金谷武洋『日本語が世界を平和にするこれだけの理由』

 

 

日本語が世界を平和にするこれだけの理由

 

著者:金谷武洋

イラスト:加納徳博

発行:飛鳥新社 2014年

 

 

 

カナダへ留学していた筆者は、寮で友人が自分に「とのぶー!」と叫ぶのをきいた。

フランス語らしいが、3回いわれても理解できない。

ただしくは「Ton eau bout!」、意味は「あなたのお湯が沸いている」。

水ごときに所有格の代名詞をつける感覚が、日本人に通じなかった。

 

サイデンステッカーが英訳した川端康成『雪国』の冒頭は、

「The train came out of the long tunnel into the snow country」。

英語話者数人にきかせ情景を絵にかかせると、全員が上から見おろすアングルに。

汽車にいるはずの主人公がきえた。

 

 

視点のちがいは映画のポスターにも

 

 

言語類型論と日本語教育を専門とする筆者は、日本語文法の特徴を、

人称代名詞が顔をださない、自己主張のすくない言語とする。

たとえば「Thank you」にでてくる人間が、「ありがとう」にいない。

 

AKB48『恋するフォーチュンクッキー』の歌い出し。

あなたのことが好きなのに

私にまるで興味ない

日本語にしては代名詞がおおいが、それでもふたつの主語が省略されている。

 

 

 

 

日本語は基本文の構造が特殊なのはまちがいなさそうだが、

モントリオール在住の筆者はさらに、水村美苗や林望らに反論し、

日本語は危機にあるどころか、人気急上昇中の言語だと主張。

文化や自然が注目されるなか、日本語学習者がふえている。

 

カナダ人が日本へ留学し日本語をまなぶと、話し方がかわり声もかわり、

攻撃的なところがなくなって、やさしい性格となりかえってくる。

 

 

 

 

オノ・ヨーコとであったジョン・レノンは、猛烈に日本語を勉強したせいで、

その作品やパフォーマンスにも、日本的思想が影響したとゆう話もおもしろい。

 

 

『源氏物語』写本(明融本)

 

 

とはいえボクもこの言語を長年つかってるから、やすやすとだまされない。

筆者は英語の「假主語」の無意味さを批判するが、

だらだらとムダばかりなのはむしろ日本語の方で、

西洋語にせよ支那語にせよ、翻訳すると本がぶあつくなる。

 

「主語」を「主題」といいかえたところで、その得意なはたらきは「てにをは」、

つまり格助詞や係助詞の厳密な用法がささえるのなら、おなじではないか。

そもそも文法の優劣をきそう発想が不毛であり、エゴイスティックで非日本的だ。

 

本書の主張は、小谷野敦『日本文化論のインチキ』にとても対抗できない。

 

 

南京で虐殺された支那人と日本兵

 

 

日本文化論とか日本人論とか、褒めるにせよ貶すにせよ、すべてくだらない。

「すきだ」とゆう日本語は、英語に翻訳できないからすばらしいと筆者はゆうが、

なら「きらいだ」とゆう日本語もすばらしいといわねばならない。

 

それに、人称代名詞をうとんずる文法などもつから、日本人は人を人とおもわず、

20世紀なかば周辺国で狼藉はたらき、いまだ憎まれているとゆう解釈もなりたつ。

 

 

『ご注文はうさぎですか?』(テレビアニメ/2014年)

 

 

ボクは本書はわるくないとおもうし、刺激もうけた。

ミソもクソも一緒にしないでほしいだけ。

 

日本語にはふたつの系統が存在する。

裕仁や東條英機や安倍晋三の日本語。

紫式部中山敦支や畑亜貴の日本語。

どちらをえらぶかはあなた次第だ。




日本語が世界を平和にするこれだけの理由日本語が世界を平和にするこれだけの理由
(2014/06/25)
金谷武洋

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テーマ : 日本文化
ジャンル : 学問・文化・芸術

岩瀬正嗣『ゾイドSS』

 

 

ゾイドSS

 

作画:岩瀬正嗣

原作:株式会社タカラトミー

発行:アスキー・メディアワークス/KADOKAWA 2014年

レーベル:電撃コミックスEX

 

 

 

金髪ツインテ少女の「ティス」に、ドスンドスンと足音たてつつ、

装甲と砲門をそなえた、全長17.3mの機械獣がなついている。

「フフッ……くすぐったいよ」

 

 

ミラージュフォックス/フォクシー

 

 

30周年を記念したキットシリーズ、「ゾイドオリジナル」の漫画化が本作。

ゾイドとはなにかについての説明は、荷がおもいので遠慮しておく。

歴史のながさは、ガンダムと3年しかちがわない。

 

 

 

 

戦災孤児のティスは、「ミラージュフォックス」のパイロット。

親がわりの「ヤードおじさん」を斃され、復讐心たぎらせる。

オムニバス形式で重厚なドラマをくりひろげる、ロボットアクション漫画だ。

 

 

 

 

物語の軸になるのは、帝国再興の野望をもつ「アッシュ・ラボーン大佐」と、

驚異的な機動力と、攻防一体の武装をそなえるゾイド「ジェノリッター」の活躍。

 

岩瀬正嗣は『ガンダムSEED』をコミカライズした作家で、メカ描写はお手のもの。

 

 

 

 

金属生命体であるゾイドは、地球の生物に似ており、心がある。

パイロットと意思疎通しつつたたかう。

ときに暴走することも。

単純なロボットバトルじゃないのが独自の趣向であり、

『エヴァンゲリオン』より13年さきがけた先駆性でもある。

 

 

 

 

死闘がおわり、善戦むなしく散った敵パイロットへ敬意をしめすアッシュ。

ほこりたかき戦士たちの国境をこえた友情をえがくなど、

ボクの様な門外漢がいだいていた玩具的イメージをくつがえす。

 

 

 

 

ただキットあってのゾイドなのもたしかで、そこがガンダムやエヴァと一線画すところ。

レールガンで精密射撃をおこなう「コマンドウルフRGC」とか、

シルエットのうつくしさに、兵器としての重量感がこもる。

 

 

 

 

翼竜型の「ストームソーダー」やドラゴン型の「レドラー」など、空戦もアツい。

ミリタリーテイストたっぷりな、ゾイド世界の最良の入門書となっている。

 

 

帝国軍残党の改造実験基地

 

 

半世紀、いや一世紀後の記念祭をめざし、ゾイド帝国はさらに発展してゆく。




ZOIDS ゾイドSS (電撃コミックスEX)ZOIDS ゾイドSS (電撃コミックスEX)
(2014/07/25)
岩瀬昌嗣

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

三宅大志『ろんぐらいだぁす!』3巻 サイクルイベント参加!

 

 

ろんぐらいだぁす!

 

作者:三宅大志

原案・企画協力:LONGRIDERS

掲載誌:『Comic REX』(一迅社)2012年-

単行本:REXコミックス

[以前の記事→0巻/1巻/2巻

 

 

 

巨乳と貧乳、したたかな先輩たちの甘言にまどわされ、

ついこないだまで自転車初心者だった「倉田亜美」は、

160kmのサイクルイヴェント(アルプスあづみのセンチュリーライド)へいどむ。

 

 

 

 

なにせそこは北アルプスの山麓。

大したことないときいていた坂は、相当きつい。

ギアを一番かるくしようとしたら、とっくに最下段だったり。

 

 

 

 

「ここを越えればあとは下り坂!」と信じ、

余力をふりしぼったあとにみる風景は、つづら折れの勾配。

 

 

 

 

あっさり観念、ヨロヨロ愛車をおす。

わりとカッコわるい「サイクリングあるある」が、あいかわらずたのしい。

 

 

 

 

亜美の瞳がもっともかがやくのは、食事のとき。

「大町エイド」のねぎ味噌おにぎりは人気メニュー。

自転車女子が必死にグルメポイントを攻略する、アンチスポ根漫画だ。

 

 

 

 

制限時間は「11時間」と、特にきびしくないが、

ペース配分がへたで、くいしんぼうの亜美にあわせるうち、

いつのまにビリとなり、スタッフにリタイアをすすめられる。

 

 

 

 

おくれを挽回するため、亜美を「牽く」ことに。

スリップストリームをつかえばラクに時速40kmでる。

 

 

 

 

とゆう具合に、作者の工夫があれこれ感じられるとはいえ、

いっぱしのサイクリストとなった亜美に、かつての運動音痴の面影はない。

 

 

 

 

趣味のイラストで、チームのジャージのデザインを買って出るときの、

百合っぽい展開や、まいあがる姿を妹にみられるお約束の場面もあるけど、

ボクとしては本巻は、亜美のプリプリのお尻がみたりなかった。

彼女の尻藝は、唯一無二のサイクルエロスなのに。

 

 

 

 

「紗希さん」に、下りでもブラケットをにぎっているのを注意される。

ポジションを下ハンドルにしないと、つよくブレーキをかけれないから危険と。

 

 

 

 

紗希さんが気にするのは、伝説の「いろは坂ダイブ」の経験者だから。

エロスが後退したかわり、タナトスもペダルをふみ、物語は加速する。




ろんぐらいだぁす! (3) (IDコミックス REXコミックス)ろんぐらいだぁす! (3) (IDコミックス REXコミックス)
(2014/07/26)
:漫画:三宅大志 原案・企画協力:LONGRIDERS

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

『プリパラ』4話 真中のんの機転

 

 

かしこま! 元気 For You

 

テレビアニメ『プリパラ』第4話

 

出演:茜屋日海夏 芹澤優 田中美海 高乃麗 鈴木千尋 ブリドカットセーラ恵美

演出:小林浩輔

絵コンテ:玉川真人

脚本:ふでやすかずゆき

監督:森脇真琴

シリーズ構成:土屋理敬

キャラクター原案:金谷有希子

キャラクターデザイン:原将治 Cha Sang Hoon

アニメーション共同制作:タツノコプロ DONGWOO A&E

放送:2014年

[第3話の記事はこちら

 

 

アニメ『プリパラ』のどこがすきかと問われたら、「ヒロインの頭のよさ」とこたえる。

 

 

 

 

校長先生に「抜き打ち家庭訪問」されたら、小学5年生にとってはピンチ。

イタリア料理店をいとなむ両親は、なんて教育熱心だと感心するばかり。

 

 

 

 

「真中らぁら」は、小学部で禁じられているプリパラで頭角をあらわしており、

決定的物證をつかむため、校長は家宅捜索にふみきった。

 

 

 

 

自室のゴミ箱をあさり、サインの練習をした紙くずをみつける。

 

「真中さん、あなたやはりプリパラへ!?」

「いいえ、それは、ええと、その……そ、そう!

あたし、将来の夢はお相撲さんになることなんです!

