得能正太郎『NEW GAME!』
NEW GAME!
作者:得能正太郎
掲載誌:『まんがタイムきららキャラット』(芳文社)2013年-
単行本:まんがタイムKRコミックス
新社会人「涼風青葉」の活躍をえがく、おシゴト系四コマ。
就職先がゲーム会社なのがめづらしい。
キャラクターデザイナーの「八神コウ」先輩は、
いつも徹夜仕事のあとパンツ丸出しで寝ている。
ちいさいころハマっていたRPGをつくった、あこがれの人たちの仲間入り。
新入社員はひとりだけ、まづ人脈づくりからはじめるが、
モーション担当の「篠田はじめ」先輩は大剣をブンブンふりまわしてるし、
「飯島ゆん」先輩はゴスロリ中二病、話しかけづらい。
すぐ後ろにいるのに、社内メッセでしか会話してくれない「滝本ひふみ」先輩。
作者は3年間ゲーム会社につとめてたそうで、
社内事情は突飛だけどありえそうでたのしい。
アートディレクターの「遠山りん」先輩はやさしくて、
唯一の常識人だが、お酒がはいると態度デカくなる。
特にビールの注ぎかたにうるさい。
キッチリ派の遠山さん、テキトー派の八神さん、どちらを見習うべきだろう。
美人ばかりなので、会社勤めとゆうクソゲーもバラ色に!
さて肝心のゲーム制作。
新人はNPCの村人などまかされる。
設定がツインテールの少女ってことで、グーグルで資料あつめたり。
自分の頭についてるのに。
完成品を八神さんにチェックしてもらう。
グラフィックより、自分でかんがえた名前の方が恥しい。
そこは人使い荒いゲーム業界、泊りや休日出勤はあたりまえ。
青葉だけは遠足気分、クマさん寝袋まで用意。
家でゴロゴロしてたら母に小言をいわれたので、
「週末くらい休ませろ」とゆうと、「お父さんに似てきた」とキツイひとことが。
ちょっと風変りだけど、ほのぼのした時間にひたれる。
かわいすぎる社畜たちの日常は、コンティニュー必至のおもしろさ!
![]() | NEW GAME! (1) (まんがタイムKRコミックス) (2014/02/27) 得能正太郎 |
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陵辱系ヒロイン! 『trash.』『ねりこちゃん造形中!』『しー・おー・ちゅー』『アステロイド・マイナーズ』
作画・D.P/原作・山本賢治『trash.』(ヤングチャンピオン烈コミックス)第5巻。
殺し屋の「るしあ」は、巨大暴力団へ潜入。
組長の誕生パーティの余興は「踊り食い」。
板前が生きたまま捌いた女体を、活け造りにしてあじわう。
たしかにあれは野蛮な風習だ。
相方「マイン」不在で戦力半減、るしあは拘束された。
地下闘技場で、総合格闘技やってるヤクザと戦わされる。
いくら伝説の殺し屋でも、ベレッタなしではなすがまま。
D.P先生のスウィートな絵柄と、山賢先生のエグい原作のハーモニーをたのしむ漫画だが、
5巻にきて後者の色が前面にでてきた。
「壊し」にかかっている。
だれより強く冷静沈着なヒロインが、あえなく犯され身もだえする姿に唖然。
救いがない。
マンコにしこんだ十字架が、男の尿道に刺さるなど因果応報はあるけれど。
ちなみにレイプ回のアンケート結果は2位と好評だった。
たぶん陵辱は正義。
![]() | trash. 5 (ヤングチャンピオン烈コミックス) (2014/01/20) 山本賢治 |
高木秀栄『ねりこちゃん造形中!』(アース・スター コミックス)1巻。
粘土が趣味でひっこみ思案な兄に業を煮やし、妹は人形を火にくべる。
兄の唯一の友人を。
したら粘土フィギュアは等身大サイズとなり、うごきだした。
泣いただけでドロドロ溶けるなどのギミックがおかしい。
『トータル・リコール』みたく顔がずれたり……
『ターミネーター2』みたく土手っ腹に大穴あいたり。
読者の、美少女に対する破壊願望がみたされる。
それより印象にのこるのは妹の「すず」。
「兄貴となれなれしくするな」と、粘土人形に嫉妬。
ツインテってこともあり、必要以上にねりこちゃんの造形はすずに似てる。
フィギュアの究極の「原型」は妹なのかも。
![]() | ねりこちゃん造形中!(1) (アース・スターコミックス) (2014/02/12) 高木秀栄 |
岬下部せすな『しー・おー・ちゅー』(ライバルKC)1巻。
「判府(ばんぷ)シイヲ」は、高校のイケメン四天王が粉かけてもとりつく島ない、
ちょっとお高くとまったヒロイン。
名前や髪飾りが示唆する様に、判府さんはバンパイア。
人外の者にとり、バスケットボール割るくらい朝飯前。
ただしバンパイアといっても「吸血鬼」でなく「吸素鬼」。
キスで二酸化炭素とりいれることで生命維持する。
「はい……奥までいっぱいで満足……っ」
ボクは、体育倉庫でなにごとかする物語にあきるほど接してきたが、
これはかなり激しい部類にはいるとおもう。
でも本作はエロくない。
どことなく上品で、さわやか。
粘膜を交換することなく、ただ気体をおくりこむだけだから。
自転車タイヤの空気入れみたいなもの。
![]() | しー・おー・ちゅー(1) (ライバルコミックス) (2014/02/04) 岬下部せすな |
宇宙SFの短篇集、あさりよしとお『アステロイド・マイナーズ』(RYU COMICS)1巻。
第2話「軌道上演習」では、民間軌道飛行会社の新米パイロットが、
女の子をステーションまでエスコートすることに。
母親が会社のえらい人だとかでナマイキ。
軌道飛行中もケンカばかりするが、次第におとなしくなる。
宇宙では、トイレがちかいとゆう女子の弱点がひびく。
なにを想像するかわからないので、オムツしてても不安。
無事に軌道ステーションについても一悶着。
小便をリサイクルして貴重な飲用水に再生してるってことは、
いま飲んでるこの水も、もとは彼女の……。
さすがヴェテラン作家、単なる水をもちいヒロインを辱める。
![]() | アステロイド・マイナーズ 1 (リュウコミックス) (2010/02/13) あさりよしとお |
『trash.』
うつくしいから、よごしたくなる。
よごれてるから、うつくしい。
変幻自在なヒロインたちには結局かなわない。
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小説19-1 大宮の戦い
『自由か、隷属か』
7月29日 羽生アリア
土砂ぶりの雨が荒川をたけりくるわせる。
さいたま市桜区、川沿いの公園に部隊が集結。
トモコ会長と一緒に視察する。
2か月にわたり、自由軍は政府軍と小競り合いをくりかえしてきた。
敵兵力は2万7000、こちらのほぼ倍。
