『ファイアーエムブレム 覚醒 コミックアンソロジー』

わらなべ「ルキナの親孝行修行」

 

 

ファイアーエムブレム 覚醒 コミックアンソロジー

 

監修:任天堂 インテリジェントシステムズ

発行:一迅社 2014年

レーベル:DNAメディアコミックス

 

 

 

『FE覚醒』発売から2年8か月たって、いきなりあらわれたアンソロジー。

来月には4コマ本も出るらしい。

狐につままれた様なタイミング。

もちろんリズさんにまた会えるなら、理由はなんでもかまわない。

 

 

りりお「只今考え中。」

 

 

14名の作家による短篇を収録。

おちゃめなリズ、とぼけたリズ、やさしいリズ……。

描き手ごとに雰囲気のかわるカレイドスコープ。

 

 

鈴華「女騎士の憂鬱」

 

 

戦争のゲームが原作だから、マジメな場面もある。

女騎士「ソワレ」さんがカッコよかった。

 

 

はやせれく「買い出し騒動!」

 

 

とはいえ基本はコメディ。

凛々しく可愛い女性キャラたちが、にぎやかに色をそえる。

 

 

桂イチホ「商売上手だよアンナさん!」

 

 

現代性と、20年をこえるFEの伝統と、個性の三すくみ。

コザキユースケによるキャラデザ(参考:1/2は、とにかく絵になる。

マムクートの「ノノ」の解釈とか、ほかのだれに可能だろう?

 

 

姫希「克服戦記~恥ずかし親子の奮闘~」

 

 

FE覚醒の最大の特色は、イマドキの「萌え」と、

『聖戦の系譜』の「結婚・継承システム」を融合させたこと。

「オリヴィエ」と「アズール」の母子とか、恋人みたいで危険!

 

 

「ルキナの親孝行修行」

 

 

そんなわけで「ルキナ」は、本書でも主役的な存在感。

家族おもいで、良い子すぎるくらい良い子で、キラキラまぶしい。

 

 

神崎りゅう子「軍師の役割」

 

 

ファザコンの度がすぎ、父がほかの女と話すだけで不機嫌になるけど。

高貴な立ち居振る舞いと、愛をもとめるいじらしさがカンスト。

スマブラ参戦も当然のスーパーヒロインだ。

 

 

あらたとしひらのイラスト

 

 

キャラが43人もいるため、「リズとマリアベルの百合がなんでないの」とか、

よくばりな注文をつけたくなるが、そもそも決して満腹にならないのがこのゲーム。

FE覚醒の夢からは、だれも覚醒できない。




ファイアーエムブレム 覚醒 コミックアンソロジー (DNAメディアコミックス)ファイアーエムブレム 覚醒 コミックアンソロジー (DNAメディアコミックス)
(2014/12/25)

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ジャンル : ゲーム

タグ: ファイアーエムブレム  コザキユースケ  ニンテンドー3DS  任天堂 

りぽ でぃ『ギタ×マン!』

 

 

ギタ×マン!

 

作者:りぽ でぃ

掲載誌:『まんがタイムきらら』(芳文社)2013年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

「ギタマン部」といえば、「ギター・マンドリン部」の略称。

マンドリンオーケストラの流れをくむ古式ゆかしい楽派なのに、

「ギター・マンガ部」の略とカンちがいされちゃった。

 

 

 

 

そんなこんなで、漫画が得意な「あめり」の入部決定!

お目当ては顧問の養護教諭「やまなん先生」。

 

 

 

 

活動内容をまったく把握してない幼なじみを放っておけず、

世話焼きタイプの「るっか」も運命をともにする。

この百合風味、「アコースティックバージョンの『けいおん!』」か。

 

 

 

 

だが本作は、きららの王道から脱線し、やたら男がでしゃばる。

漫画担当のあめりが、「BL的にこれはこれでOK」とネタ帳に記録。

なにをしたいか不明なハイブリッド感をたのしもう。

 

 

 

 

「JKよりJKっぽい先生」も定番だが、「ゆもちゃん先生」の場合、

作中で実際いちばんカワイイので破壊力は格別。

 

 

 

 

「8月号で水着回」は、きらら憲法がさだめる国事行為。

おっぱいを品定めされ、一喜一憂する乙女たち。

だれより恥づかしがるのが、ゆもちゃん先生なのもいい。

 

 

 

 

るっかと男子部員の「マサ」が、いい感じになったりも。

作者があとがきで「出すぎ」と発言するほど、この男子も活躍。

狭義の百合には分類しづらい漫画だ。

 

 

 

 

「ごく身近に男の子いるじゃないですか」

「誰かいましたっけ?」

 

またもやお約束の「合宿回の恋バナ」で、脈がなさすぎるマサに同情した。

この安心感、安定感、安逸感。

なんだかんだで、きららは最高。

 

 

 

 

さて文化祭での発表。

前座のあめりたちが、リレー漫画で会場をあたためる。

「ギター・マンガ部」ですから。

 

 

 

 

教師二名したがえ、るっかとマサがステージで燃える。

この昂奮は「放課後ティータイム」をこえた。

 

 

 

 

全方向へ疾走する、アナーキー・イン・キララ。

かわいいだけじゃ、ものたりない。




ギタ×マン!  (1) (まんがタイムKRコミックス)ギタ×マン! (1) (まんがタイムKRコミックス)
(2014/12/25)
りぽ でぃ

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テーマ : 4コマ漫画
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タグ: きらら系コミック  百合  萌え4コマ 

カロリーヌ・ド・メグレほか『パリジェンヌのつくりかた』

 

 

パリジェンヌのつくりかた

How to Be Parisian Wherever You Are: Love, Style, and Bad Habits

 

著者:カロリーヌ・ド・メグレ アンヌ・ベレスト オドレイ・ディワン ソフィ・マス

訳者:古谷ゆう子

発行:早川書房 2014年

原書発行:アメリカ 2014年

 

 

 

パリジェンヌが絶対にクローゼットにいれないもの?

ロゴのはいった服よ。

広告じゃあるまいし。

 

30歳になるまえに、自分にあう香水をみつけなさい。

そしてそれから30年、それをつけ続けなさい。

 

パリジェンヌはモードを追いかけない。

だってモードがわたしたちを追いかけるのだから。

本当かどうかともかく、世界はそうしたレジェンドを必要とするもの。

 

 

 

 

なぜパリジェンヌは街角であんなにはげしくキスするのかって?

そこが劇場だからよ。

拍手がほしいくらいだわ。

 

わたしたちは一週間にすくなくとも三人の男に恋をする。

一種の病気ね。

 

こないだレストランで注文するとき、ある男がいった一言をおしえようか。

「ボクにもおなじものを」

わたしは二口だけたべて店をでて、そいつと二度と会わなかった。

アデュー。

 

 

 

 

あまりの上から目線ぶりに、読書中に脳へ血が逆流し、卒倒しかけたが、

それがパリジェンヌなのだし、そうあるため陰で苦心惨憺している。

あの無造作な髪型や着こなしも、長年かけてつちかった努力の賜物だ。

 

彼女らは妹の電話番号を、架空の男性名で登録する。

男をイラつかせるのも、パリジェンヌのたくらみの一部。

 

 

 

 

パリの冬はさむいけど、ダウンは着ない。

太ってみえるなんて最悪。

 

肌をみせるなら「3cm」まで。

パリジェンヌなら誰でもしってる、自身をミステリアスに演出するメソッドだ。

 

 

ジャン=ポール・サルトルとシモーヌ・ド・ボーヴォワール

 

 

ブランド物の鞄なんて興味ない。

よんでいる新聞のブランドの方が、ずっと大事。

 

ディナーの会話は、あえて政治からはじめる。

カール・マルクスを論じたりする。

話がどんどんつまらなくなり、ゆうことがなくなれば、メインの食事のはじまり。

 

 

 

 

パリっ子がもっともこのむ話題は、精神分析。

ラカン派がいいか、フロイト派がいいか、それともユング派か。

精神分析をきらう人間もいるが、いづれにせよ議論は白熱する。

 

勿論、自分にどんな診断がくだされたかは話さない。

謎めいてるからこそ、彼女らはパリジェンヌなのだ。




パリジェンヌのつくりかた (ハヤカワ・ノンフィクション)パリジェンヌのつくりかた (ハヤカワ・ノンフィクション)
(2014/11/21)
カロリーヌ・ド・メグレ、アンヌ・ベレスト 他

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テーマ : パリ、フランス
ジャンル : 海外情報

滝川いづみ『高床式少女』

 

 

高床式少女

 

作者:滝川いづみ

掲載誌:『ヤングキング』(少年画報社)2014年-

単行本:YKコミックス

 

 

 

神社の参道で、ながい髪の少女がハダカで寝てた。

死んではないらしい。

 

 

 

 

彼女は22世紀からきた「N-7号」。

「設定」は16歳で、機械部分が露出すると恥じらう。

すっぱだかは平気なのに、女心はフクザツ。

 

 

 

 

救世主をまもるため派遣された可憐なターミネーターは、

ひとりで神社を切り盛りする「純」の家に居候することに。

ちなみに燃料はアルコール。

 

 

 

 

本作の特色は絵柄にある。

大暮維人や塩崎雄二を髣髴させる、手足ながく顔のちいさい女の子。

 

コロコロでプニプニした描写がいまの主流だが、

別の選択肢が脈々とうけつがれてるのを心づよくおもう。

 

 

 

 

上目づかいのあまえた表情が、「なな子」の武器。

よくそだったボディとのギャップにときめく。

中身が機械であろうとなかろうと、女の子はかわいさを追窮するロボット。

 

 

 

 

おしゃれして秋葉原でデート!