そのときのためにサインの練習してまして……どすこい、どすこい」

「……なんと、そうでしたか」

 

 

 

 

だが校長のプリパラセンサー(=ブタなみの嗅覚)は、舌先三寸でごまかしきれない。

プリチケをいれていた宝箱がみつかる。

 

 

 

 

箱はカラだった。

プリチケバッグを妹の「のん」がひそかにサルベージ。

もつべきものは、かしこき妹なりけり。

 

 

 

 

のんには打算があった。

プリパラにはまってる姉に、人気グループ「ピンクアクトレス」のサインをもらってきてほしい。

ちょっと虫がよすぎるかも。

 

 

 

 

「えぇー」

「いやなの? だったら……校長せんせぇー、モガモガムグ……」

「わかった、わかったからぁ!」

 

 

交渉とゆうより恐喝

 

 

「こーしょーせーりつ! えへっ」

人の足もとみる系妹が、にくたらカワイイ。

 

 

 

 

やれやれ……だれに似たんだか。

アネキにきまってる。

口が達者なのをみならい、ドジなのは反面教師とし、要領よい末っ子にそだった。

 

 

 

 

「えーと、モーニングBで」

「かしこまっ!!」

 

学校では校長に叛旗をひるがえすらぁらだが、家の手伝いはいやがらない。

むしろ結構たのしい。

オトナとの距離のとりかたが利口。

 

 

 

 

栄子ちゃんとの約束をはたすため、プリパラへゆかねばならない姉に、

変装したのんがすすんで協力し、校長の目をくらます。

 

 

 

 

おしぼりの準備とか、かいがいしく店の仕事をこなしたり。

理不尽な校則とたたかう姉を、たのもしくおもってなくもない。

 

 

 

 

一番の目的はサインだけど。

 

 

ハルトマンは桁がおかしかったが、らぁらは単位がおかしい

 

 

「あと5時間だけ……」と、エーリカ・ハルトマンより寝起きのわるい姉をおこすのも、のんの役。

なんだかんだで性のあうスマートシスターズが、いま街に旋風をおこしている。



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ジャンル : アニメ・コミック

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『ハナヤマタ』3話 夕刻の逆転劇

 

 

ガールズ・スタイル

 

テレビアニメ『ハナヤマタ』第3話

 

出演:上田麗奈 田中美海 奥野香耶 大坪由佳 沼倉愛美 豊口めぐみ 小山剛志

演出:細川ヒデキ

絵コンテ:佐山聖子

監督:いしづかあつこ

シリーズ構成・脚本:吉田玲子

キャラクターデザイン・総作画監督:渡辺敦子

色彩設計:大野春恵

原作:浜弓場双『ハナヤマタ』(芳文社刊)

アニメーション制作:マッドハウス

放送:2014年

 

 

食卓は女の戦場。

昼休みに机と椅子をならべれば、三つ巴の駆け引きがはじまる。

 

 

 

 

「そういえばハナちゃん、いつもパンだよね……。

はい、よかったら好きなのたべて!」

 

やさしい「なる」が「ハナ」におすそ分け。

 

 

 

 

おもしろくないのは、親友を金髪ロリ転校生にうばわれた「ヤヤ」。

 

浜弓場双の原作は、きららの王道をゆくバランスとれた絵柄だが、

アニメ版の渡辺敦子によるキャラデザは誇張がほどこされ、

より菱形にちかづいた目が、少女の内面にはえたトゲをおもわせる。

 

 

 

 

「これは『鳴子』といいま~す! よさこい、たのしいですよ~っ!!」

 

ニュージャージー州から、相模湾をのぞむ中学へやってきた伝道師の宗旨は、

なんと高知県発祥の踊りである「よさこい」。

空気をよめないどころか、空気を全否定するいきおい。

だれも相手にしない。

 

 

 

 

気弱なせいでおしきられた、なるをのぞいては。

 

内気で、どんくさく、趣味といえば秘密のポエムくらいのなるが、

派手な衣装をきて人前でおどるなんて、ありえない。

親友を強引にひきこみ、恥をかかせるハナがゆるせない。

でも、いやいやながら協力するなるは、本当はもっとかがやきたかったのかも。

自分は親友の願望に気づかず、おさえつけてたのかも。

かんがえればかんがえるほど、悶々とする。

 

 

 

 

ひさしぶりにヤヤとなるのふたりでお出かけすることに。

待ち合わせは「駅前で3時」。

いっぱい話もするだろうし、ちっぽけな悩みなんて鎌倉市街でぜんぶ解決!

 

 

 

 

翌朝、家業である蕎麦屋の掃除をはじめたら、店先で金髪ロリが行き倒れていた。

 

 

 

 

しかたなく蕎麦をふるまう。

アメリカ人にしては粋な食べっぷり。

 

 

 

 

なるとの「デート」にもついてきた。

ニーソでツンデレなヤヤは、なるよりは無遠慮な性格だが、

そこは日本人のかなしさ、面とむかって「ゴーホーム」とはいえない。

 

「なんで日本の曲って、ところどころ英語がはいるんですか? 日本語キレイなのに!」

ゆうことがいちいち癪にさわる。

 

 

 

 

待ち合わせの3時まで、マックで時間をつぶす。

 

夕映えの大胆なうつくしさ。

サイケデリックな色づかいが印象的だった『ノーゲーム・ノーライフ』につづき、

いしづかあつこ監督は、大野春恵に色彩設計をまかせている。

 

 

 

 

「きょうわたしがたのしかったのは、ヤヤさんと一緒にいたからですよ!

すきなひとと一緒なら、たのしいも2倍ですっ!!」

 

 

 

 

「ふえぇっ……な、なんなのよ、もう……」

 

 

 

 

椅子のしたでブーツをモゾモゾ。

親友が転入生に心をひらいた理由がわかった。

 

 

 

 

こんなKY外人なんて大嫌いなのに、かまわず懐へとびこんできて、

おもわず好きになる自分がいて、そんな自分にムカつくから、やっぱ嫌い。

ジャパニーズツンデレの洗礼をあびせる。

 

 

 

 

まばゆい西日にやきもきしていた視聴者は、ようやく時刻をおそわる。

16時07分。

 

 

 

 

「あっ、ま、待ち合わせ……」

 

 

 

 

百合は戦争である一方、サスペンスでもある。

アニメのつよみである色彩表現をいかす「時刻表トリック」に舌をまいた。

 

 

 

 

最近すれちがってたふたりにとって、大切な時間になるはずだったのに、

すっぽかされては立場がなく、日をまたぎ平身低頭されても、なるはきかない。

 

 

 

 

ソリがあわないヤヤとハナが、陰で仲よくなったのも腹にすえかねる。

いいもん、いいもん、もうすきにすれば!

 

たぶん人生で一番感情を爆発させた、なる。

午後3時から4時までの半刻で、くるっと力関係が逆転。

 

 

 

 

ぱっと、ぱっと、はれやかに。

さかせましょ、花の様に。

風まかせの乙女心が、かろやかに花瓣をちらす。




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(2014/10/24)
上田麗奈、田中美海 他

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ジャンル : アニメ・コミック

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赤壁の戦い 曹操の敗因

(撮影者:Jie)

 

 

三国時代のもっとも重要な合戦といえば、208年の「赤壁の戦い」だが、

このいくさについてわかっていることはすくない。

魏にとっては不名誉な敗戦だから、「武帝紀」でごく簡単にふれるだけだし、

史官をおくまえにほろんだ蜀にも、国家の公式記録はない。

 

 

(作成者:竹圍牆/ジダネ)

 

 

南下した曹操の大軍は、赤壁で孫権・劉備連合軍に阻止され烏林にしりぞき、

ここで碇泊中に黄蓋から火攻めをうけ、おまけに感染病まで発生したため、

追撃されないよう船を焼いてから陸路北へもどった。

 

これ以上はわからない。

はっきりしてるのは、曹操がやぶれた地は烏林とゆうこと。

つまり呼称は「烏林の戦い」がただしいが、

「赤壁」の二字がもつ映像喚起力がひとりあるきした様だ。

 

 

蒙衝闘艦

 

 

曹操は、その年の1月にようやく人工池で訓練をはじめた自前の水軍と、

荊州で吸収した劉琮旗下の水軍しかもたなかった。

騎兵が主力の北の軍隊が、湿地帯のおおい南で苦戦するのは、

モンゴル帝国ですら例外でない、支那の歴史の常識。

 

 

月岡芳年『月百姿』

 

 

ではなぜ曹操ほどの名将が、戦略ミスをおかしたか。

敗因は『孫子』にある。

 

『孫子』の著者は名目上、春秋時代の呉につかえた「孫武」とされていたが、

軍の規模と経済構造のちがいや、船についての記述がないことなどから、

戦国時代の北部の人間が書いたのは、いまではあきらか。

 

だが曹操は、孫子の兵法は呉でも通用すると信じたろう。

単なる読者でなく、その注釈文は書写され「魏武帝註」としてつたわるほど。

 

曹操は『孫子』にまなび覇者となり、『孫子』のせいで天下統一をのがした。







【参考文献】

高島俊男『三国志 きらめく群像』(ちくま文庫)

落合淳思『古代中国の虚像と実像』(講談社現代新書)



三国志 きらめく群像 (ちくま文庫)三国志 きらめく群像 (ちくま文庫)
(2000/11)
高島俊男


古代中国の虚像と実像 (講談社現代新書)古代中国の虚像と実像 (講談社現代新書)
(2009/10/16)
落合淳思

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テーマ : 三国志
ジャンル : 学問・文化・芸術

八十八良『不死の猟犬』

 

 

不死(しなず)の猟犬

 

作者:八十八良

掲載誌:『ハルタ』(エンターブレイン/KADOKAWA)2013年-

単行本:ビームコミックス

 

 

 

くせのある黒髪、黒ぶちメガネ、黒セーラー服。

ドラムマガジンつきのAK-47二丁。

「風間リン」が紙面をくろくそめる。

 

 

 

 

ある男が、カゼをひいた恋人を銃で撃つ。

「よっしゃスッキリ! テルちゃんお腹すいた!」

 

 

 

 

『不死(しなず)の猟犬』の作品世界では、ゾンビが社会の圧倒的多数をしめる。

復活能力をうばう「RDS」とゆう病気もあるが、感染者は人間とみなされない。

「ベクター(媒介者)」は発見しだい24時間以内に殺処分。

 

 

 

 

それゆえ悲劇もうまれる。

警視庁対ベクター特別班班長「剣崎」は、ベクターを愛した妹をうしなう。

 

 

 

 

風間リンはベクターを支援する「逃がし屋」。

権力と不死の力をそなえた敵に、絶望的な戦いをいどむ。

RPG-7でもだれひとり殺せない。

 

 

 

 

はげしいガンアクションがくりひろげられる本作だが、あじわいは独特。

射撃はほぼ無意味で、若干の時間稼ぎにしかならない。

真剣なのに遊戯的。

 

 

 

 

リンは組織の命をうけ、警視庁へ潜入していた。

居酒屋で口のまわりをビールの泡でよごしつつ、情報をひきだす。

 

 

 

 

大胆なスパイ活動ができるのは、運び屋の仕事をするときは、

かがやく短冊で顔形をくらませているから。

 

物語の完成度を問われたら、「かなり破綻してる」とボクならこたえる。

だがいまの作家は、揚げ足とられ、重箱の隅をつつかれるのをおそれすぎでは?

これくらい大胆不敵でいいんじゃないか。

 

 

 

 

「国連防疫事務所」(UNDOって略称がカッコイイ)も、装甲車両で都内をウロチョロ。

 

 

 

 

国連の対ベクター戦術は、一般市民をまきぞえにすること。

どうせ復活するのだから遠慮なし。

アクション漫画の文法を抜本的にかきかえ、読者を翻弄。

 

 

 

 

不死を否定する病「RDS」の拡散をもくろむ組織は、最終手段にでる。

剣崎を殺す。

無論、矢でも鉄炮でも命はうばえない。

しかしリンと愛しあえば、標的は死ぬ。

 

 

 

 

どぎついコントラストでえがかれる、殺しあいと、騙しあいと、不毛な愛憎。

緻密かつハチャメチャで、脳裏に焼きつきはなれない。




不死の猟犬 1巻 (ビームコミックス)不死の猟犬 1巻 (ビームコミックス)
(2014/06/13)
八十八良

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ジャンル : アニメ・コミック

『プリパラ』3話 百合の感情教育

 

 

チーム解散? 困るクマ~!