大規模な会戦がないのは幸いだった。
「2対1」とゆうバランスが膠着状態をまねいたのだろう。
相手は陣地からおびき出そうとするが、決戦となれば、こちらはひとたまりもない。
無為に時がすぎてゆく。
確証ないが、政権内部で権力闘争がおきているらしい。
火虎首相が病気とか、ゴッドガール陛下が戦争に反対とか。
叛乱が埼玉県へ飛び火したことも、敵の消極性をうながした。
さいたま市を中心にゲリラ的な局地戦が頻発、政府軍の別働隊8000が鎮圧にあたる。
わたしと会長は1個連隊ひきい支援にきた。
「会長、傘はささない方がいい」
「そうね、兵とおなじにしないとね。あぁ、雨だから髪をがっちりセットしたのに……」
赤いサッカーのユニフォームをきた小太りの男が目にとまった。
武装していない。
「キミはなぜ無腰なんだ?」
「武器の補充がないからです。敵から奪うか、斃れた味方から借ります」
「……連隊長ッ!」
戦闘服の元少尉がとんでくる。
「北方軍は物資がまるでたりないので……。メッセに要請してはいますが」
「わかった、これをつかえ」と、自分の太刀を赤服にわたす。
その場をはなれてから、会長がささやいた。
「いいの? あれって和泉守兼定でしょ」
「名刀は博物館じゃなく、勇敢な男にあたえられるべきだ」
「勿体ないわぁ」
負傷者を収容するテントを見舞う。
はげしい雨音をたてる天幕のしたは地獄だった。
軍医の話をききながら、手足や視力や内臓の機能をうしなった男女に声をかける。
かすかな笑顔を維持するのに、ありたけの気力をふりしぼった。
みたところ無傷の男がパイプ椅子にすわっている。
「キミはどうしたんだ」
「立てないんです。なぜか足がうごかなくて」と、うつむいたままつぶやく。
「軍医、説明してくれ」
「PTSDですので、心理療法をおこなっています」と、40代くらいの白衣の女がこたえた。
「なるほど、だが治療はおわりだ。這ってでも戦わせろ」
「その命令にはしたがえません。彼はわたしの患者です」
「自由軍にあなたの所有物などない。もう一度ゆう、治療はおわりだ」
軍医はわたしを無視し、臆病者の背中をなでつづける。
親子みたいだ。
すばやくククリ刀をぬき、「息子」の脳天へふりおろす。
「なにするの!」とさけぶ会長に腕をつかまれた。
テント内は大騒ぎ、揉まれる様にして外へでる。
会長が切れ長の目を見開きわめきちらす。
「信じらんない、頭がおかしいのはあなたよ!」
「あんなやつは死んで当然だ。そんなに怖いなら、夜中にひとりで脱走すればいい。
なぜ味方の士気をくじく様なまねをするのか」
「病気なら仕方ないじゃない。みんなで助け合わなきゃ」
正論ではある。
ストレスでつぶれかけてるのは、わたしかもしれない。
でもこれはピクニックじゃない。
体温をうばう雨粒にそぼ濡れつつ、ちぎれるほど唇をかんだ。
「はるばる援軍にきていただき感謝します、監察」
北方軍本部で、司令官の「門田ホウセイ」と握手をかわす。
ちなみに「監察」はわたしの役職。
門田は39歳の衆議院議員で、紺のポロシャツを着たさわやかな男だ。
一橋大学を卒業したあと、防衛庁職員をへて松下政経塾にまなび、
比例北関東ブロックで民主党から立候補し当選。
現職の国会議員だから大物だが、5月の「全権委任法」成立後、
国会は立法権をうしない、自由民主党以外の政党は非合法とされた。
この門田も自民党へ鞍替えし、失業こそまぬがれたが、
独裁体制下の代議士ほどヒマな仕事はないため、革命軍に身を投じたとか。
「コーヒーでもいかがですか」
「ええ、いただきます」
「ただアイスコーヒーしかないから、ボクにかけてもムダですよ」
メッセであばれ、兵権にぎったわたしを警戒している。
無理もない。
北方軍は指揮権めぐり混乱がつづいていた。
原因の第一は適任者がみあたらないことだが、
われわれ自由軍幹部の承認がおくれたのもおおきい。
なにせ、好きこのんで高校生の指示をあおぎたがる大人はいない。
国会議員くづれの野心家である門田をえらんだのは、弱みをにぎったから。
かれは元宝塚の女優と結婚しており、恐妻家としてしられるが、
実は女性秘書との関係がながくつづいている。
いざとゆうとき脅せると、どこかのツテから情報をえた中田参謀長が太鼓判おした。
ポロシャツの代議士が、防衛省副大臣時代の話を自慢気にかたっている。
女の小便をのむのが趣味のくせに。
机にさいたま市の地図がひろがる。
ビニールシートに色とりどりの書き込みが。
ロクに装備もととのわぬ兵の奮闘が、政府軍を北にひきつけ、
首都攻防戦での敗滅を、かろうじてまぬがれさせた。
涙がでるほどありがたい。
でも戦争は、政治の手垢にまみれ、尊い犠牲にどうこたえるべきかわからない。
本当の敵がだれなのか、地図には書いていない。
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秋★枝『Wizard's Soul ~恋の聖戦~』
Wizard's Soul ~恋の聖戦(ジハード)~
作者:秋★枝
掲載誌:『月刊』(KADOKAWA/メディアファクトリー)2013年-
単行本:MFコミックス フラッパーシリーズ
ちょい地味な黒髪ツインテは「一ノ瀬まなか」。
トレーディングカードゲームの店でバイトする高校生だ。
小学生より弱くて、バカにされている。
家では亡き母のかわりに、双子の妹の世話をする一方で、
甲斐性ない父が数百万円の借金をつくる。
そんな健気系ヒロインの苦労話……とおもわせるが、しかし。
夜更けにおもいつめた表情でデッキ構築する、まなか。
妹のためなら、修羅の道へ身をおとす覚悟。
そのデッキで、常連客の「櫻井」を罠にかける。
「負けたらなんでもする」とゆう条件で。
まなかの得意技は「パーミッション」。
相手の行動をよみ、それを無効化できるカードを多用する受動的戦術だ。
高度なテクだが、きらわれがち。
やられる側は、なすすべなく翻弄され、たのしくないから。
櫻井が一年かけてためたポイントをすべてうばう。
これで「グランプリ四国」への参加条件をみたしたが、
憎からずおもっていたふたりは決裂。
恋愛とカードは、本気では両立しない。
そこに人間性の真実、残酷さがあるからこそ、ゲームは心をとらえる。
作品世界でTCGは国民的人気があり、櫻井をやぶったと学校中のうわさに。
「調子にのるな」と女子連中から吊し上げくらう。
恋の鞘当てでもある。
勿論、制裁はカードで。
まなかのプレイングは徹底的に受け身。
相手が姑息なら、自分はそれより姑息に。
攻撃手段をとりのぞき、「500点×20」、あえて最弱クリーチャーで20回殴りきる。
