雨松/真刈信二『スパイの家』
スパイの家
作画:雨松
原作:真刈信二
掲載誌:『アフタヌーン』(講談社)2013年-
単行本:アフタヌーンKC
16歳の少女の名は「阿賀まりあ」。
身分は女子高生、そしてスパイ。
阿賀一族は、800年にわたり情報員を輩出する家系。
たとえばイギリスがそうである様に、スパイは教育や訓練でつくれない。
親から子へ、血をとおし受け継がれる。
父娘がうけた依頼は、来日中のザジキスタン大統領夫妻に対するテロの阻止。
当国とのレアアース独占採掘契約は、日本の国益において死活問題だ。
日本経済を左右する協定締結のため、警察も総力あげる。
交渉も歓迎会も、すべて全館貸し切りのホテルでおこない、
さらに交通も地下も空中も封鎖し、数十名のスナイパーを配置。
蟻の這いよる隙は、大統領夫人の過去に。
世界的ピアニストだった彼女が、強烈な反ロシア主義者になるきっかけは、
18歳のとき出場したモスクワのコンクールでの事件。
ハードな題材に、エレガントな文化の上着をかさねるのは、
いかにも『勇午』(1994年-休載中)の原作を担当した真刈信二節。
ハイテクと交渉力を武器に難局くつがえすさまは、『勇午』ファンも満足(ただし拷問なし)。
作画は赤名修とくらべたら酷かな。
あれは漫画におけるリアリズムの最高峰だし。
その分、少女スパイのおいしそうな脚線を堪能しよう。
しぶしぶ(命懸けの)家業を手伝うときの、ふくれっ面がカワイイ。
スパイは、腕力や経験だけじゃ通用しない。
思春期女子だからわかることもある。
まりあの土壇場の機転が日本をすくう。
真刈と赤名が袂をわかったのは、ファンとして嘆かわしいが、
10年代にふさわしい作品がうまれる端緒となったのはめでたい。
展開的には、まりあたんが仕掛けるハニートラップを希望!
スパイの家(1) (アフタヌーンKC) (2014/03/20) 雨松 |
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