 

テレビアニメ『プリパラ』第3話

 

出演:茜屋日海夏 芹澤優 久保田未夢 鈴木千尋 高乃麗 佐久間レイ

演出:関田修

絵コンテ:柊陽菜

脚本:福田裕子

監督:森脇真琴

シリーズ構成:土屋理敬

キャラクター原案:金谷有希子

キャラクターデザイン:原将治 Cha Sang Hoon

アニメーション共同制作 :タツノコプロ DONGWOO A&E

放送:2014年

 

 

仮想空間でトップアイドルをめざす少女たちの物語。

キラキラで、パワーがあふれ、たのしい。

 

 

 

 

ふたりが仰天したのは、相棒が学校の先輩後輩としったから。

「プリパラタウン」では外見かわるので気づかない。

 

 

 

 

「南みれぃ」は中学部1年で、風紀委員長。

校則違反は絶対みのがさない。

 

 

 

 

「真中らぁら」は小学部5年。

違反チケットは100枚に達し、どちらかとゆうと劣等生。

 

 

 

 

「ちょっとらぁら、ピザの配達おねがいしていい?」

「かしこまっ!!」

 

 

 

 

イタリア料理店を経営する両親をいやな顔ひとつせず手伝うのが、

反抗期にはいってもおかしくない年ごろにしては、取り柄か。

 

 

 

 

小学部の生徒にプリパラを禁じる、独裁的な校長先生にうたがわれたときは、

「ヤギのものまねの練習中」といって、手帳をたべてしまう。

咄嗟の機転とクソ度胸にもすぐれる。

 

 

 

 

みれぃは古今東西のアイドルを研究したうえで、語尾に「ぷりっ」をつけるなど、

マジメな風紀委員長とかけはなれた「ポップなキャラ」をつくりあげた。

 

計算だかい様でズレてるところは、矢澤にこに似てる。

『ラブライブ!』からの影響があるかどうかしらないが、

規則にうるさいのは絢瀬絵里、たまに暴走するのは高坂穂乃果を髣髴。

 

 

 

 

「真中らぁら、神アイドルめざしますーっ!!!」

 

学校では水と油の関係のふたりだが、

アイドルユニットとしては、真逆の個性がたがいを補完しあう。

 

 

 

 

放課後、プリパラチェンジして特訓開始。

みれぃは金髪碧眼に、らぁらは身長や髪がのびる。

 

1億人の笑顔データを解析した結果、首の角度は「右斜め37.3度」、

口の端は「30.1度」あげるのが、いちばんカワイイんだとか。

 

 

 

 

にこっ♡

たしかにカワイイ。

「じゃ、らぁらもやってみるぷりっ」

 

 

 

 

あっははぁ~。

アイドルとゆうより、お笑い藝人のバカ笑い。

 

 

 

 

女子力ひくさにマネージャーの「クマ」も激怒。

 

 

 

 

アイドルの心得その4、サイン。

らぁらのサインはよめない、てゆうか字じゃない。

 

 

 

 

「なにもかもダメすぎ! こんな基本もできないなんて、らぁらのアイドルランクは、

一番下の「研究生」よりさらに下の、「消しゴムのカス」ぷりっ!!」

 

打たれづよいらぁらも、廃棄物あつかいはさすがにヘコむ。

 

 

 

 

ある日、風紀委員長は直談判しに小学部の校長室へのりこむ。

らぁらに堂々とプリパラをさせたくて。

「プリパラへいった女子のうち、97.9%が学校の成績もあがっており……」

 

 

高乃麗が怪演

 

 

ちょっとかわった髪型の校長は聞く耳もたない。

プリパラに異常な敵意をいだいている。

 

 

 

 

「友達ができるって、ステキなことです!

練習がうまくいかなくて、ときには厳しくあたってしまうこともあります。

でも、それも友達のことを信じているからです!」

 

 

 

 

らぁらは偶然、熱辯をふるう先輩を目撃していた。

委員長があたしのことを、こんなに真剣にかんがえてくれてたなんて。

ついてくのに必死で、想像もしなかった。

 

 

 

 

やさしさにこたえたい。

ありがとうの気持ちをつたえたい。

ステージ上の「メイキングドラマ」にすべてぶつける。

 

 

 

 

主演の茜屋日海夏と芹澤優は、声優アーティストのユニット「i☆Ris」のメンバー。

演技者の関係性が投影され、心うごかされる。

 

 

 

 

「ありがとう、みれぃさん! あたし見ちゃったんです。

みれぃさんが校長先生に、プリパラ禁止の撤回をおねがいしてくれたとこ」

「あ、あれはその……『計算』ぷりっ。覗き見してたのはわかってたぷりっ」

 

 

 

 

「これからもよろしく、み、み、み……みれぃ!」

もとめられ「さん付け」をやめるときの照れくささとか王道で、

こうゆう番組で百合予備軍はそだってゆく。

 

 

 

 

ポップ、ステップ、げっちゅー!

計算どおりのスピードで、神アイドルへの階段を駆けのぼる。



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中山敦支『ねじまきカギュー』完結 DNAを打つ

 

 

ねじまきカギュー

 

作者:中山敦支

発行:集英社 2011-14年

レーベル:ヤングジャンプ・コミックス

[以前の記事→1-4巻/5巻/6巻/7巻/8巻/9巻/10巻/11巻/12巻/13巻/14巻/15巻

 

《注意》

以下の文章では、物語の核心部分にふれています。

 

 

 

最終16巻は卒業式をえがく。

一番大泣きするのはアゲハなのがファンとしてうれしいし、富江の袴も似合う。

 

 

 

 

ラスボスは森先生だった。

政府のエージェントでありながら行動の自由をみとめられ、

校内で八方美人にふるまいつつ、陰で私利私慾にはしる。

 

 

 

 

彼女が黒幕系女子であることは4巻あたりで匂わされており、

執筆開始時どこまで意図してたかしらないが、構成はみごと。

「ククク……ヤツは四天王の中でも最弱……」的な御都合主義は1ページもない。

 

 

 

 

『ねじまきカギュー』は、ふたつの一騎打ちの物語だ。

ひとつはカモ先生と理事長、善と悪の相剋。

もうひとつはカギューと森先生、愛のつよさをきそう闘争。

前者はリクツっぽく、後者は地に足がつく。

 

 

 

 

森先生の人生は、バグったRPGみたいなもの。

まったく缺点をもたずに生まれ、すべて楽勝で、苦戦を経験したことがない。

退屈もてあます彼女は、不完全な人間にひかれる。

 

 

 

 

ミロのヴィーナスやサモトラケのニケは、缺けているからこそ、いっそう魅力的。

「完璧すぎる」とゆう自分の唯一の缺点を、他者をオモチャにすることでみたす。

 

 

 

 

森先生は決して「悪」じゃない。

だれかを傷つけたりしない。

それでもカギューたんとの激突はさけられない。

ふたりは正反対で、かつ愛がつよすぎるから。

 

 

 

 

裏で糸ひく系女子の「毒蜜(トキシシロップ)」でダウンした螺旋巻拳の使い手は、

心臓に拳をねじこみ復活、さらにおのれをメッタ打ち。

分子のスケールで肉体改造をはかる。

螺旋巻拳は、DNAの二重螺旋構造のアナロジーでもあった。

未完成だからこそカギューたんは進化するし、だからこそつよい。

 

 

 

 

トドメの一撃はキュビズム的破壊力。

中山敦支おなじみのモティーフ、パブロ・ピカソへのオマージュ。

藝術に完成はありえず、すべては解釈にすぎないことをまなんだのだろう。

 

 

 

 

そしてシェイクスピア的結末をむかえ幕はおりる。

 

萌えの流行に迎合しているのに古典的で、

単純なバトルものなのにサブカル的好評を博す、たぐいまれな傑作だった。

 

 

 

 

単行本のオマケは毛筆風のタッチで、いつになく「荒い」印象。

よりによって中山敦支が、最終巻で手抜きをするはずない。

息つく間もなく、全力疾走をつづけているだけ。




ねじまきカギュー 16 (ヤングジャンプコミックス)ねじまきカギュー 16 (ヤングジャンプコミックス)
(2014/07/18)
中山敦支

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グレゴリー・チャイティン『ダーウィンを数学で証明する』

エルンスト・ヘッケル『生物の驚異的な形』

 

 

ダーウィンを数学で証明する

Proving Darwin: Making Biology Mathematical

 

著者:グレゴリー・チャイティン

訳者:水谷淳

発行:早川書房 2014年

原書発行:2012年

 

 

 

メイナード・スミスとサトマーリの定義によると、生命とは、

「変異をともなう遺伝をしめし、自然選択による進化をおこしうる存在」のこと。

その本質は軍拡競争で、おなじ場所にとどまるための全力疾走でもある。

遺伝子は決して「利己的」じゃない。

ただひたすら創造性をたかめ、進化したがっている。

性によりゲノムの半分をすてる行動の、どこが利己的か?

 

 

 

 

数学者でコンピュータ科学者のチャイティンは、身体とDNAの関係を、

コンピュータのハードウェアとソフトウェアのそれになぞらえ、

ダーウィン的進化が作用することを数学的に證明。

 

『種の起源』の冒頭でダーウィンも、育種家による人為選択と、

自然選択の類似性をもちい論をときおこしている。

著者チャイティンの見立ては、そう突飛なものじゃない。

 

 

 

 

やや社交性に難のあるクルト・ゲーデルは、

プリンストン高等研究所の夕食の席で、わかい天文物理学者に対し、

「わたしは経験科学を信じない。信じるのは演繹的(アプリオリ)な真理だけだ!」といった。

苛酷な職場だ。

 

ところが「経験科学」の代表選手たる生物学に、

ゲーデル的かつチューリング的な「創造性の数学」がハマるのが、おもしろい。

 

 

 

 

著者は、計算可能性理論の「ビジービーバー問題」をとりあげ、

計算の数値が、生命体の「適応度」をあらわすとみなす。

3つの進化形態で、「累積的進化」が「しらみつぶしの探索」よりずっと速いとわかった。

 

有利であるちいさな進化が累積して進化がおこるとゆう、

半分しかできてない目などについての、ダーウィン理論の骨子と一致。

 

 

『生物の驚異的な形』

 

 

古代ギリシアや支那やルネサンス期イタリアが創造的で、古代エジプトが退屈なのは、

都市国家による分権支配と、中央政府による全体支配のちがい。

著者が属するユダヤ人社会も、律法集の内容やラビの任命など、

知識と知性をおもんじ、議論をこのむ伝統をもつ。

イスラエルの軍人は、退役後ハイテク企業を設立することがおおい。

つねに戦争状態だから、創造的でありつづけることを強いられる。

 

アメリカ人の6割しか進化論を支持しないことは、よく嘲笑の対象となるが、

ボクがおもうに、数学的に證明されないから信じなかった面もあるのでは。

 

さあ端末をいじり、ソフトウェアをヴァージョンアップしよう。

この場にとどまるために。




ダーウィンを数学で証明するダーウィンを数学で証明する
(2014/03/20)
グレゴリー・チャイティン

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睦月のぞみ『白銀妃』

 

 

白銀妃

 

作者:睦月のぞみ

掲載誌:『ハルタ』(エンターブレイン/KADOKAWA)2013年-

単行本:ビームコミックス

[同作者の記事→『兎の角』1巻/3巻/『ハコニワ喜劇』1巻

 

 

 

トルコ風の宮廷のハーレムへはいった、

銀髪の娘「リリーニャ」を主人公とする華麗なる絵巻物。

その美貌は後宮でもきわだつ。

 

 

 

 

睦月のぞみは人をくった作風のもちぬしで、ヒロインは超天然。

王の側室になったのも、褒美にネコがほしいから。

 

 

 

 

18歳の「アルスラ王」は、自由時間を読書についやしたいタイプ。

いやいや夜伽をつとめる女も、ガツガツ寵愛をもとめる女も、とおざけたい。

ハーレムとか無理、萎える。

 

 

 

 

先輩の「マルテナさん」から新人いびりにあうが、

リリーニャのたわわな乳房は、同性すら幻惑。

 

 

 

 

マルテナさんが褐色肌の「エーデル」に唇をうばわれる。

可愛かったのでつい。

国王そっちのけで狂い咲きする百合の花。

 

 

 

 

リリーニャいわく、女の子同士はノーカウント。

 

