あまー『ヴぁるばいと!』/はりかも『うらら迷路帖』 萌え4コマと髪型

 

 

あまー『ヴぁるばいと!』(まんがタイムKRコミックス/ためし読み)は、

女子店員だけのコンビニ「ヴァルハラ桜滝店」が舞台の4コマ。

 

制服はサンクスっぽいが、いまはなきam/pmを髣髴させる配色。

ベルトのバックルみたいな髪留めも印象的だ。

 

 

 

 

北欧神話を下敷きとし、コンビニ店員をヴァルキリーにみたてるが、

初単行本ってこともあり、この趣向はイマイチいかせてない。

 

とはいえ、毎日つかうわりに案外しらないコンビニの裏側がわかるし、

すぐそこで、あるといいながありそうな佳作とおもう。

 

 

 

 

おもしろいのは、各話の扉絵に「シフト表」が載ってること。

コロコロと愛くるしいきらら少女は、ときに見分けがつきづらい。

その回にだれが登場するかわかると読者はたすかる。



ヴぁるばいと!  (1) (まんがタイムKRコミックス)ヴぁるばいと! (1) (まんがタイムKRコミックス)
(2015/02/27)
あまー

 

 

 

着物の柄のステキなこと

 

 

お次は、はりかも『うらら迷路帖』(まんがタイムKRコミックス/ためし読み)。

夜森の国のソラニ』の作者による、和風ファンタジー4コマだ。

扉絵をめくると、そこはもう異世界。

 

 

 

 

ルックス面で本作をリードするのは、見習い占い師の「紺」。

普段は着物だけど、洋装(やや趣味が偏ってるが)も似合う。

スカートの襞とか裏地とか、いちいち手がこんでて溜息がでる。

 

 

 

 

脱いでもあでやか。

線画で「肌のすべすべ感」を表現できるって不思議。

黒髪ロングの魔力は敵なし。

 

 

 

 

ただ達者な画力にとって、4コマとゆうフォーマットは窮屈かも。

ゴチャゴチャしてみえるし、交通整理が必要におもえる。

 

勿論、単行本を何冊もだしてる様なプロの作家は、いわば絵の天才で、

絵心ゼロの僕がかんがえる程度の問題は、とっくに対処ずみ。

ツインテにしたりリボンをつけたりアホ毛があったり、

シルエットで個体認識させるための工夫をしている。

だが、ついつい髪の乱れなどこまやかに描写し、もとの木阿弥に。

なまじっか描けるせいで、表現衝動を抑制できないのだろう。



うらら迷路帖 (1) (まんがタイムKRコミックス)うらら迷路帖 (1) (まんがタイムKRコミックス)
(2015/01/27)
はりかも

 

 

 

 

 

きらら系の諸作の「交通整理」をみてみよう。

まづ得能正太郎『NEW GAME!』

 

「美人しか見あたらないゲーム会社」なんて、文字どおり絵空ごとだが、

パーティションで区切り集中配備することで説得力がうまれる。

漫画は「分断の藝術」だ。

 

 

 

 

可憐な少女騎士が活躍する、だいせ『しゅばりえーる』

見せ場でゴツい甲冑をきさせ、乙女の命である髪をかくす。

あえて視線を分断、メリハリつける。

 

描き手と読み手の慾望の均衡点で、ヒロインたちはかがやく。



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箸井地図/櫛木理宇『ホーンテッド・キャンパス』 おそるべし灘こよみ

 

 

ホーンテッド・キャンパス

 

作画:箸井地図

原作:櫛木理宇(角川ホラー文庫刊)

掲載誌:『Nemuki+』(朝日新聞出版)2014年-

単行本:Nemuki+コミックス

ためし読み/前作『ハイリコ』の記事→1巻/2巻

 

 

 

人気ホラー小説シリーズの漫画化。

大学のオカルト研究会の面々が、壁にあらわれた人面などの怪事件にいどむ。

 

 

 

 

若者たちのリア充ライフと並行し、心霊現象の怖さと、暴力のおぞましさを描く。

当世風の「ライトホラー」とでもよぶべき物語。

 

 

 

 

だが読み進めるほどに、箸井地図ならではの缺点があらわに。

女の子がかわいすぎ、オシャレすぎ、印象的すぎ、筋が頭にはいらない。

 

 

 

 

作者は副部長の「三田村藍」を、ポニーテールで巨乳にかえた。

そして描きづらそうなデザインの服をきせる。

ファッションに命をかける女子大生のはなやかさを演出。

かぐわしい花の香りすら感じられる。

 

 

 

 

キャラデザをいじったのは、ヒロイン「灘こよみ」とのコントラストのためか。

黒髪ショートボブで痩身、いつもしかめ面で、ちょっと近寄りがたいタイプ。

 

 

 

 

憂い顔がサスペンスをもりあげる。

守ってあげたくならなきゃ、ホラーのヒロイン失格。

 

 

 

 

こよみちゃんが眉間に皺をよせるのは、ド近眼で偏頭痛もちだから。

徐々に表情はやわらぎ、花をせおって登場する機会もふえる。

 

 

 

 

大学のそばの古い喫茶店でおしゃべり。

蕾みたいにほころんだ口元に感動。

 

 

 

 

こんな娘とキャンパスライフをおくれるなら、幽霊が束になり襲いかかっても怖くない。

むしろうらやましいほどで、ホラーとして失敗作かも。

 

 

 

 

背筋がのびたマジメそうな佇まいに、ワンピースがよく似合う。

本がたくさん入りそうな、しっかりした作りのトートバッグも勉強家っぽい。

ここにいるのは理想の女子大生、ひと目で読者の心に憑依する。




ホーンテッド・キャンパス 1 (Nemuki+コミックス)ホーンテッド・キャンパス 1 (Nemuki+コミックス)
(2015/02/25)
箸井地図、櫛木理宇

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小説10 「春風」

『フリーダム・シスター』


登場人物とあらすじ


全篇を縦書きで読む








 暁ジュンは口のなかのクロレッツをティッシュでくるみ、カーゴパンツのポケットにいれた。これから桜台にある葦切コタカの自宅をおとづれる。兄も同行するのは護衛と、剣士のブランド力で門前払いされないようにするため。

 どうにかオートロックを突破、マンションの五階へたどりつく。応対したのはコタカの母で、息子とおなじく小柄な美人だった。憎悪で眉間にふかい皺がきざまれるが。糞尿でもさわるかの様にヨックモックの菓子折をうけとる。

 ひとりでコタカの部屋へはいる。兄に居間で母親の相手をつとめさせる。つまらない世間話が彼の唯一の特技。コタカの自室は意外と奇麗だった。ジュンが貢いだロリ漫画をどこに隠してるのだろう。

 机の上に銀のネックレスをみつけた。シャドウガールの持ち物だ。

「このお菓子」ジュンはシガールを咥える。「スースーってしたくなるよね」

 コタカは飲食に手をつけず緊張する。おどけるジュンの、声にださない論難に気づいていた。室内の空気に酸味がまじる。

「シャドウガールに」ジュンの自尊心が笑顔を維持させていた。「寮の部屋番号おしえたでしょ。実はメールに書いた番号は隣のだったんだ。あたしってホント性格悪い」

「ごめん」

「しかもあいつと寝たでしょ」

「……うん」

 視界の天井と床がいれかわる。RGBバランスが狂っている。内臓の機能は急停止。ゴミ箱へ顔をつっこみ、甘ったるいゲル状のものを嘔吐した。

 心が事実を拒絶している。ウブな恋人が、自分を殺そうとした敵と情を交わすなんて、あってはならない。

 コタカに背中をさすられる。しらじらしく感じた。

「お尻のところに」ジュンは涎を垂らしながながら言う。「脇差あるのわかる? 質問するから正直にこたえて。嘘ついたらコタカを刺して自分も死ぬ。ねえ、ずっとあたしのこと嫌いだった?」

「そうだね……ごめん」

 大量の涙が吐瀉物をうすめる。「嘘をついてほしい」とゆう気持ちが、なぜつたわらないのか。本気で殺されると思ってるのか。自分の喉を突けば、ちょっとでも振り向いてもらえるのか。

「あはは、コタカって趣味わるすぎ」ジュンは上体をおこす。「あんな妖怪ババアとセックスとかありえない。でも正直に言ってくれてありがと。あたしはコタカをオモチャにしてたよね。いろいろ迷惑かけて、こちらこそごめんなさい」

 強がれば強がるほどミジメになる。コタカは怪訝そうに首をかしげた。なんて可愛い男の子なんだ。やっぱり大好き。

 膝に手をおき立ち上がる。なかば意識が途切れてるのに、正常にはたらく足腰に感心。「しれば迷ひしなければ迷はぬ恋のみち」。あたしは剣の道に生きるしかないか。多分無理だけど。

 シャドウガールを恨む心境にならない。こちらが一番されたくないことをしただけ。権力の毒が骨の髄までまわった女の、くだらないゲームだ。怒ったら同類になる。

 あたしはあたしの道をゆく。




 三日後、事態は急転。

 解体される国立競技場の最後のイベントがひらかれた。演目は「葦切コタカの死刑執行」。スパイ容疑やゴッドガール暗殺未遂などの罪状で。軍律会議での一時間ほどの審理のあと判決がくだった。

 水色の襟のセーラー服をきた暁ジュンは、本日の主賓だった。右隣にすわる本城フランがずっと友人の手をにぎる。

「いざってときは」蒼龍学園でもっとも非力な生徒が言う。「わたしも戦います」

 気持ちがうれしいので、ジュンは足手まといだと正直に答えなかった。

 部屋着のまま連行されたステージ上のコタカは茫然自失。人一倍臆病だから仕方ない。

 政府に恋人を売ったコタカは態度をかえ、非協力的になった。とりみだすジュンを憐れんだらしい。政府は利用価値なしとみるやコタカを切り捨てる。もともとゴッドガールの恥部を撮影し配信したとゆう、言い逃れできない罪があった。

 すべてジュンの責任であり、どうにかしないといけない。でも、どうやって。自分、兄、アリア、フラン、トモコ。たった五人で、スタジアムを埋める親衛隊員相手になにができるだろう。

 兄妹はステージへのぼった。ジュンのみじかいスカートがひるがえる。大学生の兄は演壇でスピーチをはじめた。つまらない話で時間を稼がせたら天才だ。時折「自重しろ」と妹に目くばせする。

 若い死刑囚はぼんやりし、ジュンと視線をあわせない。眼前のできごとを現実と認識してない様にみえる。

 「海行かば 水漬く屍」とふるい歌がながれ、内閣総理大臣・安倍晋三が登場。ジュンやコタカと同年代の美少年を十人つれる。民族主義思想をたたきこまれ、彼を崇拝する「アベユーゲント」だ。みな武装している。

「暁さん」首相が握手をもとめる。「お会いできてうれしい。あなたの様に武道を受け継ぐ若者がいれば、日本の将来はあかるい」

「こちらこそ光栄です」ジュンはにこやかに答える。「社会に貢献できる大人になれるよう、これからも努力します」

「ところで親衛隊の件は、首相として心からお詫びします。一部の人間の暴走だったとはいえ」

「もったいないお言葉です。政権をあづかる立場の大変さ、お察しいたします」

 社交辞令とわりきれば、ジュンは優等生らしくふるまえる。

 にやつく安倍は侮蔑の色を隠さない。この十五歳の少女を徒花とみなしている。ひと月もすれば散る運命の。

 総理大臣の煽動がはじまる。ジョージの寝言と迫力がちがう。コタカが中国の犬で、卑劣なテロリストで、いやしい在日朝鮮人だと喚く。いまこそ国民はひとつになれ。それを疑うものは売国奴で、万死に値する。

 こいつも「駒」だとジュンは察知した。だれかの書いた脚本を読むだけの傀儡だ。人間とゆうよりスピーカーだ。常軌を逸した発言は責任意識がともなってない。頬がたるんだこの六十歳の老人から、内省する心を露ほども感じとれない。

 しかしなぜリスクを背負ってまで、安倍がシャドウガールの言いなりなのかは理解をこえる。輿論を味方とし、軍事・警察・諜報・宣伝をうごかす権力があれば、シャドウの人脈など圧倒できるのに。




 火刑の準備がはじまる。柱のまわりに薪が積まれてゆく。生きたまま焼かれる苦痛はどれほどか、想像もつかない。

「アニキ、刀貸して」ジュンが手をのばす。

 これをふせぐためジョージは茶番劇を演じていた。妹の暴発をさそうのが、赤坂の月讀御所でテレビ中継をみている、シャドウガールの計略なのは明白だった。

 だが左の手首を極められ、ジョージの長躯は宙を舞い、受身なしで落ちて肺が空になる。刀だけ妹の手にのこった。

 ジュンは抜身をさげ演壇へちかづく。

 アベユーゲントの六人が抜刀し、四人が弓をひいた。

「総理」ジュンはなにげなく要求。「葦切君はあたしが処刑します。よろしいですか」

 拒否したらお前から斬ると、瞳が雄辯にかたる。総理大臣は抵抗しない。

 雪風流では介錯の仕方をおしえる。切腹する父の首を落とす想定がイヤでイヤで、幼いジュンは泣きながら稽古した。「いつか必要になる日がくる」と無理強いされた。

 ジュンは恋人に声をかける。「膝をついて下をむいて」

「こわいよ」コタカの頬が濡れている。「こんなところで死にたくない。暁さんも一緒に来てくれる?」

「ごめん、いますぐは行けない。でもあなたのことは絶対わすれない。一秒だって」

 桜花をちらす風が、むせぶ涙声を掻き消したかもしれない。

 刀身は春光をにぶく照りかえしながら、急転直下のうごきをはたした。




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神崎かるな/黒神遊夜『武装少女マキャヴェリズム』2巻 あるツァイトガイスト