二度と歯向かう気をおこさぬよう、自尊心をへし折った。
特異なスタイルは、病弱な母にしこまれたもの。
入院中の慰みにつきあううちに。
体がよわるにつれ、ますます母はつよくなる。
カードにえがかれる死神みたいに。
もはや娘は太刀打ちできないが、それでもくらいつく。
この母子にとりTCGは、生や死とゆう物理現象をこえた絆。
1巻の山場は、GP四国1回戦であたる強豪「太田ひとみ」、通称「ふとみん」戦だ。
大型クリーチャー主体のデッキをあやつる。
小細工が通じず、まなかの苦手とするタイプ。
「母と同じ空気……。この人は何か信念を持って戦っている」
「かわいい女は死ね!」
1戦めは、屈辱的な「パーミッション」のハメ殺しで印象づけ、
デッキをいじらせた2戦めは、「コントロール」で主導権を保持……。
カンジ悪く容赦ない、まなかのくわしい戦いぶりは単行本で。
ボクは「デッキ構築めんどくせえ」とか「ブシロードのCMうぜえ」とかおもう、
カードゲームにまるでうとい人間だが、この漫画でいくらか本質をつかめた。
TCGは心理と物理の闘争だ。
ヴィデオゲームとちがい、カードとゆう「モノ」が、駆け引きをドラマチックにする。
つまり少女がいどむのは、天と地を支配する戦い。
中道裕大『放課後さいころ倶楽部』とあわせてよみたい作品だし、
ただカワイイだけじゃない、「フラッパー娘」たちの先進性にまた感服した。
![]() | Wizard's Soul 1 ~恋の聖戦(ジハード)~ (MFコミックス フラッパーシリーズ) (2014/02/22) 秋★枝 |
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野村亮馬『キヌ六』
キヌ六
作者:野村亮馬
掲載誌:『アフタヌーン』(講談社)2013年-
単行本:アフタヌーンKC
銀髪ツインテの幼女は「キヌ」。
ゴツイ足であるくのが、ラーメン屋ではたらく「六」。
サイボーグ手術で30年のローンかかえる。
そんなふたりの珍道中をえがく近未来SFだが、アクションは荒々しい。
手足がポンポンふきとぶ。
キヌなど50口径弾が胴を貫通。
びくともしない。
「火星人類」だから。
改造遺伝子を地球で再現し、不死身にちかい身体再生力をもつ。
そして、おのれの源流たる星へゆきたがる。
火星はすでに独立し、地球との交渉はとだえているが。
彼女を「試作」したのはイギリス王立海軍。
ソヴィエト連邦とふるきよき冷戦をたたかっており、
帝国主義の尖兵にせんと、火星人類の量産をたくらむ。
七つの海を支配する英海軍は、「江戸湾」に潜水艦を派遣、
研究所からにげだしたキヌをおいつめる。
「英ソ冷戦」、なんてうるわしい響き。
競合他社の倒産以来、資本主義と民主主義は堕落の一途。
高度5000メートルから監視する「偵察鳥(レコンバード)」など、
SFならではの気のきいたガジェットもたのしい。
キヌの敵はイギリスだけじゃない。
火星人類を支援する組織「カナリ」におそわれる。
進化しすぎた「成功体」が、地球と火星に破滅もたらすのをおそれ。
でも頭撃ったくらいで斃せない。
ソ連から亡命した「第五越冬隊」なんてのもいる。
非合理的な地球人類の形態をすて、キヌ以上の力を手にした改造人間たち。
「敵の敵は味方ってとこだぁ」
「敵の敵は第二の敵よ」
スミベタぬりこめた陰鬱な画風もあいまって、物語は難解になりかけるが、
わがままロリヒロインはポップでチャーミング。
Ashの『Girl From Mars』なんて曲をおもいだしたり。
春にアニメはじまる、弐瓶勉『シドニアの騎士』擁する『アフタヌーン』らしいし、
『世界征服~謀略のズヴィズダー~』との共鳴もききとれる。
つまりここに近未来とゆうイマがある。
![]() | キヌ六(1) (アフタヌーンKC) (2014/02/21) 野村亮馬 |
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堀北真希と夏帆、鉄道系ポスターの魅力
堀北真希のVネックの胸元より人をひきつけるものが、この世にいくつ存在するのか。
「Color your days.」と題した、東京メトロのポスターだ。
千駄木で甥っ子と「デート」する設定。
こんなオバサンいてたまるかと、嫉妬せずにいられない。
いわゆる下町情緒ゆたかな街で、駄菓子屋などある。
鋭角的な顔だちの堀北は、みじかめの髪がにあう。
ロングヘアの彼女をみるたび、勿体ないとおもいつつ、
それでもポニーテールとゆう伝家の宝刀に、心は串刺し。
シャボン玉をふいて絵になるかどうかは、年齢が影響。
堀北はいま25歳。
「アラサー」なんて不快な肩書きがしのびよるのに、
少年みたいな瞳で、時のながれをすいすい遡る。
夏帆を起用する、JR東日本のSuicaのポスターも甲乙つけがたい。
消費税増税をむかえ、いよいよ日本社会のダイヤグラムは混乱し、
週刊誌の中吊り広告も、苛酷な世相を反映してゆくだろう。
彼女らのさわやかな笑顔は、かろうじてバランスとってくれる。
居眠りなどせず、現実とむきあうために。
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芯径0.2ミリのシャープペンシル、ぺんてる「orenz(オレンズ)」
従来のシャープペンシルは本当に「シャープ」だったか?
するどい問いをつきつける、ぺんてるの新商品「orenz(オレンズ)」登場。
なにせ芯径は驚異の0.2ミリ。
髪の毛みたくほそい。
公式サイトより
オレンズは「折れない」のを売りとするシャーペン。
芯がパイプにはいった状態でかく。
わかりづらかったら、亀が甲羅に首ひっこめる様子をイメージしてほしい。
紙にあてるとパイプがスライドし、芯が接触するとゆう仕組み。
書くうち短くなったら、ノックすれば元通り。
2日つかったが、金属的な引っ掛かりは感じられず、なめらか。
ボクはこれまで三菱鉛筆の「クルトガ ローレットモデル」を使用していた。
筆圧により内部機構が回転、芯は尖りつづける。
2008年において画期的な発明だったが、
筆触はかすかにフニャッとやわらかく、微妙な濃淡が筆跡に出がち。
かたやオレンズのコア部分はオーセンティック、この缺点はない。
500円と値ごろなのもいい(ただし替芯は10本で200円)。
シャープペンシルは大してシャープじゃなかった。
すくなくとも削りたての鉛筆にかなわない。
ゆえに芯径0.3ミリやクルトガの需要があるのだが、
超弩級戦艦の就役により、ついにシャーペンは鉛筆をこえた。
パイロットの「フリクション」など、わが国の文房具の技術革新はめざましい!