ぬるいハーレムラブコメが流行する業界の意表をついた、

リアルハーレムの物語だが、愛慾のもつれとか、政治的陰謀とか、

宮廷を舞台とする物語なら当然からむはずのイヴェントをスルー。

作者独特の、ヘンテコでピュアな恋愛観はゆるぎない。

 

 

 

 

マルテナさんは、継母に奴隷として売られた薄幸の少女。

「売られた」「買われた」なんて窮地を淡々と、いやむしろ冷淡にえがく。

かわいそうだけど、わらえる。

 

 

 

 

「王様との性的行為をやらないとダメなんだ」と、後宮の心得を説くエーデルさん。

ムードぶちこわしな、身も蓋もない言葉のチョイスが最高。

不毛すぎるガールズトーク。

 

ひきあいに出してわるいが、森薫の諸作みたいな、

勿体ぶるため異国の歴史を借りる安直さがない。

 

 

 

 

そして見開きのうつくしさ。

本作から手描きにもどしたそうで、流麗な筆づかいは冴えわたる。

 

 

 

 

残念系女子のリリーニャは、だまっていると背景に花がさくので、

妍をきそうマルテナさんとしては、ずっと天然発言をさせようとする。

 

 

 

 

つまり本作の主題は、「ムダに美人」。

女のうつくしさ自体をギャグにするなんて、きいたことない。

 

漫画家からひとり天才をあげろといわれたら、ボクは睦月のぞみをえらぶ。




白銀妃 1巻 (ビームコミックス)白銀妃 1巻 (ビームコミックス)
(2014/07/15)
睦月のぞみ

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アジア的奇襲攻撃

孫子の兵法書(撮影:vlasta2)

 

 

「兵は詭道なり」と『孫子』にある。

クラウゼヴィッツなどの戦争論は、こんなに欺瞞を重視しない。

『史記』にいたっては、荊軻など暗殺者を礼讃する「刺客列伝」まで立てる。

支那人は奇襲をこのむ。

 

孫子のいた春秋時代の支那は、クラウゼヴィッツのドイツより、

マキャヴェッリのいたルネサンス期イタリアにちかい。

同一文化内で離合集散をくりかえし、裏切りは日常茶飯事だったが、

おなじ民族間で戦争がおこなわれたので、憎悪は蓄積されない。

戦闘は、ある種の儀式として共有された。

 

異文化間の外交は、恐怖や怨恨や不信がはたらくのを、支那人は理解できない。

友を敵にするのは簡単だが、敵を友にするのは困難なのをしらない。

世界は自分たち同様、実利のみでうごくと信じる。

 

 

清軍に投稿したジュンガルの叛乱軍

 

 

劉暁波に2010年度のノーベル平和賞があたえられたとき、

中国政府はノルウェーに対しきびしい報復措置をとった。

ノルウェー政府は対処しようがなく、ひたすら困惑した。

 

領土問題で各国に脅迫的戦術をしかけるのは、開戦へもちこむためではない。

支那人ほど戦争をきらう民族はない。

それは、春秋戦国時代以来つづく儀式だ。

 

現在の中国の国境線は、清帝国の最盛時のものとなっている。

異民族に征服されてできた王朝なのは都合よく無視し、

「新疆ウイグル自治区」などの領有を正当化。

なら、インドとスリランカはおなじく英国に支配されてたから、

インドはスリランカの領有を主張できるのでは、と疑問がわく。

満洲族は中華文明にすみやかに同化されたから、

「実質的に漢民族の勝利」とゆうのが、かれらの論法。

 

いまだ孔子や孫子の世界にいきる支那人を反省へみちびくのは、

ノーベル平和賞でもみあわぬほどの難事業だ。

 

 

林羅山

 

 

戦国時代までの、現実社会に対するイキイキした知的関心を、

漢武帝による儒家国教化以降の支那はうしなった。

学問は、漢代以前の典籍に注釈をつけることを意味する様に。

 

それで安定した皇帝専制国家をつくりあげたのは評価できるが、

滑稽なのは、もろこしの聖人をありがたがる日本の儒者たち。

支那人が書をよむのは「官」になり、一族を裕福にする目的がある。

かたや日本では、いくら勉強しても官になれないし、その学問は社会でまるで応用きかない。

なのに、わが国で「学者」といえば儒者をさした。

 

 

狩野芳崖『悲母観音』(1888年)

 

 

明治期の日本は、「アジア」とゆう概念をヨーロッパからまなぶ。

福沢諭吉的な「脱亜入欧」でもよいし、岡倉天心的な「東洋の理想」でもよい、

いづれにせよ日本人の世界観は、ついに中華思想から解放された。

 

なぜ西洋人は広大で、文化的に多様な地域を「アジア」と一括りにしたか。

自分たちより下等な人間のすむ場所を定義するため。

いや、人間とすらみなさない。

20世紀でもイギリス軍の女性捕虜は、日本人の男の目の前で平気で着がえた。

猫や虫とおなじく、羞恥心の対象じゃなかった。

 

 

真珠湾で魚雷攻撃をうけるアメリカ戦艦群

 

 

江戸時代のなかば、本居宣長など「国学者」といわれる連中があらわれ、

死んだ学問を珍重しつづける日本の儒者を批判。

しかし儒学は役立たずな分、人畜無害だったが、

支那を全面侵略していた昭和前半にもてはやされた国学は、

天皇制を拡張せんとする侵略国家をみちびいた有害な流派となる。

 

ただ皮肉にも、「兵は詭道なり」に忠実に真珠湾を奇襲攻撃するあたり、

看板をかえても、身にしみついた戦略は孫子のままだった。







【参考文献】

エドワード・ルトワック『自滅する中国 なぜ世界帝国になれないのか』(芙蓉書房出版)

高島俊男『お言葉ですが… 別巻6 司馬さんの見た中国』(連合出版)




自滅する中国自滅する中国
(2013/07/24)
エドワード・ルトワック

お言葉ですが…〈別巻6〉司馬さんの見た中国お言葉ですが…〈別巻6〉司馬さんの見た中国
(2014/06)
高島俊男

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やまもとまも『小杉センセイはコドモ好き』

 

 

小杉センセイはコドモ好き

 

作者:やまもとまも

掲載誌:『まんがくらぶ』(竹書房)2012年-

単行本:バンブーコミックス

 

 

 

百合ヶ丘保育園のやさしい保母さん「小杉先生」と、

ツインテでツリ目で八重歯もカワイイ、年長の「くるみちゃん」。

心あたたまる情景……のはずなのに、動揺する幼女。

 

 

 

 

なぜって、先生が「コドモ好き」でスキンシップ過剰だから。

あきらかに性的関心をもたれてる。

 

 

 

 

5歳にしてはマセてるくるみは、それが「ロリコン」とゆう異常性慾と認識するが、

なにせ敵は女性保育士、「コドモ好き」なのも当然と追及かわす。

保育園は、合法ロリセクハラの温床だった。

 

 

 

 

同僚からの評価もたかい。

美人で仕事熱心な保母さんにしかみえない。

 

 

 

 

「みんなと過ごすこの時間が、ずーっと続いてほしい…かな…」

 

不憫系男子「山田先生」は胸キュン。

くるみちゃんは背筋がゾクッ。

 

 

 

 

くるみの母親が、ようやく娘のSOSサインを察知。

法の力で身をまもろうと、六法全書をおねだりされたから。

 

 

 

 

園児の髪型の変化を、ミリ単位で把握する小杉センセイ。

保護者からの信頼あつく、くるみちゃんのママも籠絡。

いよいよ孤立無援!

 

 

 

 

だが年少組に、「子供は好きでも嫌いでもない、普通」といいはなつ、

保母さんにしてはクールな「佐野先生」がいた。

ロリコンじゃない先生もいると知り、感動するくるみちゃん。

 

 

 

 

セクハラ被害の反動で、佐野先生にベタ惚れする。

保育園は、毎日が修羅場で泥沼。

みぐるしく愛をもとめる女たち(うち不憫系男子1名)の肉弾戦。

 

 

 

 

たとえ児童虐待スレスレだろうと、それぞれの性慾がおおらかに肯定される。

半ズボンのくせ「スカート」をなのる、キュロットスカートへの憎悪など、

自分なりの正義をつらぬく小杉センセイを、読者はいつのまに応援。

 

ある意味、革命的な作品だ。




小杉センセイはコドモ好き 1 (バンブーコミックス)小杉センセイはコドモ好き 1 (バンブーコミックス)
(2014/07/14)
やまもとまも

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ムーアの憶測

アップルI(1976年)

 

 

「コンピュータチップのトランジスタ部品数は2年ごとに倍増する」とのべた、

ゴードン・ムーアによる1965年の論文は、自他ともにみとめる「まぐれ当り」だが、

歴史的にはチアガールの声援みたいな意味があった。

この予言が世界中のエンジニアを駆りたて、半導体産業を牽引する。

ムーアの憶測は、ムーアの法則となった。

 

チップへつめこむトランジスタの数は物理的限界がある。

トランジスタは、物質の基本要素である「原子」よりちいさくできず、

単一原子によるトランジスタが存在する以上、すでに頭打ち。

 

 

作成者:Jbw2/WhiteTimberwolf

 

 

だが量子コンピュータの微視的なはたらきが、限界をデリート。

粒子は同時にふたつの状態となりうるので、

量子ビット(キュービット)は「0」「1」「01」の三つの値をとれる。

たとえば3桁の2進数なら、量子システムは8個保存できるうえ、

それらの数値で同時に計算をおこなう超高速コンピュータに。

量子コンピュータが途轍もなくはやいのは、

「多宇宙(マルチヴァース)」で同時に計算実行してるから、なんて解釈もある。

 

1957年に「多世界解釈」を発表したヒュー・エヴェレットは、

非難と無視により物理学界をおわれ、失意のまま51歳で早世した。

いまは、チップのなかに他世界への扉があるとマジメに論じられる。

 

 

DNAでつくられた論理回路

 

 

この量子コンピュータも、キュービットの寿命がみじかいとゆう難問があるが、

研究者はムーアの法則のただしさを證明しつづけるため邁進。

シリコンのかわりにDNA鎖を情報ビットの土台とする方法など模索する。

 

DNAコンピュータは、生物の設計図が暗号化された分子で、2進数の1と0をやりとり。

1994年にレナード・エイドルマンが、試験管へいれた生物分子に、

「巡回セールスマン問題」を解かせるのに成功した。

生体適合性がよく、医療分野で応用される可能性がたかい。

 

これよりさきの進化なんて、ボクには憶測すらできない。







【参考文献】

ヘイリー・バーチ/マン・キート・ルーイ/コリン・ステュアート『ヴィジュアル版 人類が解けない科学の謎』(原書房)



ヴィジュアル版 人類が解けない科学の謎ヴィジュアル版 人類が解けない科学の謎
(2014/03/28)
ヘイリー バーチ、コリン ステュアート 他

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みよしふるまち『ゆりかごの乙女たち』

 

 

ゆりかごの乙女たち

 

作者:みよしふるまち

発行:マッグガーデン 2014年

レーベル:マッグガーデンコミックス Beat'sシリーズ

 

 

 

袴姿の女学生。

「大正ロマン」は絵になる。

 

ヒロインの「入江環」が、上級生からタダゴトでなさそうな手紙をもらった。

吉屋信子の少女小説『花物語』などでえがかれる「エス」

すなわち百合のプロトタイプを再生する、1巻完結の物語。

 

 

 

 

開校以来の秀才とよばれる環は、高等女学校の流行に関心しめさないが、

ベンチで居眠りする「久世雪子」とガール・ミーツ・ガールをはたす。

シェイクスピアの『ソネット集』を原書でよむ令嬢だ。

 

 

 

 

環がすきなのは、学校に持ちこみ禁止の低俗な恋愛小説。

ほかにイプセン『人形の家』やバーネット『秘密の花園』など、

文学談義が文学少女の魂をむすびつける。

 

坪内逍遥による『ソネット集』の翻訳書がでたのが1934年らしいから、

大正時代にしてはススんだ趣味をもつ娘たちだ。

いまなら『カゲロウプロジェクト』の話題とかでもりあがる感じ?