 

 

武装少女マキャヴェリズム

 

作画:神崎かるな

原作:黒神遊夜

掲載誌:『月刊少年エース』(角川書店/KADOKAWA)2014年-

単行本:角川コミックス・エース

ためし読み/1巻の記事/同作者の『しなこいっ』『竹刀短し恋せよ乙女』

 

 

 

粗暴な新撰組筆頭局長・芹沢鴨が、鉄扇で誰彼かまわず殴ったのは有名だし、

「鉄扇術」が流派として存在するのも知ってたが、その形をみるのは初めて。

本作は「情報量がおおい」とゆう、名作の条件をみたしている。

 

 

 

 

天下五剣のひとり「亀鶴城(きかくじょう)メアリ」のレイピアが襲いかかる。

西洋剣術の多彩な突きに翻弄され、間合いを詰められない。

 

 

 

 

女剣士を斃したらボーナスタイム。

なにやら覚悟してるメアリさんの艶めかしい体型を堪能しよう。

 

 

 

 

神崎かるなの描線はすこぶるうつくしい。

メアリとくらべ細身の「鬼瓦輪(おにがわら りん)」のブルマは皺がよる。

そこがまたいい。

 

 

 

 

てっきり剣術漫画とおもってたら、相撲大会がはじまる超展開。

「ブルマ・まわし・刀」のコーディネイトは、意外なほどそそる。

 

 

 

 

『しなこいっ』のゴシック的「暗さ」を捨て、ラノベ的「軽さ」にちかづいた本作。

「もう打ち切り(二度も)は御免だ」とゆう覚悟が、ラッキースケベ連打にあらわれるが、

その反動なのか熊とのバトルを延々と描いてアンケートで惨敗したらしい。

器用な様で不器用なコンビかも。

 

ちなみに「花酒蕨(はなさか わらび)」が熊をしたがえるのは、坂田金時になぞらえた。

ハチャメチャな様で筋がとおっている。

鬼姫のセリフもおかしいし、僕はすきなエピソードだ。

 

 

 

 

蕨はタイ捨流の遣い手。

「猿廻」など身軽なうごきを、流麗な作画で魅せる。

古武道を描かせたら空前にして絶後。

 

 

 

 

対する鬼姫は直心影流。

すらりとのびた脚に映える「鶴ノ構」。

この上なく凛々しくて、この上なく萌える。

いにしえの精神を、はやりの仕草と調和させ、2015年を斬る。




武装少女マキャヴェリズム (2) (カドカワコミックス・エース)武装少女マキャヴェリズム (2) (カドカワコミックス・エース)
(2015/02/23)
神崎かるな

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松井勝法『ハナカク -The Last Girl Standing-』3巻 総合漫画の魅力

 

 

ハナカク -The Last Girl Standing-

 

作者:松井勝法

掲載誌:『月刊コミックゼノン』(徳間書店)2013年-

単行本:ゼノンコミックス

ためし読み/過去の記事→1巻/2巻

 

 

 

格闘漫画史上最弱の主人公「花夏」がついにリングにたつ。

デビュー戦の相手は、キックボクシング界のスターである「ニナ」。

総合に転向したばかりとはいえ、地力に差がありすぎる。

 

 

 

 

花夏とニナは中学時代の同級生。

当時の因縁やニナの二面性を、誇張ぎみにえがく。

 

 

いまにもキレそうな亜季

 

 

ツインテールが怒りで逆立ったり、描写はときに物理法則をこえる。

単なる肉体と肉体のせめぎあいではない。

中山敦支『ねじまきカギュー』を髣髴させる瞬間も。

 

 

 

 

かつてのアシスタント先、尾田栄一郎が単行本帯に寄稿している。

『週刊少年ジャンプ』仕込みのやりすぎ感が、本作の特色のひとつ。

 

 

 

 

それでいて、格闘技術は徹底的にリアル。

「ナオさん」がさづけた作戦でテイクダウンに成功。

 

 

 

 

予備動作なしで繰り出すニナの「不意針」を、独特のコマ割りで表現。

総合格闘技道場「パラエストラ」所属の作者ならでは。

 

 

 

 

幼少時までさかのぼり、奥義があみだされた由来をさぐる。

ニナが女のくせに優しさがないのは、むしろ思いやりを知ってるから。

他者の弱点を「思いやり」、自分の強みにかえる。

 

 

 

 

心理描写が、第三のみどころ。

格闘技にまったく関心ない、花夏の同級生ふたりが応援にきた。

どうみても自分よりよわい友達が心配でしかたない。

オシャレすぎない服がカワイイ。

 

 

 

 

実際そこは地獄だった。

公開処刑の残酷さに目をそむける。

 

 

 

 

デビュー戦にむけて合宿する12話がいい。

青アザにまみれ、コハとの友情がふかまる。

なぜかわからないが、とにかく百合といえば「合宿回」

 

 

 

 

要約しよう。

少年漫画的誇張、格闘描写のリアリズム、百合。

三拍子そろった「総合漫画」が『ハナカク』だ。

偉大な作品だとおもう。




ハナカク 3: -The Last Girl Standing- (ゼノンコミックス)ハナカク 3: -The Last Girl Standing- (ゼノンコミックス)
(2015/02/20)
松井勝法

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小説9 「リリホワ騒動」

『フリーダム・シスター』


登場人物とあらすじ


全篇を縦書きで読む







 台所の物音とコーヒーの香りで、暁ジョージは目をさました。土曜の夜は、剣士仲間である羽生アリアの部屋によく泊まる。

「手伝おうか」おきて声をかけた。

「男子厨房にはいらずだ」背をむけたままアリアが答える。「読書以外のわたしの唯一の趣味が料理なんだから、邪魔しないでくれ。君は食べる専門でいい」

 食卓にテキパキと焼き魚や味噌汁がならぶ。地毛がブロンドのくせ和食党なのがおかしい。こんな円満な時間を、いづれ週末といわず毎日すごせるだろうか。

 固定電話が鳴った。意外な相手らしくアリアの隻眼が見開かれ、内容の深刻さに眼差しは段々けわしくなる。

「緊急事態だ」受話器をおいたアリアがコーヒーをがぶ飲み。「いま車をだす。リリホワの寮へゆくぞ。君の妹が拉致されるらしい」

「なんだって!? 本当ならしかるべき警察機関に……」

「敵は政府内部にいて、しかも法的手続を無視している。動員されたのは武装SSだ……しかめ面するな、あそこにもマトモな軍人はいる。くわしくは車で話そう」

 ジョージは武装親衛隊を蛇蝎のごとく嫌う。剣士は国防軍と密接な交流があり、ゴロツキどもが膨張するのを歓迎しない。

 アリアの前の恋人がSS将校なのは聞いている。そいつが密告したらしいが、気分は複雑。

 見透かした様にアリアが笑う。「御飯粒がついてるぞ。色男が台無しだ」

 そっと頬にお出かけのキスをされた。




 女子寮の三階にいる暁ジュンは、警鐘をならす兄の電話で、裏門から逃げて合流しろと指示された。

 窓から正門付近をみおろすと、黒服の五人がみえる。約十五名が派遣されたと聞くから、すでに裏門は固められ、この部屋にも追手がせまってるだろう。

 抵抗は無意味におもえた。手元に武器はないし、あっても軍隊とやりあう気はない。勝目のないケンカはしない主義だ。

 隣室から突然、はげしい騒音と女子寮生の叫びがひびく。窓ガラスをやぶり敵が侵入したのか? ノブに手をかけたところドアが手前にひらき、闖入者に突き飛ばされた。SSの制服でなく、ガラスの破片まみれの革ジャケットを着ている。ジュンは知る由ないが、CIA工作員のナオヤだ。

 細身の男はナイフをするどく繰り出す。咄嗟につかんだ木製のハンガーでうける。隙間にとおした腕を折ろうと捩じ上げた。打ち、受け、極める。武田鉄矢もびっくりのハンガー格闘術だ。

 うめいてナイフを落とした優男が組みついてくる。長身の男との立ち合いは、兄との稽古で慣れている。相手の倍の突きで制圧、右手で頸動脈を絞める。白目むいて崩れた敵にまたがった。

 ふと、この美男子に見覚えあるのに気づく。たしか俳優かモデルだ。ヤバい、間近でみると超イケメン。一目惚れしたジュンは戦意をうしなう。脱力した瞬間に投げられ、ベッドの角に側頭部をうち失神。

 ミーハーはときに命取りとなる。




 ジョージは建物の陰から、寮の裏門をのぞく。SS二名が内側を見張っている。内閣府・侍所を通じ、剣士の応援を要請したが音沙汰なし。よからぬ事態だ。

 背後のパートナーにゆう。「本当にやるのか?」

「失望したぞ」嘆息するアリア。「家族の生命より兵力差を重視する男を、わたしは恋人にしたくない」

「俺はお前を心配してるんだ!」

「なるほど」アリアが紅潮する。「わたしも生物学上は女だから、心配される資格があるのか。だがそんなセリフは、剣技で優ってからゆうべきだ」

 ふたりの若侍は早足でちかより、SSが振り向く前に抜刀。アリアが横に薙ぎ払ったとき、ジョージは三度斬っていた。

 アリアが口笛をふく。「おみごと。雪風流の居合はすさまじいな」

 ジョージは死体から目を離せない。はじめての殺しだった。血がブクブクと泡をたてる。この兵士は、死が迫っていることさえ知らないまま逝った。

「正気にもどれ」アリアが背中を叩く。「殺人なんて大したことじゃない。せいぜい亡霊に日夜悩まされる程度さ」

 自嘲するアリアは十五歳のとき、父の仇である汚職警官を三人斬った。あっぱれな孝女と評判になり、特例として剣士資格をえた。そのとき左目を負傷したらしいが、くわしくはジョージもしらない。

 三階の騒ぎを聞きつけたふたりは、寮棟へむかい駆ける。




 後ろ手に結束バンドで親指を締められたジュンを、CIA工作員ふたりが連行する。

 ジョン・ピーチが、日米共同の拉致作戦を指揮していた。ジェームズ・ボンド気取りの突貫小僧をつかうのは、美男子にすぐ心をゆるす日本女性の弱点をつくため。

 手首に噛みついてきた少女の後頭部を殴る。肥満体型の退役軍人の腕力はつよい。またジュンはぐったりした。

 ピーチの胸が早鐘をうつ。ついにこの女を手にいれた。最寄りのセーフハウスに拷問道具を準備ずみ。シャドウガールに引き渡すまえにたっぷり可愛がってやれる。

「ヘイ、マザーファッカーズ!」

 挑発に反応したナオヤの頬骨に矢尻が刺さった。激痛にのたうち、ジュンと一緒にころがる。

 蒼龍学園理事長・斯波トモコが長弓をかまえ、うつくしい残身をみせる。きょうもパンツルックだが、足元はスリッパ。

「わたしが手塩にかけ育てた百合の園を、土足で荒らしやがって……絶対ゆるさない」

 ピーチに体当たりしようとするジュンを「うごかないで!」と制止。カランカランとかわいた音をたて、背負った矢筒から二の矢をとりだす。

 太っちょスパイが長銃身のリボルバーで反撃。コルト社のシングルアクション・アーミー、通称「ピースメイカー」だ。左手で撃鉄をおこしつつ六発ばらまく。トモコはかまわず悠然と弦をひいている。