プラモの「ウォーターラインシリーズ」にくいつく。

なかでもイギリス艦がすき。

22世紀から来たのでちょっとズレてて、そこがまたいとおしい。

 

 

 

 

幼なじみの大阪辯娘「マイ」がからむなど、

ラブコメのたのしみもあり、見どころがおおい初単行本だ。

 

 

 

 

東京タワーから夜景をみおろす。

この街がほろぶとゆう運命が、せつない。

現実ばなれした美少女の瞳にうつるのは、歴史のうたかた。




高床式少女  1巻 (ヤングキングコミックス)高床式少女 1巻 (ヤングキングコミックス)
(2014/12/22)
滝川いづみ

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 近未来 

うかみ『ガヴリールドロップアウト』

 

 

ガヴリールドロップアウト

 

作者:うかみ

掲載誌:『コミック電撃だいおうじ』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)2013年-

単行本:電撃コミックスNEXT

[ためし読みはこちら

 

 

 

彼女は「天真=ガヴリール=ホワイト」、通称「ガヴ」。

地上につかわされた天使である。

輪っかが黒ずんでるけど。

 

 

 

 

天使学校を主席で卒業したガヴは、修行のため下界にきたが、

すばらしい娯楽文化におぼれ、ダメダメなネトゲ廃人となり、

堕天使ならぬ「駄天使」の異名をとるまでに。

 

 

 

 

朝からネトゲ三昧のガヴを心配する、悪魔の「ヴィーネ」。

ほんらい敵同士のはずだが仲はわるくない。

 

 

 

 

マジメで世話好きのヴィーネは、駄天使を放っておけず、つい口をだす。

皮肉られて手をだすことも。

 

 

 

 

もうひとりの悪魔、「胡桃沢=サタキニア=マクドウェル」。

自称「地獄を統べる大悪魔」だ。

キャップつけたままペットボトルをすてるなど、人間界に混沌をもたらす。

 

 

 

 

割り箸のつかいかたがわからず、バキッと横に折る。

なにせ箸が割れてもおかしいお年ごろ。

 

天使と悪魔、つまり善と悪の、二大勢力にひき裂かれたJKライフがやけに新鮮。

 

 

 

 

課金しすぎで貧窮するガヴたんが、喫茶店でバイト。

ニコリともしない接客態度で、ろくにオーダーもとれないが、

制服は似合ってるし結構つづきそう。

 

 

 

 

ヴィーネのお宅訪問回では、脱ぎっぷりのよさに期待させられるが、

どこからともなく「聖なる光」がさしこみ鉄壁ガード。

 

深夜アニメのアレは、神の奇跡だったのか……。

 

 

 

 

卑しい人間どものなかですごす、それなりにたのしい日常。

まったりと最後の審判の日をまつ。




ガヴリールドロップアウト (1) (電撃コミックスNEXT)ガヴリールドロップアウト (1) (電撃コミックスNEXT)
(2014/12/19)
うかみ

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

千田大輔『さよならトリガー』

 

 

さよならトリガー

 

作者:千田大輔

掲載誌:『マガジンスペシャル』(講談社)2014年-

単行本:講談社コミックス マガジン

[ためし読みはこちら

 

 

 

M4カービンを小脇にかかえる転校生がやってきた。

彼女は「アタスタシア」、元陸軍兵。

 

 

 

 

先生が居眠りするアナを注意したら、無意識にナイフで反撃される。

さすが元兵士、あたらしい環境にすぐなじむ。

 

殺し屋JK「ソーニャ」のデンジャラスな活躍をえがく4コマ、

カヅホ『キルミーベイベー』のミリタリー版か。

名前がロシア風なのもそれっぽい。

 

 

 

 

造形面に工夫が感じられる。

眼帯、腕まくりした迷彩柄ジャケット、タートルネック、黒ストッキング……。

細身のスタイルもいい。

 

 

 

 

ミリタリだから、北朝鮮など国際情勢もネタに。

講談社がソニーみたくサイバー攻撃されないよう祈る。

 

 

 

 

とはいえ本作は、四季折々の軍人ライフをのんびり愛でる漫画。

雨の日も傘をささないとか。

 

 

 

 

『キルミー』は、ソーニャのきびしすぎるツッコミがわらえたが、

心やさしき乙女であるアナの攻撃性は、他者へむかわない。

水着回でも自爆オチをきめる。

 

 

 

 

浴衣回ではめづらしく無防備な恰好になるが、

『必殺仕事人』のノリで、簪にみせかけ毒針をしこむ。

ファッションが本作の主題といえる。

 

 

 

 

兵士だって、おしゃれしたいお年ごろ。

アナは各国の軍服でコーデをたのしむ。

 

 

 

 

仲間から着せ替え人形としてもてあそばれたり。

陸軍兵に「セーラー服」のコスプレさせるなんて屈辱!

でもまんざらでもなさそう。

 

 

 

 

混沌とした21世紀を、スタイリッシュに撃ちぬく初単行本。

逆説的な平和主義が、領土問題や基地問題のヒントすら提供する。




さよならトリガー(1) (講談社コミックス)さよならトリガー(1) (講談社コミックス)
(2014/12/17)
千田大輔

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 眼帯女子  萌え4コマ 

アレックス・カー『ニッポン景観論』

 

 

ニッポン景観論

 

著者:アレックス・カー

発行:集英社 2014年

レーベル:集英社新書ヴィジュアル版

 

 

 

フィレンツェのダヴィデ像を、日本風に「改良」したもの。

ふきだしてしまう。

町並み全体を保存してこそ観光名所がなりたつと痛感。

たとえばハワイが1959年に看板を禁じた様に。

 

 

 

 

日本は時代錯誤の国。

すすんだ土木技術があるなら、周囲との調和にいかせばよいのに。

海岸のテトラポッドも逆効果をもたらすとゆう研究があり、

アメリカでは撤去がおこなわれている。

 

 

 

 

パリは、18世紀からつづく旧市街の景観に厳密な規制をおこなう一方、

近郊の「ラ・デファンス」再開発では超現代的な街づくりをした。

ゾーニングのあざやかさが、ますます憧憬をあつめる。

 

世界の観光業の総売上は1兆300億ドル、石油・ガス(4020億ドル)より大規模。

ただ名所がのこってきたのは、目先のカネが目的でなく、

変な開発をゆるさない地元住民のプライドのおかげ。

 

 

 

 

林野庁は1949年、木材需要をみたそうとスギの植林をはじめた。

単一樹種植林は環境にダメージをあたえ、そもそもスギは市場で人気がなく、

おまけに花粉症まで発生したのに、政策は転換されなかった。

現在の林業のGDP比は1%にとどまり、戦後最大の失政とゆうほかない。

 

紅葉のたのしみまでうばわれ、日本から「秋」がきえた。

 

 

オックスフォード大学ベーリオル・カレッジの中庭

 

 

いますぐ電線を地下にうめ、看板を撤去すべし。

アレをするなコレをするなと子供あつかいするから、ひとはコドモになる。

イギリスにも「芝生にはいるな」の看板はある。

手前の緑色でちいさいのがそれ。

うつくしいものをまもるには、まづ管理者が美を解さねば。

 

 

 

 

白川郷の大型観光バスの駐車場は、景観に配慮しない。

平均滞在時間は40分、観光客は自販機くらいしかカネをおとさないのに。

トイレでおとした排泄物を処理するコストの方がおもい。

 

これぞ日本独自の景観だ、「アジア的混沌」だと肯定するものもいる。

しかしシンガポールやマレーシアの町並みは整然としてるし、

奈良・京都の碁盤の目だって、支那をみならったのではないか?