 

 

 

 

大正ロマンと現代の百合を融合させるのが、本作のテーマだろう。

環のツンデレな言動やデフォルメ表現は、ハイブリッドなあじわい。

 

 

 

 

ふたりづれで男装し映画館へゆく、モガ風ボブの「絹子」さん。

本気でエスにはまっている。

 

 

 

 

女学校のみだれた風習に距離をおきながらも、環と雪子はつよく惹かれあうが、

雪子に海軍士官との縁談がもちあがるとゆう、お約束の顛末に。

 

 

 

 

嫉妬にくるった絹子さんの「妹」が刃傷沙汰におよぶなど、意外な展開も。

 

 

 

 

百合はあたらしい文化か、大正ロマンの焼き直しか、またはその両方か。

ボクは判断できない。

『花物語』や川端康成(中里恒子)『乙女の港』くらい読まないと話にならない。

少女たちの指先がかすかにふれあうときの緊張感は、21世紀的とおもうが。

 

 

 

 

ただ、恋にまどう乙女の横顔のうつくしさに、時節は関係ないともおもう。




ゆりかごの乙女たち (マッグガーデンコミックス Beat'sシリーズ)ゆりかごの乙女たち (マッグガーデンコミックス Beat'sシリーズ)
(2014/06/03)
みよしふるまち

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『普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。』2話

 

 

遊びに行ってみた。

 

テレビアニメ『普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。』第2話

 

出演:伊藤美来 三澤紗千香 室園丈裕 M・A・O 井澤詩織

演出:大宅光子

絵コンテ:麦野アイス

監督:名和宗則

キャラクターデザイン:清水祐実

シリーズ構成・脚本:綾奈ゆにこ

原作:小杉光太郎(一迅社刊)

アニメーション制作:feel.

放送:2014年

[以前の記事→アニメ1話/原作1巻

 

 

「なにゃこ」が自分の名前をまちがえず「奈々子」といえた。

流川市のローカルアイドルとして着実にそだっている。

 

 

 

 

締めの部分でやっぱり噛んでヘコむ。

「カワイイからOKよ♡」と、相方の「縁(ゆかり)」はフォローしてくれるが。

 

 

 

 

和菓子屋での食レポにいどむ。

店の主人が、おっかない顔して見つめる。

 

 

 

 

奈々子は責任感つよいタイプ。

「わたしのダメなレポートで、お店が潰れちゃったらどうしましょう~」

 

 

 

 

「自然な感じで」と指示されても、一体なにが「自然」なのやら。

カチコチにかたまり、食べる前から「おいしいです」と口走るなど醜態さらす。

 

 

 

 

気がきく縁の進言で、予行演習することに。

「ふぉ、ふぉぃひぃへふ、ひゅはりひゃん!!!」

 

 

 

 

「カメラまわってないから、指までなめちゃお♡」

勿論カメラはまわっており、ロケは大成功。

 

 

 

 

年齢はひとつしか違わないのに、

やさしく、かしこく、美人で、仕事もソツがない先輩に奈々子は心酔。

夜中にかかってきた電話で、すごいすごいと褒め称える。

 

縁の心境はフクザツ。

尊敬されるより、友達になりたくて。

むこうから気軽に電話できる距離感になりたくて。

 

 

 

 

縁の家でユニット名とか衣装とか、打ち合わせすることに。

マンションのエレベーターをおりると、クラッカーでお出迎え。

フロア全体が自宅だから、近所迷惑にならない。

服もロリータ系で、いつもとちがう。

 

 

 

 

クッションのしたに、女の子同士でアレコレする漫画雑誌(『コミック百合姫』)を発見。

「えぇっ、なに、縁さんってそうゆうシュミ~!?」

 

 

 

 

盛りだくさんのスイーツでもてなされるが、

自身が食われる危険をおもうと、あじわう余裕はない。

初音ミクみたいな声で「アァー、オイシィー」と感想のべる。

 

 

 

 

「あと、とっておきのダックワーズが……」

「縁さん、これ以上はちょっと」

 

食い意地のはった奈々子は遠慮などしておらず、本気で総カロリーがやばい。

 

 

 

 

「そ、そうね……」

しゅんとする先輩。

友達になりたかったのに、おばあちゃんと孫娘みたいな関係に。

 

 

 

 

「やっぱりいただきます! あとで運動すれば大丈夫ですよね!」

 

自分のため用意してくれたものを、ことわるなんてワガママとおもいなおす。

乙女には、体型維持より大切なものがある。

 

 

 

 

それにしても、普段はオトナな先輩の過剰接待におどろいた。

 

「家にはじめて友達よんで、舞いあがってる子みたい……なんて、

縁さんにかぎってありえないですけど」

 

 

 

 

ぽろぽろ涙をこぼす。

図星だった。

どうすれば仲良くなれるかわからず、右往左往していた。

 

 

 

 

仕事のことはわすれ、ガールズトークに花をさかせる。

はじめてふたりは「パートナー」となった。

 

 

 

 

人が人に胸襟をひらくときの不安をせつなくえがく名場面だった。

「これからもよろしくお願いします!」

帰りぎわの奈々子のお辞儀の角度に心がこもる。

 

 

 

 

不器用だけど純粋なヒロインとその仲間たちが、梅雨空にさわやかな風をふかす。




普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。Vol.1(初回生産版) [Blu-ray]普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。Vol.1(初回生産版) [Blu-ray]
(2014/09/24)
伊藤美来、三澤紗千香 他

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長谷川豊『「見たいテレビ」が今日もない』

フジテレビのアナウンサー、中村仁美と塚越孝

 

 

「見たいテレビ」が今日もない メディアの王様・崩壊の現場

 

著者:長谷川豊

発行:双葉社 2014年

レーベル:双葉新書

 

 

 

フジテレビの女子アナは、ゆりかもめで通勤する。

当然ストーカーも出没するが、会社は特別あつかいしない。

自腹をきり、セキュリティのすぐれた高級マンションに居をかまえるが、

わかい女には負担だ。

 

局長クラスに密室ではなした内容が、週刊誌に載ることもある。

裏で取引し、リークしている。

 

朝9時半の館内放送はアナウンサーがつとめる。

編成局のゴルフコンペによばれ、お偉いさんのお酌をさせられることも。

「1秒でもはやく辞めたい」と女子アナはかんがえている。

 

2005年の「ライブドア騒動」で、ニッポン放送からアナウンサー11人が移籍したが、

フジテレビはかれらを閑職へおいやった。

2012年6月、塚越孝が社屋のトイレで、抗議とうけとれる自殺をする。

会社はいっさい非をみとめず、現場をセメントでぬりかためた。

 

著者は「横領疑惑」でフジテレビをおわれたが、

フリー転向後TOKYO MXなどで活躍するアナウンサー。

古巣への愛憎相半ばする、おもしろい本だ。

 

 

なぜか合掌する滝クリ

 

 

『ニュースJAPAN』の滝川クリステルの人気は、週刊誌がつくりあげた虚構。

実際は滑舌わるく、政治の取材経験がないためミスがおおかった。

キャスターが秋元優里にかわると視聴率は回復。

 

東京オリンピック招致成功も、「お・も・て・な・し」のおかげではないと筆者はゆう。

45億米ドルの準備基金をぶちあげた、猪瀬直樹都知事の悲惨な発音のプレゼンが、

資金不足になやむIOCの心をうごかしたと。

とはいえ、まんまと国内に自分を売りこんだ滝クリはたいしたものとボクはおもう。

 

一見はなやかなアナウンサーの価値は下落している。

ナレーションは声優に、仕切りは藝人にまかせる流れがある。

内田恭子や高島彩あたりの時代が絶頂期で、あとはおちる一方。

 

 

2011年8月21日、フジテレビ本社周辺

 

 

フジテレビの堕落が明白となったのは、2011年の「韓流ドラマ反対デモ」。

社員はネトウヨの空騒ぎを鼻でわらった。

たしかに意味不明で愚劣な運動だが、局側の対応こそ最悪だった。

目の前にネタがころがってるのに無視なんて、テレビマンとして自殺行為。

ジャーナリスティックに反論したり、公開討論の場をもうけてもよい。

フジらしくゆくなら、江頭2:50を群集に突入させ『めちゃイケ』でながすとか。

 

 

3月31日午後9時ごろの新宿アルタ(撮影:高木あゆみ)

 

 

ことし3月に『笑っていいとも!』が終了したのは、

「楽しくなければテレビじゃない」の時代のおわりでもあった。

娯楽の王は、もうテレビじゃない。

 

高額すぎるタモリのギャラ、アルタ収録の不便さと使用料……。

『いいとも!』がお荷物なのは周知の事実だった。

しかしフジは看板番組を切れないし、タモリのギャラをさげる交渉なんてもってのほか。

ダラダラつづけるしかなかった。

番組終了の背景は諸説あるが、真相にちかいのは、

内情を察したタモリが「もういいよ」と決断したってことらしい。

 

普段アニメとサッカーしか見ないボクは、

特にテレビへ思い入れはないが、なんだかしんみりさせられる。




「見たいテレビ」が今日もない メディアの王様・崩壊の現場 (双葉新書)「見たいテレビ」が今日もない メディアの王様・崩壊の現場 (双葉新書)
(2014/05/21)
長谷川豊

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関谷あさみ『千と万』2巻 おわらなくもない夏

 

 

千と万

 

作者:関谷あさみ

掲載誌:『コミックハイ!』(双葉社)2012年-

単行本:アクションコミックスコミックハイブランド

[1巻の記事はこちら

 

 

 

本巻は、中学1年生「詩万(しま)」の夏休みからはじまる。

8月31日の夜、宿題は半分しかおわらず、寝床で冷や汗ながす。

結局やらない。

 

 

 

 

「詩万ちゃんちはお母さんがいないから、うるさくなくていいねー」

友達の発言がいちいち癇にさわる。

父子家庭なのは気にしてないけど、直截にいわれたらうれしくない。

暑いせいかイライラする。

 

 

 

 

図書館で電話にでたり、デリカシーないところが嫌い。

注意したら反論するところも。

でも漫画とか貸してくれるし、いつも一緒にいる。

 

 

 

 

父親のことも、好きでもなく嫌いでもなく。

夏祭りを友達にドタキャンされたので、父とでかける。

「屋台でなにか買ってやる」といわれて。

 

 

 

 

浴衣にはあまり関心ない。

たくさん食べられなくなるから。

パックマンみたく、食欲が彼女の行動原理を支配。

 

 

 

 

特にクライマックスをむかえず、夏はおわった。

秋の運動会では、父がせっかく早起きしてつくったお弁当を、

見栄っぱりの娘は自分のだけもってゆき、一緒にたべてくれない。

 

 

 

 

詩万はルックスがよく、本人も自覚してるが、まだオシャレにめざめてない。

家ではジャージ、外でもスカートをはかない。

それでも叔母からもらった、レース素材のスカートで街へでたときは鼻高々。

 

 

 

 

ちっとも劇的じゃない日々のなかで回想される、父娘のあいだの大事件。

口答えする詩万におもわず手をあげたら、鼻血がでた。

父の方がパニックおこしたのをみて、娘はあることをひらめく。

パワーバランスを一挙に逆転する戦術、つまり「ウソ泣き」を。

 

 

 

 

月経がはじまってからは、「生理痛」とゆうチートスキルを習得。

こまったら都合よく発動、一撃で「クリティカル 9999ダメージ」。

カウンターパートとなる母がいないので、やりたい放題。

 

 

 

 

正月は父の妹「那由」がきて、コタツでごろごろ。

クリスマスプレゼントの3DS『パズドラZ』であそぶ。

詩万はすきな人からとどいた年賀状にドキドキ。

 