まぁ弘法筆をえらばずで、なにでかこうが、字や絵はうまくならないけど。
![]() | ぺんてる シャープペンシル オレンズ 0.2mm スカイブルー軸 ぺんてる |
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アニメミライ2013『アルヴ・レズル -機械仕掛けの妖精たち-』
アルヴ・レズル -機械仕掛けの妖精たち-
出演:福山潤 喜多村英梨 日笠陽子 成田剣
監督:吉原達矢
原案・脚本:山口優
キャラクター原案:彩樹
キャラクターデザイン・作画監督:土屋圭
アニメーション制作:ZEXCS
公開:2013年
「ねぇ、あたし、告白しなきゃいけないことがあるんだ……」
「こ、告白!?」
あっけらかんと妹が重大発言。
PCモニタごしに。
妹の「詩希(しき)」は科学者めざし、ひとりぐらしで勉強中。
「なにそのリアクション……ひょっとして『恋の告白』とか期待しちゃった?」
「きょ、兄妹でそんなことあるかよ」
「ふふっ、妹にドキドキするくらいなら彼女つくりなよっ!」
演ずるは喜多村英梨、まづ小悪魔の顔をみせる。
「告白」の内容は、それにおとらず衝撃的。
画面にうつる少女はプログラムで描画された映像だった。
本体はボディプールのなかでねむる。
食事や排泄や睡眠から解放され、学業に専念するため。
そこへアルヴィン社の幹部が、戦闘員つれ急襲。
ハッキング能力もちい難を逃れる、詩希。
半裸の妹が帰省してきた。
ひさびさの再会。
「詩希……夢じゃないんだ……」
「あ、あの、ボクは……」と様子がおかしい。
「『ボク』?」
「ボクは多分、ちがうかもしれないです。あなたが思っている人とは……」
「全世界同時精神喪失事件」により、詩希と似た境遇の5万人以上が植物状態となった。
妹の体に魂はもどったが、心も元通りかわからない。
記憶はうしなわれている。
とりあえず家へあげ、妹の服を着させる。
「このおっぱいも重すぎるし、ちがうと思う……。
こんなのをつけていた記憶はないんです」
体の違和感にくるしむ詩希(にみえる人物)。
別の男の魂がやどったのかも。
外見は女で内面は男、つまり「男の娘」。
近未来SFと萌えの相性はこのうえない。
対人兵器「ウォードッグ」が追撃してきた。
背中に装備したUZIぽいサブマシンガンを発射。
銃をうつ犬はなかなか斬新だ。
突然、兄にキスする詩希。
おもいがけないほどふかく。
ナノマシンを口移しして、ハッキング能力をわけあたえた。
ためらわずキスできるとゆうことは、本当に妹じゃないのか?
常識的にも、倫理的にも、現実ばなれしている。
近未来になったって、近親相姦がタブーでなくなるはずない。
それでも手をにぎる。
この子が妹であってほしいが、もしそうでなくとも、彼女がだれだろうと、
かよわい娘をたすけないなんて、兄の矜持がゆるさない。
そしてサイバーパンク的戦術で追手を返り討ちに。
『攻殻機動隊』の草薙素子が「母」のメタファーなら、御影詩希は「妹」のシミリ。
2010年代にリアルなのは後者とおもう。
本作は、文化庁による若手アニメーター育成プロジェクト、
通称「アニメミライ」の2013年度作品として劇場公開された25分の短篇。
近未来と妹、ボクの大好物のマリアージュを堪能した。
1月からTSUTAYAでレンタルがはじまっている。
さあ、Tカードもってミライへいそげ!
![]() | 「アニメミライ2013」 特製パンフレット付き ACE2013 限定販売 アニプレックス |
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岡村星『ラブラブエイリアン』
ラブラブエイリアン
作者:岡村星
掲載誌:『別冊漫画ゴラク』『ゴラクエッグ』(日本文芸社)2012年-
単行本:ニチブンコミックス
合コンの風景。
会話に並行し、内心のつぶやきがもれる。
「初対面で気安く触んなよ、ムカつくぜ!」
「コイツさっきから胸ばっか見てやがんな。死ねよまじ」
ウソと慾望まみれの生態を、とおくから宇宙人が観察している。
手のひらサイズの宇宙人たちは、事故で地球に不時着した。
とびこんださきは女性専用アパート。
しかし物語はSFへむかわない。
だってエイリアンは地球に関心ないから。
資源も科学も文化もショボすぎるので、侵略する価値なし。
ただ食べ物だけはおいしいので居ついた。
まったく似合わない服を買わせようとする店員へ光線を照射、
「ヤリ逃げされても気づかない系」とか本音かたらせたり。
女子のぶっちゃけトークをたのしむ漫画だ。
特に美容師「ユヒ子さん」の毒舌は切れ味あざやか。
いわく、ゆるふわパーマはもてパーマじゃなく、ビッチパーマ。
大体最近の女はモテたいモテたい言いすぎ。
雑誌におどらされ個性消して、男とやれればそれでいいのかよ!
どうやら作者は女性で、友人とのやりとりを作品に投影したとのこと。
てゆうかリアル会話の方がもっとひどいらしい。
ユヒ子さんはファッションショーや雑誌の仕事などしており、
モデルの知り合いもいるが、あいつらはナルシストで最悪。
本作はアメリカのテレビドラマ、たとえば『フレンズ』などの「シットコム」が下敷き。
女子力こそ皆無だが、みなオシャレかつ美人、
都会的ライフスタイルをうちだす会話劇に説得力あたえる。
なにより宇宙人の視点からえがく仕掛けが効果的で、
ゲスいガールズトークなのに、男子が読んでも不快じゃない。
でもちょっと「独身女性」に偏りすぎかなとおもってたら14話で、
三人めの子供うんだばかりの先輩「ミハルさん」登場。
既婚者は既婚者で「ないものねだり」しがちとわかる。
出産のくるしみに話はおよぶ。
ボウリングの玉がでてくる感じとか、ハサミであそこ切るけど陣痛の方がいたいとか、
一人めのときは膣口が裂け、出産後尿道に管いれておしっこしたとか。
独身者たちはビビるが、「好きな男ができたら平気で中出しさせるくせに」
なんてセリフに男の理解をこえた神秘を垣間みせる。
いわば女子の本音の百科事典。
冒頭の合コンは、ヤリ目的がばれて残念な結末をむかえたが、
いろいろあって地元ホークスの観戦へ一緒にゆくくらいの仲に。
ここでも話題はエロ。
「わかったわかった、もーいいよ。
宇宙人より男女の方が解り合えなさそう」
紹介できなかったが検事の「サツキさん」もステキ
男と女、それは未知との遭遇。
SFなみに超現実的。
![]() | ラブラブエイリアン(1) (ニチブンコミックス) (2013/11/28) 岡村星 |
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放課後はエロスの時間 『はねバド!』『放課後〇〇倶楽部』『コスプレの神!』『放課後さいころ倶楽部』
バドミントン部のJKをえがく濱田浩輔『はねバド!』(アフタヌーンKC)2巻は、
インターハイにむけ団体戦の戦略をねる。
S1-S3、D1-D2のオーダーをどう組むかがミソ。
エース格をS1に起用するのが通例だが、
「荒垣なぎさ」キャプテンは新コーチによりいきなり外された。
忿懣うづまく更衣室。
なぎさは堂々胸をそらし、鋭角的なボディラインで凹凸をすっきりみせる。
ふくよかなのに刃物みたい。