 

土木や建設をするなとは言わない。

つちかった技術を、電線埋設や護岸をはがすのにつかおうって話。

これほど合理的な予算のつかいみちがあるだろうか。

 

 

 

 

巨大構造物をありがたがる心性は、後進国の特徴。

日本は精神面で先進国になれなかった。

 

 

 

 

黒川紀章が設計した、北九州市のタワーマンション「門司港レトロハイマート」。

レンガ造りのレトロな町並みを、高みから威圧する。

いかに奇抜なものをつくるかが建築家の才能とみなされてきた。

 

 

 

 

岡山県の「奈義町現代美術館」は、1994年に磯崎新が設計。

テーマは「偏在の場、建築的身体」。

言葉の意味はだれもわからないが、現代建築と宗教の親近性はつたわる。

 

 

 

 

出雲大社本殿のすぐ横にある、鉄筋コンクリートの社務所。

1963年に日本建築学会賞を受賞。

いにしえよりつたわる神秘性をふきとばすインパクト。

 

 

 

 

「文化財愛護」と社会貢献のフリして、日立が各地に提供する看板。

堂々と社名をアピールする宣伝にほかならない。

これを日本人が奇異に感じないのは、「会社教」の国だからだろう。

 

 

 

 

会社教への熱狂は、理性でおさえられる。

まちおこしの成功例としてしられる大分県の湯布院は、

市民グループが駅前の大分銀行に対し、看板をちいさくするよう要求。

銀行に経済的損失は出なかった。

 

 

 

 

熊本県の黒川温泉は、橋を黒くぬり、宿を漆喰壁に統一する努力で、

ミシュランのグリーンガイドで二つ星を獲得するなど、有名になる。

 

シンプルは、うつくしい。

あたりまえの事実を、あたりまえに共有したい。




ニッポン景観論 (集英社新書)ニッポン景観論 (集英社新書)
(2014/09/17)
アレックス・カー

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strollers in Shibuya

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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中山敦支/西尾維新『オフサイドを教えて』

 

 

オフサイドを教えて

 

作画:中山敦支

原作:西尾維新

掲載誌:『週刊少年ジャンプ』(集英社)2015年1月15日号

[当ブログにおける中山敦支への言及はこちら

 

 

 

中山敦支の新作はサッカー漫画。

小説家・西尾維新が書き下ろした短篇読み切りの原作を、

9人の漫画家が料理する、集英社4誌の企画にひっぱりだされた。

 

 

 

 

サッカー素人の巨乳の下級生にルールをおしえる話。

28ページにこの競技のエッセンスをもりこむなら、テーマは「オフサイド」しかない。

 

 

 

 

中山による原作つき漫画は『アストラルエンジン』(2005-6年)以来。

結論からゆうと、ラノベ調で饒舌な西尾のホンは、

きたえあげた日本刀みたいな中山の作風にあわない。

 

 

 

 

人情話への接近も、らしくない。

ナカヤマアツシの人間理解は、エゴイズムと暴力と死。

「やさしさ」や「絆」はヌルくて満足できないひとだ。

 

 

 

 

それでもなお、ナカヤマはいい。

見開きですべてもってゆく。

疾走感に心洗われる。

ボクはサッカー漫画史に精通するわけじゃないが、

このオーバーヘッドの描写は、高橋陽一に次ぐものとみえた。

 

『ねじまきカギュー』が傑作すぎ、完成度たかすぎ、描きたいことを描き切りすぎ、

中山は産みの苦しみをあじわってるのだろうが、やはり次回作がまたれる。



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タグ: 中山敦支 

梅木泰祐『あせびと空世界の冒険者』2巻 愛があれば

 

 

あせびと空世界の冒険者

 

作者:梅木泰祐

掲載誌:『COMICリュウ』(徳間書店)2014年-

単行本:RYU COMICS

ためし読み/1巻の記事]

 

 

 

天空を駆ける、海洋SFアドベンチャー。

同郷の中山敦支の初期作品を髣髴させる、まっすぐさに磨きがかかる。

 

 

 

 

ヒロインの「あせび」はアンドロイド。

「フィールドデバイス」をもちいる攻防一体のアクションがみどころ。

 

 

 

 

ボクのお気にいりは、セーラー服の見習い船員「つくし」。

旅にくわわりたくて舵輪をかくすなど、存在感あり。

 

 

 

 

古代のテクノロジーによる人造人間におびえる。

本作の女子はみなカワイイが、カワイイだけじゃない。

 

 

 

 

あせびと主人公の「ユウ」は最初から、かたい絆でむすばれる。

嫉妬をおぼえるほど。

 

 

 

 

ユウの家族の写真をみて、おもわず自分たちが夫婦になった姿を想像。

ロボットなのに、いやだからこそ、女心はいじらしい。

 

 

 

 

その部屋には、人型モジュールがかざられていた。

見ためが人間らしいからって、自分も機械なのはかわらない。

いや機械どころか兵器だ。

 

おもいテーマを、絵で読者へつきつける演出力に舌をまく。

 

 

 

 

ユウたちの探索を阻止しにあらわれた、人型モジュールの「ダリア」。

躊躇せず「人間ども」をころす工作員だ。

モデルっぽい容貌、他者をみくだす態度、いいキャラしてる。

 

 

 

 

単行本おまけは水着でサービス。

あせびが不満なのは、せっかく外形をかえる機能があるのに、

胸のサイズだけ「開発者コード」のロックがかかり操作できないこと。

創造者、つまり作者がスレンダーごのみだからか。

愛のある漫画だ。




あせびと空世界の冒険者 2 (リュウコミックス)あせびと空世界の冒険者 2 (リュウコミックス)
(2014/12/13)
梅木泰祐

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

めいびい『結婚指輪物語』

 

 

結婚指輪物語

 

作者:めいびい

掲載誌:『ビッグガンガン』(スクウェア・エニックス)2014年-

単行本:ビッグガンガンコミックス

ためし読み/同著者の『かつて神だった獣たちへ』

 

 

 

ネックレスに指輪をふたつさげた、金髪の少女。

異世界への門をくぐろうとしている。

 

 

 

 

彼女の名は「ヒメ」。

黒い下着がみえるほどブラウスのボタンをあけてたり、

はすっぱなところもあるJKだが、かもしだす雰囲気はプリンセス。

 

 

 

 

幼なじみの「サトウ」は、いきなり引っ越すとゆうヒメを不可解におもい、

意を決し光の彼方まで追いかけたら、結婚式のさなかに飛び出た。

 

 

 

 

そこへ襲いかかる有翼のモンスター。

サトウはわけもわからず、魔力をおびた剣で応戦。

 

 

 

 

ヒメは文字どおり姫君だった。

形だけ彼女と結婚したサトウは「指輪王」を名のり、世界をすくう冒険にでる。

 

 

 

 

「高貴なお姫さまとイチャラブしたい!」とゆう願望をかなえる、

トールキンもびっくりの王道ファンタジー漫画だ。

 

 

 

 

「お出かけのキス」とか、定番だけどテレテレな新婚ごっこがたのしい。

この儀式で戦闘力アップするんだって。

ヒメがお気にいりの高校の制服を着つづけるのもいい。

 

 

 

 

あやしまれないよう、こちらの風習にしたがい一緒に入浴。

両思いだが、たがいの気持ちをたしかめておらず友人のまま。

 

 

 

 

とはいえ大胆なデザインの制服に、たわわなおっぱい。

ふたりの距離がちぢまらないわけない。

 

ボクはヒメの、ボリュームある前髪やポニーテールがすき。

髪と眉をオーバーラップさせる、二次元の魔法がきいている。

 

 

 

 

プロットはもうひとひねりあり、指輪は指の数だけ、つまりあと四つ存在する。

サトウは世界各地で、さらに四人の妻をむかえる使命をになう。

ヒメが彼をまきこむのを躊躇したのは、嫉妬心もあった。

 

 

 

 

ワクワクさせる物語と、ドキドキさせる作画。

現代日本ならではのロード・オブ・ザ・リング解釈。

『かつて神だった獣たちへ』も好調な、めいびい時代の到来か。




結婚指輪物語(1) (ビッグガンガンコミックス)結婚指輪物語(1) (ビッグガンガンコミックス)
(2014/12/09)
めいびい

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

小説3 「シャドウガール」

『フリーダム・シスター』


登場人物とあらすじ


全篇を縦書きで読む







 紅の小袖をはおった幼女が、トレイをもってカフェテラスをよこぎる。彼女はゴッドガール。憲法第一条がさだめる、日本の象徴だ。外見は未就学児だが、実年齢は約二千七百歳とか。蒼龍学園に籍をおいており、たまに好物のつけ麺を食べにあらわれる。素知らぬふりをするのが生徒間のルール。