「缺損家庭」だけど決して鬱展開にならず、かといって空騒ぎもせず、

なにもおこらない様でいて、ちょっとづつ変化してゆく。

それをしあわせって、ひとは言うのかもしれない。




千と万(2) (アクションコミックス(コミックハイ! ))千と万(2) (アクションコミックス(コミックハイ! ))
(2014/07/10)
関谷あさみ

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安堂維子里『水の箱庭』

 

 

水の箱庭

 

作者:安堂維子里

掲載誌:『週刊漫画TIMES』(芳文社)2013年-

単行本:芳文社コミックス

 

 

 

少女は、一階のつきあたりの部屋へはいるのを禁じられていた。

宅配便をはこぶ名目でのぞいたら、そこは異次元。

 

 

 

 

浪人生の兄が、自室を水中につくりかえた。

受験と父親のストレスに背をむけ、魚たちの世界におぼれる。

 

 

 

 

ある夜、原因不明の火災で自宅が全焼。

行方をくらませた兄による放火と父はうたがう。

大切な水槽をもやすはずないと、妹は信じる。

 

生命を象徴する「水」と、破壊を象徴する「火」。

イメージの対照があざやか。

 

 

 

 

18年の時がすぎ、少女はアクアショップではたらいていた。

かなしい記憶をもつ「朝霞水紀(あさか みずき)」の、前向きな職業生活をえがく漫画。

 

 

 

 

水槽はただうつくしいだけでは、心をいやせない。

オーナーの人生や思想と交流せねばならない。

 

安堂維子里(いこり)は、「水」をモチーフとするSF/ファンタジー系作品を発表してきた作家。

本作は水への執着をそのまま、「お仕事モノ」のリアリズムにおとしこむ。

 

 

 

 

開業したショッピングモールのためのイヴェント水槽では、

ラピュタみたいな浮島のまわりを、熱帯魚が雲の様にながれる。

宮﨑駿のアニメのなかへとりこまれる気分に。

 

業界のうわさでは、失踪した兄もおなじ仕事をしているらしい。

ガラスと水のむこうに、きっと尋ね人はいる。

せつない感情と、日々のドタバタと、モノクロームの幻想風景がとけあう佳品だ。




水の箱庭 1 (芳文社コミックス)水の箱庭 1 (芳文社コミックス)
(2014/07/08)
安堂維子里

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落合淳思『漢字の成り立ち』

 

 

漢字の成り立ち 『説文解字』から最先端の研究まで

 

著者:落合淳思

発行:筑摩書房 2014年

レーベル:筑摩選書

 

 

 

「字源」、つまり漢字の構成原理についての研究史をまとめた本。

実はあまり語られなかった世界だ。

藤堂明保や白川静といった字源の研究者が権威化し、

反駁しづらい状況がうまれ、ふるい学説が漢和辞典に引用されつづけている。

普段は歯に衣きせぬ高島俊男(藤堂にちかい立場)が、

この話題にかぎってはお茶をにごすのを、ボクも読んだことがある。

 

著者は1974年うまれ。

孫の世代がようやく、歴史を説きおこしだした。

 

「字音」を重視した藤堂明保は、

スウェーデンのカールグレンに影響うけ、上古音を復元したのが特徴。

西洋言語学の理論をとりいれ、隙のない体系を構築した。

ただし応用に無理があった。

漢字は、つくられた段階では「字音」が考慮されたものでも、

のちに「字形」のウェイトがたかまる。

発音がかわるたび字形をかえるのは非効率だから。

上古音自体、いまだ確定しないのがおおい。

 

 

 

 

かたや白川静は「字形」をおもんじた。

50歳をすぎてから本格的に字源研究をはじめた白川は、

甲骨文字や金文の知識を利用しつつ、文化や思想の面からも分析。

スケールおおきい学説は、一般読者にウケがよかった。

 

「魯」の下部が祭器であることの発見などは、すぐれた成果だ。

 

 

 

 

問題は、字源をなんでも「呪術儀礼」にむすびつけたこと。

その割合は3分の2におよぶ。

「鳴」が「口+鳥」でなく、「鳥の鳴き声による占い」と説くにいたっては、

さすがに牽強付会といわざるをえない。

 

たとえ殷代だろうと、王朝を呪術だけで維持できるだろうか。

合理的で物質的な支配機構が前提だったのでは。

じっさい祭政不可分な時代では、祭祀は王の支配権をつよめる力があり、

聖職者も神事以外のさまざまな職務をになっていた。

 

ボクがおもうに、漢字とゆうテクノロジーが開発され、普及したのは、

徴税や徴兵の公平性、商取引の信頼性などが目的だったのではないか。

 

複雑な事象をズバッと一元的にときあかした研究者を、

ひとは「大学者」と讃美するが、えてして彼らの方法は学術的じゃない。

日本語だったら、大野晋の「タミル語起源説」とか。

けっきょく複雑なものは、複雑なのだ。

 

 

 

 

著者はPCでデータベースをつくり、用例を検索できるようにした。

たとえば殷代に「省」が、呪術的行為を意味しないのを確認できる。

表示可能な字形の数など、技術的限界もあるが。

 

文系の高等教育をうけるには、4~5000字の知識が必要だが、

漢字を分解すると、意味のある形は300ほどにまとめられる。

最新の研究にもとづき初等教育をアップデートし、

日本の文化と文明が発展するスピードをはやめるべきだろう。

 

いまさら漢字をすてるわけにゆかないのだから。




漢字の成り立ち: 『説文解字』から最先端の研究まで (筑摩選書)漢字の成り立ち 『説文解字』から最先端の研究まで (筑摩選書)
(2014/04/14)
落合淳思

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『普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。』1話

 

 

【ろこどる】はじめてみた。

 

テレビアニメ『普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。』第1話

 

出演:伊藤美来 三澤紗千香 室園丈裕 M・A・O 井澤詩織

演出:ふじいたかふみ

監督・絵コンテ:名和宗則

キャラクターデザイン:清水祐実

シリーズ構成・脚本:綾奈ゆにこ

原作:小杉光太郎(一迅社刊)

アニメーション制作:feel.

[原作の記事はこちら

 

 

高校1年生の「宇佐美奈々子」は、友達とプールへゆくため水着がほしい。

 

 

 

 

手持ちの金額は3000円で、ちょっとたりない。

これじゃ自分だけ「スク水で参加」になっちゃう!

 

 

 

 

市役所につとめる叔父が、イベントの手伝いのアルバイトを紹介してくれた。

時給1000円で2時間の簡単な仕事らしい。

渡りに船ととびつく。

 

 

 

 

市民プールにつくと、意外と立派なステージが。

ここに立って、司会や歌をやらされることに。

 

 

 

 

ぶっつけ本番で、「流川市」を町おこしするローカルアイドルになるなんて無理。

だいいち、アイドルなんて興味ないもん!

 

逃走する奈々子にむけ、叔父が小学校時代の作文を朗読。

「わたしの将来の夢は、アイドルになることです……」

 

 

 

 

ロコドルとして活躍する「小日向縁(こひなた ゆかり)」と顔合わせ。

「流川ガールズ」結成の歴史的瞬間だ。

 

 

 

 

未来の栄光(?)を予知できない奈々子は、また脱走をはかる。

こんな美人でスタイル抜群のひとがいるなら、わたしなんて必要ないじゃない!

 

 

 

 

彼女は罠にはめられた。

給料の前払いで買った水着は、「市民の血税」のおかげ。

それを無下にするのか?

 

 

 

 

だが奈々子の心に火をつけるのは、脅し文句じゃない。

「無料のイベントなんだから適当でいい」とゆう叔父に対し、

「やるからにはちゃんとやらなきゃ!」と、ド根性をみせる。

 

 

 

 

「普通の女子高生」である奈々子の唯一の武器、それは「頑張り屋さん」なところ。

学校の日直の仕事だって、決して手抜きしない。

 

しっかり原作のカナメをおさえてあり、うれしかった。

 

 

 

 

シリーズ構成および1話脚本は、百合描写に定評ある綾奈ゆにこ。

原作がボリュームすくないので、脚本家の話をふくらます腕がとわれる。

 

 

 

 

バスでみかけた、軽音部の女の子の会話に耳をそばだてる。

わたしもなにか夢中になれるものがほしい。

でも自分のやりたいことって、なんだろう。

 

思春期女子の内面のちくちくする部分を丁寧にえがく。

 

 

 

 

主演の伊藤美来は17歳で、これが初主演。

「現役」しか出せない初々しさが、共感をよぶ。

 

 

 

 

イベント当日はミス連発。

「なにゃこ」の愛称が定着する噛みっぷりが見どころ。

 

 

 

 

原作の水着が地味な黒だったのをおもうと、

アニメの色彩(色彩設計:田川沙里)の威力は、水着描写でフルに発揮されると痛感。

 

 

 

 

もちろん漫画は漫画で、のびやかな描線をたっぷりあじわえるが、

色つきでグリグリうごけば目は釘づけ。

 

 

 

 

即興でえらんだ曲は、流川市民おなじみの『あぁ流川』。

音楽に関してはアニメが圧勝。

 

 

 

 

奈々子のステージ度胸が炸裂、流れるプールが流れないほどもりあがる。

 

 

 

 

失敗だらけだけど、つい応援したくなるローカルアイドル。

初舞台ながら、そのかわいさはすでにグローバル。

 

 

 

 

原作者の地元・千葉県流山市をモデルにしてるらしい、

水と緑とみりんしかウリのない流川市を、しょって立つふたり。

 

 

 

 

アニメ版も、「頑張る女の子」がすきなひとなら、だれでも推薦できる作品だ。




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小説23 再会

『フリーダム・シスター』


登場人物表


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10月27日 朱星ジョージ




 千葉市緑区のビジネスホテルの一室で、アリアと朝食をとるところに、妹と中田参謀長がとびこんできた。

「まだ食べてんのかアニキ。ミンスの裏切り者がきたぞ」

「ミンス?」

「民主党だよ、売国朝鮮政党の」

 門田ホウセイ。衆議院議員だったが革命にくわわり、北方軍の司令官となった。性格や能力に問題ありと聞くが、人のことはいえない。

 幕張防衛戦での敗走のなか、一部の役人や将官がオレを解任し、かわりに門田を総司令官にしようと策動した。だが中国との同盟が成立したあと、政府軍が幕張を放棄するなど状況は激変、陰謀は陰謀のままおわった。