 あわてて再装填するピーチの厚い胸板を竹の矢がつらぬく。打撃で尻餅ついたところに三の矢。拳銃をとりおとし巨象は斃れた。

「一射絶命。下手な鉄砲は、数撃とうが当たりゃしないわ」

 トモコの泣きぼくろのある左目があやしく光る。彼女が帯刀してるのにジュンは気づいた。

「うそ、理事長も剣士だったの!?」

「刀なんて」トモコは鼻で笑う。「女子力低いものブラ下げてたらモテないでしょ。さて、おびえる子猫ちゃんを慰めにゆかないと。あなたもさっさと逃げたら」

 プラスチックの拘束具を切ってもらったジュンは、大小を借りて正門をぬけた。兄に電話するが応答はない。




 ジョージとアリアは武装親衛隊に包囲されている。距離がはなれ、たがいの掩護も不可能。パートナーの無事をねがうのみ。

 玄関でたたかうアリアは下駄箱を遮蔽物にし、縦横無尽の機動ですでに三人斬り伏せた。

 付近にいるもう一人の位置を知ろうと、聞き耳たてる。壁から毛髪が生えているのにギョッとした。貼りついただれかの頭皮だ。

 黒服が上段にかまえ、下駄箱の裏から飛び出す。アリアは初太刀を受け流し応戦するが、鍔迫り合いに。金的への蹴りも防がれる。互角の遣い手で、疲労の分こちらが不利。

 後ずさるとき、やわらかいものを踏んでよろけた。自分が斬り落とした腕だ。完全にバランスをうしないゴミ箱にぶつかって倒れる。ペットボトルや缶が散乱。

 剣を手放したのが痛恨事だった。アリアは脇差をもたない。大刀を蹴飛ばしたSS隊員が切先を突きつける。

「さすがは剣士殿」見下ろしながら黒服がゆう。「女だてらによく粘る。しかしなぜ暁をかばう? 国辱ものの叛逆者だろう」

「ふん、SSお得意のタワゴトか」

 敵が血相かえた瞬間に女剣士は肉薄、つぶれたアルミ缶で喉を掻き切る。空気と血液を撒き散らし絶命。

「これだから男はこまる」アリアがつぶやく。「戦場で正邪を論じてどうする? 勝てば官軍、ただそれだけだ」

 ジョージの低い掛け声がきこえる。苦戦してるはずの恋人の助太刀にむかった。




 ガチャガチャと大小拵の音をたて、ジュンは高田馬場駅へ疾駆する。フェンスをこえ、退学になった中等部の校舎裏をとおりショートカット。はげしいビル風に目をほそめる。

 けだるく壁に背をもたせる、黒衣の姫君がいた。逃走ルートを慎重にえらぶべきだった。元海軍元帥の読みは深い。

「妹ってステキよね」シャドウガールがゆう。「責任なくて自由で、いざとなれば守ってもらえる。子はいつか親になるけど、妹はずっと妹のまま」

「やっぱあんたが黒幕か」

「暁ジュンに勝つには一個師団が必要なのかしら。坂本龍馬と中岡慎太郎を暗殺させたときでさえ、見廻組七人で十分だったのに」

「それって秘密じゃないの?」

「勿論オフレコよ」シャドウがほほえむ。「でも死人は秘密を漏らさない。そう、あなたは神を怒らせた」

 黒塗りの鎖がじゃらりと垂れる。両端に鎌と分銅がつく。ジュンは「鎖鎌」を祖父に指導されたことがある。実用性のひくい武器だが、遣い手によるだろう。

 鎖が風を切ってうなる。カフェテリアでみせた抜刀術を封じる意図がある様だ。

 雪風流【脱兎】。

 ジュンは臍の前に重心をおく。重力にひきずられ突進。後ろに振った刀をもちあげ、八相の位置にきたとき最高速に達する。瞬きより迅く五メートルを詰め、すべてを運動エネルギーに変換。

 影すら斬れなかった。

 視野に敵はいない。一か八かでうなじを守ると衝撃があった。

「なんとゆう天稟!」シャドウが背後で声をはづませる。「本当に殺すのが惜しいわ」

「さっき斬りたそうに首を見てたろ」

 敵の力をいかしコマの様に回転し薙ぎ払う。またもシャドウは雲散霧消。

 いくつかのトリックを想定できる。ワイヤーなどの物理的手段、エフェドリンなどの薬物、光学迷彩やサイボーク化などの機械的手段、そしてこれらの組み合わせ。

 両刃の鎌、分銅、鎖による締めが、変幻自在の間合いで襲いかかる。致命傷をおうのは時間の問題だった。

 雪風流【處女】。

 ジュンは脇差を抜き、中段で構える。雪風流の「二刀」は防禦戦術だった。受けに徹しながら、ときに牽制をまじえ、カウンターの機をうかがう。

 鎌を受けた拍子に大刀で打ち返すが、鎖でからめとられた。剣を捨て、親指と人差指で眼球をえぐる。シャドウは「あっ」と悲鳴をあげ飛びずさり、手で顔を覆った。

「あなたって」シャドウが充血した目をひらく。「意外と胸があるのね。それだけ顔も体もキレイなら、女の武器を有効につかって幸せになれたろうに」

 『ペルソナ4』のTシャツがやぶれ、下着が露出していた。クレーンゲームで入手したお気にいりなのに。敵の視力は奪えなかったらしい。

「むかし母親に」ジュンがやりかえす。「胸を切除手術したいって相談したら叩かれたっけ。あんたは必要そうだから、くれてやるよ」

「失礼ね。デコルテがうつくしければ、おっぱいの大きさなんて関係ないわ」

 体型を競いあってる場合じゃないが、たしかに黒衣の姫君の胸元には見惚れる。いつもの銀のネックレスをしてないのにジュンは気づく。余裕がでてきた證拠だ。

 シャドウガールの戦法は、心理的に相手を翻弄する目くらましにすぎない。物理的な破壊を主眼とする格闘術と別物で、最終的に後者が強いとジュンは確信した。




 そこへ息せき切り、血刀もったジョージとアリアが馳せ参じる。

「うわっ」ジュンはおどろく。「アニキ、大丈夫なのかよ!?」

 頭に包帯をまくジョージの右半身は、スニーカーまで血まみれ。

「ころんでケガしただけだ」アリアがにやつく。「ロクに反撃せず逃げ回ってたからな。おかげでSSを引きつけてくれたが……って、まさかこの方は!?」

 隻眼の女剣士は、皇族が武装して死闘の場にいる、想像を絶する情況を理解した。反射的に刀をおさめ、膝をつき叩頭。

 ジョージは迷った。命にかえてもジュンは守る。だがもし神の眷属を殺せば、自分や妹をどんな未来がまつのか。

「ジョージ、納刀しろッ!」恋人が地面にむかい絶叫。「殿下に刃をむけてどうする!?」

 突風がやんだ。

「負けたわ」シャドウが天をあおぐ。「わたしが軍事作戦で失敗したのって、いつ以来かしら。記憶をたどれないくらい大昔よ」

 最後に負けたのが壬申の乱だから、千三百年以上前だった。

 シャドウとジョージは武器をおさめたが、一刀にもどしたジュンだけ八相で構える。この黒いドレスの女を斬れと、全細胞が告げている。かならず後悔するぞと。

 ジョージが妹とシャドウの間を、百八十六センチの長身でふさいだ。なにかを直感しているのはわかるが、妹に「神殺し」の罪まで着せられない。




 こうして「リリホワ騒動」はおわった。

 武装親衛隊の死者六名。ほかもほとんどが重傷。秘密作戦だったが、損害がおおきすぎ機密保持は不可能となった。国民は政府の無法ぶりの一端をしった。

 暁兄妹は、おそるべき剣客としてその名を轟かせる。多分に虚名をふくんでいたが。



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『エクソダス:神と王』 紀元前14世紀の資本

 

 

エクソダス:神と王

Exodus: Gods and Kings

 

出演:クリスチャン・ベイル ジョエル・エドガートン ジョン・タトゥーロ マリア・バルベルデ

監督:リドリー・スコット

脚本:スティーヴン・ザイリアンほか

制作:アメリカ・イギリス 2014年

[公式サイトはこちら

 

 

 

旧約聖書・出エジプト記を下敷きに、現代社会の不平等を撃つ映画。

僕が穿った見方をしてるわけじゃない。

エジプトの高官のセリフは、露骨なほど21世紀のエリートの論理そっくりに書かれる。

ぬけぬけと奴隷制を肯定、倫理的に批難されると「社会的リスクが云々」と話をそらす。

 

 

 

 

ピラミッドやスフィンクスは資本の象徴。

トマ・ピケティ『21世紀の資本』の映画化と言ってもいい。

僕はチャールストン・ヘストン主演の『十戒』を見たことないが、

あれよりマイケル・ムーアの諸作にちかいんじゃないか。

 

 

 

 

疫病がはやったり、イナゴが大量発生したり、エジプトは荒廃しだす。

ワニに襲われるシーンは怖かった。

 

なにかが間違ってるのはわかる。

どう対処すべきかも大体わかる。

でもだれもが首をすくめ傍観者のままでいる。

 

 

 

 

民衆にはリーダーが必要だ。

その名はモーゼ。

荒れ狂う海を船なしで渡ろうなどとムチャをゆう。

狂人としかおもえない。

 

 

 

 

ヘブライの神がモーゼに啓示をあたえた。

少年の姿としてえがき理不尽さを強調。

 

ヘブライ人は「選ばれた民」だが、そのことによるメリットはない。

神はただ要求し、ひたすら怒り、わらの犬のごとく人をふみにじる。

 

 

 

 

リーダー不在の混迷の21世紀。

クリスチャン・ベイルは時代の風潮にあらがう。

この男のためなら死ねると思わせる。

 

本作は監督の弟トニー・スコットに捧げられた。

幸福といいがたいエンディングをむかえた肉親と向き合う作品でもある。




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『ハナヤマタTVアニメ公式ガイドブック colorful flowers』 奥野香耶の水彩ボイス

原画:MADHOUSE 彩色:MADBOX 背景:山根左帆(草薙) 特効:イノイエシン

 

 

ハナヤマタTVアニメ公式ガイドブック colorful flowers

 

編:まんがタイムきらら

発行:芳文社 2014年

[過去の記事→3話/7話/9話/11話/12話

 

 

 

アニメ『ハナヤマタ』の配役で難航したのは勿論、「笹目ヤヤ」だ。

作中でツンデレツンデレとからかわれつづける、

自己言及的パラドックスをはらむ「漫画っぽいキャラ」だから。

 

スタジオオーディションできまらず再テストするがそれも不調、

なやむ音響監督・藤田亜紀子のかわりに監督いしづかあつこが、

ちょっと声にクセのある新人・奥野香耶をえらんだ。

 

 

奥野香耶(撮影:辺見真也)

 

 

奥野はアニメがすきで声優になったタイプ。

それは決して当然のことじゃない。

不動産屋がみな不動産がすきで職につくとはかぎらない。

 

彼女の場合、いろんなアニメの全セリフを録音して遊んでたほどだから相当だ。

なかでもツンデレ役にあこがれていた。

 

 

7話

 

 

念願の大役をえて収録がはじまるが、不安はますばかり。

ヤヤちゃんがあまりに可愛すぎ、追いつけず焦った。

 

 

 

 

ヤヤは感情の振れ幅がおおきく、自分と逆。

音響監督・藤田に「渋谷系のギャルのイメージで」と指示をだされる。

大学卒業まで岩手に住んでたので、シブヤなんて全然しらない。

 

ただタミ役の大坪由佳は、奥野がギャルっぽさをよく出せてると評価。

ちょっとシャクれる感じとか、語尾の処理がうまいらしい。

岩手での独学のおかげか。

 

 

9話

 

 

マチ役の沼倉愛美はこうかたる。

 

収録が始まって、一番印象が変わったキャラクターはヤヤなんですよ。

(奥野)香耶の声が入って、驚いたし、もっと好きになっちゃった。

なんなんでしょうね、香耶の声の中毒性ったら。

 

典型的なツンデレ演技にやわらかい響きをにじませ、淡い印象をのこす。

水彩画みたいな声は、本作のピンクがかった色彩設計とも共鳴。

 

 

原画:MADHOUSE 彩色:MADBOX 背景:山根左帆(草薙) 特効:イノイエシン

 

 

主要スタッフを女性でかためたせいか、ヒロインたちはある意味アニメっぽくない。

「なる」なんて、はっきりと足を太く短く描いている。

自戒しないとアニメーターの理想が投影され、ついついスタイル抜群になる。

 

 

OP

 

 

ゆえに、まるでアニメみたいなヤヤのシルエットが際だつ。

中学生らしい無防備さもあいまって、えも言われぬ情趣が足元からたちのぼる。

 

 

原画:MADHOUSE 彩色:MADBOX 背景:吾田愛美(草薙) 特効:イノイエシン

 

 

放映開始の2年前に脚本会議がはじまっていた。

単行本はまだ2巻しか出ておらず、原作者・浜弓場双の提示したプロットを、

いしづかと脚本家・吉田玲子をまじえた3人で形にしていった。

原作とアニメの関係は、「主従」とゆうより「双子の姉妹」にちかい。

 

たとえば吉田が猛烈に食いついてやりたい放題した、

『けいおん!』を髣髴させる10話の「合宿回」は、のちに原作でも描かれる。

 

 

12話

 

 

女の子同士の物語をつくるうえで、吉田が意識していること。

 

空気感みたいなものは意識しています。

その場のなごやかさ、張りつめ方、人と人の距離感、声には出さない思いやり。

そうしたものを含んだ会話になるといいなと。

 

第12話冒頭の、屋上でアイスキャンディをたべるくだり。

ほかに語るべきことはいくらでもあるし、なくてもいいシーンだ。

でも醸しだされる季節感、色彩、女の子らしさ、

つまり「空気感」が、最終話をより感動的なものとする。

 

 

11話

 

 

言葉にならない思いが、青春の光となり空気をふるわせる。

ときに人はそれを「ツンデレ」とよぶ。




ハナヤマタTVアニメ公式ガイドブック colorful flowers (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)ハナヤマタTVアニメ公式ガイドブック colorful flowers (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)
(2014/12/12)
原作:浜弓場 双、編:まんがタイムきらら 他

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テーマ : ハナヤマタ
ジャンル : アニメ・コミック

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楽時たらひ『にじいろシークレット』

『はじけて炭酸、夏模様。』

 

 

にじいろシークレット

 