「ちっ」エクレアにかぶりつくジュンが舌打ち。「鬱陶しいガキがきてるよ。斬ろうとおもえば斬れるな」

 むかいに彼女よりやや小柄な男子生徒がすわる。葦切コタカ。名字は「よしきり」と読む。いつも頬があからみ、赤ん坊みたく繊細な顔立ちが、ジュンに気にいられている。

「うしろにいる黒い服の」コタカがゆう。「あの女性が警護してるんだよ」

 ワンピースもニーソックスも靴も黒づくめの足のながい女がつきしたがう。ぼんやりしてると目にとまらない気配のなさ。

「あいつ、なんてったっけ」

「シャドウガールさま」コタカの口ぶりは熱っぽい。「ゴッドガール陛下の妹。元海軍元帥で、政財界にも顔がきくんだって。謎の多いひとだよね」

「ふーん」ジュンはコタカがほかの女に興味をもつのが不愉快。「でもブスじゃん。ゴッドガールだって見ためはロリだけど、中身はババアなんだから、だまされないでよ。あとそうそう、例のブツもってきた」

 鞄から漫画雑誌をちらりとみせる。たかみちのイラストがのった小洒落た表紙。茜新社発行のロリ漫画専門誌『コミックLO』だ。




 ITルームの準備室は、ジュンの隠れ家のひとつ。鍵がかからないのが難点だが。せまく埃っぽい部屋でコタカの息づかいや体臭を感じ、少女はじっとり汗ばむ。

 同級生はLOに読みふける。昨今ロリ漫画への規制がますます厳しくなり、身分證明書を提示しての対面販売が義務づけられた。ジュンはコタカにとりいろうと、兄に命じて毎号購入させている。

「創価学会ざけんなって感じだよね」少年の肩に顎をのせるジュンが言った。

 読書の邪魔といわんばかりの表情でコタカがこたえる。「また政治のはなし?」

 ネトウヨであるジュンは創価学会が大嫌いだが、自民党と連立与党をくむ都合上、公明党とその母体を許容せざるをえず、「自民党がもっと強くなれば連立解消できる」とゆう理屈で納得してきた。だが公明党は増長するばかり。

「にしても小学生ねえ」嘆息まじりに女子中学生がゆう。「まあカワイイけど。あたしも小四くらいの写真みると、われながらマジ天使っておもうもん。あのころはマジメだったし。みてみる? ねえ聞いてんの?」

「……えっと、だれの写真?」

「みたくないならいいよ。どうせあたしゃ三次元のオバサンだよ。でも御褒美はもらうかんね」

 ジュンは目をとじて顔をつきだす。すこし間があって口づけされた。瞼をあげると、耳を充血させるコタカがいた。濃い睫毛が濡れた様につやめく。男のくせ自分より可憐なのが、いじらしくて憎たらしくて、夢中でしがみつきキスの豪雨をふらせる。毎月二十一日のおたのしみ。

「コタカかわいい……かわいい……だいすき」みだれた呼吸でジュンがゆう。「ねえ、きょうはウチにきて。親いないから。おねがい」

「でも塾あるし」

 勉強ができない彼は内部進学できず、他校を受験する。だが女にここまで言わせてのつれない態度。ジュンのきらいなサムスンのスマホまでいじりはじめた。こうなったら、とことんイジメてやる。

 あらたまった顔でコタカがたづねる。「暁さん、このメールみた?」

 差出人は「真木アカネ」、件名は「みんな、ごめんね」。




 突然のメールでごめんなさい。

 駅のホームで打っています。私はいまから飛び込み自殺します。

 みんなと一緒に高校生になりたかったけど、すごく辛いことがあって、どうしてもできなくなりました。

 えり、ゆき、まき、いろいろあったけど、あなたたちと仲良くなれて本当によかった。心から感謝してます。私のこと、絶対忘れないでね。

 私に酷いことをしたのは暁ジュンです。あの世であいつを呪い続けます。あいつが最低最悪の女だってことを、マスコミやネットで広めてください。詳しいことはえり達が知ってます。

 こんな私と友達になってくれて、みんな本当にありがとう。

 さようなら。




「なにこれ。どうせ冗談でしょ」うすい唇をゆがめるジュン。「そんなことより、してあげるよ。さっきからずっと勃ってるの知ってんだから」




 ノックにつづき「暁ジュンさんいますか」と甲高い声がした。よばれた当人があわてて応対にでる。

「休み時間中にすみません」なぜか初等部の女子がいた。「あの、もしよろしければ、例のメールの件について、生徒会室でおはなしできないかと」

「モガモガ……」口をおさえたジュンはうまく答えられず、ただうなづく。

 しかたなく後にしたがい、隙をみて水飲み場であたたかいものを吐きだした。コタカのやつ、ためすぎなんだよ。

「ヨーグルトでも食べてましたか? 急にお呼びして本当にごめんなさい」小学生はわかってない。

 ふるいノートPCが数台おかれた部屋へとおされる。小柄な女はドアに鍵をかけ、冷蔵庫からアロエいりの飲むヨーグルトを二本だした。

「わたしもヨーグルトすきです」女は自分の頭に手をかざす。「おかげで今年もかなり身長伸びましたし。〇・一センチ」

 ジュンはいま乳製品を口にする気にならない。「ねえ、なんで小学生が高等部をウロウロしてるわけ?」

「わたしのことですか!?」女の顔色がかわる。「袖見てくださいよ。二本線あるでしょ。わたしあなたの先輩ですよ!」

「こりゃ失礼」

「わたしは本城フラン、高等部の生徒会長です」まだ不機嫌そう。「今回の不幸な事件が、大事になりはしないか憂慮しています。ちなみに先日の乱闘も、生徒会は把握しています。羽生さんとゆう剣士のかたから報告をうけました」

「ああ、あの眼帯の」

「そうです」フランの表情が大人びる。「暁さんは、真木さんが亡くなったことについて心当りはありますか? あらかじめ言っておきますが、生徒会はあなたを守りたいとおもっています」

 アカネちゃんが自殺した。あたしのせいで。

 とりかえしのつかない事実をつきつけられ、鈍器でなぐられた様に意識がとおのき、罪悪感で心が凍りつく。

 しかし理不尽でもあった。一方的に責められるいわれはない。

「守ってもらう必要なんかない」ジュンは上着のポケットからiPhoneをだす。「あたしを襲ったやつらの写真がはいってる。あたしは悪くないって證明できる」

 フランは肯定も否定もしない。外見はともかく、精神的にジュンよりずっと世慣れていた。「正しさ」で世間はうごかない。死んだ少女の内面が問題である以上、證拠や證言が無意味になる恐れがある。

「お世話になってる辯護士の先生がいます」フランがゆう。「いまから相談にゆきませんか?」




 第三者の声がジュンの背後からひびいた。「辯護士はもっと慎重にえらぶべきね」

「ひっ」泡をくうフラン。

 ジュンは、目をつけていた机の上のハサミをつかむ。

「おしづかに」黒衣の女が、人さし指を口にやる。「ひさしぶり、本城さん」

 フランは目をうたがう。「シャ、シャドウガール殿下!? なぜこんなところに」

 皇族が蒼龍学園に出入りする関係で、生徒会長であるフランはシャドウガールに面通しされていた。勿論交流はそれきり。

「それはこっちのセリフ」シャドウガールの瞳は光がない。「さきまわって彼女を確保するとはね。あなたはここの先生の数倍優秀ね」

 ハサミをにぎったままジュンがゆう。「なんの権利があってここにいる?」

「権利?」シャドウがこたえる。「そんなものないわ。わたしはただのオブザーバーで、なにもしない。もとめられれば助言はするけれど」

「お呼びじゃない。とっとと失せろ」

「暁さん!」あわてるフラン。「殿下になんて口のききかたを!」

「いいのよ」微笑と解釈可能なシャドウの表情。「わたしはゴッドガール陛下の『目』です。行動の自由がない陛下のかわりに、あらゆるものを見聞きするのが務め。そうやって数千年の治世をたもってきた。今回なら山手線の轢死体。実に哀れで、これはなにかあると嗅覚がはたらいたわけ」