 ジュンに、紙の束とUSBメモリをわたされる。

「メールと通話の記録。これで共謀者も一網打尽にできる」

「そうか、ありがとう」

「アニキ、全員死刑に……」

 長袖のポロシャツをきた四十歳くらいの男が、「おはよう、朱星君!」とさわやかな挨拶とともに姿をあらわした。

 会議は午後からなのに妙に早いのと、オレを役職名でよばないのは駆け引きだろう。

 丁重に挨拶をかえす。

「おはようございます。直接お会いするのははじめてですね」

「先の敗戦は残念だったが、北部戦線は依然としてわが軍が優勢。力をあわせ難局をのりこえよう!」

 ジュンが舌打ちをくりかえすのを、門田は聞こえないふりする。いまにも妹は暴発しそうだ。

 門田の胸ポケットがふくらんでるのに気づいた。

「ライターをお持ちでしたら、貸していただけますか?」

「キミは未成年だろう。立法府にいた人間としては……」

「ここに解任騒動に関する證拠がしるされています。ボクはまだ読んでません」

 目のまえで火をつけ、灰をトイレにながした。USBメモリはコーヒーカップにしづめる。

 ジュンのおおきな眼球が、みひらいた目からこぼれ落ちそうで心配になった。





 午前中に戦略会議がおわったあと、さっそく妹になじられる。

「バカアニキ、あの情報をチェックする大変さをわかってないだろ! そうゆう甘ちゃんだから裏切られんだよ!」

「警告になったからいいのさ。それに叛逆者がでたのも当然だ。オレに軍事的才能がないのは事実だし。でしょ、中田さん?」

 ノートパソコンをたたいている参謀長に話をふる。

「自分のことを棚に上げていいますが、司令に将才はないですね。断言できます。参加したほとんどの戦闘で負けてますから」

 予想以上に遠慮なく批評された。

「じゃあダメじゃん。アリアさんなり、アイシェンさんなりに交代しろよ」と、セーラー服の革命家が口をとがらせる。

「でも大多数の職業軍人は司令を支持しています。傑出した人物だと敬意をはらってます」

「はぁ、どこが?」

「部下に対し公平で、自分は決してハメをはづさない。いざとゆうとき決断をくだせる。そしてなにより、戦況の良し悪しにかかわらず感情的にならない」

「ニブいだけだよ、アニキは」

 妹に「感情をおさえられるのはオマエに鍛えられたからだ」と皮肉をいおうとしたら、蒼ざめた兵が連絡にきた。

 ある捕虜の身元が判明した。氏名は「朱星ヒロシ」、階級は陸軍中佐。われわれの父だ。





 軍医の説明によると、父は幕張の戦いで衝突事故をおこした車両にいた。右足切断などの手術をおこなうも昏睡状態がつづくが、けさ意識をとりもどした。

 妹と女性軍医をつれ部屋にはいると、オヤジがベッドに腰かけている。

「少々『アンバランス』なので正座はできかねる。容赦ねがいたい」

 軍医が息をのむ。自力で上体をおこしたのが信じられないらしい。医者の出番じゃないので退室してもらった。

 パイプ椅子を二脚ならべてすわる。

「ジョージ、稽古はしているか」

 間髪いれず質問がとぶ。

「全然ダメだね。サボってるよ」

「多忙なときこそ、稽古で自己をとりもどすんだ。一日もやすむな」

 どちらが重傷の捕虜かわからない。

「あいかわらずだな、お父さんは」

「オマエは随分かわったな。まさか叛乱軍の首領になるとは。いや、責めているのではない。なった以上、死力をつくせ」

 ジュンはうつむいたまま。妹と父は反りがあわず、いつからか会話がなくなった。両親が離婚してからは一層。

 オレはオヤジがきらいじゃない。きびしすぎる父親だが、単純でわかりやすい人だし、尊敬もできる。妹にはもっとやさしくすべきとおもうが。

 ふと、頭のなかで渦まいていた疑問の数々がつながる。政府軍の戦略は父がたてていたとひらめく。敵のうごきを読み、コントロールする。剣道の試合とおなじ。完璧主義がわざわいし、偵察のため深入りしすぎて捕われたのだろう。

「そうか、オレはお父さんと戦ってたのか」

「わるいが作戦に関しては一切言及できない」

「いわなくてもわかる。あれはお父さんの戦い方だ。勝てなかったわけだ」

「わたしは一作戦参謀にすぎない。それに俘虜の身で功をほこっても、むなしいとおもわんか」

 日々の激務と鍛錬でぶあつくなった面の皮の下に、よろこびが見え隠れ。政府軍中佐はつづける。

「そっちには中田がいるだろう。陸大百二十六期の」

「うん、力になってくれてる」

「陸軍でも切れ者でとおっていた男だ。ただ、いささかソロバンにたよりすぎるな」

「ソロバン?」

「兵力集中の原則に忠実だから、敵は予測しやすい」

 ガタンと音をたてジュンがたちあがる。外から食事をはこんできた。

「アニキの大バカ野郎。それがケガした家族との会話かよ」とかすれ声でゆう。「お父さま、お腹がお空きではないですか」

 三年ぶりに父へかけた言葉だった。

 幼いころのジュンは、とびぬけて従順な娘だった。「朱星家開祖以来の剣術の天才」とみこまれ壮絶にシゴかれたが、狂信者みたくオヤジに心服していた。一心同体の父娘だった。だが小学四年生のとき男と問題をおこし、私生活は放埒になり、管理責任をなすりつけあう様な両親の確執があり、剣をすてた。

 他者をコントロールしたがる父と、自由をもとめる娘。本質的に相容れない両者だった。いいたくないが、エゴのつよすぎる二人が家族なのが不幸だった。

 顔の火傷がいたいたしいオヤジが、娘とむかいあう。

「わたしはよき父ではなかった。つねに武人であることを優先した。言い訳はしない。『家族』より『国家』の方が重いと信じているからだ」

「そんなことは知ってますし、お父さまに謝罪なんてしてほしくありません」

 解決策はひとつしかない。どちらからでもいい、父娘でハグすることだ。でもふたりの自尊心がそれをさまたげる。

 オヤジがゆう。

「生きて虜囚の辱めをうけた以上、わたしは自らを裁かねばならない。罪滅ぼしになりはしないが、誠意の證明にはなろう」

「……それはお父さまから聞いた、もっとも愚劣な発言です」

 ジュンの頬が濡れている。

「わたしがお父様の死をよろこぶと、本当にお思いですか? 毎晩わたしはお父さまを夢にみます。気絶しても骨折しても稽古を中断してもらえず、めった打ちにされる夢です。こわくて、痛くて、つらくて、夜がくるのが嫌でしかたないんです。お父さまが自殺したとして、なんの助けになります? ねえお父さま、どうしてわたしを理解してくれないんですか!?」

 ジュンはベッドに上半身をうづめ、猛獣の断末魔の様になきさけんだ。





 いろいろあった日の五時ごろ、アリアと一緒に大百池公園をあるく。二十歳くらいの男女がベンチで口づけをかわしている。アリアは鞘をおさえ、誰何のまなざしを投げた。

 からかい半分で彼女にゆう。

「民間人のカップルをこわがらせるなよ」

「恋人同士に化けるのは、諜報技術の基礎の基礎だ。まったくキミはお人好しだな」

 あきれるアリアの肩をつよく抱いた。

 殺し合いとか騙し合いとか、どうでもいい。人生は思う存分たのしんだ方が勝ちなんじゃないか。

 父と妹の会話についてはなすと、アリアは関心をしめした。ジュンにとって有意義な面会だったろうとゆう。オレはなにもできなかったが、そうねがう。

 こうものべた。

「話をきくところ、キミの父上は捕虜の境遇にあまんじるタイプじゃない。自殺防止のため、厳重に監視すべきじゃないか?」

「ムダさ。オヤジはオレに、牢獄で命を絶つ方法を何通りもおしえこんだ男だ。とめようがない」

「しかしジュンのためにも……」

「体力が回復したら、オヤジは片足で脱走するだろう。どこかに身をかくし、ひっそり死ぬつもりだ。オレにはわかる。それがあの人なりの譲歩なんだ」

 珍獣をみる様な目つきで、アリアに観察される。

「ふむ、父と息子にしかわからない世界かな。でも生きていればいいこともあるだろうに。孫の顔をみるとか」

 冗談をいってる風ではない。

「アリア、まさか」

「あっはっは、なんだその反応は。毎晩愛しあっているのだから、おどろくことではあるまい」

「妊娠したのか」

「母とおなじ17歳なのがおかしくてね。なあジョージ、そう複雑な顔をするな。わたしは産むつもりだが、キミに迷惑をかけはしない。しあわせな気分にひたってるのだから、すこしは祝福してくれ」

 このことは覚悟していた。でもひとつ聞いておかねばならない。

「軍務はどうするんだ」

「自由軍はわが子同然だ。最後まで面倒をみる。命にかえても」





第二部「乱花篇」了



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ジャンル : 小説・文学

高山としのり『i・ショウジョ』

 

 

i・ショウジョ

 

作者:高山としのり

掲載誌:『週刊少年ジャンプ』(集英社)2014年-

単行本:ジャンプ・コミックス

 

 

 

スマホに「魔法のアプリ」をインストールしたら、電脳空間へまぎれこんだ。

未来風コスチュームの女の子に手をのばすと、煙みたく掻き消える。

 

「すみません。私にスキンシップ機能はありません」

 

 

 

 

さて日常へもどろう。

「岡尻鉄太」は、癒し系アイドル「アユユ」がすきな高校2年生。

ポニーテールの幼なじみ「宮尾銀子」に、癒し系なんて実在しないとからかわれる。

 

 

 

 

気さくで顔もかわいい銀子は、男女とわず人気がある。

グラビアアイドルばりの体でM字開脚されると、腐れ縁の仲でも胸さわぎ。

 

 

 

 

幼なじみのむこうみずな行動に、鉄太はふりまわされる。

トラックにひかれそうな女の子をたすけに突進したり。

 

ボクはしらない作家だったが、WJらしいダイナミックな構図でみせるラブコメだ。

オリジナル作品での初単行本とゆうから25歳前後かとおもったら、

Wikipediaをみると1980年うまれだった。

おそらく本作に人生かけている。

それくらいヒロインが溌溂としている。

 

 

 

 

魔法のアプリは、男の願望をかなえる機能をもつ。

画面をさわるとスカートがめくれたり、胸がもまれたり。

パンツはリボンつきのグレー。

男まさりな銀子の「きゃっ」なんて反応が新鮮。

 

 

 

 

バレないわけなかった。

歯をガチガチならしながら激怒。

鉄太がスケベなのは知ってるけど、陰でコソコソやられたのが許せない。

ゲームのキャラみたくあつかわれたのが、かなしい。

 

 

 

 

謝罪をきいてもらえず、ふたりの腐れ縁も切れかけたある日、

アンインストールしたはずのアプリが、本当の気持ちをつたえる。

先端技術はなんだかんだで、人と人をつなぐ。

 

iPhone登場以降の世相をヴィジュアルに反映した漫画といえば、

たとえばアクションよりの烏丸渡『NOT LIVES』があるが、

本作は恋愛をドラマチックに演出するツールとして、スマホをつかっている。

 

 

 

 

オムニバスなので、第1巻はエピソードがふたつ。

女を惚れさせる香りがスマホからでる話は、ちょっとよわいかな。

 

 

 

 

逆にゆうと、それだけ銀子に惹きつけられた。

最先端のショウジョたちをたのしめる作品なのはまちがいない。




i・ショウジョ 1 (ジャンプコミックス)i・ショウジョ 1 (ジャンプコミックス)
(2014/07/04)
高山としのり

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ジャンル : アニメ・コミック

閂夜明『さわれぬ神にたたりなし』

 

 

さわれぬ神にたたりなし

 

作者:閂夜明

掲載誌:『アフタヌーン』(講談社)2013年-

単行本:アフタヌーンKCDX

 

 

 

大学2年生の主人公の部屋に、中学時代の後輩「繭」がきた。

和風ファンタジーのコスプレみたいな格好で、ハネまではやしている。

いわく、地元の神様のところへ嫁いでいたと。

たしかに絶対領域をさわったら天罰覿面!

