毒づく。

 ロータリーで男女三名が悄然とした面持ちでひざまづく。抜刀した親衛隊員がうしろに立つ。全員斬られた。

「なにが起きてるの? 理事長は無事ですか?」

 フランの問いを、双眼鏡をはなさないジュンは黙殺。たしかに『シナチョン撲滅ブログ』の管理人である彼女は、「朝鮮人を皆殺しにしろ」だの書き散らし鬱憤をはらした。だがこんな悪夢は見たくなかった。

 佩刀するトモコ理事長が、まなじりを決してSSに抗議している。昂奮した黒服軍団から乱暴に小突かれる。

「マズい」ジュンが心細げにつぶやく。「理事長……やめろ。話が通じる相手じゃない」

「おねがい」フランがジュンの肩をゆする。「くわしい状況をおしえて!」

「理事長が親衛隊につかまった。多分殺される。あたしは彼女に借りがあるから、助けなきゃいけない」

「わたしも行きます」

「足手まといだ」ジュンは冷酷に言う。「チビの文学少女はおとなしく読書でもしてろ」

「いや! あなたはわたしが守るの!」




 斯波トモコは刀をうばわれ、セーターにとおした腕を両脇から二人に拘束される。睨みかえす視線はするどい。

 SS中尉が命令する。「おい女、『バビブベボ』と言ってみろ」

「なに?」

「在日はうまく発音できない」

「剣士に対しこの無礼」トモコの切れ長の目が燃える。「たとえ将校でもゆるされないわよ。あやまりなさい!」

「こいつは不逞朝鮮人だ。処分しろ」

 野次馬から若い女の悲鳴があがる。歓声にちかい。さわぎが徐々に伝播する。人の壁が割れ、両手をパーカーのポケットにつっこむ少女があらわれた。「百人斬り」「天才剣士」「悲恋のヒロイン」「セーラー服のジャンヌ・ダルク」……さまざまな虚像がひとり歩き。暁ジュンは、すでに暁ジュンではなかった。

「黒豚ども、そのひとを離せ。まだ死にたくないのなら」

 ジュンの要求に当然、親衛隊三十人は抜刀で応答した。午後二時の陽光が乱反射。ふってわいた様な復讐戦に血気は逸る。

 ポケットから軽快なビートと平田志穂子の歌声がもれた。『ペルソナ4』のBGMだ。

「もしもし」ジュンがiPhoneを頬にあてる。「こっちは問題ない。うん……スピリタスってウォッカがいい。度数ほぼ百パーセントだから。じゃ、がんばってね」

 親衛隊は度肝をぬかれる。なぜこの十五歳は、林立する刀をまえに酒の心配をしてるのか。

「おい」ジュンの薄い唇がゆがむ。「いつまで待たすんだ。それともこれっぽっちの人数で、あたしとやりあう気か」

 彼らもプロだから、小娘がハッタリかましているのはわかる。しかし気を呑まれて仕掛けられない。

 ガチャンとガラスの割れる音がして、一瞬で炎がひろがり数人のSS隊員の制服へ燃えうつる。消火手段がなく転げまわる。肉が焼ける臭いと叫び声が錯綜。

 ジュンはトモコをかかえる男のみぞおちに、鞘の鐺をめりこます。目を多数の敵にくばりながら「逃げて!」と指図。

 視線だけで戦場を制圧する。さすがのあたしも三十人は無理だが、何割かは仕留める自信がある。味方の勝利のため犠牲になりたいバカは、かかってこい。

 左手は鞘に、右手はカーゴパンツの腿に。パーカーの袖に穴があき、白い肌がみえる。

 不意に身をひるがえし遁走。おどろいたことに、さっきのフクロウがまた飛びかかってきた。鋭利な爪をおそれジュンは頭をさげる。すぐ後ろから痛みをうったえる男の声がした。