 ジュンはたちあがり攻撃姿勢をとる。「おまえに関係ない!」

「だから、おしづかに」ふたたび一本指。「女が大声をだして良いのは、男に抱かれるときだけよ。暁さんと言ったっけ、スマートフォンをみせなさい。さっきから録音してるでしょう」

 ジュンは歯がたたない相手と悟り、絶対だれにもさわらせないiPhoneをさしだす。シャドウガールはファイルを消去した。どんなに些細でも足跡はのこさない。

「でも安心したわ」シャドウは借り物をかえす。「あなた、中学生のわりにしっかりしてるもの。今回はふたりに任せるわね。多分また来るけど。別件で聞きたいこともあるし」

「なに?」不審がるジュン。

「じょうずなフェラチオの仕方よ」

 顔をみあわせたジュンとフランが視線をもどしたとき、シャドウガールはどこかの影にとけていた。



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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

めいびい『かつて神だった獣たちへ』

 

 

かつて神だった獣たちへ

 

作者:めいびい

掲載誌:『別冊少年マガジン』(講談社)2014年-

単行本:講談社コミックス マガジン

[ためし読みはこちら

 

 

 

西部劇をおもわせる町並み。

ながいお下げ髪の少女は「ナンシー・シャール・バンクロフト」。

ひとり旅をしている。

 

 

 

 

酒場へとびこみ、象撃ち銃をはなつ。

白いコートの男は父の仇だった。

 

 

 

 

一撃で人間をバラバラにできる大口径の銃だが、「ハンク」は無傷。

ケタはづれの力で怪物とたたかうハンターだ。

父の死の真相をしるため、シャールも狩りにくわわることに。

 

 

 

 

見開きページをうめつくす巨獣の描写がみどころ。

アニメ化された『黄昏乙女×アムネジア』でしられる、めいびいの新作は、

『進撃の巨人』などの流行をにらんだマーケティングを感じさせる。

 

 

 

 

もとは彼らも人間で、内戦において異形の「擬神兵」となった。

戦争終結後は「獣」とよばれ駆逐されている。

父がおなじ境遇だったシャールは、擬神兵に同情的。

 

 

 

 

シリアスな物語だが、ティーセットをもちあるくシャールは道中でお茶会をひらく。

箱いり娘っぽい言動、髪型、仇討ちにかける激情……。

沙村広明『無限の住人』の「凛」を髣髴させる。

 

 

 

 

はじめて鉄道をみて無邪気によろこんだり。

南北戦争後、西部開拓時代のアメリカ風の舞台にひかれる。

 

 

 

 

西部劇の定番、ヴァンダービルトみたいな鉄道王の悪辣さもえがかれる。

伊藤明弘『ベル☆スタア強盗団』とも比較できるか。

 

 

 

 

夜の石畳を徘徊する謎の紳士、娼婦、吸血鬼、ゴスロリ少女。

「世紀末ロンドンもの」の要素もあるらしく盛りだくさん。

 

 

 

 

ボクは『アムネジア』をちゃんと読んでおらず、こんなに力のある作家としらなかった。

「親の仇討ち」とゆう日本人の泣きどころをおさえつつ、流行に目配りし、

過去作品へのオマージュもにおわせる、あじわいぶかい漫画だ。




かつて神だった獣たちへ(1) (講談社コミックス)かつて神だった獣たちへ(1) (講談社コミックス)
(2014/12/09)
めいびい

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

オレ的アニメOPベスト5

 

5位

『じょしらく』(2012年)

曲:極♨落女会『お後がよろしくって…よ!』

絵コンテ・演出:下田正美

 

 

アニメーターが一番作家性を発揮しやすいのが、1分半のオープニング。

音楽との相乗効果もあいまって、本篇以上にたのしかったりする。

たとえば『じょしらく』とか。

アニメは最後までみてないけど、OP曲はいまだに愛聴中。

 

 

 

 

「作曲・神前暁&作詞・畑亜貴」の鉄壁コンビによる、シュールでノリノリな曲。

小岩井ことりが歌う「じょし的お悩みは双六? 賽を振って!」のところがすき。

彼女は作曲活動もしてるし、音楽的才能ゆたかなんだろう。

 

 

 

 

べらんめえな佐倉綾音、ドSな南條愛乃、謎な後藤沙緒里など配役がよく、

曲でもそれぞれの持ち味がいかされてたのしい。

 

 

 

 

ヤスの原作にもとづくキャラクターデザインは、ケチのつけようがない。

『SHIROBAKO』など水島努監督作品は、女の趣味がよくてごまかされる。

吉田玲子や横手美智子の様な女性脚本家を重用、女心がわかるフリもうまい。

作品全体としてみると、中身カラッポだったりするけど。

 

 

 

 

とはいえOPにふかい表現は必要ない。

サビでびしっと「江戸ザイル」をきめ、気持ちよくシメる。

お後がよろしいようで。

 

 

 

 

 

4位

『夏色キセキ』(2012年)

曲:スフィア『Non stop road』

絵コンテ・演出:橘秀樹

 

 

『Non stop road』は名曲で、声優ユニット・スフィアの代表曲でもある。

作詞はまたも畑亜貴。

さわやか青春ソングだが、アニメ映えするよう言葉にかるくエッジをきかす。

 

 

 

 

キラキラまぶしい夏の朝、めざめたばかりの「夏海」が伸びをしたあと、

ぴょんと飛び起きて270度回転するのにときめく。

わづか3秒だが、十分なキャラ紹介。

 

 

 

 

「ずっと一緒に 君と一緒に 笑っていればいいね多分♪」

サビの疾走感がめざましい。

相模湾の風と光をあびて、予感に胸を高鳴らせる少女たち。

 

 

 

 

 

3位

『プリパラ』第1-13話(2014年)

曲:i☆Ris『Make it!』

絵コンテ・演出:大久保政雄

 

 

『プリパラ』のOPは、第1クールの『Make it!』がいい。

 

 

 

 

ツボをおさえた演出は、ヴェテランの大久保政雄によるもの。

小学5年生の「らぁら」が、アイドルに変身するときの表情にドキッ。

 

 

 

 

とにかくOPはサビが命。

ヒーローっぽくポーズをとる「みれぃ」。

 

 

 

 

「キ・ラ・キ・ラ・み・ら・い・で・き・ま・り・で・しょ♪」

音符ごとにカメラが高速移動、派手なエフェクトがほとばしる、いわゆる神作画。

土曜朝10時から、アニメの快楽にどっぷりおぼれる。

 

 

 

 

 

2位

『織田信奈の野望』(2012年)

曲:愛美『Link』

絵コンテ:熊澤祐嗣 薮田修平

演出:熊澤祐嗣 薮田修平 雪村愛

 

 

絵コンテと演出に三人が名をつらね、本篇なみに力をいれる。

みやま零が原案の、和のデザインもうつくしい。

 

 

 

 

ギターがさけぶハードな曲調。

冒頭の、閲兵する「柴田勝家」にしびれる。

 

 

 

 

アップになり、こちらの存在に気づき凛とした視線をかえす。

2秒間でわすれがたい印象をのこす。

 

 

 

 

「命を賭けて 荒野を駆ける 戦いの日々の中♪」

小柄な体をいかす「犬千代」。

 

 

 

 

「丹羽長秀」の薙刀さばきに惚れ惚れ。

細腕で戦場にたつ、乙女らの崇高さがきわだつ。

 

ただOPに注力しすぎ、本篇のアクションが見劣りしなくもない。

 

 

 

 

勢ぞろいした仲間が未来をみつめる、お約束のカット。

たいてい風が吹くのはベタだが、大事なのは絵になるかどうか。

 

 

 

 

 

1位

『ゆるゆり♪♪』(2012年)

曲:七森中☆ごらく部『いぇす!ゆゆゆ☆ゆるゆり♪♪』

絵コンテ・演出:大隈孝晴

 

 

1位は『ゆるゆり』2期から。

2012年のアニメがやけにおおいのは偶然なのか。

 

 

 

 

曲はそんなにすきじゃないけど、このOPは本当にヌルヌルよくうごく。

「歳納京子」のエアギターとか、「3秒のキャラ紹介」ルールをはみでた表現力。

 

美少女がでてくる作品ばかりで、ボクの趣味はかたよってるかもしれないが、

なびく髪やスカートの描写あってこそのアニメじゃなかろうか。

 

 

 

 

2期なので制作者も視聴者も、登場人物をつかんでいる。

ロックバンドみたいな風格すらただよう。

 

 

 

 

早送り厳禁!