 

 

 

 

お付きのものもふたり。

漢字だらけの名をもつ、猫と蛇の精。

 

閂夜明は元Leafのグラフィッカーで、『Omegaの視界』や『或るファの音眼』など、

同人界で有名な伝奇系ビジュアルノベルをてがけたひと。

ゲーム制作でつちかった本領を、日常系四コマで発揮。

 

 

 

 

かつて繭に片思いしていた主人公は、いまも片思いしている。

相手は小学生にみえるが、大学6年生の「玖羽野有魅(くわの ゆみ)センパイ」。

 

 

 

 

「神の嫁」までいるのに、おもにロリ留年生の天衣無縫ぶりを愛でるための作品。

 

 

 

 

玖羽野さんは重度のゲームオタク。

積みゲーが家計を圧迫して食費もことかき、主人公にタカっている。

話題をあわせたくて本体ごと狩りゲー買ったら、もう売ったといわれたり。

 

 

 

 

同人誌販売は惨敗、ますますくるしい。

サブヒロインの生活費の心配が、物語の大部分をしめるヘンな漫画だ。

 

作者の所属するサークル「ねこバナナ」のサイトに、

金にこまってゲーム制作を中断し、漫画の商業誌連載をはじめたと書いてある。

正直とゆうか、なまなましい。

 

 

 

 

同期のサークルOBから食事にさそわれる玖羽野さん。

オタ業界にはいったからって自慢話がおおいので断った。

大学のオタク系サークルの雰囲気がでている。

 

 

 

 

たとえるのがむつかしいが、木尾士目『げんしけん』に、

東方Projectをかけあわせた様な作品。

閂が在籍していた筑波大学は、『げんしけん』のモデルでもある。

 

 

 

 

そして経済的理由のためだけに、玖羽野さんからプロポーズする展開に。

ラブコメもいろいろだが、ここまでアケスケなのは記憶にない。

 

 

 

 

夢のなかで中学時代の「選択肢」にさかのぼり、繭への告白をやりなおすとき、

主人公の視界にウィンドウがうかぶなど、ノベルゲー的描写もたのしい。

 

 

 

 

「同人」の自由さと、「商業」の窮屈さのはざまのモラトリアム。

ケイオティックなぬるま湯のなか、一枚絵のうつくしさが心をうばう。




さわれぬ神にたたりなし(1) (KCデラックス)さわれぬ神にたたりなし(1) (KCデラックス)
(2014/06/23)
閂夜明

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テーマ : 4コマ漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: ロリ  萌え4コマ 

舛本和也『アニメを仕事に!』

『キルラキル』(テレビアニメ/2013年)

 

 

アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本

 

著者:舛本和也

発行:星海社 2014年

レーベル:星海社新書

 

 

 

『キルラキル』で一発あてたプロデューサーによる、後進育成を目的とする新書。

とりあげる役職はアニメーターでなく、「制作進行」だ。

 

 

峠比呂『これだからアニメってやつは!』(MFコミックス フラッパーシリーズ)

 

 

制作進行がヒロインの、峠比呂『これだからアニメってやつは!』なんて漫画もある。

アニメの制作工程について関心がたかまってるのかな。

 

1クールのアニメをつくるのに、2億円ほどかかる。

宣伝や音楽制作でさらにふくらむことも。

いわゆる「製作委員会方式」で、関係各社が出資。

 

現在日本では50本以上のアニメがつくられる。

一週間に描かれる絵はあわせて20~30万枚。

制作進行は、他社とアニメーターを奪いあいつつ全工程を管理するが、

作業の90%以上が、スケジュールどおりおわらない。

 

複雑化したアニメの現場で、伝統的な「教育法」がいまだに幅をきかす。

「現場で怒られて一人前になれ」といって新人を即時投入するが、

えてして倒れて早期退職、結果的に業界全体の首をしめる、例のアレだ。

旧態依然のアニメ界に合理性をもちこむのが、本書の目的。

 

 

『リトルウィッチアカデミア』の絵コンテ

 

 

絵コンテが読めないと制作進行はつとまらない。

起承転結を理解し、クライマックスがどこか見きわめる。

山場が最後にくるとかぎらないので要注意。

 

そして原画マンなどの人材配置をかんがえる。

生活芝居が得意、アクションが得意、メカが得意、エフェクトが得意、オールマイティ……。

クリエイターの特性をふまえシーンを割り振る。

 

 

一週間でこの量!

 

 

3D以外のアニメはすべて、紙に線画で描かれる。

素材は複製できないので責任重大。

制作進行はスタジオを訪問する前、交番や病院の場所と連絡先をしらべる。

問題おきてから検索してたら間に合わないから。

 

クリエイターの机や本棚を観察するのも大事で、

どんな作品が好きかわかるし、乱雑だったら信頼できない。

お菓子の種類から食生活をさぐったりする。

 

 

『リトルウィッチアカデミア』(アニメ映画/2013年)

 

 

その1コマにそそがれた労力をおもうと目眩が。




アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本 (星海社新書)アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本 (星海社新書)
(2014/05/23)
舛本和也

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テーマ : アニメ
ジャンル : アニメ・コミック

ホムンクルス『レンアイサンプル』

 

 

レンアイサンプル

 

作者:ホムンクルス

発行:ワニマガジン社 2013年

レーベル:ワニマガジンコミックススペシャル

 

 

 

クラスで変人カップルとみなされるふたり。

特にカノジョの方が無口すぎて。

 

「ほら、なんて呼ばれてたんだっけ?」

『沈黙姫』

 

映画をおもわせる完璧な間で、短篇のタイトルがオーバーラップ。

ホムンクルスは、最初の2ページで読者をオトす。

 

 

 

 

『ガールフレンド+』は、描き下ろし3ページの後日譚。

家庭の事情で海外へわたった、カノジョの生活を垣間みせる。

外人のノリにちょっとついてゆけなくて、

クリスマス当日、猫のとなりで手をあたためたり。

 

エロ漫画にはパターンがある。

ふたりないし数人の男女のひととなりと関係を紹介し、

かれらの感情がたかぶり、セックスし、それぞれの心境が変化する。

『COMIC快楽天』に掲載されたホムンクルスの諸作が特別なのは、

そのひとつひとつのステップを、珠玉の様にみがきあげること。

 

 

 

 

 

 

『なつのけもの』は、ふたつ年上の従姉「千歳」とのひと夏の経験をえがく。

主人公はいつも盆と正月を、田舎にある彼女の家ですごす。

その日は雨で、制服のスカートがしぼれるほど濡れた。

 

 

 

 

主人公の思いを堰き止めていたなにかが決壊。

「嫌なら嫌って言ってくれ…!」

「俺セキニンとるから……!」

そんな無責任なセリフへの返答もきかず、千歳をわがものにする。

彼女に恋人ができたせいで嫉妬していた。

 

 

 

 

破瓜の血をながしながら、すすり泣く従姉。

その背中にかける言葉はなく、にげる様に田舎からかえった。

 

 

 

 

3年後、結婚するとゆう千歳に祝いをのべるため再会。

髪はのび、屈託ない笑顔をみせる。

胸元のひらいたニットのワンピースに、こちらを非難する意図は感じない。

 

 

 

 

あの雨の日、千歳は恋人とわかれたばかりだった。

だれかに甘えたくて、わざと無防備にふるまった。

泣いたのは、従弟を利用する自分が情けなかったから。

 

沈黙の陰でとぐろをまく感情の渦が、鮮烈な印象をのこす。

 

 

 

 

 

 

『妹☆注意報』は「1対2」の恋愛サンプル。

 

妹の「芽依」がクラスメイトの「香菜子」をつれてきた。

ウブな友人を男に慣れさせるため実験体になれと。

ただし余計なことをしたらゆるさない。

香菜子の匂いを嗅ぐのもダメ。

 

 

 

 

芽依が大騒ぎした挙句ひとりで寝いったあと、香菜子の体をもとめる。

まえから彼女とつきあっていたが、

ワガママな芽依に反対されるのが目にみえるので秘密にしていた。

しらぬは妹ばかりなり。

 

 

 

 

バレるかもしれないスリルがふたりの慾望に火をつけ、

中出しまでキメるが、鈍感な芽依はまったく気づかない。

ただ、はづみで胸をもんでしまった。

 

 

 

 

翌朝妹は、香菜子をつれてきたのは失敗だったとゆう。

だってお兄ちゃんてば、シスコンすぎなんだもん……。

勝手に禁断の恋にめざめていた。

触られた妹は祟りあり。

 

おめめパッチリでふくよかで心やさしい、ヒロインらしいヒロインが得意な作家だが、

本短篇はツリ目で貧乳で兇暴でおバカな妹キャラが出色。

ナニもしてないのに、一番セックスアピールしている。




レンアイサンプル (WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL)レンアイサンプル (WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL)
(2013/12/14)
ホムンクルス

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ジャンル : アニメ・コミック

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松竹伸幸『集団的自衛権の焦点 「限定容認」をめぐる50の論点』

発行:かもがわ出版 2014年

 

 

 

ボクの安全保障や外交についての知識は、日本人の平均ってとこか。

政府とマスメディアが弄する詐術に、自力で抵抗できない。

 

そこで本書である。

同著者の『憲法九条の軍事戦略』(平凡社新書)を以前とりあげたが、

50の論点からくりひろげる緻密な言説はあいかわらず。

この本をカバンにいれておけば、道端で安倍晋三にでくわしたとき、ねじふせられる。

 

「集団的自衛権」が実際に発動された14事例は、どれも「侵略」。

武力行使を合憲とみなすのは、「限定容認」どころか180度の大転換。

「集団安全保障」と「集団的自衛権」はまったくの別物。

「砂川事件」で問題になったのは、あくまで「個別的自衛権」について。

……などなど。

 

議論の急所は、解釈改憲論者がおっかない事態を想定すればするほど、

たとえばホルムズ海峡が機雷で封鎖されるとか、日本の存立にかかわるほど、

「個別的自衛権」を適用すべき問題になるとゆうこと。

なにもおそれる必要はない。

 

 

『攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain』(日本映画/2013年)

 

 

もし武装集団が尖閣諸島を占拠しても、海上保安庁で対処できる。

島をかこめば補給がとだえるから。

 

外国で日本人が人質にとられた際、自衛隊を派遣するのは愚策。

救出する責任と、それに必要な能力は、その国の政府にある。

日本にもとめられる組織は、デルタフォースやSEALsじゃなく、CIAだろう。

 

「サイバー攻撃」を解釈改憲の論拠にもちだすなんて、SFオタクのわるい冗談。

破壊工作の主体をどうやって特定するつもりか。

そんなに日本のサイバー部隊が優秀なら、軍隊などつかわず反撃可能。

「スノーデン事件」であきらかな様に、そもそも一番ヤバいのはアメリカじゃないか。

 

 

城谷間間『妹はアメリカ人!?』(マイクロマガジンコミックス)

 

 

「二国平和主義」の甘い夢にひたりたいなら、相手は慎重にえらぶべき。

アメリカはパートナーにふさわしいだろうか。

1898年のメイン号事件、1964年のトンキン湾事件。

彼または彼女は、デッチアゲで殺戮をおこなわなかったか。

 

安保条約を「片務的」とみなすのもおかしい。

正式な合意のもと、両国に義務を課す「双務的」な条約であるだけでなく、

軍事的にも経済的にも日本の負担がました、逆の「片務性」がきわだつ。

 

 

板倉梓『ガール メイ キル』(アクションコミックス)

 

 

日本人の空気の読めなさは定評あり。

アジアの嫌われ者である我らが、支那や北朝鮮の前線へでたら、

どれほど敵の戦意を高揚させることだろう!

だからアメリカは日本に、決して集団的自衛権を強要しない。

ぶっちゃけ迷惑だから。

 

南シナ海をめぐり、防衛と外交の両面で支那に対抗するフィリピンに、

かつての侵略者たる日本が介入すれば、混乱はふかまるだろう。

 

たしかに北朝鮮は、なにをするかわからない。

てことは軍事的圧力をかけても、どう反応するかわからない。

わからないものは、わからない。

 

支那がロクでもない国なのは事実。

だが敵国ではない。

どうしても攻撃したいなら、まづ国内のすべてのiPhoneを破壊すべきだ。

2020年には軍事力でアメリカに肩をならべると言われるのに、

老衰国家日本がチキンレースにくわわってどうするのか。

 

 

『ご注文はうさぎですか?』(テレビアニメ/2014年)

 

 

くりかえすが、おそれる必要はない。

本書でも力説される憲法9条にもとづく「戦略」は、前掲書を参照のこと。

 

憲法の精神は、国民が年月をかけ勝ち取るもの。

「尊属殺人罪」が違憲とされたのは1973年、「非嫡出子の遺産相続」は2013年。

日本をとりもどす戦いは、まだはじまったばかり。




集団的自衛権の焦点 「限定容認」をめぐる50の論点集団的自衛権の焦点 「限定容認」をめぐる50の論点
(2014/06/11)
松竹伸幸

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テーマ : 軍事・安全保障・国防・戦争
ジャンル : 政治・経済

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