ロッカールームは女子スポーツの醍醐味。
攻撃型のなぎさと守備型の「綾乃」で、最強ペア誕生とおもわせるが、
ノック練習は衝突してばかり、まともに機能しない。
それでも居残り練習で、不調だったスマッシュに開眼。
目にとまらぬ腕のうごき。
胸のゆれは脳裏にやきつくが。
バドミントンってこれほどエロい競技だったかと感動した。
![]() | はねバド!(2) (アフタヌーンKC) (2014/02/07) 濱田浩輔 |
みなづきふたご『放課後〇〇倶楽部』(ガムコミックスプラス)。
「〇〇」はスケートボードの車輪をあらわす。
ボーイッシュな中学2年生「瑠衣」がトリックきめる。
1年生の「いなり」はかぶりものキャラ。
ライオンの着ぐるみで泥棒をおう。
スケボーはおそろしい兇器。
本作がメチャクチャおもしろいかと聞かれたら返答につまるが、
売らずに手元においてたのは、スケボー漫画に無限の可能性を感じるから。
おもにパンチラ的に。
![]() | 放課後〇〇倶楽部 1巻 (ガムコミックスプラス) (2013/12/25) みなづきふたご |
方密『コスプレの神!』(まんがタイムKRコミックス)は2巻で完結。
女子中学生はあいかわらず、まったりコスプレ道を邁進する。
非常にボクのツボにはまる漫画で、最終巻もおもしろかった。
メイド服はヴィクトリアン調のロング丈か、それともアキバ系のミニか。
どちらも捨てがたく、なやまされる。
「いお」が裁縫得意なのは、Sサイズの服すら体にあわないので、
自分で丈をなおしてたら、いつの間にかおぼえたから。
さりげないキャラ立ちが、そこはかとなく笑える。
1巻は中古でやすくなってるし、是非いまからでもよんでほしい。
2巻はボクっ娘「しず」の兄が登場。
妹の手をあらってあげるなど超過保護だが、パッと見は自然体。
だがいおはガタガタふるえる。
「ニュースで……まさかあの人がって言われるタイプ」
しず兄の部屋を潜入調査すると、クローゼットにあるものを見つけた。
使い古しの歯ブラシのコレクション。
これはこわい。
さまざまな愛のかたちがあることを、学校はおしえない。
![]() | コスプレの神 (2) (まんがタイムKRコミックス) (2014/01/27) 方密 |
京都のJKがアナログゲームに興じる、
中道裕大『放課後さいころ倶楽部』(ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル)も2巻刊行。
いまのところ「めざせ全国大会!」的なテンプレ展開におちいらず、
ボドゲー娘たちの日常によりそうのが本作の魅力。
おとなしい「美姫」は、いまだにイジメの記憶につきまとわれる。
やった側はゲームでも、やられた側は地獄。
13話は、不良っぽい外見の「マキちゃん」まじえ『インカの黄金』であそぶ。
度胸だめしのシステムはヤンキーの性にあうらしく絶好調。
ミキちゃんがいじめられっ子だったことも見抜く。
「ミキはわたしたちがまもる」と親友ふたりに支援されるが、
リアルチキンレース経験者にかなわない。
それでもミキは土壇場でクソ度胸を発揮。
「引き」の強さも。
普段表にださない本性をゲームはひきだすことがある。
恋のめばえもえがかれる。
すごろくの様にゆっくりと、でも一歩づつ確実に、少女は成長してゆく。
![]() | 放課後さいころ倶楽部 2 (ゲッサン少年サンデーコミックス) (2014/02/12) 中道裕大 |
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柳本光晴『女の子が死ぬ話』
女の子が死ぬ話
作者:柳本光晴
発行:双葉社 2014年
レーベル:アクションコミックス
《注意!》
以下の文章では、物語の核心部分にふれています。
……とネタバレ警告を発したが、ヒロインの「遥」が余命わづかで、
全7話の4話めで病死することは題名が示唆している。
「お涙頂戴におちいらない」とゆう作者の信念のあらわれか。
本作は死を肯定する。
わりとあっけらかんと。
色黒なのは「千穂」。
陸上少女だったのが、髪をボブにしカチューシャをつけ、高校デビューめざす。
入学式の日、角ドン的にイケメンとぶつかり、
あこがれていた少女漫画的生活がはじまるのかと、ときめく。
そこにあらわれたのが、春風に白い長髪をたなびかす遥。
「前見て走れ、ブス」
お人形さんみたいなのに、性格は最悪。
「つーかさぁ、あのオバケまだ死んでなかったんだ」
当然、周囲からきらわれる。
余命半年と宣告されているから、幼なじみの「和哉」以外に心をひらかない。
同情なんて御免と、病状は親と医者しか知らない。
出会いは最低だったけど、正反対のキャラがむしろ功を奏したか、
遥と千穂はたがいを理解してゆく。
ドロドロした三角関係でなく、思春期の男女の、
不器用に友情をはぐくむ様子がえがかれる。
遥ひとり浴衣で、砂浜での花火は詩的な情景。
そのあいだも髪がぬけおちたり、生命の炎はきえかかっていた。
友人になにもつげず遥は入院。
病院名すらわからず、お見舞いへゆけないまま、
一か月後、千穂は担任教師からその死をしらされる。
命にかかわる重病だなんておもいもよらなかった。
第6話「エピローグ」は、のこされた千穂と和哉の関係をつづる。
一年たち、のびた髪を結いあげ、今度は自分が浴衣でお祭りへ。
十二年後ふたりは結婚し、しあわせな家庭をきづく。
いい様ない罪悪感をかかえながら。
遥の墓参りは缺かさないけれど。
第7話「夢で逢えたら」は時をさかのぼり、病床の遥をえがく。
骨と皮だけになり髪はすべてぬけ、かつての面影はなかった。
うつくしく死にたいから、和哉と千穂にいまの自分をみせたくない。
それでも和哉は強引に会いにゆく。
孤独な闘病生活のなか、すきな男に会いたくないはずないが、
みにくい姿をみられたくないのも本心だし、
距離をおき彼の執着心をやわらげたい思いもある。
遥の矛盾する感情の、どれを尊重すればよいか和哉はなやむ。
6話が「ハッピーエンド」なら、こちらは「トゥルーエンド」か。
遥のみる夢はあまりにせつない。
残酷ですらある。
作者はブログで「ひぐらし大好き」をうたうくらいだから、
『ひぐらしのなく頃に』などノベルゲーの影響をうけたのだろう。
分岐をもうけることで物語を相対化し、
情緒にながされやすい日本文化の弱点を克服せんとする手法の応用だ。
幾重にも折り重なる心が、不可逆的な生のはかなさを強調、
人間とゆう存在のやりきれなさを浮き彫りにする。
![]() | 女の子が死ぬ話 (アクションコミックス(月刊アクション)) (2014/02/10) 柳本光晴 |
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『桜Trick』第6話 百合とゆう音響藝術
文化祭だよ☆お泊まりです♡/文化祭だよ☆本番です!
テレビアニメ『桜Trick』第6話
出演:戸松遥 井口裕香 戸田めぐみ 渕上舞 相坂優歌 五十嵐裕美 藤田咲
演出:村田尚樹
脚本:谷村大四郎
監督・シリーズ構成:石倉賢一
キャラクターデザイン:坂井久太
音響監督:飯田里樹
原作:タチ『桜Trick』(芳文社)
アニメーション制作:スタジオディーン
放送:2014年
ブシュゥーッ!!!