90秒に濃縮されたエッセンスを存分にあじわおう。



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テーマ : アニメ
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合  百合姫コミックス 

柚木涼太『ボクの女子力はあの娘のパンツに詰まっている。』

 

 

ボクの女子力はあの娘のパンツに詰まっている。

 

作者:柚木涼太

掲載誌:『まんがライフSTORIA』(竹書房)2013年-

単行本:バンブーコミックス

[本作のためし読み/同作者の『3年2組の呪い屋さん』/『ヲタ充』

 

 

 

女子高生の「三輪アキラ」は、ある朝おきたら呪いで男になっていた。

もとにもどるには他人の勝負パンツをはき、女子力を恢復するしかない。

なにを言ってるのかわからねーとおもうが、和服の呪い屋さんがカワイイのでOK!

 

 

 

 

下半身以外、アキラの外見は女のまま。

友達の「佐倉のん」を毒牙にかける様子は、即通報されるほど不審じゃない。

……かもしれない。

 

 

 

 

呪いを解除するため、てゆうかなかば趣味で、

各話ごとにことなる美少女のパンツをうばう。

水泳部の「寿先輩」はツリ目でポニテで、ボクは一番このみかも。

 

 

 

 

パンツ泥棒にすすんでパンツを提供する、奇特なパンツマニアもあらわれる。

般若の柄はアヴァンギャルドすぎるが。

 

 

 

 

お隣りの「碧お姉ちゃん」は、オトナのパンツで悩殺。

全篇どこをひらいてもパンツばかり。

 

 

 

 

碧に服をえらんでもらう場面なども、なくはないけど。

 

作者は、「おもらし」がテーマの『アイドルは××××なんてしませんッ!』とか、

可憐な絵柄で、過激な下ネタを描くのが得意な作家。

 

 

 

 

ナンパする度胸もないので、公園で青姦にはげむカップルのパンツをぬすむ。

さすがにミジメになり大泣き。

下半身に支配され翻弄される、人間存在のものがなしさが真にせまる。

 

 

 

 

連載4本かかえる柚木涼太は多作家だし、作風も決して上品じゃないが、

恋にまどう少女の心理描写、特に百合が絶品で、パンツ漫画なのにせつない。

いやパンツにこそ、世界のもっともうつくしい要素がつまってると主張する。




ボクの女子力はあの娘のパンツに詰まっている。 1 (バンブーコミックス)ボクの女子力はあの娘のパンツに詰まっている。 1 (バンブーコミックス)
(2014/12/06)
柚木涼太

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合  男の娘 

アマンダ・リプリー『世界教育戦争』

 

 

世界教育戦争

The Smartest Kids in the World: And How They Got That Way

 

著者:アマンダ・リプリー

訳者:北和丈

発行:中央公論新社 2014年

原書発行:2013年

 

 

 

OECDがおこなう「生徒の学習到達度調査(PISA)」の問題だ。

15歳対象なので、そうむつかしいものじゃないが、

「批判的思考力」を計量的にはかる手段として定着している。

 

 

 

 

各国のスコアがこちら。

日本はまあ、健闘している。

フィンランドと韓国のめざましさと、アメリカの低調ぶりが目につく。

 

 

『フィンランドのマリメッコ手帖』(パイ インターナショナル)

 

 

フィンランド、そこは教育のユートピア。

16歳まで能力別編成をおこなわない。

エリートをそだてるのでなく、落ちこぼれをなくすため国費をつぎこむ。

 

最大の特色は教員の優秀さ。

教員養成校はいづれも難関で、医大とおなじくらいステイタスがあるし、

修士号を取得しないと先生にはなれない。

 

エリートに、落ちこぼれ予備軍を世話させるのが、効果覿面な処方箋。

 

 

『ストライクウィッチーズ2』(テレビアニメ/2010年)

 

 

「北欧は特殊だから」とおもうなら、あなたは批判的思考力がたりない。

たしかにフィンランドは天然資源ゆたかで、高税率を課す福祉国家だが、

それはノルウェーも同様なのにPISAスコアは明暗わかれる。

 

ことは政治の問題だ。

1970年代になされた大胆な改革が、成果をあげたってこと。

 

 

韓国プサンのジェニー

 

 

2011年の韓国で、高校生が教育ママを殺す事件がおきた。

国民は加害者である息子に同情した。

 

三大名門大学にはいれるかどうかで、韓国人の将来はきまる。

逆転はありえない。

大学入試は国家的イヴェントで、当日は騒音をたてないよう航空機の発着まで規制。

 

異常な競争だと韓国人自身が一番わかってるが、教育熱がおさまる気配はない。

 

 

予備校の「ロックスター教師」アンドリュー・キム

 

 

日中韓に共通する試験への狂奔は、科挙以来のアジア的伝統か。

 

韓国の学生が真剣にまなぶ場所は、学校でなく「ハグォン」とよばれる予備校。

年に400万ドル稼ぐ講師もいる。

この稼業で億万長者になれるのだから、ますます俊英が教壇にたつ。

 

 

城谷間間『妹はアメリカ人!?』(マイクロマガジンコミックス)

 

 

世界一ゆたかなアメリカが、先進諸国のなかで劣等生でありつづけるのは、

ゆきすぎた地方分権による進度のバラつきが原因のひとつ。

学習の積み重ねをもとめる数学では、特に足をひっぱられ、

8年生(日本の中2)になっても分数をまなぶことになる。

 

アメリカ人は子供に自尊心をあたえようと、やたらホメるが、

研究によると、具体的で正確で少ない回数でホメないと効果ない。

 

 

『マネーボール』(アメリカ映画/2011年)

 

 

こぎれいな校舎、運動場、体育館、ハイテク機器。

アメリカの施設はダントツで充実している……いや、充実しすぎかも。

教育とスポーツは、本来なんの関係もない。

カネの使い道をまちがえている。

 

 

『トリコロール/白の愛』(フランス・ポーランド・スイス映画/1994年)

 

 

財政危機に瀕するポーランドが、わづか3年でPISAスコアを急上昇させ、

アメリカを追い抜いた成功例も、本書はくわしく報告する。

 

次世代へむけ、国家として一致団結し投資できるか、それが問題だ。




世界教育戦争世界教育戦争
(2014/11/07)
アマンダ・リプリー

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テーマ : 教育
ジャンル : 学校・教育

カツヲ『ひとりぼっちの○○生活』

 

 

ひとりぼっちの○○生活

 

作者:カツヲ

掲載誌:『コミック電撃だいおうじ』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)2013年-

単行本:電撃コミックスNEXT

[ためし読みはこちら

 

 

 

ついに中学の入学式をむかえた「一里(ひとり)ぼっち」。

校舎がラストダンジョンにみえる。

「友達づくり」とゆう高難度クエストに畏縮する。

 

 

 

 

前の席の「砂尾なこ」から攻略にかかる。

「パシリあつかい」でもクリア条件に相当するかは不明。

 

 

 

 

なこは一見ヤンキー風で、教師からもおそれられる。

 

掲載誌『コミック電撃だいおうじ』は、「まんがタイムきらら」フォロワーだが、

本作は『苺ましまろ』や『あずまんが大王』を髣髴させる毒で、

「電撃系」こそ萌え4コマの元祖だとアピールする。

 

 

 

 

副委員長「本庄アル」の人物造形に、特色でている。

ぼっちに貸したハンカチで鼻をかまれた、3コマめの表情がいい。

 

 

 

 

アルはいわゆる「残念美人」。

しっかり者にみえるが、まちがえてランドセルしょって登校することも。

サラッと言い訳する3コマめが、ここでも冴えてる。

 

 

 

 

「きらら系」から、得能正太郎『NEW GAME!』を例にあげ比較すると、

こちらは凝ったカメラワークをもちいる一方、4コマらしい起伏にとぼしい。

各登場人物に、見せ場を公平にあたえる傾向も感じられる。

 

 

 

 

きらら系が、普通の漫画をそのまま「4コマ×15本」のテンプレートへおとしこみ、

ややケレン味に缺ける(そこが魅力だが)のに対し、本作は縦一列でビシッときめる。

 

委員長がつとまりそうにない、「副委員長キャラ」の残念ぶりが浮き彫りに。

 

 

 

 

クラシックな4コマだが、女子の外見は2014年らしいクオリティ。

「自宅訪問回」でなこが伊達メガネをかけたり。

着ぐるみで出迎えたぼっちにスルーされるけど。

 

 

 

 

舞い上がったぼっちがお茶をこぼす。

動顛のあまり韻をふんで、ドープなフロウになった。

 

 

 

 

反対側の肩をトントンたたくイタズラさえ、ネタとして成立している。

たくみなテンポ感で、みなれた校舎を異世界に描きかえる。

 

 

 

 

百合とゆうマルチプレイなら、無理ゲーが神ゲーに。

さあ、いますぐフレンド申請!