作者:楽時たらひ

発行:一迅社 2015年

レーベル:百合姫コミックス

 

 

 

2011-13年に同人誌で発表した短篇をあつめたものだが、

少女の心の襞をえがく腕は、『百合姫』子飼いの作家とくらべても遜色ない。

さすがの鑑識眼をもつ編集部だ。

 

 

 

 

『はじけて炭酸、夏模様。』は、夏に「ステップアップ」をもくろむJKカップルの話。

制服のまま飛びこむ校内のプールは、乙女を人魚にかえる。

中学時代の塾での出会いも、さやわかで劇的。

ガール・ミーツ・ガールの神話に目がくらむ。

 

 

 

 

『シュガークラフトは融点を知らない』は、友情が恋に昇華する瞬間をカメラにおさめる。

「聡子が好きなのって、もしかして私?」

親友だからこそ、せつない片思いにこたえたい。

どこか慈善活動的で上から目線にみえる、いびつな恋。

 

 

 

 

最愛の人とむすばれても、「聡子」は幸福になれない。

「由佳」が自分のため恋人を演じてる様におもうから。

愛情と同情は、ちがうものだから。

 

そんなややこしい心理を、由佳は長めのマフラーでそっとつつむ。

たがいの体温が、ひややかな論理を解かしてゆく。

 

 

 

 

『白い吐息は火傷に似て』。

仔犬みたく「柊子」にじゃれつく「幸奈」。

いたづらな笑顔が愛くるしい。

(作者はショートカット娘を描くのがうまい)

 

 

 

 

柊子はすげなく誘いをことわる。

つきはなすのは、幸奈に彼氏ができたと偶然しったから。

彼女が幸せになるなら、孤独や嫉妬くらい我慢できるから。

 

「なんだ、それじゃ仕方ない!」

にこやかにおしゃべりをつづける。

話せば話すほど、少女たちの内面は傷つき出血する。

 

 

 

 

嘘をつくたび露わになる、ふたりの本意。

そのうるんだ瞳を覆い隠せる言葉なんてない。

 

 

 

 

やさしさが恋として結晶化する現象を、あざやかにとどめた五篇。

マフラーや靴など、百合漫画らしい小道具にときめく。

 

混在する絵柄をみると、単行本化する際かなり手直ししたとわかる。

胸にしみる短篇集だし、百合作家として商業誌での活躍もふえそう。




にじいろシークレット (IDコミックス 百合姫コミックス)にじいろシークレット (IDコミックス 百合姫コミックス)
(2015/02/18)
楽時たらひ

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テーマ : 百合漫画
ジャンル : アニメ・コミック

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野田サトル『ゴールデンカムイ』

 

 

ゴールデンカムイ

 

作者:野田サトル

掲載誌:『週刊ヤングジャンプ』(集英社)2014年-

単行本:ヤングジャンプコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

明治後期の北海道。

主人公の「杉元佐一」が広大な森をさまよう。

脱獄囚から漏れ聞いた、アイヌの埋蔵金をさがしている。

いまの貨幣価値に換算すると、およそ8億円。

 

 

 

 

杉元は日露戦争の帰還兵。

「不死身」と称されるほどの活躍だった。

 

 

 

 

だがヒグマが出没する蝦夷の大地は勝手がちがう。

年のほどは12、3歳のアイヌ少女「アシリパ」にすくわれる。

トリカブトやアカエイをまぜた毒矢で巨獣を斃した。

 

 

 

 

19世紀末に絶滅したとされるエゾオオカミもあらわれる。

名を「レタラ」といい、アシリパの守り神の様な存在。

 

 

 

 

女だてらに狩猟の技術を体得するアシリパが、

だいすきなリスの肉をたべようと「くくり罠」をしかける。

樹木の繊維で織られた服の文様もうつくしい。

 

 

 

 

203高地の激戦を経験した兵士でも、リスの脳味噌を生で食すのは気がひけるが、

信用をえるには地元の風習にあわせるしかない。

 

「宝探し」の物語に、「サバイバル」や「異文化接触」のテーマをからめつつ、

道産子の野田サトルは、雄大な風景や民族衣装をたくみにえがく。

アイヌ少女をみると帝国主義のスイッチがはいり、ついときめいてしまう。

 

 

 

 

箱館戦争で死んだはずの、新撰組副長・土方歳三まで登場。

くだんの脱獄囚の群れにまぎれこんでいた。

北海道はひろいから、だれがいてもおかしくない。

 

 

 

 

エンピツとかゆう最先端のテクノロジーに感動!

情報量のおおさと、表現のみづみづしさが両立した、稀有な作品だ。




ゴールデンカムイ 1 (ヤングジャンプコミックス)ゴールデンカムイ 1 (ヤングジャンプコミックス)
(2015/01/19)
野田サトル

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

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八十八良『不死の猟犬』2巻 黒いラブコメ

 

 

不死(しなず)の猟犬

 

作者:八十八良

掲載誌:『ハルタ』(エンターブレイン/KADOKAWA)2013年-

単行本:ビームコミックス

[1巻の記事はこちら

 

 

 

チアガールコスで戦うツインテ少女「切子(きりこ)」の見せ場たっぷりな2巻。

エモノはPDWの「H&K MP7」。

 

 

 

 

姉貴分のセーラー服メガネ「風間リン」が、

ドラムマガジンつきAK-47二丁ふりまわすのにくらべると、やけに現実的。

軽量小型で市街地戦むきか。

 

定年まぢかの刑事「重松」は「H&K HK416」を狙撃銃として運用。

銃にも流行り廃りがあり、アクション漫画はそれを無視できない。

しっかり描きこまれた武器が、闇のなかで鈍く黒光りする。

 

 

 

 

PDWの小口径高速弾は、やすやす防弾ベストを貫通。

切子の粗暴さとも一致する。

 

 

 

 

新米の逃がし屋「香田」のトレーニング。

窮屈な構えで、運転席から左手で抜き撃ち。

職質から5秒で脱出するための戦術だ。

 

 

 

 

空間的な駆け引きの描写に、作者は重点おく。

わざと検問を敷かず、味方が待ち伏せる橋へおいこむ警察。

 

こまかいことだが、地図の折り目まで表現されている。

 

 

 

 

それに対し、想定外のパニック戦術で敵を翻弄するリン。

無意味に空薬莢をばらまく漫画じゃない。

 

 

 

 

本作は「スパイもの」の要素もある。

闘って生きのびるか、愛に殉じて死ぬかの二者択一。

得意の恋愛描写で、ヒロインのクーデレな魅力をひきだす。

 

 

 

 

銃器へのこだわりやダークな作画で誤解されてそうだが、

『不死の猟犬』は本質的にラブコメ漫画だ。

恋愛とゆう苛酷な闘争が、銃撃戦を相対化し、より絵になる世界へ変異させる。

 

 

 

 

新キャラの「白雪姫」は、ネトゲのクランの紅一点。

去年の流行語「オタサーの姫」をとりいれたらしい。

ちなみに一人称は「僕」。

 

 

 

 

ときに通俗的だったり、「RDS」など話がわかりづらかったり、

生煮え感を否定できない作品だが、まあ『ハルタ』は大抵そうだし、

繊細かつ高度に安定した絵柄は、缺点を美点にかえる。

スープがしみこんでなくても、うまい肉はうまい。

 

姫の足もとの影にゾクッときた人ならわかるはず。




不死の猟犬 2巻 (ビームコミックス)不死の猟犬 2巻 (ビームコミックス)
(2015/02/14)
八十八良

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ジャンル : アニメ・コミック

小説8 「ゴッドガール」

『フリーダム・シスター』


登場人物とあらすじ


全篇を縦書きで読む







 蒼龍学園生徒会長・本城フランは地下鉄半蔵門駅でおり、警官につきそわれ訪問先へむかう。生物学者であるゴッドガールにより森林が保存された吹上御苑はすずしく、厚手の上着にすべきだった。水色のカーディガンごしに腕撫す。

 御所の玄関から家主がとびだし、「本城!」とさけび抱きついてきた。学園一小柄なフランの胸にやっととどく背丈のゴッドガールは仔犬みたい。ふたりは文藝部の名誉顧問と部員の関係。古今新古今といった勅撰和歌集にかかわるなど、こう見えゴッドガールは文学史上の重要人物だった。

 フランはドーナツの箱をもちあげる。「ちょっと陛下、おみやげが潰れます」

 ミスドを愛する現人神はますます尻尾をふりまわした。




 二階の遊び部屋にとおされたフランは、ゲームセンターなみの設備に圧倒された。ふるいピンボール台から最新の音ゲーまでそろう。大型テレビで青い髪の少女の目がパチパチまたたく。自分がくる前から遊んでたらしい。

「なんてゆうゲームですか?」フランがたづねる。「プレステのアドベンチャーかな。おもしろそうですね」

「これは『メタルスレイダーグローリー』、1991年のファミコンソフトじゃ」

「えっ、ファミコン!? こんなアニメみたいに動くのに?」

「ふふふ」薄笑いするゴッドガール。「なにをかくそう、わらわは任天堂ファンなのじゃ。こないだまで京都に住んでおったしな。よし、きょうはファミコン三昧としゃれこむぞ!」

 彼女のゆう「こないだ」は1868年をさす。フランはお茶を飲みおしゃべりしたかったが、おとなしく『スパイvsスパイ』のルールについて説明うけた。




 ゴッドガールが癇癪おこし、コントローラを対戦相手へなげつける。これで十連敗。

「腹黒いプレイじゃな! 君主に対し無礼であろう!」

「いまのは陛下が自分でしかけた罠です……」

 現人神は「もう飽きた」とつぶやき、フランの膝をかりて寝そべった。猫にも似ている。その格好でフレンチクルーラーにかぶりつく。萌黄色の小袖におちる食べかすをフランがひろった。

 テレビに安倍首相の記者会見の様子がうつる。日本全国にひろまる「反消費税」を名目とする暴動は中国政府の陰謀だと批難し、軍事行動をふくむ断固とした措置をとると宣言。

 安倍の主張は一片の真実をふくむ。CIAが提供した情報どおり、北京の息がかかる人間も騒動にまぎれこんでいる。だがすべてを他国の謀略に帰するのは強引すぎた。

 震源地のお台場にいたフランが探りをいれる。「首相は内政を外交にすりかえてる気がします。陛下はどうお考えですか?」

「わらわは政治について関知しないが」ゴッドガールは寝たまま返事。「バカ騒ぎは国民に浸透すまい。なんのための民主主義か。もし税制が不公平だとしても、選挙で変革できる」

「でも希望をもてないまま、くるしい生活をおくる人が大勢います」

「ドーナツがなければ、クッキーを食べればよい」

 上体をおこしたゴッドガールが手を打ち鳴らす。内舎人が空き箱をかたづけ、お茶菓子と書類をおいていった。フランは『魔法少女アマテラス』とゆう題のアニメの企画書をよむ。放映局はNHK、監修は宮内庁、監督は宮﨑駿、シリーズ構成・脚本が村雨れいん。どっかで聞いた名前……わたしのペンネームだ。

「へ、陛下、これって!?」

「おちつけ」紅茶をすする日本国の象徴。「のう本城、この世でもっとも価値ある財産はなんだとおもう?」

「え……家族とか友達とか」

「よい答えじゃ。人脈に課税できる政府はないからな。ぬしはオタク相手の商売を卒業すべき頃合いだと、わらわは思うておる」




 日が西の濠にしづむころ、フランは御所をあとにした。入れ違いでヤマハのVMXがとまり、漆黒のレーシングスーツをきた女がヘルメットをぬぐ。普段は赤坂で起居するシャドウガールだ。

 遊び部屋へあがると、姉がファミコンの『不如帰』で島津家をひきい、織田信長と戦っていた。妹は鼻を鳴らす。

「またガラクタがふえましたね。ロクに稼働もできないのが」

 セガ「R-360」の宇宙船みたいな筐体をコツコツたたく。縦横に360度回転する体感ゲームだ。

 姉の目はテレビに釘づけ。「それはマイケルの形見じゃ。絶対手放さないぞ」

 いまは亡き「キング・オブ・ポップ」マイケル・ジャクソンはゴッドガールと仲がよく、御所をお忍びでたづねたこともある。永遠の幼女に、ピーター・パン的理想を見たのかもしれない。たがいに恋愛感情にちかいものを抱いてたのではと、シャドウは疑っている。

「姉上様、ゲームはおやめになって。きょうはプレゼントをもってきたんです」

 シャドウは包装をとりのぞき、エッチングのほどこされたグラスを二つとりだす。

「ほう」手をとめるゴッドガール。「バカラではないか。高価なもののはず」

「経団連理事たちとのゴルフ大会の賞品です。わたしがもらうより、お酒のすきな姉上様に差し上げたくて」

 食堂へ移動した姉妹は、ワインとチーズでふたりだけの宴会をひらく。あどけない顔で鯨飲するゴッドガールが、シャドウはわが姉ながらいじらしい。

「姉上様もすこし運動なさったら?」

「わらわは蹴鞠しかできぬ」現人神が肩をすぼめる。「ゴルフか……あんな小さな球をよく打てるのう。優勝するとはさすがじゃ」

「いえ、大変なのは夜の部です。長野で泊りでしたから」

「トランプ? それともウノか? だったらわらわも得意じゃ!」

 シャドウはふきだす。「日本のトップリーダーたちとトランプって……。あのね、年配の殿方と実のある関係をむすぶのは簡単じゃないの。薬学や生理学に頼らなきゃいけないんだから」