まるでゲームみたいに大袈裟なSEがひびく。
文化祭の朗読劇で着る衣装を縫ってたら、不器用な優は指を刺す。
このアニメは効果音が印象的。
さて上演開始。
出し物は『白雪姫』。
声だけなのが、7人の小所帯にふさわしい。
「んん~」
ひたすらウォンチューキスミーで快楽におぼれるアニメだが、
王子さまのキスはあっさりえがく。
本番はこれから。
文化祭の華、バンド演奏。
春香と優は一緒にみにゆく。
音声がアニメではたす役割について、かんがえることは多い。
アニメが漫画を収奪し、文化全体の創造性をそこなう不幸なシステムが存在するが、
いくつか例外もあって、たとえば『けいおん!』(2009年)は原作よりおもしろい。
剣道モノの『バンブーブレード』(2007-08年)も、打突音や広橋涼の掛け声が快感だった。
アニメの神髄は音響にあり。
体育館の上の通路でトントン足踏み。
ケンカしてたふたりの心はうちとける。
「いまだけ春香の好きにしていいよ……」
カーテンにつつまれながら口づけかわす。
「きこえたのは優ちゃんの鼓動と、吐息と、唇と唇からかすかに漏れる声だけ」
演奏がおわったのも気づかずに。
キスよりうつくしい音楽なんてない。
Aパートのコトしずもよかった。
文化祭の準備で学校にお泊まり、夜の屋上でふたりきり。
拗ねてるしずくを慰めようとコトネがふりむくとき、フェンスがきしむ。
金属音が、ちょっと意地悪なコトネの性格と共鳴し、
なによりやわらかい女の子の唇をもとめる気持ちをにおわす。
かすかなうごきに衣擦れや足音がともない、官能の炎をあおる。
音響監督は飯田里樹、全篇で職人技がひかる。
井口裕香のラジオに戸松遥が出演したとき、
リスナーから「キスシーンを演じるのはどんな気分?」的なメールが殺到。
ふたりとも剽軽な性格で、笑いをとるに格好のネタだが、「お芝居だもん」とごまかした。
「ドキドキする」とも、逆に「気持ち悪い」ともいいづらい。
真実は見掛けになく、言葉にもできない。
百合とゆう沈黙のオペラに、もっと耳をそばだてよう。
![]() | 桜Trick 3 (初回特典:オーディオドラマ) [Blu-ray] (2014/05/21) 戸松遥、井口裕香 他 |
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小説18 三顧の礼
『自由か、隷属か』
6月20日 本城フラン
タクシーで北京郊外をはしる。
山脈がちかづいてきた。
ゆくさきは人民解放軍の女性士官の寮。
先日の中国外務省との非公式の会談は、成功といっていいとおもう。
門前払いをくらうのも覚悟してたから。
わたしの著書『自立するJK』シリーズはこちらでも版をかさねており、
17歳の女とはいえ、一応名士として通用したのかもしれない。
自由日本軍にとり、中国との同盟締結は死活問題だ。
いま兵力1万4000、人口の一万分の一ほどの規模しかないが、
対する政府軍は、国全体を支配していることが弱点となりうる。
有事だからこそ、国境を警備するのに軍事的資産を割かれるし、
もし他国が呼応すれば、二正面作戦の不利におちいる。
中国政府から、当面は内戦に対し中立との確約をとり、数十億円の借款をうけた。
でもみんなのもとへ帰るには、まだ手土産がたりない。
タクシーをおり、ふるぼけた寮の受付をたづねた。
「馮愛生(フェン アイシェン)上尉」をよびだしてもらう。
「何度もお騒がせしてすみません」と頭をさげる。
「またあなたか……これで三日連続じゃないか」
フェン上尉は24歳の陸軍士官。
暴動鎮圧などの実績があり、日本に興味があるとゆうことで紹介された。
地につくほどの黒髪をうしろでたばね、パッと花がさく様な美貌の持ち主。
自由部で美人は見慣れてるけど、このひとにも圧倒される。
でもムスッとしてるから、御機嫌とらなきゃ。
「劉備が諸葛亮の家をたづねたときは、三回めでようやく会えました。
わたしごときが三顧の礼をつくさずして、だれの心をうごかせるでしょう」
「三国志か。しかしわたしには『天下三分の計』などない」
「あれは創作だとおもいます。人払いをしての発言だったと陳寿も書いてますし」
「ふふ……たしかにね。密談の記録をのこした人間がいるはずない。
わかったよ、降参だ。すくなくとも話はきこう。応接室にきてくれ」
「ありがとうございます!」
コーヒーか紅茶か聞かれたので、紅茶をたのんだ。
お土産のチーバくんグッズをわたしたが、あまりよろこぶ風はない。
フェン上尉がコーヒーカップかたむけながら話す。
「いわれずとも用件はわかってる。革命に加担しろとゆうことだろう」
「御明察です」
「日本の情勢が気にならない軍人はいない。でもなぜわたしなんだ?」
「外務省のかたに、とても優秀なひとがいるおそわったので」
「そして父親が党幹部で、次期国家主席候補だから」
「否定はしません」
上尉がソファで反り返り、足をくむ。
「われわれ中国人は、最近の日本の右傾化を心配していた。
正義があるなら、アジアの平和に貢献できるなら、応援するにやぶさかでない」
「そのつもりでやっています。資料を御覧ください」
「宣伝文書なんて無意味だ。大事なのは信頼に値する人間かどうか」
「はい、わたしは自由日本軍を代表してここにきました」
ちいさな顔のまんまるな瞳に射すくめられる。
心の底まで見透かされそう。
「あの可憐な少女、『sailor suit revolutionary』といわれて有名な……」
「朱星ジュンですね」
「あの子はどうゆう人柄なんだ? こちらでもすごい人気だ。特に男から」
「尊敬できるひとです。わたしにない物をもっています。ささえて、力になりたい」
ノックがして、受付のおばさんが顔をだす。
配達員がアマゾンの巨大なダンボール箱をかかえている。
「ちょっと失礼」といってサインしにゆくフェン上尉。
箱をあけると中は日本の漫画がぎっしり。
「わたしはBL漫画がよみたくて日本語をマスターした。つまり腐女子だ」
「い、意外です」
「日本は男同士の恋愛が盛んなのだろう? 進んでて本当にうらやましいよ。
中国の男なんて、女の尻を追い回してばかり。まったくけがらわしい!」
大演説がとまらない。
同類だ、ジュンさんの同類を大陸でみつけてしまった。
「あとアイドルもみんなカワイイ! ハロプロにAKBにももクロ……」
「くわしいですね」
「日本にいったら、絶対会ってみたいアイドルがいる」
「だれですか」
「もちろん初音ミクさん! 彼女はすごく歌がうまい。人間ばなれした天才だ」
「わ、わたしも会えるなら会ってみたいなあ」
池袋のBLカフェをしってるかとか、根掘り葉掘りきかれる。
腕時計をちらりとみた。
マズイ、帰りの飛行機まであと1時間……。
「どうした、いそぎの用があるのか」
「いえいえ、フェン上尉とのお話の方が大事です」
「そんなことはあるまい。つづきは日本でしよう。約束だぞ」
「きてくれるのですか!?」
彫刻の様にととのった顔が、軍人の冷徹さをとりもどす。
「少数民族の弾圧なんてつまらない。それが正義なのかもわからない。
できるなら理想のため、青龍偃月刀をふるいたい」
「わたしも薙刀使いなんです。全然よわいですが」
「安心するといい。この馮愛生が前線にたてば、敵は逃げ散るだろう」
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箸井地図/坂本光陽『ハイリコ』2巻完結
ハイリコ
作画:箸井地図
原作:坂本光陽
発行:集英社 2012-13年
レーベル:ヤングジャンプ・コミックスGJ
[1巻の記事はこちら]
彼女は探偵「能見マナ子」。
推理はしない。
視力と記憶力と分析力で、犯人をおいつめる。
2巻は誘拐犯「西牟田」が相手。
公園などで母親が目をはなしたすきに赤ん坊をつれさり、
15分以内にATMから「ベビーシッター代」10万円おろさせる。
ブキミな目玉模様の女はアシスタント。
西牟田は、藝能界で活躍する天才メイクアップアーティスト。
その変装技術は、「眼力探偵」にとり天敵。
いわゆる倒叙型であり、ネタバレではないので御安心を
なにせ正体が男とだれもきづかない。
おどろくことに、主人公「堂本」の行方不明だった父でもある。
美人探偵が接触したのは、西牟田の情報をえるためだった。
1巻では空気ぽかった主人公に、父と息子の相克とゆう見せ場があたえられる。
マナ子たんの華奢な手足をめでるだけの漫画じゃない。
ハイリコ能力(hyper recognizer)発動!