ひとりぼっちの○○生活 (1) (電撃コミックスNEXT)ひとりぼっちの○○生活 (1) (電撃コミックスNEXT)
(2014/11/26)
カツヲ

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テーマ : 4コマ漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合  萌え4コマ 

檜山大輔『戦場の魔法使い』2巻 バランス・オブ・パワー

 

 

戦場の魔法使い

 

作者:檜山大輔

掲載誌:『Comic REX』(一迅社)2014年-

単行本:REXコミックス

[1巻の記事はこちら

 

 

 

ミリタリーでファンタジーな架空戦記もの。

二丁拳銃の忍者を、レイピアでいなす将校。

絵になるバトルだ。

 

 

 

 

42cm重榴弾砲「大ベルタ砲」が咆哮する。

テクノロジーはおおよそ第一次世界大戦時の水準。

 

 

 

 

うつくしき敵役「エルザ・シュナイダー中尉」の、憂鬱な過去もえがかれる。

大掛かりで重厚なドラマが展開。

 

 

 

 

ボクは未読だが、佐藤大輔の小説『皇国の守護者』と比較されるストーリーだ。

女子のヴィジュアルなど漫画ならではの強みもあり、よくばりすぎなくらい。

 

 

 

 

復讐に燃える女スナイパー「天城ハル」が主人公。

2巻ではやや影がうすいが、ドス黒い情念をたぎらせる場面もある。

 

 

 

 

メカに弱いボクはくわしく紹介できないけど、つぎつぎ登場する兵器がウリ。

 

 

 

 

大国同士の戦争に、個人の思惑がからんでゆく。

「御都合主義」は特に感じられず、ハードボイルドな読みごたえがあり、

現代マンガにおける期待値をこえたテンションがみなぎる。

 

 

 

 

併行して『魔女に与える鉄槌』の連載をもってることをおもうと、

原作者がつかず、ひとりで異世界の歴史を構築する力量は並大抵じゃない。

 

 

 

 

破壊工作への協力をかってでた、アイヌっぽい衣装の「楠葉楓」。

村で虐殺をおこなった共和国軍をうらんでいる。

 

 

 

 

でもちょっと信用できない。

 

『銀河英雄伝説』など田中芳樹の小説で、不謹慎なほどユーモアをもりこむのは、

誇大妄想じみた架空戦記のバカバカしさを中和するためだろう。

 

 

 

 

本作は難攻不落の要塞、つまり「女の子の二面性」の描写に重心をおく。

ウェットにもドライにも、なりすぎない。

 

革命がどうとか、ひろげた大風呂敷を作者がもてあます箇所も散見するが、

「読者に感情移入させる」とゆうツボをおさえた、バランスのよさにひかれる。




戦場の魔法使い (2) (REXコミックス)戦場の魔法使い (2) (REXコミックス)
(2014/11/27)
檜山大輔

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

小説2 「血煙高田馬場」

『フリーダム・シスター』


登場人物とあらすじ


全篇を縦書きで読む







 せっかちで、階段やエスカレーターを駆け上がるタイプの暁ジュンは、見せパンを誇示しながら地下鉄の高田馬場駅から外へでた。

 きょう中等部で「剣技大会」がひらかれる。大学から兄が審判として来ており、登校せざるをえない。武道ぎらいのジュンにとり、第一次安倍晋三内閣による「武士道必修化」は、安倍を熱烈に支持するネトウヨであっても迷惑千万だった。

 おなじ紺のブレザーをみると動悸がはげしくなり、よろよろセブンイレブンへ逃げこみ、シールをはがしてジャンプの立ち読みをはじめる。

「ジュンちゃん、おはよう」見知らぬ人物に挨拶される。「真木だけど。ひさしぶりだから忘れちゃった?」

 真木アカネは絵が上手で、ジュンと比較的話題のあう同級生だが、印象かわった。

「あっ、コンタクトにしたんだね」とこたえたジュンは、「そろそろ行こう」とうながされ、缶コーヒーを買ってから店をでた。




 世話をやくタイプのアカネは、ジュンの左手首の絆創膏を気にしている。言うべきかどうかまよっている。

「また切っちゃったの?」さぐる様な表情でアカネは言った。「よくないよ。こうゆうのは言ったら逆効果かもしれないけど。怒らないでね」

 ジュンの腹部で熱い感情がとぐろを巻く。きっと自分はいま嬉しいんだろうとおもった。

「『ナウシカ』の冒頭で、リスみたいな生き物に手を咬ませるじゃない?」他人ごとめかしてジュンはゆう。「あたしあの場面がすごい好きで。ナウシカの純粋さが伝わるってゆうか。あんな感じ」

「ジュンちゃんはいつも二次元が基準だね」アカネはあきれ顔。「でもお兄さんは心配してると思うよ。まあいいや、この話はおしまい」



 ふたりで昇降口にはいると、三人の女子生徒がいた。みなブラウスのボタンを三つあけ、下着をみせている。ジュンは無視して靴を履きかえようとしたが、

「超ひさしぶりじゃん、元気?」と声をかけられる。

「どうも、御無沙汰です」とかえすと、

「中絶って大変だったでしょ。もうウリはやめときな」といい、三人は耳ざわりな高音で笑った。

 むきだしの憎悪に困惑するアカネをみて、ジュンは申しわけなさで一杯に。




 教室へゆかず保健室に顔をだし、そこにいるのも飽きて、校舎外をうろつく。大会に参加する気はなかった。もともと武士道の授業をサボってるし、まして中等部で兄に会うなんてありえない。

 保健室のベッドで泣いたので、すこしおちついた。いまは芝生に寝転がり、自分を侮辱した三人へ復讐する妄想にふけっている。ズタズタに斬り刻んだ。まったく心は晴れなかった。

「こんなところにいたんだ」ビニール袋をさげたアカネが立っている。「ジュンちゃん御飯は? よかったら一緒に食べる?」

 起きてからなにも口にしておらず、目眩するほど空腹だが、アカネに甘えてばかりもよくないと思った。

「気をつかってくれるのは嬉しいけど」ジュンは寝たまま言う。「あたしと話してると、いいことないよ」

「ああ、あのコたちね」アカネは苦笑い。「ジュンちゃんが目立つから、嫉妬してるだけ。本当は仲良くしたいんだよ」

「あいつらの方がよっぽど派手じゃん」

「ファッションとか必死にがんばってるのに、なにもしてないジュンちゃんの方が可愛くて、モテるんだもん。やっかみたくなるよ」

「なにもしてないって……まあ事実だけど」

 ふたりは同時にふきだした。学校もそう悪くないかもとジュンはおもった。

「そういや髪の色かえた?」他人に無関心なジュンがようやく目にとめた。「雰囲気かわったね。アカネちゃん、すごく可愛くなったよ。きょうの朝、だれかと思った」

「ありがと。わたしも努力が必要な側だから」

「でね、黒バスのブルーレイ全巻揃えたたんだけどさ……」

 ジュンの早口に、アカネが相槌うちながら、カフェテラスへむかう。




 近道しようと校舎裏をゆく途中、暗がりでブラ露出の三人組に阻止された。やけに切迫した表情。

 背後から五人の男子がちかづく。袖に二本線あるから高等部で、みな刀をさげている。複数人に見覚えある。兄のジョージが、剣道部の後輩として自宅につれてきた。

 ひえきった態度で、ジュンがきく。「アカネちゃん、あたしを裏切ったの?」

 まだ剣士資格をもてない高校生の刀は刃挽きしてあるが、斬られたら無事にすまない。自分におそいかかる暴力をおもうと戦慄する。

 でもそれ以上に、見捨てられたことに絶望。

 動揺し、ブラ女の顔色をうかがいながら、アカネがゆう。「友達の彼氏を取るなんて、よくないよ……」

 ジュンが不登校のあいだにアカネは三人と仲良くなり、制裁に加担したのだろう。ただ、武器をもちだすほど深刻なものと知らなかったらしい。それに彼女は、もともとジュンの親友ってわけじゃない。

 でも、裏切られたのは事実。

 眉毛の濃い高等部男子がジュンの鞄をうばい、中身をしらべる。道を外れたとはいえ剣士の家の娘、用心にしくはない。彼が家にきたとき、ジュンは自分が性的に興味をもたれたのに気づいていた。乱暴に鞄をつきかえされる。背中をドンと押される。