 ゴッドガールは目を白黒させている。数千年きよらかに身をたもち、神事に専念してきた彼女は世間しらずのまま。

 酔いがまわりソファにうつってウトウトしだした姉の隣にすわり、シャドウはやさしく髪をなぜる。この人が無垢でいられるためなら、汚れ仕事だって苦にならない。

「ねえ、姉上様」シャドウが小声でゆう。「さっき本城フランが来てたでしょう。あの子は近づけないで。例の暁ジュンの友人なの」

「遠ざけてどうする」妹の腕のなかでゴッドガールが目をさます。「いつになったら暁は逮捕されるのじゃ。わらわの秘所を晒しものにした大逆人は。ヌイちゃんの料簡はとっくに読めておるぞ」

 「不知火」とゆう皇室名をもつシャドウの脊髄が凍結する。姉のちいさな頭に秘めたる聡明さがどれほどか忘れていた。

 食卓へもどったゴッドガールは、ボトルに口をつけ残りを飲み干す。赤ワインをたらしながら話をつづける。

「暁を利用してるつもりじゃろう。あえて泳がせ、平地に乱をおこそうと。目的はなんじゃ。ぬしがゴッドガールになる気か」

 シャドウは平伏する。「滅相もない! わたしはいつだって姉上様に忠誠を……」

「足利義満をおもいだせ」冷酷な姉の口調。

「やめて!」震える妹。「あの男の話は聞きたくない!」

「ヌイちゃんが三種の神器を盗んで吉野へ逃げたせいで朝廷はおとろえ、義満のごとき逆臣の跳梁跋扈をまねいた。あれから五百年にわたり、わらわたちは衣食にさえ事缺いた。またあんな恥辱をうけたいのか?」

 室町幕府三代将軍・足利義満は、南北朝合一をもって権力基盤を強固にし、日明貿易の利益を独占、僭越にも「日本国王」を名乗った。皇位簒奪の意図があったとさえ言われる。

「わらわは昼の国の王」日本国の象徴が伏したままの妹にゆう。「ぬしは夜の国の王。たがいの領分をまもっておれば道理にはづれることはなく、神州日本は不滅であろう。表の世界は安倍にまかせておけ」

 バルチック艦隊や太平洋艦隊を撃滅したシャドウガールは、姉とのケンカに勝ったことがない。号泣しながら縋りつく。六百年ぶりの涙だった。

「姉上様、愚かな妹を許してくださいまし! かならずやわたくしの手で、暁の首をもってまいります!」

 ゴッドガールはよしよしと妹をさすりつつ、長女はつらいよと独りごちた。



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ジャンル : 小説・文学

鈴木イゾ『魔法精錬』2巻/堀泉インコ『愛しの花凛』3巻 ファンタジーの季節

 

 

鈴木イゾ『魔法精錬~ガルナルージュと雛菊亭のエルッカ~』2巻。

自身にながれる魔法剣士の血が覚醒した「エルッカ」は、

その反動でか本巻では病にふせる場面がおおい。

 

 

 

 

療養がてら家業の食堂を手伝わされる。

いつものヘソ出しルックは禁止。

鈴木イゾえがく女の体の、のびやかな描線がすきなので残念だった。

 

 

 

 

かわりに5年前の話が単行本オマケでかたられる。

剣士めざし修行していた元気娘は、女子に資格がないとしり愕然。

 

それはともかく11歳のときの衣装がカワイイ。

作者もおヘソが描き足りなかったのだろう。

いまだ細身のエルッカだが、それなりに胸やお尻が発育してるとわかり満足。

 


魔法精錬 ガルナルージュと雛菊亭のエルッカ(2) (アクションコミックス(月刊アクション))魔法精錬 ガルナルージュと雛菊亭のエルッカ(2) (アクションコミックス(月刊アクション))
(2015/02/10)
鈴木イゾ

 

 

 

 

 

遊園地のマスコットキャラ「めるんちゃん」として働く、

高校2年生の不器用な恋をえがく、堀泉インコ『愛しの花凛』が完結1巻/2巻

 

デフォルトの衣装もすばらしいが、3巻は季節ごとのバリエーションで魅了。

ハロウィンコスは、クリノリンのなかが「かぼちゃパンツ」で藝がこまかい。

「似合ってるよ」と言わせようとチラチラ視線をおくるのが愛くるしくて。

 

 

 

 

サンタコスではしゃぐ姿は、まさに雪の妖精。

さすがにヘソ出しではないが、めるんちゃんらしくミニスカート。

凍えるほど寒くたって笑顔をたやさない。

 

 

 

 

3月、規定どおり「20代目めるん」を卒業する。

さびしいけど、公私ともに成長できた1年だった。

永遠につづくファンタジーはない。

 


愛しの花凛 (3) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)愛しの花凛 (3) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)
(2015/02/12)
堀泉インコ

 

 

 

 

 

おとなびてたり、あどけなかったり、いろいろだけど、

趣向をこらした衣装は、読者を現実からふっと離陸させるし、

そのあざやかな一コマはながく忘れられそうにない。



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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

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『宮﨑駿の妄想ノート 泥まみれの虎』

 

 

宮﨑駿の妄想ノート  泥まみれの虎

 

作者:宮﨑駿

発行:大日本絵画 2002年

 

 

 

1944年3月。

ぬかるんだ泥炭地の「エストニア・ナルヴァ戦線」において、

わづか2輌のティーガー重戦車でソ連軍をくいとめた、

21歳のオットー・カリウス少尉の活躍をえがく。

 

 

 

 

宮崎は本作の執筆に、ネームも下書きも用意しない。

鉛筆でいきなり主線をひき、そのまま着彩。

仕上がったらつぎのコマへ。

つまり小学生の描き方であり、技法の洗練された現代漫画とまるで別物。

描き手の想像力と画力が異常だから、どうにか成立している。

 

 

 

 

圧巻なのは、赤軍の攻勢をうけたときカリウスの目にうつるパノラマ。

トボトボあゆむ大隊規模の歩兵、踏切をこえたT-34が6輌、土手に対戦車砲5門。

土手のむこうに戦車の砲塔が5つみえる。

こちらに歩兵はおらず、中隊との連絡もとだえている。

街道をおさえられたら包囲されておわり。

 

すべての情報を総合し3秒で判断くだしたカリウス少尉以上に、

戦場の複雑な情勢をまざまざ表現する、作者の構成力に舌をまく。

 

 

『宮﨑駿の雑想ノート』

 

 

宮崎はカリウスの自叙伝にハマり、わざわざエストニアへ出かけた。

戦車内部からの視界の悪さを知ろうと、愛車のフロントガラスに霜がおりたとき、

あえて覗き穴の部分しか溶かさず運転したこともある。

 

 

 

 

戦車兵たちは「豚」としてえがく。

現地で女兵士の墓や、当時をしる老女の涙をみてしまっては、

おいそれと得意の美少女ヒロインにたよれない。

かといってリアルすぎては漫画にならない。

豚がちょうどいい。

 

 

 

 

エストニアへゆく前の1994年に発表した『ハンスの帰還』では、

戦車とナウシカ的ヒロインの融合をこころみている。

 

 

 

 

宮﨑駿えがく少女の魅力は抵抗しがたい。

その可憐さ、無邪気さ、凛々しさ、気高さ……。

カラーの静止画だといっそう鮮烈だ。

くらべたらわるいが『ガールズ&パンツァー』をたやすく撃破。

 

 

 

 

しかし「戦車道は女子の嗜みにふさわしくない」とゆう結論に達したらしい。

なにせ戦車は不潔。

悪臭ただようヒロインをだれが見たいのか。

戦闘機や軍艦とちがい、地べたを這いずりまわる薄汚いケダモノだ。

(2014年の映画『フューリー』はブラッド・ピットをキレイキレイに描いて嘘くさい)

 

 

 

 

ではなぜ宮崎は「ナルヴァの戦い」をえがいたか。

ひとつは色彩。

エストニア国旗にあしらわれる北欧の空にひかれたのだろう。

 

 

 

 

ロシア兵のたてる物音がきこえるなか、凍てつく車内で2時間ほど眠る。

月光をあび廃墟にうかぶティーガーの悄然たる姿。

戦争が悪だとしても、これが詩的な情景なのは否定できない。

 

 

 

 

夜明けをまたず両軍は衝突、たがいに膨大な死傷者をだす。

ヤブ蚊のウヨウヨする泥炭地をめぐって。

うつくしい空が血の色に染まる。

 

飛行機オタクの作者が戦車へちかづいたのは、1991年の湾岸戦争がきっかけ。

ふたたび狂気におちいった世界を邀撃しようとした。

ただ本人の資質や興行面のなりゆきで、アニメで戦車はとりあげられず、

2013年のヒコーキ映画『風立ちぬ』をもち引退した。

とはいえ時代に抗する陽動作戦として、本作は長篇アニメにならぶ価値をもつ。

 

だって世界は狂ったままだから。




泥まみれの虎―宮崎駿の妄想ノート泥まみれの虎―宮崎駿の妄想ノート
(2002/07/15)
宮崎駿

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杉本萌『たりんたらん』

 

 

たりんたらん

 

作者:杉本萌

掲載誌:『月刊少年シリウス』(講談社)2013年-

単行本:シリウスKC

[ためし読みはこちら

 

 

 

公認のカップルだけど、視線すら交わさないふたり。

距離は無限大、温度は絶対零度のラブコメ。

 

 

 

 

「留辺蘂(るべしべ)さん」の眼差しは、クールをとおりこしスナイパーなみ。

デレる姿が想像できない。

 

 

 

 

なにかの間違いで同級生の「仁野くん」とつきあうが、

相手のふさわしい呼び方がわからず出席番号で呼ぶ。

 

 

 

 

下の名前やニックネームは無理ゲーなので、名字呼びにおちつく。

「先祖への敬意」とかヘンな理屈で正当化。

 

 

 

 

ツーショットを撮ると家族写真みたいに。

お似合いと言えばお似合いだが。

 

 

 

 

手をつなぐなんてとんでもない。

外で一緒のときは縦隊で行軍。

 

三歩さがってついてくのは大和撫子の鑑だし、RPGのパーティ風でもある。

 

 

 

 

たがいに好意をいだいてるのはわかってるから、

人前でベタベタし、それをたしかめあう必要ない。

 

ある意味で留辺蘂さんと仁野くんは、以心伝心の理想的ペア。

 

 

 

 

でもやっぱりコミュニケーションは大事だけど。

「あの場所」で待ち合わせたら、みごとすれちがう。

 

 

 

 

彼らが交際する理由は、傍からみると理解できないが、

心はそれなりに通じあっている。

「空にうかぶ雲が能登半島に似てる」とおもったり。

こんな風にふたりの感覚がかさなりあう奇跡を、ひとは恋とよぶんじゃない?

 

 

 

 

リア充なのに「爆発しろ」とおもわない、ステルスカップル。

ふれかけた指先の1cmの隙間で、恋心が炸裂する。




たりんたらん(1) (シリウスKC)たりんたらん(1) (シリウスKC)
(2015/02/09)
杉本萌

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『XenobladeX(ゼノブレイド クロス)』 RPGのフロンティア

 

 

XenobladeX

 

総監督:高橋哲哉

脚本:竹田裕一郎 兵頭一歩

サウンド:澤野弘之

開発:モノリスソフト

発売予定日:任天堂 2015年4月29日

対応機種:Wii U

 

 

 

先週公開された動画「XenobladeX 世界観・探索編」の密度の濃さにおどろいた。

ゲームパッドに表示される六角形のマスをみて、

『カタンの開拓者』みたいなドイツのボードゲームを連想。

 

 

 

 

じっさい開拓者の物語だ。

異星文明との戦争にまきこまれる地球から脱出した移民船が、

惑星「ミラ」へ不時着、そこに新都市「ニューロサンゼルス(NLA)」を建設する。

墜落時にちらばった生命維持装置をみつけ、

ひとびとを救出するのが主人公の最重要任務。

 

 

 

 

探索しながら各所へ「データプローブ」をうちこみ、「フロンティアネット」をはりめぐらす。

プローブを設置するとゲームパッドが反応、周辺の情報が表示される。

討伐や宝探しなど、そのマスですべきことがわかる。

 

 

 

 

資源採掘や戦闘を有利にするなど、プローブに多様な機能をもたせるのも可能。

MMORPGをまるごと呑みこんだ様な前作『ゼノブレイド』をベースに、

経営シミュレーション的な要素をくみこんだらしい。

見ためがボードゲーム風なのが、パッドと相性よさそう。

 

 

 

 

フロンティアネットはNLA市民と共有され、街へもどると会話の内容が変化。

それをもとに探索の輪をひろげてゆく。

 

どれだけ成功しているかはプレイしないとわからないが、

RPGの新局面を感じさせるシステムなのはたしか。

 

 

 

 

街のつくりこみは前作同様とはいえ、舞台が近未来なので、

GTAなど洋ゲーの「オープンワールド系」をおもわせる。

 