膝裏の肉割れ線から犯人を識別する。
「見当たり捜査」とゆう題材に目をつけたおもしろい作品だが、
作画に関しては、読者の注意を散漫にさせる失敗作かも。
マナ子たんの服がかわいすぎて。
箸井地図は、アニメ『BLOOD+』『ルー=ガルー』のキャラクター原案など、
どちらかといえばイラスト仕事がおおいひとで、デザインはお手のもの。
ノースリーヴとミニスカートがすきで、
153センチと小柄だけど、いつも高めのヒールでキレイな脚線をみせて。
各話がファッションショー状態、筋書きが頭にはいらない。
「なんか燃えてるな」って感じ。
焼け跡よりマフラーの柄に目がゆく。
無論、憂いの表情にも。
規格外の「ヴィジュアル系探偵」が異様に突出する、フシギな漫画だった。
そのヒロインは、うつくしすぎるとゆう罪をおかしていた。
箸井先生、今度はラブコメ寄りの作品はどうでしょう?
![]() | ハイリコ 2 (ヤングジャンプコミックス) (2014/01/17) 箸井地図 |
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小城徹也『のらうさぎ』
のらうさぎ
作者:小城徹也
掲載誌:『ヤングガンガン』(スクウェア・エニックス)2012年-
単行本:ヤングガンガンコミックス
その美少女は電車内でバニーガールの格好だった。
コスプレか罰ゲームか。
なにかの宣伝かイヴェントか。
とにかく注目の的に。
職質にもあう。
「いけませんか?」と堂々応対されると、警官もこまる。
バニーでひとり夜道をあるくのって違法だっけか。
わりと開き直り系のヒロインだ。
「つきみ」は月から派遣された調査員。
地球人にとけこみ、その生態をしらべている。
服装がバニーなのは、耳をかくすのに都合よいから。
ニンジンとゆう美味なる食物も初体験。
とまぁこんな具合に、ちょいエッチなギャグ漫画だ。
地球の奇妙な風習、「人助け」を自分でためしてみる。
迷子の幼女をずいっと親にわたす。
たしかにわるくない気分。
好奇心の方向が微妙にズレててカワイイ。
敵対する勢力もいる。
月の支配をたくらむ星からきた「アメシマ大佐」。
部下の「オギノ少尉」とともに、つきみを抹殺するのが目的。
道草もくうが。
貴重な資源が大量にながれるのをみると、異星人は興奮する。
さすが水の惑星!
小城徹也は、ももいろクローバーZを題材にした『ももプロZ』でしられる作家。
大ゴマを多用し、予測うらぎる展開でわらわせる。
ボクのお気にいりのネタは第1話。
冒頭の電車の場面でつきみさんは、不審がられる理由をかんがえる。
アレだ、みんなもってるアレをもってないからだ!
……いやまて、用意してきた地球グッズに、アレとおなじのがあった。
じっとファミコンコントローラをみつめる姿は、太陽系級の可憐さ。
ウサギだから跳躍力も超人的。
昭和の匂いただよう、ストロングスタイルのギャグ漫画としてオススメしたい。
3月25日にはやくも続刊がでるとか。
![]() | のらうさぎ (1) (ヤングガンガンコミックス) (2014/01/25) 小城徹也 |
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『Febri』vol.21 『世界征服~謀略のズヴィズダー~』特集 「黒星紅白デザインワークス」
ボクは絵心ないけど、アニメやゲームのキャラデザの仕事にあこがれる。
神みたいじゃない?
『Febri』(一迅社)vol.21で、黒星紅白の至藝をさらにおう。
バランス、おそらくすべてはバランス。
ヴィニエイラ様は、假面のときアップにするとさびしいと指摘されたので、
おでこにズヴィズダーのシンボルをいれたら、今度はおもくなりすぎた。
涙みたいな飾りをつけバランスとり、どうにか完成。
涙の出っぱりは、普段のカチューシャのギミックに流用。
すべては連動する。
世界の海がひとつである様に。
明日汰はケイト(ヴィニエイラ様のこと)とならんだとき、彼女を引き立たすデザイン。
視聴者と目線を共有する立場なので、できるだけ地味に。
パーソナルカラーは灰色。
手足はほそく、顔は女っぽく、ヒロインとみまがうほど応援したくなるキャラ。
結果、地味になりすぎたので、三つ編みでアクセントくわえた。
なにげないツーショットの陰に、苦心惨憺の跡がみえかくれ。
プラーミャ様の発注は、「ちょっとブッ飛んだ格好で」というもの。
「レディー・ガガくらいでしょうか?」ときいたら、「それは行きすぎです」といわれた。
「普通以上ガガ未満」といっても、定量化できない概念だからこまる。
キャラクターデザインって、ちょっとシュール。
シャチをモティフに、鉄兜で前線にたつイメージの、耐火服女子が誕生。
たぶん、普通にしていれば、すごく可愛い子だと思います。
第2話の学校制服姿がわすれられない。
デコった長ドスが「デコドス」とよばれることも本特集でしった。
響きよすぎだろ。
逸花さん、だいすきなキャラだ。
4月末の『デザインワークス(仮)』にも、たくさん載ってるといいな。
クルクルの、マーブルチョコ的カラフルさもたのしい。
左から2番めが悲しい顔で、その右が怒ってる顔と、意外と表情ゆたかとか。
これからはもっと集中して鑑賞しなくてはならない。
(すくなくとも視覚的に)なんて奥ふかい世界なのだろう!