 校舎には生徒も教員もいない。たよれるのは暁家につたわる格闘術「雪風流」だけ。




 角をまがった刹那、右肘を眉毛男の顎先に命中させる。踵をもう一人のふくらはぎにめりこませ、よろけたところを拳で首の横をなぐった。

「キエェェェーーーッ!!」ジュンが絶叫する。右手にはしった激痛をアドレナリンで緩和。

 のこり三名は抜刀している。

 法的に過剰防衛とみなされるのを恐れ、刀はうばわない。鞄から缶コーヒーのはいったビニール袋をとりだす。

 多人数でかこまれても、一度に攻撃されることはまづない。順序をみきわめ、それを逆手にとるべし。

 摺足で、もっとも戦意旺盛な敵の間合いへ侵入。反応したところを間髪いれず躱し、別の男のこめかみへ、BOSSの無糖ブラックをたたきこむ。ながれる様に回転し、体勢をくづしたままの、さっきの相手の耳のうしろを撃つ。

 死ぬかもしれない。いやむしろ死ね。

 さすがに息ぎれしたジュンが肩をおとした隙に、最後のひとりが逃げた。

 わざとだった。缶がわれてコーヒーが袋からしたたる。殺傷力は半減だし、もう十分あばれた。奇襲の要素があるとはいえ、武装した四人の男を斃せたのは運がよかった。




 首謀者は、予想に反する結果を理解できず、かたまったまま。野良犬みたいに、シッシッとブラ女どもを手で追い払う。

「アカネちゃんのおかげだね」ジュンの頬に悪魔の笑みがうかぶ。「コンビニで話しかけられたとき、なんかイヤな予感したんだ。だからコーヒー買ったんだよ。あたし苦くて飲めないのに」

「ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」泣きながら震えるアカネ。

「コーヒー嫌いなの覚えられてないとか、あたしってその程度なんだ」とつぶやきつつ、裁縫セットをとりだす。「あたしね、クソオヤジからいろんな怖い技おそわったんだ。友達『だった』から、殺しはしないよ。でも、きょうのこと一生わすれられない様な痛みをあげる。うふふっ、リアルで試すのはじめて。うれしい」

 アカネは声もでない。




「そこまでだッ!」

 泡をくってジュンがふりかえると、異様な風体の女がすぐうしろにいた。髪はブロンド、左目に眼帯をつけ、佩刀している。

「わたしは羽生アリア、蒼龍学園大学一年生。剣士資格所有者だ。この場はあづからせてもらう」

 ジュンがそばに確保していた刀が消えた。

 こいつ、デキる。

 最高度に警戒しながらジュンがゆう。「現行犯逮捕する気か?」

「一部始終を見たわけじゃないが」法執行権をもつ剣士が周囲をみわたす。ひとり起きあがりつつあるが、三人気絶したまま。「集団でひとりの女を襲う男どもに、理はあるまい。この件は不問に付そう」

 そそくさとアカネがたちさる。どっと疲労をおぼえたジュンは地面にへたりこんだ。




 ジュンは、剣士のアリアから借りた水筒の残りを飲み干した。

 隣にすわるアリアと話している。カーキ色のミリタリージャケットに、濃い色のスキニージーンズ。彫りのふかい顔立ちから白人とおもったが、目の形や瞳の色は日本風だから、ハーフかもしれない。

「あっはっは」アリアが豪快に笑う。「つまり、文字どおり『恋の鞘当て』で斬られかけたわけだな!」

 ジュンは口を尖らせる。「笑いごとじゃないですって。ヘタすりゃレイプされてたし」

「たしかにな」真顔にもどるアリア。「わたしも多少撃剣の心得があるが、おなじ局面で無傷でいられる自信はない。ところで、貴殿の流派を聞いてもかまわないか?」

「知らないとおもいますよ。超マイナーってゆうか、お爺ちゃんの代で道場は畳んでるし。雪風流ってゆうんですけど」

 アリアが薄い色の右目をみひらいた。「キミは暁ジョージの妹君か!?」

「ええ。お知り合いですか」

 全国でもっともおおく剣士を抱える蒼龍大学でも、百名にとどかない。面識あって当然。

「勿論さ」アリアは昂奮している。「なるほど、缶コーヒーで五人にいどむクソ度胸、これが雪風流の神髄か! キミのことはジョージからよく聞いている。一度会いたかったんだ」

「どうせ悪口だし」

「いやいや。うちのジュンは美人で頭がいいと、大層な妹煩悩ぶりだよ」

「こまったシスコン野郎ですね。そんなだからアニキはモテないんですよ。大学でも全然でしょ?」

「あっはっは」アリアはジュンの背中をたたく。「聞きしにまさる烈女だな。気にいった!」

 アリアは細身なのに腕力がつよく、呼吸をとめられたジュンはむせこんだ。

「……で、アニキは大学でどうなんです?」

「どうやら彼はなにも言ってないんだな」微苦笑するアリア。「わたしとジョージは、将来を誓いあった恋人同士さ」



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ヘイト国家・日本――原朗『日清・日露戦争をどう見るか』

旅順虐殺事件で死体をいためつける日本兵(西洋の新聞の挿絵)

 

 

日清・日露戦争をどう見るか 近代日本と朝鮮半島・中国

 

著者:原朗

発行:NHK出版 2014年

レーベル:NHK出版新書

 

 

 

外務大臣・陸奥宗光の著書『蹇蹇録』には二面性がみられる。

欧米に対し卑屈なのに、朝鮮と清国には傲岸不遜。

 

それが国家意志でもあった。

1894年11月の「旅順虐殺事件」では、捕虜や民間人ふくめ無差別に殺したとされ、

翌年10月には朝鮮の王宮で「閔妃虐殺事件」をおこしている。

日本の野蛮さに世界は仰天した。

 

 

板倉梓『タオの城』(芳文社コミックス)

 

 

近代以降の日本人の内面には、支那人・朝鮮人への憎悪がうづまく。

ある種のエディプス・コンプレックスだろう。

インテリは漢文をたたきこまれ、庶民は関羽など支那の英雄にあこがれた。

この世界観をひっくり返さないと、戦争など不可能。

 

そして大国の清に勝ってはじめて、国民意識にめざめる。

「日本SUGEEE」と感動にふるえた。

天皇とやらも、ありがたいものとおもえる様に。

 

 

日比谷焼打事件

 

 

最近の研究では、日露戦争は日本のおもいこみで始まったとされる。

司馬遼太郎『坂の上の雲』で「日本軍のみは一兵といえども略奪をしなかった」

とある義和団事件でも、連合軍の先陣きって馬蹄銀をうばっている。

 

講和会議で調印したポーツマス条約の内容に、民衆は憤激。

政府はこの事件をちいさくみせようと「日比谷焼打事件」と名づけたが、

実際は東京市全体、そして神戸・横浜などへひろがり、戒厳令までしかれた。

 

 

李朝時代の西大門

 

 

暴走機関車は勢いおさまらず、1910年に韓国併合。

国際法上はともかく、ハーグ密使事件など利用した強引さは正当化できない。

 

1915年には「対華21か条要求」。

ただ支那は一枚上手で、内容を欧米にリークし、外交的に日本を翻弄。

 

 

『暁のヨナ』(テレビアニメ/2014年)

 

 

韓国併合と同年に「大逆事件」がおきている。

まったくの冤罪で、幸徳秋水ら12名を処刑。

文明国にあるまじき蛮行に、欧米各地で抗議の声があがった。

 

 

関東大震災後に虐殺された在日朝鮮人

 

 

1919年の「三・一運動」を、朝鮮総督府は徹底的に弾圧。

死者7645名といわれる。

日本の警察が、村民30余名を教会にとじこめ焼き殺した「提岩里(チェムアリ)事件」は、

歴史に関心あるものは知らないとマズイ。

 

1923年の関東大震災では、政府やマスコミがながした流言により、

多数の朝鮮人が自警団や民衆に虐殺された。

 

日本とゆう暴れん坊をとめたのは、かつて父親役をつとめた支那で、

105万人以上の日本兵と対峙して「戦勝国」となった。

 

日本のリーダーは、ヘイト国家の本質を理解しないと国益をそこなう。

たとえば野田佳彦は、2012年9月11日に尖閣諸島を国有化したが、

それは満州事変の国恥記念日「九・一八」の直前で、余計な刺激をあたえた。

外交当局はなにをしていたのか?




日清・日露戦争をどう見るか―近代日本と朝鮮半島・中国 (NHK出版新書 444)日清・日露戦争をどう見るか―近代日本と朝鮮半島・中国 (NHK出版新書 444)
(2014/10/09)
原朗

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