 

 

 

ゼノブレイドの象徴である「キズナ」。

要するにクエストをこなし好感度をあげる作業だけど、

右側の表示をみると、より具体的でわかりやすくなった様だ。

 

 

 

 

満天の星空に星座をむすぶみたいに、「キズナグラム」が描かれる。

ネットワークが本作の主題。

 

 

メカニックの「リン」、13歳

 

 

街とその周辺をうろつくだけで数十時間あそべそうだが、

ゼノブレイドシリーズの特色は「広大なフィールド」にある。

 

 

 

 

惑星ミラは、ワイルドな「忘却の渓谷」や……

 

 

 

 

……幻想的な「白樹の大陸」など、巨大な五大陸が存在。

 

 

 

 

だだっ広いだけでなく高低差にとみ、プレイヤーはそのすべてを踏破できる。

HD化により絶景ポイントをさがすたのしみが増したはず。

 

 

 

 

まあ前作のフィールドも広すぎるくらい広かったし、

2015年のゲームなら、猫でもあそべるサポート機能が必要。

 

 

 

 

実装されたのが、目的地までプレイヤーを先導する「ナビゲーションボール」や……

 

 

 

 

……上空へうちあげ、高所から周囲を俯瞰する「ホッパーカメラ」など。

これでも迷うなら、あなたはまともに実生活を送れないかもしれない。

 

 

 

 

パッド上のヘックスをさわれば「スキップトラベル」もできる。

マップ画面をひらく手間すらいらないし、楽ちんだ。

 

 

 

 

惑星ミラには、おそるべき原生生物が棲息。

巨大クリーチャーも風景の一部だが、見とれてられない。

 

 

 

 

遭遇したらレベルをたしかめ、「自分より高ければ無視」がゼノブレイドの鉄則。

「14」も差があれば一撃死をくらう。

 

 

 

 

もう書き疲れたけど、戦闘ロボット「ドール」に触れないわけにゆかない。

 

 

 

 

車両形態に変形し、大陸を駆け抜けたり……

 

 

 

 

……空もとべる。

オトコノコの夢ですね。

 

 

 

 

パッドに表示されるキーボードのアイコンも気になる。

オンラインでチャットできたりするのかな。

 

以上の情報をみて『XenobladeX』をおもしろそうに思えない人が、

おなじ惑星にいるなんて想像すらできない。




XenobladeX (ゼノブレイドクロス)XenobladeX (ゼノブレイドクロス)
(2015/04/29)
Nintendo Wii U

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我孫子祐『東のくるめと隣のめぐる』

 

 

東のくるめと隣のめぐる

 

作者:我孫子祐

掲載サイト:『ComicWalker』(KADOKAWA)2014年-

単行本:角川コミックス・エース

[同作者の記事→『スライムさんと勇者研究部』1巻/2巻/3巻/4巻/『アンズー』

 

 

 

校内一のクールビューティ、「塚原めぐる」をめぐる物語。

乙女の命である前髪を、ヘアピンで鉄壁ガード。

おさなさと警戒心の両面があらわれる。

 

 

 

 

主人公の「永耕助(えい こうすけ)」は、新宿から東久留米へ越してきた。

北に黒目川、中央に落合川がながれる。

後者は都内で唯一「平成の名水百選」にえらばれた清流で、さまざまな鳥や魚が棲息。

 

 

 

 

あらたな出会いを期待する耕助だが、お隣さんはアフロで残念。

ただ様子がおかしい。

 

 

 

 

なんとモジャモジャ頭は、塚原さんの飼い猫「アフロ」だった。

あこがれの美少女の隣人になれたことより、

高校でのよそよそしさと真逆の無邪気さにビックリ。

 

 

白鷺もめづらしくないとか

 

 

そんな感じの、せせらぎが聞こえるご近所ラブコメだ。

ゴツい一眼レフをさげるのは、塚原さんの妹「くるり」。

お下げ髪は地味だが、かるい外ハネに元気な性格をみてとれる。

シンプルだけど、我孫子祐の女の趣味はいつもすばらしい。

 

 

 

 

憂鬱なスクールカーストから距離をおき、家族ぐるみの交流がはじまる。

きらめく川面、土のにおい、風にそよぐ髪。

うつくしいカットがいくつもある。

 

 

 

 

ヒロインの塚原さんは、前作の「スライムさん」とちがい特殊能力をつかえない。

でもどこか変。

引越し祝いのパーティで、耕助に頭をサラダまみれにされても、

服にかかってないからセーフとよろこぶ。

 

 

 

 

シャワーをあびる塚原さんがタオルをもってこいと言うので、

ドキドキしながらドアをあけると、服を着たまま髪をあらってた。

水も滴るとぼけたヒロインのたたずまいに、スライムさんの残像がかさなる。

 

 

 

 

プールでひと泳ぎしたあと、高台から町をみおろし、

東久留米とそこにすむ人々への愛をかたる塚原さん。

くるりちゃんは三つ編みを解いている。

乾ききってない髪のにおいがする。

 

本作は単なる「ご当地もの」じゃない。

つややかで呪術的な女の黒髪が、あたりの精霊をよびこみ、

ありふれた日常の特異点で、山河と町並をつなぐ。

塚原さんは巫女の様だ。

 

 

 

 

冬は森ガール風のコーディネイトで。

あたたかそうなヘッドバンドもかわいい。

前髪が季節ごとにことなるアクセントになるなど、

作者は女子のファッションの魔力をたくみにひきだす。




東のくるめと隣のめぐる (1) (カドカワコミックス・エース)東のくるめと隣のめぐる (1) (カドカワコミックス・エース)
(2015/02/07)
我孫子祐

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小説7 「お台場AKB事件」

『フリーダム・シスター』


登場人物とあらすじ


全篇を縦書きで読む








 午前十一時五分すぎ、秋葉原中央通り。CIA工作員ジョン・ピーチは、メイド喫茶「あめーじんぐあめじすと」で焦れていた。協力者との接触は時間厳守が鉄則で、いますぐ離脱すべきだった。たとえ相手が大物でも。

 メイドが給仕にきた。「お待たせしましたご主人さま、らぶりーオムライスです! いまから愛情たっぷりの魔法をかけさせていただきますね」

 滝の様にそそがれるケチャップ。判別しがたいがドクロの絵か。鉄面皮のメイドは両手でハートマークをつくり呪文をとなえる。

「らぶらぶきゅんきゅん、おいしくなあれ……ふう、こんなとこかな」

 黒服の女は向かいの席にドスンと腰をおろす。待ち人のシャドウガールだ。

「商売替えですか」度肝をぬかれたのを顔にださずピーチがきく。

「あなたの店選びがわるい」シャドウの灰色の瞳が責める。「監視カメラをさけて裏から入るしかなかった。いまどきの『萌え』の勉強になったけど。おしえてあげようか。あなた元陸軍よね。グリーンベレー? デルタ?」

「ISA、情報支援活動隊です」

「じゃあ」元海軍元帥がゆう。「いろんな戦場を知ってるわね。兵士が死ぬとき何を口走るかも」

「ええ、みな母親をよびます。それぞれの国の言葉で」

「古今東西、男は母の幻影をもとめて生き、そして死ぬのよ」

 シャドウガールは縁飾りつきのエプロンをぬいだ。大胆にあいた胸元から、くすんだ色の肌がみえる。決して豊満ではないが、かすかな香りにそそられる。二千七百年も男の愛撫をうけつづけると魔性の肌になるのか。

「そんな目でみても」シャドウがゆう。「あなたとは寝ないわよ。小物すぎるし、趣味じゃないし。あとそうそう、『新作』を確認したわ」

 肥満体のピーチは侮辱にかまわず、ディスクいりの透明ケースをうけとる。蔑まれるのが嫌でスパイはつとまらない。

「エリって子のチャプターは削除なさい」シャドウがつづける。「信用できるお得意さまでも、まだ流していい情報じゃないでしょう」

 ピーチの非合法ポルノの日本における顧客は、シャドウが紹介した政官財の要人たち。先日「処置」した中学生は、却下されるとわかって入れた。殿下が映像をみたがり、保存したがるだろうから。偽善者とは阿吽の呼吸で接する。秘密をにぎっていれば、いづれ屈服させることもできる。




 スパイと皇族はほかの客のざわめきに反応し、窓の外の大型ビジョンをながめた。

 暁ジュンがユーチューブに投稿した動画をながすニュースだ。リリホワのセーラー服を着て、エリの死に関する報道は捏造と主張、ウェブカメラにむかい中指つきたてる。

 彼女は雲隠れをやめ、自分が「じゅんじゅん」と名のるネトウヨだったと公表。みづから顔をさらし異議を申したてた。マスコミが恐るべき殺人者だと合唱しても、大衆の好奇心は臨界点に達しており、クリックを我慢できない。

「天下のCIAが」シャドウが肩をすくめる。「十五歳の娘ひとりに手こずるとはね」

 老練なスパイも劣勢をみとめた。暁ジュンの情報操作能力は底がしれない。ネット上で彼女を弾劾していたグループが、いきなり礼讃者に豹変したのも不可解。買収にちがいないが、電子的手段でどれだけ精密に追跡してもジュンは素寒貧だった。

 ワシントンでは、中国政府の関与を疑うものもあらわれた。早急に鎮静化しないとピーチの地位にかかわる。

「殿下」工作員が提案する。「暁を『処置』する許可をいただけませんか」

「言葉に気をつけなさい。わたしは許可も禁止もしない。あなたは友人として、自発的に行動しているだけ。そもそも日本人は和を尊ぶ民族なの。あなたがたと違って」

 冗談きついぜ、とピーチは内心で毒づく。

 シャドウは世界中の軍や諜報機関で崇拝され、畏怖されている。日本海海戦や真珠湾攻撃で非公式ながら聯合艦隊旗艦に同乗、実質的に指揮したのは公然の秘密。姉ゴッドガールの不興をかい解任されなければ、ミッドウェーで日本は負けなかったと言われる。

 この神の眷属、黒衣の姫君をおとなしくさせることが、いまなおアメリカの国防における最優先事項のひとつ。

「わたしはなにもできないけど」シャドウは微笑らしきものをうかべる。「安倍首相はじめ現閣僚は有能だから安心なさい。政情不安を慰撫するキャンペーンがきょうからはじまるって噂がながれてるわ。あなたも歩調をあわすといい。ほら、冷めないうちにオムライスたべたら」

 ピーチの目は大写しのジュンに釘づけ。フクロウを髣髴させる巨大な瞳。勝気そうな女だ。裸にして吊るし、絞め、刺し、炙れば、こちらの昂奮はいかほどか。

 スプーンをくわえると、ケチャップにまぜられた大量のタバスコにむせかえった。

 すでにシャドウガールは跡形もない。店内に皇族がいたと、だれにも気づかれないまま。




 暁ジュンは違法アップロードされた『徹子の部屋』をみた。元AKB48の前田敦子が、自身の主演映画の宣伝をするなか唐突に、女子中学生の不品行がめだつ風潮に苦言を呈する。曰く、十五歳は奔放な生活がゆるされる年齢じゃない。AKBをみならえ。可愛いのだからオーディションを受けたらいい。歓迎すると。

 ジュンの頭脳に閃光がはしる。怒りより先に。アゴに特徴あるこの女は、背後にいる人間の手駒にすぎない。だれが駒で、だれが指し手か見極めろ。

 しかけたのは「国民啓蒙・宣伝大臣」をつとめる秋元康。暁ジュンが取り沙汰される理由は三つあげられる。神出鬼没の言動、若さとルックス、重税に対する大衆の不満。「雨粒理論」によれば、これらの核を除けば雨はやむ。特に二番めは秋元のお家藝で、ジュンにまさる美少女を大量動員できる。赤子の手をひねる様な勝負だった。

 ジュンは相手のプレイヤー名がわからない。秋元もただの駒のはず。安倍晋三首相の関与の程度や、シャドウガールの内閣への影響力など、くわしく知る術がない。別にいい。敵の顔がみえなくともゲームはゲームだ。即座にMacBook Proのカメラを起動、ユーチューブの「じゅんじゅんチャンネル」で吠えた。




 ゆりかもめの駅のトイレで、ジュンは鏡像と睨みあう。笑顔をつくろうにも、錘をさげた様に口元がうごかない。台場公園の群衆をみたからだ。三千人はいたろうか。

 傷だらけの手首の「内関」のツボをおす。気休めにもならない。最近はリストカット癖がおさまっていた。死ぬか生きるかの毎日で、自殺ごっこどころじゃない。

「じゅんじゅん、そろそろ出番だ」

 眼鏡をかけた二十代の男がドアをひらく。名を「大井」と言い、前からオフ会を仕切ってもらっている。職業はしらないがサラリーマン風だ。

「女子トイレのぞくなよ……いまいく」

 改札口で生徒会長の本城フランをみつけた。ちいさな体を、紫のストライプのワンピースにつつんでいる。コタカを呼びたかったが、これ以上巻きこむのは気がとがめ遠慮したので、味方がいてうれしい。