 あの鳥、今度はたすけてくれたのか。わけがわからない。




 坂をのぼり目白駅ちかくに来た。追手はみあたらない。SSにも持ち場があるのだろう。

「助けてもらってなんだけど」花壇に腰かけるトモコがゆう。「無謀にもほどがある。幸運にも負傷しなかったとはいえ」

「実は」腕まくりするジュン。「ここをやられた」

「え、大丈夫?」

「兵隊より鳥の方がおそろしい。剣術は一に気組、二にも気組。人間が何人いたって、あたしを斃せやしない」

「『百人斬り』の言うことは違うわね。ところでわたし、理事長辞めてきたから」

 学園一の問題児は責任を感じた。まわりの人々が自分のせいで職を、ときに命までうしなう。どうかんがえても償いきれない。

「そんなシュンとしないで」トモコが笑う。「いつかリリホワは立て直す。でも今はこんな醜悪な町にいたくない。東京は破滅よ」

 せわしない呼吸がきこえた。ようやく追いついたフランだ。ジュンにしがみつかないと立ってられない。

「ふたりとも無事でよかった……」フランの喉がかろうじて可聴音をだす。

「本城さんこそ」元理事長が答える。「火炎瓶投げたのあなたでしょ。怖くなかった?」

「いえ、悪者をやっつけてスッとしました!」

 ジュンは彼女の笑顔が、心配させたくない一心の虚勢とわかっている。多少は修羅場をくぐった自分でさえ震えがとまらない。フランの頬に涙のあとがのこる。不憫でたまらず、おもわずそこへキスした。無言で見つめあったふたりは、嗚咽をもらし抱きあう。

「なんか盛り上がってるけど」仲間はづれのトモコが口をとがらす。「女の子同士でそれってどうなのかしら」

「あんたが言うな」グシャグシャの顔でジュンは反論した。



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ジャンル : 小説・文学

青木優『シンギュラー』/ホリユウスケ『シャッフル学園』 とりあえず女子高生

 

 

青木優『シンギュラー』(ヤンマガKC/ためし読みは、表紙に大写しの、

セーラー服のヒロイン「保科昴」の目力だけで買う気にさせる。

木刀一本でテロリストと対峙するアクションもいい。

 

 

 

 

そこへロボット兵器が乱入。

敵か味方かわからないが、棒切れでどうにかなる相手じゃない。

 

 

 

 

パイロットにえらばれた昴は、自由と真実をもとめ戦う。

ただ「セーラー服×木刀」のたたずまいが凛々しすぎ、私服だと印象がぼやけるかも。



シンギュラー(1) (ヤンマガKCスペシャル)シンギュラー(1) (ヤンマガKCスペシャル)
(2015/03/06)
青木優

 

 

 

 

ホリユウスケ『シャッフル学園』(少年チャンピオンコミックス/ためし読み

くわしくないが『十五童貞漂流記』『ドラッグの教科書』など、ホリはサブカル系の作家とおもう。

そのわりに冒頭からJKを全面におしだす。

 

 

 

 

パンツや百合の描写も、流行を意識している。

そもそも制服女子を描かないと企画がとおらない時代かもしれないが。

 

 

 

 

短髪巨乳のハンドボール娘とか、よりどりみどり。

造形センスがすばらしい。

 

 

 

 

そして作者はいきなり、すべてぶち壊す。

少年少女の精神がシャッフルされ、クラスに殺人鬼がまぎれこむ。

 

要するにお前ら読者は、女子高生が出てれば満足なんだろう。

だったらとびきりの美少女を見せてやる。

ただし中身はサイコパスかもしれないし、つまらない男かもしれない。

せいぜい困惑するといい。



シャッフル学園 1 (少年チャンピオン・コミックス)シャッフル学園 1 (少年チャンピオン・コミックス)
(2015/03/06)
ホリユウスケ

 

 

『シンギュラー』

 

 

酒井順子『オリーブの罠』(講談社現代新書)に「JKビシネス」についての記述がある。

80年代、フランスのリセエンヌへの憧れから雑誌『オリーブ』などで「女子高生文化」が生まれ、

そこに目をつけた秋元康がおニャン子クラブをたちあげ、ビジネスモデルを確立。

AKB48をみるまでもなく、日本文化はその甘美な悪夢から覚めてない。

 

10年代の漫画家は、慢性的な病を逆手にとり個性を発揮しようとするが、

つよすぎる磁場にとらわれることもおおい。

型を壊そうとする仕草さえ、型にはまってしまう。

だって、それが制服の役割だから。

飽き飽きしてるはずなのに、ボクらは幾度もそこへ回帰する。



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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合 

崎由けぇき『病めるときも 健やかなるときも』

 

 

病めるときも 健やかなるときも

 

作者:崎由けぇき

掲載誌:『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)2014年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

すっかりカルチャーとして定着した「フィギュア」とくらべ、

いまだ日陰をあゆむ感のある「球体関節人形」の世界をえがく。

女の子が人形を好きでなにがわるいの?