「大変な事態ですけど」フランが歯を鳴らす。「陰ながら応援しますから……」

 立ちくらみしたフランが膝をつき、ジュンに抱きすくめられた。スピーチ慣れしてる会長でさえ足腰たたない。

「来てくれるなんて思わなかった」ジュンがささやく。「フランちゃんは、あたしを本当に心配してくれるんだね」

 尻もちついたままフランが笑う。「親友なんだから当然です!」

 介抱を大井にまかせ、ジュンは下りのエスカレーターを駆けた。矢でも鉄砲でも持ってきやがれ。ここでビビったら女がすたる。




 第三台場史蹟公園にLEDビジョンつきのステージが設営されていた。やりすぎだ。大井のやつ、イベント会社にでも勤めてるのか。

 壇上で前座の男とハグし、マイクをうけとった。潮風がジュンのなめらかな頬をなぜる。ハウリング音が東京湾にひろがる。砲台跡は、黒船を迎撃しようと太平洋をむく。

 三千の視線に射られるが、気分はわるくない。衣装をみた聴衆から笑い声があがった。ドン・キホーテで買ったAKBコスだ。

 友達に話しかける様にはじめる。「みんな徹子の部屋みた?」

 LEDビジョンに件の映像がながれている。肯定的な反応がかえった。

「あたしさ」いつもの低めの声でつづける。「アイドルって嫌い。恋愛禁止ルールとかインチキでしょ。あいつらヤりまくってるくせに。あたしマスゴミにビッチって言われるけど、嘘つく女の方がよほどビッチじゃない!?」

 画面が前田敦子の映画にかわる。ハリウッドで実写映画化された『けいおん!』だ。前田は「クールジャパン担当大臣」として無任所大臣に任命されており、本作の制作費の大半が政府予算から提供された。

 ベッドシーンがうつる。前田扮する「平沢唯」はアメリカの高校へ留学し、そこで「放課後ティータイム」とゆうバンドを結成。ところが脚本家は原作を大幅に改変、メンバーのうち三名が男に。男は白人と黒人と中国人。もうひとりの女はヒスパニック。五人がくっついたり離れたりの、ドロドロの関係を描く。

「一体どこが『クール』なんだよ? あとやっぱ許せないのはこれ」

 AKB48百五十作目のシングル曲『タックスガール』のPVがながれる。徴税吏員を名のる女が、税の意義や仕組みを四分間にわたり指南。ビートルズ『タックスマン』を換骨奪胎するユーモアで、三十パーセントの消費税率への反発をやわらげようとした。

「みんなそろそろ気づこうぜ」LEDビジョンを指さしジュンはゆう。「二次元でも三次元でも、可愛い女の背後には権力もったオッサンがいる。こいつらは操り人形で、言われたとおり嘘をつく。あたしはちがう。だれの言いなりにもならない。それだけは信じて」

 ジュンは喫煙する男からライターを借り、衣装をぬいで着火した。赤のキャミソールと黒の見せパンだけの姿で、燃えさかるAKBコスを人の波へ投げこむ。奪い合いとなり、火傷を負うものも。

「あたしは好きな人のことを好きなだけ。自分の気持ちに正直なだけ。好きな人を裏切ったことは一度もない」

 多分、とマイクに拾われない小声でつけくわえた。おもいきり息をすう。砲台とおなじ方向へ、「ファックユー」のジェスチャー。

「人を好きになるのが間違いと社会がゆうなら、社会の方が間違ってる! なにがAKBをみならえだ。オマエらがあたしをみならえ!」




 猛り狂う三千人がフジテレビ本社屋を襲う。ちょうどイベントの「お台場共栄圏」がひらかれていた。

 まづAKB48のブースが破壊され、グッズが海へ投棄される。タックスガールは海底へ徴税にむかった。歳入の足しになったかどうかはわからない。

 子供が踏みしだかれ、女が吹き飛ぶ。五名が救急車で搬送され、三十一名が逮捕された。



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トマ・ピケティ『21世紀の資本』 あらたな神話をもとめて

 

 

21世紀の資本

Le Capital au XXIe siècle

 

著者:トマ・ピケティ

訳者:山形浩生 守岡桜 森本正史

発行:みすず書房 2014年

原書発行:フランス 2013年

 

 

 

諸神話についての本だ。

それらは「国家」とゆう前時代的な背景をせおっている。

 

ピケティはもっと国内問題へ目をむけろと唆す。

「中国脅威論」なんて嘘っぱちだ、原因を外にもとめるバイアスがかかってると。

マルクスでさえ、国民経済計算についてのデータをみすごしてきたと。

 

著者は、大西洋を股にかける華麗なキャリアをもちながら、

フェーヴル・ブローデル・レヴィ=ストロースなど、フランス的知性の優位を説く。

社会科学者として「ナショナリスト」にみられてもかまわないとまで。

 

 

ジェーン・オースティン

 

 

本書はバルザックやオースティンの小説への言及が多い、いや多すぎる。

ボクはむかしオースティンがすきだったけど、アクビがでた。

 

マルクス『資本論』は、文学作品をプログラムの中核にすえる。

14世紀のダンテ『神曲』の「地獄めぐり」を象徴的に資本主義の分析にもちい、

18世紀のスターン『トリストラム・シャンディ』から脱力した文体をまなび、

同時代のディケンズと歩調あわせ「社会の敵」を糾弾した。

 

ピケティによると、ふたつの世界大戦をへて、文学から金銭がきえた。

安定した通貨参照点をインフレに覆い隠され、小説家はカネの話ができなくなる。

彼が19世紀小説に執着するのは、お金がリアルだったころへの学者としてのノスタルジアだ。

カール、あんたの生きた時代がうらやましいと。

 

 

 

 

著者は折れ線グラフとゆう現代アートで、国家とお金の関係を再定義。

フランス人が「栄光の30年」、経済成長が高かった1940年代末から70年代末に、

いかに郷愁をいだいているかなどがわかる。

 

 

1968年、南フランスのストライキ参加者(撮影:GeorgeLouis)

 

 

ボクは、1968年の五月革命は文化的社会的な運動とおもっていたが、

最大の成果は賃金上昇だったとか。

フランス経済についてまるで無知なので勉強になる。

 

 

 

 

かたや同時期の英米は「追いつかれた」とゆう脅威を感じていた。

サッチャーやレーガンの「保守派革命」が、福祉国家を白紙にもどした理由。

政策の変化は成長率にほとんど影響なかったが。

 

 

ボストン茶会事件

 

 

だからアメリカ人のノスタルジアは「ボストン茶会事件」へむかう。

現在より19世紀はじめの方が格差がちいさかったから。

かつてはヨーロッパより平等な国だった。

 

アングロサクソン諸国は累進課税のオーソリティでもある。

イギリスなんて40年代と70年代に最高税率が98%に達した。

ビートルズが『タックスマン』で不平こぼしたアレ。

 

 

 

 

1980年以降顕著な「スーパー経営者」の台頭も、アングロサクソン的現象。

世界的に格差がひろがってるとはいえ、ほかは英語圏ほど増大してない。

 

 

ビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズ(撮影:Joi Ito)

 

 

80年代的な英雄たちは自分らの超高級について、

「才能」を根拠に正当化するが、それは単なる企業利益の変動、

つまり「ツキ」に対して支払われたと、著者はデータにもとづき立證。

 

もし才能がすべてなら、スティーヴ・ジョブズの財産がビル・ゲイツの1/6なのはおかしいし、

ゲイツの成功をもたらした数千人のエンジニアや科学者が特許取得しなかったのに、

OS独占から引き出しただけの利益が賞讃されるのも筋がとおらない。

 

勿論、社会にイノヴェイションは必要だ。

だからこそ、起業家が不労所得生活者になりがちで、

その富が子孫へ相続される事実に目をむけねばならない。

いくらなんでも21世紀に貴族階級は不要だろう。

 

 

 

 

政治体制は、富の分配に関係ない。

おそらく政治学者を震撼させたであろう、本書の有名なテーゼだ。

君主制だろうと共和制だろうと、資本は不平等にふるまう。

 

 

バスティーユ襲撃

 

 

平等主義をうたうフランス革命で格差がちぢまらなかったのは、

ひくすぎる税率のため、成長率が資本収益率に追いつかなかったから。

 

歴史を一刀両断する分析の切れ味は、「タックスマン」ピケティの面目躍如。

 

 

 

 

1人あたりの所得が年1%強しか成長しない今日、

某国の消費税みたく平均税率をあげるのは、まったく不合理。

選択肢は累進課税しかないが、経済学者ですら社会国家の存続より、

エリートの利益を優先する傾向をもつ。

 

 

つくみず『少女終末旅行』(バンチコミックス)

 

 

嘆いてもしかたない。

民主主義が資本主義のコントロールをとりもどすための制度を、

それが破滅するまえに何度も再発明せよ。

まづは、この国でなにがおきているか理解すること。




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(2014/12/09)
トマ・ピケティ

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『矢作・佐倉のちょっとお時間よろしいですか』第123回 結婚とは

 

 

矢作・佐倉のちょっとお時間よろしいですか 第123回

 

パーソナリティ:矢作紗友里 佐倉綾音

構成作家:小林洋平 さいとうしゃん

ディレクター:森葵

配信サイト:超!A&G+

配信日:2015年2月4日

 

 

 

28歳の声優・矢作紗友里が、一般男性との入籍を発表したあとのラジオ最新回。

おなじ事務所の佐倉綾音(21歳)から「可愛い後輩のためにぜひ」とせがまれ、

ブーケトスをおこなうも元ソフトボール部らしく豪速球でねじふせた。

 

その後も「もう『矢作』は藝名」「おまえは独り身」と幸福格差をみせつけ、

いつもどおり毒を吐きながら結婚記念回はすすむ。

 

 

 

 

あやねるがパイセンから結婚すると聞かされたのは、秩父ロケの車中。

21歳ながらキャリアのある声優なのに、驚愕のあまり呼吸がとまり、

「おめでとうございます」が喉から出なかった。

 

内心はともかくパーソナリティとして、あやねるは祝福の念をさほど表にださない。

どちらかとゆうと嫉妬?

番組を辞めたそうなパイセンを必死にとめる表情は、どうみても本気だった。

 

 

 

 

むしろ通常のコーナーで、ふたりの人生観の相違があきらかに。

たとえば結婚記念日に車をおくったリスナーの父の話題。

 

パイセンはちょっとオタクだけど常識人なので、食事で十分とかなんとか。

それに対しあやねるは「北京ダックとか!? お祝い事といえば!」

 

 

 

 

あやねるは単なる天然キャラでなく、逆にツッコミも得意とする。

ただ恋愛や結婚のことになると突然、変なスイッチがはいってしまう。

 

挙句の果てに、両親が「プラトニックな純愛」でむすばれてると主張。

「じゃあ、あなた純愛の結晶なのねぇ」と的確に指摘されるが、

「パイセンも見習って、私みたいな子供を育てればいい」と切り返す。

 

 

 

 

「最悪、それだけは嫌」と却下されたけれど。

自分は根っから無垢で純粋と信じるあやねると、その個性をひきだすパイセン。

解散するには惜しいコンビだ。



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宇城はやひろ『みことの一手!』

 

 

みことの一手!

 

作者:宇城はやひろ

発行:芳文社 2015年

レーベル:まんがタイムKRコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

女子高生がセーラー服で囲碁に興ずる、1巻完結の4コマ漫画。

負けて泣いてるメガネが、タイトルロールの「楠みこと」。

 

 

 

 

「鷺宮蛍(さぎのみや けい)」は、みことのライバルで幼稚園以来の親友。

八段格の実力をもつ、無敵の高校チャンピオンだ。

言動は天衣無縫。

 

 

 

 

新入部員の「白河文香」。

その正体は、囲碁部を和室から追放するため送りこまれた、茶道部のスパイ。

襖ごしに「殺す」「殺される」と声がきこえる。

「囲んで相手の石をとる」とゆう意味だが、しらないと怖い。

 

 

 

 

初心者の文香は大会では応援役をつとめ、棋譜を採ったりする。

いつのまに「○☓ゲーム」になったけど。

 

 

 

 

三大難解定石のひとつに数えられる「村正の妖刀」

つかい方をあやまれば、己も傷をおうことから名づけられた。

中二病的ネーミングがいい。

 

 

 

 

なぜJKに囲碁をさせるのか。

神崎かるな/黒神遊夜『しなこいっ』『竹刀短し恋せよ乙女』にも通ずる、

「日常と地続きのゴシック的世界観」を表現する意図があるのでは。

 

 

 

 

もうひとりの部員「早河葵」は、「攻め」も「受け」もいけるオールラウンダー。

どっちかって言うと、カップリング的な意味で。

 

カップリングは「親和力」と換言できる。

キャラとキャラの引き合う力を軸に物語を構成する、10年代のパラダイムだ。

敵味方や勝敗をこえた乙女らの愛は、メタフィジカルな百合の神髄。

 

 

 

 

白黒の石がおりなす盤上の小宇宙にうかぶ、モノクロームのゴシック世界。

五目ならべと区別つかなくたって、よむしかない。




みことの一手! (まんがタイムKRコミックス)みことの一手! (まんがタイムKRコミックス)
(2015/01/27)
宇城はやひろ

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『ファイアーエムブレム 覚醒 4コマKINGS』

はやせれく『今日の食事当番』

 