 

 

 

 

ヒロインの「いばら」は人形に生命をあたえる能力をもつが、自覚はない。

ドールの「柘榴」は日夜ひたすら変態行為に耐える。

 

 

 

 

その神通力は呪いでもある。

いばらの周囲では怪現象が頻発。

乙女らはダークファンタジーの迷宮でさまよう。

 

 

 

 

タイトルの「病めるときも健やかなるときも」は、

ドールへの愛のつよさを謳う一方で、その感情が「病的」なのも示唆。

少女のナルシシズムが、百合の病としてあやしく結晶化する。

 

 

 

 

たわいないオママゴトも、妄想とゆう劇場で演じれば華麗なオペラに。

あなたはジュリエット、わたしはロミオ。

この愛は闇よりふかく心を染める。

 

フリルたっぷりの衣装に読者の目はとろけそう。

過去に連載を放り出したり、いわくのある作家だが、惹きつける腕は相当なもの。

 

 

 

 

ドールはときに少女の残酷さの象徴となる。

彼女らは大人になったその日、おのれの分身を捨てる。

ものもいわず火にくべられる哀れなマリオネット。

 

 

 

 

いや、少女たちは意識してそうふるまうのかもしれない。

甘美な罠からぬけだし、俗世の幸福をつかむために。

百合とゆう、鏡のなかの人形劇のこわさもえがかれる。




病めるときも 健やかなるときも (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)病めるときも 健やかなるときも (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)
(2014/12/12)
崎由けぇき

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テーマ : 百合漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: きらら系コミック  百合 

白峰旬『新解釈 関ヶ原合戦の真実』

 

 

新解釈 関ヶ原合戦の真実 脚色された天下分け目の戦い

 

著者:白峰旬

発行:宮帯出版社 2014年

 

 

 

関ヶ原合戦でドラマチックな裏切りをしたとされる赤座直保と朽木元綱は、

そもそも出陣していなかったかもしれない。

偵察で貢献した黒装束の久保島孫兵衛にいたっては、架空の人物なのは確実。

 

著者は「天下分け目の戦い」から小説的な脚色をとりのぞく。

 

 

参謀本部編纂『日本戦史 関原役』

 

 

各時代の歴史書の引用元をさかのぼると、江戸時代の軍記物などにゆきつく。

そりゃあ、面白おかしくなるわけだ。

特に参謀本部が編纂した『日本戦史』の布陣図は、

その権威ゆえ後世にフィクションと事実を混同させた。

 

鈴木眞哉の「遠戦主義」も本書で批判される。

「天下人中心史観」をくつがえす、平山優(例1/2らの研究にちかい立場だ。

戦国時代の問い直しは、戦術レベルから列島レベルの議論にすすんでいる。

 

 

 

 

小早川秀秋は開戦と同時に裏切り、石田三成方は瞬時に敗北した。

これが本書のテーゼ。

史実はあっけなくつまらないので、スリリングなストーリーがでっち上げられた。

 

徳川家康が、福島正則や山内一豊らをあつめた「小山評定」は、

いかにも大河ドラマ的な名場面だが、これもウソらしい。

 

 

家康が遣わしたとされる「問鉄砲」隊

 

 

家康が小早川隊にぶっ放した「問鉄砲」は、江戸中期の創作。

天保期に、幕府の奥儒者・成島司直が正史『徳川実記』に収録したことで、

決定的な影響力をもった。

神君家康公の智謀をたたえるイデオロギーにすぎない。

 

 

内府ちかひの条々

 

 

合戦当時、家康は指揮権を剥奪されていた。

「上杉討伐」を名目に諸大名を動員しようとしたが不発。

結局のところ関ヶ原は、豊臣家の内ゲバだった。

 

戦後、大阪城西の丸をうけとったのは福島ら豊臣系武将。

本丸には豊臣秀頼が健在だった。

ちっとも天下の分け目になってない。

 

戦乱に便乗した家康は勝利者の末席に名をつらね、

主筋の豊臣家が没落したのをこれ幸いと、天下人にとってかわった。

姑息な手をつかわないと、ホトトギスは鳴きはしない。




新解釈 関ヶ原合戦の真実 脚色された天下分け目の戦い新解釈 関ヶ原合戦の真実 脚色された天下分け目の戦い
(2014/10/10)
白峰旬

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テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

季野このき『ぴっこりーな!』

 

 

ぴっこりーな!

 

作者:季野このき

発行:メディアファクトリー/KADOKAWA 2015年

[ためし読みはこちら

 

 

 

大学生の「世界広志(せかい ひろし)」が帰宅したら、民族衣装の幼女が三人いた。

トレジャーハンター(?)として世界を股にかける父がゲットしたらしい。

 

 

 

 

あたたかそうな服を着るのはイヌイットの「ノエル」。

鼻と鼻をくっつけるのはただの挨拶で、ふかい意味はない。

 

 

 

 

モンゴル民族の「アルタ」の靴は、爪先が上むく。

「大地を傷つけない」とゆう、草原の民の思想のあらわれ。

モカシンやカミックなど、現代のファッションにとりいれられたものも多い。

 

 

 

 

元気ハツラツなインディアンの「マーヤ」。

悪い夢をくいとめ良い夢をのこすドリームキャッチャーをくれた。

ボクも映画かなにかで見たことあるが、由来はしらなかった。

世界はまだまだ不思議でみちている。

 

 

 

 

いきなり居候となったかしまし娘だが、なにせ幼女ゆえ出てけとも言えない。

エキゾチシズムとロリの組み合わせは強力!

 

 

 

 

しかし衣食住の習慣はあまりにちがいすぎる。

すこしは日本式にあわせろと言ったら、ふくれっ面。

 

 

 

 

しまいには三人でケンカして冷戦状態に。

世界平和がいかに困難であるかわかる。

 

 

 

 

バイト先につれてったら自分の子供とまちがえられた。

ひそかに広志に憧れる高校生の「魚野さん」の空回りっぷりもいい。

 

初オリジナル単行本ながら、作者はたくみなコメディの腕をみせる。

 

 

 

 

父と旅をつづける母と5年ぶりに再会。

各地のあやしい術をためしてるので、むしろ若返っていた。

 

最終話だけの脇役もいい味だしてる。

 

 

 

 

ゆるゆるなのに刺激的。

ひたすらカワイイのにためになる。

それは非日常的すぎる日常。

 

1巻完結だが続刊の可能性あり、たしかな才能を感じる秀作だ。




ぴっこりーな!ぴっこりーな!
(2015/02/23)
季野このき

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: ロリ 

関谷あさみ『僕らの境界』

『山』

 

 

僕らの境界(ライン)

 

作者:関谷あさみ

発行:茜新社 2015年

レーベル:TENMACOMICS JC

[同作者の『千と万』の記事→1巻/2巻

 

 

 

『YOUR DOG』以来、7年ぶりの成年漫画単行本。

インターネットの普及が、この間の社会的変化として挙げられる。

中学1年の彼女とセックスする写真をツイッターで公開したら、

自慢とうけとられ何人かにフォローをはづされた。

リアルだ。

 

 

 

 

短篇のタイトルが『山』だけに、風景を丁寧にえがく。

仕事をサボり、あどけない少女をオモチャにする。

事後に学校での三者面談の話をする「れいかちゃん」。

大学進学は、この山村を出てゆくことを意味する。

ケロッとした顔で、田舎でくすぶる男の一番傷つきやすい部分を刺す。

 

 

寝床でゴロゴロする女の子を描かせたら宇宙一

 

 

描き下ろしの後日譚『街の灯』。

ファッション誌をみては、都会への憧れをつのらせる。

それでも可愛い下着をつけ、年上の彼氏のため精一杯おしゃれした。

 

文化、社会、どっちもどっちな人間関係。

それらすべてを思春期女子のファッションに集約するのが、関谷作品。

 

 

『ラストキング』

 

 

通販で買ったブルマをみせたら、蒼ざめて震える「東子ちゃん」。

はじめて実物を目の当たりにしたショートパンツ世代の衝撃はおおきい。

 

 

『LUSTKING append ver.』

 

 

関谷作品のヒロインは仔犬の様に従順で、あれもこれもうけいれる。

でもやられっぱなしでなく、やられていいことしかやらせない。

選択権をあづける選択をする、一種の代議政治だ。

 

 

 

 

いわゆるジト目少女の『走れ!』が白眉だろう。

あさみ先生にしてはあざとい造形だが、

「うだつのあがらないジュニアアイドル」とゆう微妙な肩書で納得。

アマゾンあたりのレビューでは「無表情すぎ」とかで星二つ。

 

 

 

 

お仕事がんばるための御褒美を兄からもらう。

キスの仕方をしらず息がつまったので、鼻をおさえ呼吸法をためす。

手をつかった感情表現で、ジト目の破壊力を増幅。

 

 

 

 

撮影現場にいくときの可憐な服装は、1967年の映画『卒業』の、

ウェディングドレスで駆けるラストシーンへのオマージュ。

関谷作品を特徴づける「不毛な叙情性」が、

アメリカン・ニューシネマと通底するのを、作者みづから披瀝しており興味ぶかい。

 

一般誌で連載中の『千と万』がたかく評価される一方で、

よりメインストリーム的な作劇を、あえてロリ漫画誌で展開する孤高さにうたれる。

ファンブログでもそのこだわりをくわしく指摘されている。

異端の作家、関谷あさみ。

ファンとしては従順につきしたがうしかない。




僕らの境界 (TENMA COMICS JC)僕らの境界 (TENMA COMICS JC)
(2015/02/27)
関谷あさみ

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 関谷あさみ  ロリ 
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