 

ファイアーエムブレム 覚醒 4コマKINGS

 

監修:任天堂 インテリジェントシステムズ

発行:一迅社 2015年

レーベル:DNAメディアコミックス

 

 

 

昨年12月の『コミックアンソロジー』につづき、FE覚醒の4コマ漫画集が登場。

その間に新作の『if』が発表されており、一迅社はFEをプッシュする体勢らしい。

 

アンソロもよかったが、4コマはわが嫁リズさんの出番がおおく嬉しい。

 

 

桂イチホ『クロム自警団異常なし!』

 

 

姫様なのに気取らないリズさんは、喜怒哀楽が表にでる。

暑ければ暑がり、寒ければ寒がる。

クルクルかわる表情が4コマ映えする。

 

 

姫希『かしましい人たち』

 

 

姉エメリナにあこがれ、クラスチェンジで「賢者」になりたがるが、

女心に鈍感な兄クロムの指示で「バトルシスター」をまかされた。

その後かるがる斧をふりまわし活躍するが。

 

 

智『天災軍師ダイアリー』

 

 

親友マリアベルとの百合もあり。

リズにちかづくものは女でもゆるさない。

 

 

川嶋留美『ノスタルジア』

 

 

鎧を愛するデジェレの習性は、ネコに似ている。

絵にすると本当にそっくり。

 

 

板垣ハコ『ドラゴンズ!』

 

 

出撃準備時にみれる設定「軍の中で一番○○」は、朝にはっきりあらわれる。

マリアベルの寝相がありえない。

 

 

青葉隼人『遊ぼ!』

 

 

移動力たかめるスキルを三重がけし、アーマーナイトで沙漠を疾走。

やりこみ系のネタもあり。

 

 

板垣ハコ『ドラゴンズ!』

 

 

FEの象徴「死亡シーン」も容赦なく笑いのめす。

シリアスとコメディの調合が絶妙な原作のおかげか。

 

 

真田寿庵『いい旅ドニ気分』

 

 

戦闘中の会話は「母子関係」ばかり充実。

母としてもだれより魅力的なのがリズさん。

一方、男親たちは孤独をかみしめる。

人生についてもおしえてくれるのが、『ファイアーエムブレム覚醒』。

 

 

鈴華『それぞれの覚醒』

 

 

みんなだいすきルキナさんは、本書ではあまり目立たない。

マジメでしっかり者だし、いろいろ背負ってるのでギャグ向きじゃないかも。

ただ座ってぼんやり景色をながめるだけで、平和の尊さをうったえる。

やはり絵になるヒロインだ。




ファイアーエムブレム覚醒4コマKINGS (IDコミックス DNAメディアコミックス)ファイアーエムブレム覚醒4コマKINGS (IDコミックス DNAメディアコミックス)
(2015/01/24)
アンソロジー

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小説6 「情報戦」

『フリーダム・シスター』


登場人物とあらすじ


全篇を縦書きで読む







 暁ジュンの同級生であるエリは、円山町のラブホテルのベッドで大の字になった。

 先週しりあった恋人は、ハーフの慶大生でモデル活動もしており、掲載されたファッション誌もみせてもらった。映画を鑑賞、パスタをたべ、服を買い、たっぷり時間をかけエッチした。それでいて交通費以外一円もつかってない。完璧な日曜日だった。

 忌々しい暁ジュンと明暗わかれたのが痛快でしかたない。あのビッチは日本中、いや世界中で、かずかずの罪を実名で糾弾されている。自分も複数の記者にガセネタまじりで情報を提供、百万円ちかく稼いだ。アカネが死んだのは残念だが、最近友人になったばかりだし、収支計算は圧倒的に黒字。

 ふと、天井に使途不明なフックがあるのに気づく。いまシャワーをおえたナオヤに聞くとしよう。

 恋人は白人の中年男と一緒だった。肥満体型、くせのある金髪、水色の瞳はまったく見覚えない。

 エリは跳ね起きシーツをまとう。「きゃあ! だ、だれ!?」

「おどろかせてスミマセン」男は腰がひくい。「ワタクシはこうゆうモノです。どうかヨロシクおねがいします」

 名刺に「CIA日本支局 工作員 ジョン・ピーチ」とある。わけわかんない。

「ナオヤ、どうなってるの!?」エリがさけぶ。

「あきれたな」恋人は両手をひろげる。「CIAも知らないのかい? アメリカの諜報機関だよ。さっきの映画でビン・ラディンを追いつめた女が、われわれの分析官さ」

 われわれ。なにそれ。よろけたエリはベッドにへたりこむ。

 ピーチと名のる男は椅子をはこび、おもい体をのせエリとむきあった。銀縁の眼鏡をいじる。

「ワレワレは暁ジュンの情報をあつめています。プロパガンダのほとんどが嘘とはいえ、核心部分に真実が必要ですから。これをワタシは『雨粒理論』とよびます」

 雨粒が形成されるとき、大気中の埃が核となる。つまり降雨とは、水でなく無数の埃がおちる現象だ。情報戦と似ている。

 CIAはシャドウガールの依頼をうけ、ジュンの人物破壊工作をおこなっていた。焦点は、彼女が真木アカネの自殺にどんな責任があるか。因果関係があやしいエリの主張を検證せねばならない。

 ナオヤは鼻歌まじりで、三脚をたてビデオカメラを設置。バッグから長い麻縄をとりだし、天井のフックにかけた。茫然自失する恋人には目もくれない。

 ピーチがたづねる。「ナオヤ、例の映画ではどんな拷問をするんだっけ?」

「水責めっす。あれが一番合理的じゃないすか。対尋問訓練でやられたけど、死ぬほどキツかったっす」

 上司は若僧を鼻でわらった。こいつは映画と現実の区別がついてない。屈辱や絶望をあたえる本気の責めを、だれが訓練に採用するか。拷問は藝術であり、教科書ではまなべない。アーティストの創造性がすべてだ。

「オジョウサン、もっとも世界に影響力ある日本文化はなにか知ってますか?」返答をまたずピーチはつづける。「AV、アダルトビデオです。特にSMがすばらしい。ワタシはポルノの国にあこがれて日本語を猛勉強し、こうしてスパイになりました。きょうは吊るしの『駿河問い』をお見せしましょう」

 撮影した動画は自分で編集し、工作員が共有する情報網を通じ売りさばく。薄給のCIAが優秀な人材を確保できるのは、サイドビジネスで採算とれるから。国家に奉仕し、懐もうるおう。まさに天職だ。

「お、おねがい」エリは舌がまわらない。「知ってること、なんでもしゃべります。だから何もしないで……」

 ピーチ監督が一喝。「ストップ、まだカメラがまわってない!」

「……アカネは退学がきまってたんです。お父さんの会社が倒産したせいで。それであのコずっと自殺したがってて。暁はその言い訳につかわれたみたい」

 工作員ふたりは顔をみあわせた。調査結果と一致する。事実だろう。

「ユー・ファッキン・ビッチ!」ピーチは茹でダコの様に真っ赤。「失礼、アナタはクソッタレの売女です。こうゆうのを日本語でなんとかって……」

「KY」ハーフの部下が補足。

「そう! 日本語は実にすばらしい。なのに日本人がみなクソなのは、なぜなんでしょう。はやく老後の資金をためてカンザスにかえりたいですよ」

 ジョン・ピーチが制作するSMポルノは、ドキュメンタリー的迫真性を特長とする。吊るされる前にペラペラしゃべられたら台無し。これでは、アメリカの安全保障と自己の利益のための投資を回収できない。

 ならプランBだ。

「オジョウサン」ピーチの水色の瞳がにごる。「今度はアナタ自身が『埃』になってください」




 エリの死の報せは、七時のニュースにまにあった。高田馬場駅ちかくの西武新宿線の踏切で轢死体となって発見されたこと、自殺の直前に、同級生の暁ジュンと葦切コタカによる恐喝の被害を訴えるメールをおくっていたことが、大手マスコミ各社により報道された。




 翌日の午後四時すぎ、目白駅の改札口。

 三十二歳の「そどむ」は、夕食までに帰れないから作り置きのカレーを解凍するよう、iPhoneで夫にメールをおくった。「そどむ」とは2ちゃんねるの既婚女性板、通称「鬼女板」とツイッターでのハンドルネーム。贅肉のつきすぎた体を、初顔合わせの目印である花柄のコートにつつんでいる。

 少女が駆け寄ってきた。「そどむさんですよね? 遅くなってごめんなさい」

 中学生である彼女のHNは「スノウ」。したしくはないが、二年前からツイッターで相互フォローの関係だ。暁ジュンの同級生だと最近あきらかにし、「個人情報を曝露したいが迷う」とつぶやいてたので、そどむは「わたしが手伝うよ」と声をかけた。

 ネットで炎上事件がおこるたび、そこにそどむの影がある。少年犯罪者・SNSでハメをはづす若者・失言した藝能人などが彼女のターゲット。有名声優同士が同棲するマンションを特定しツーショット写真まで撮ったとき、その調査力に世間は驚愕した。

 だが猛火にさらされる暁ジュンの正体は、名前以外つかめない。蒼龍学園初等部にかよってたのに、三年前の卒業アルバムにも写真なし。幽霊みたいなガキだ。だが「ゴッドガール性器露出事件」の共犯者・葦切コタカは愚かで、すぐツイッターアカウントがバレて顔写真・住所・電話番号がひろまり、嘘の注文で何度もピザが配達されるなど嫌がらせをうける。そどむは母親がだしたゴミ袋を漁り、コタカが落第生だとつきとめた。

「例の名簿です」

 書類のはいったクリアファイルをわたすスノウ。たかい鼻とおおきな目が猛禽類をおもわせる。好みはわかれそうだが、やけに端正な顔だちの情報提供者だ。

 一覧にジュンの名をみつけ、「鬼女」は鳥肌たてる。またマスコミを出し抜いた。さっそく住所を位置検索。祭りのはじまりだ。




 ジュンの家にいったことがあるスノウが先導し坂をくだる。こっちが近道ですと「おとめ山公園」を横切る。水場のまわりの斜面に鬱蒼と雑木がしげり、秘境めいた趣き。人影はほとんどない。

 そどむは感心する。「都会にこんなジャングルがあるんだね」

「ねえ、そどむさん」スノウがゆう。「暁ジュンって、そんなにわるい人間かな? これじゃイジメみたい」

 よわい木漏れ日にうかぶ表情は物憂げ。まだ迷ってるらしい。背中をおさねば。

「暁こそイジメっ子じゃない」鬼女がこたえる。「二人も死なせるなんて最悪。しかもいろんな男とやりまくって、成績わるくて、空気読めない嫌われ者なんでしょ」

「でもマスコミが間違ってるかもしれないし。暁ってよくリスカしてたんです。あたしのせいで自殺したらやだな」

 そどむはモットーを口にする。「そんなの自己責任だよ」

 カラスが鳴き羽ばたくのが聞こえた。iPhoneの「マップ」をみると、駅前にいたときより目的地から遠ざかっている。

 スノウはカーゴパンツからベルトをはづし、両手にかまえた。いや「スノウ」じゃない、こいつが暁ジュンだ。捨てアカウントでおびきだし罠にはめたんだ。

 とりみだす鬼女はスマホで殴りかかるが難なく躱される。顔の前でベルトが左右におもいきり引っぱられ、バチンとおおきな音がしたあと仰向けに倒れた。




 ジュンは朦朧とするそどむをベンチにすわらせ、両手を背にまわしベルトで手摺ごと縛りあげた。財布をとりあげ免許證をみる。

「長谷部マリコ、よく聞け」ジュンが猛禽の目で見下ろす。「いまから要求をつたえる。オマエは今日から七十五日間、さりげなく毎日二十回あたしとコタカを褒め称えるツイートをしろ。一日でも途切れたら制裁をくわえる」

 HN「そどむ」こと長谷部は、女子中学生の笑止千万な要求を、殊勝に聞くふりした。結婚前は会社で部下五人したがえた自分が、小娘に翻弄されてたまるかとおもう。警察に通報……これまでのプライバシー侵害が露顕する。アカウント削除……こいつに制裁くらう。いますぐ転居……夫にどう説明する?

「自己責任の世の中だからな」ジュンの口角があがる。「逃げたきゃ逃げりゃいい。ただ、あたしの彼氏をコケにした報いはうけてもらう」

 ズボンのサイドポケットから「レザーマン」のマルチツールをとりだす。手摺を俎板とし、肉づきよい右の小指に鋸状の刃をたてる。絶叫し暴れるのをおさえ、体重と摩擦で骨ごと切った。

 血振りしてレザーマンをおさめる。指は接着手術されないよう、切断面を踏みにじってから茂みへ蹴りこみ肥料にした。深呼吸し、活発化した交感神経をなだめる。

 騒ぎを聞きつけ様子をうかがう老夫婦が一組、逃げだす中年男がひとり。すでに通報されたかもしれない。目と鼻の先に駐在所もある。名簿と血まみれのベルトをとりもどし、ジュンはおとめ山を駆けおりた。

 肩ごしに長谷部を一瞥。右手を抱えうずくまり、哀れっぽくうめいている。

 自己責任。それは良心や思いやりを凍結させる魔法の言葉だった。



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