![]() | Febri (フェブリ) Vol.21 (2014/02/10) |
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テーマ : 世界征服~謀略のズヴィズダー~
ジャンル : アニメ・コミック
FLIPFLOPs『ダーウィンズゲーム』3巻 窮鼠猫を噛む
ダーウィンズゲーム
作者:FLIPFLOPs
掲載誌:『別冊少年チャンピオン』(秋田書店)2013年-
単行本:少年チャンピオン・コミックス
バトルロイヤル篇へ突入した、評判のデスゲーム漫画の第3巻。
渋谷のホテルで生き残りかけ戦う。
主人公「カナメ」は、RPD軽機関銃かかえた重武装の敵と遭遇。
ドラムマガジンの絵面のゴツさで作者はえらんだとおもう。
前巻でうまい棒納豆味たべながら高みの見物してた、「解析屋」こと「レイン」。
まだ(もう)中1だったのか。
今回は強制的に修羅場へたたきこまれる。
エレベーターにのるなとカナメに忠告。
作者お得意の、ろりぷに美少女がようやくうごきだす。
ヘルメット男はツタみたいなもので斃されていた。
4基のエレベーターはすべて罠。
第3巻の戦場は三次元、映画『ダイ・ハード』(1988年)を彷彿させる。
階段も罠。
麻薬成分でほかのプレイヤーをあやつり掃討するなど、
植物に関する異能(シギル)をもつ、通称「花屋」のしわざだ。
本作における闘争はチェスのごとく論理的。
可能なかぎり偶然を排し、「詰み」をねらう。
だから逃げる。
逃げて逃げて逃げまくる。
そもそも自然界において「逃げる」は、「戦う」より一般的な生存戦略。
強者でもないのに、弱者の論理を否定するなんてバカげてる。
『ダーウィンズゲーム』の哲学があきらかに。
それはヒロイックな勇敢さに対するアンチテーゼ。
レインと連携し、花屋の「目」をつぶす。
新人ながら3連勝中のカナメを、ロリ軍師はまえから買っていた。
「機転」だなんてカッコイイものじゃない。
被食者はつねに捕食者をおそれ、なによりさきに退路を確保する。
いわば「習性」。
「逃げ専」の美学にしびれた。
だがFLIPFLOPs先生の漫画はそれだけでおわらない。
おいつめられた(様にみせた)レインのシギル発動。
未来の物理現象を予知する「世界関数(ラプラス)」。
ラプラスの悪魔からとったネーミングといい、中二病炸裂。
カナメは26階から外壁つたい一気に本陣めざす。
一息つく暇すらもなく、状況が自分の意思とは無関係に、目まぐるしく回っていく。
それでも、自分を失うことなく、喰らい付いていき続ける。
この姿勢が非常にカッコイイ。読んでて爽快です。
「三平」による、2巻についてのアマゾンレヴュー
カッコ悪さのなかにあるカッコよさが、本作の主題か。
リアルだけど、ふわふわシュール。
この独特の浮遊感がフリフロ節で、クセになる。
当代一の中二病作家ではなかろうか。
![]() | ダーウィンズゲーム 3 (少年チャンピオン・コミックス) (2014/02/07) FLIPFLOPs |
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真田ジューイチ『危ノーマル系女子』2巻
危ノーマル系女子
作者:真田ジューイチ
掲載サイト:『COMIC メテオ』(ジー・モード)2012年-
単行本:メテオCOMICS(フレックスコミックス)
[1巻の記事はこちら]
2巻のなにがすばらしいって、表紙だ。
赤から青のあざやかさだけでなく、「十華さん」出づっぱりなところが。
ハーレムラブコメは、各巻ごとちがう娘をあしらうのがデフォなのに。
ボクは妹キャラの「御種迷(みたね めい)」をこよなく愛すものだが、
本巻では主要人物とゆうより、被観察者として登場する。
家での常軌逸したブラコンぶりにひきかえ、学校での屈託ない笑顔。
女子高教諭の「鈴木」から、強姦し殺害しようとねらわれている。
気持ちはわかる。
偶然出会った駐車場で、殺人教師はメイに興味いだく。
車に轢かれた猫をながめていた。
「可哀想にな」
「……そうですか?」
「じゃあ何故見ていたんだ?」
「いえ別に。ただ死んでるな、って思って……」
本作は、特に2巻はハードボイルドな文体でつづられ、
人物の内面や過去は、最小限度すらえがかれない。
メイの名字が、兄とちがう理由もわからない。
そこがいい。
たった4ページの猫の死体のシーンが脳裏にやきつく。
すでに鈴木は何人も犯し、殺している。
危ノーマル系男子同士の対決のはじまり。
机をトントンたたく「シンヤ」。
9分49秒で、ストーカー属性の十華さんが参上。
リアルタイムで盗聴・盗撮されてるから便利だ。
調査能力いかした探偵仕事を依頼。
蛇の道は蛇、変態は変態にまかせるのが一番。
「すべてしってるぞ」とレイプ魔に警告を発する。
警察にはたよらない。
自分らが法のそとで生きるから。
あきれるほど道徳心うすい危ノーマル系女子たち。
同情心もない。
ひたすら空虚で、もの憂く、ゆえにボクらは共感する。
にしても十華さん、ジャンスカ似合うなぁ。
ドM属性の「色村さん」など、全カードをきりながら包囲網をせばめる。
作風もどこか『僕は友達が少ない』を彷彿させますが、
本作の主人公はあちらのような難聴系ではなく、
危険な彼女達をもあしらえる持ち前のコミュニケーション能力(?)で、
紙一重のバランスを保っています。
siriusによる、1巻のアマゾンレヴュー
「難聴系」とは、ヒロインの好意にきづかない鈍感な主人公のこと。
『はがない』みたいな、安手のハーレムラブコメに好都合。
かたやシンヤは「可聴系」、ヒロインの心理を理解したうえで利用。
ファミリーをまもり、みんなをしあわせにするため。
1巻発売時に本作と源氏物語の共通点を指摘したが、わりとイイ線いってた。
包囲殲滅。
ハーレムをもつものと、もたぬものの差。
殺人「被害」のニュースをおいかける「夢路さん」。
シリアルキラーの闇が、さらにふかい闇にのみこまれる、
2巻の結末のうつくしさに惚れ惚れ。
「ストーリーがナンセンス」とか、1巻を批判してた連中は恥じいるべき。
忠節ちかい、命懸けでたたかう七人の侍。
みんな幸せになってほしいなあ。
![]() | 危ノーマル系女子 (2) (メテオCOMICS) (2014/02/12) 真田ジューイチ |
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『いなり、こんこん、恋いろは。』第4話 「緋色、宵宮、恋模様。」
緋色、宵宮、恋模様。
アニメ『いなり、こんこん、恋いろは。』第4話
出演:大空直美 岡本寛志 桑島法子 原紗友里 野水伊織 上田燿司 子安武人
演出:別所誠人
脚本:関根アユミ
監督:高橋亨
シリーズ構成:待田堂子
キャラクターデザイン・総作画監督:高品有佳
アニメーション制作:プロダクションアイムズ
放送:2014年
おなか、ぎゅうぎゅう、浴衣の着つけ。
きょうは待ちに待った「宵宮祭」の日。
片思いの「丹波橋くん」が毎年くるのを、ヒロイン「伏見いなり」はしっている。
母にきつく締めてもらい、気合をいれた。
マスコット狐の「コン」は、残虐な拷問に目をふさぐ。
いなりをたすける神の御使いだが、母にはみえない。
まさに馬子にも衣装。
自他ともにみとめる平凡な中学生のいなりも、鏡みてニンマリ。
夏祭りは、女の子がはじめて「変身」を経験する通過儀礼かな。
「うわぁ~! 墨染さん、浴衣かわいいぇ」
「伏見さんこそ!」
駅での待ち合わせからテンションは最高潮。
京都伏見の「伊奈里神社」へ到着。
きのう東京は記録的大雪で、窓からみるベランダにまだつもっており、
なんとも季節はづれな夏祭り回だが、
神社や神にまつわるこのアニメにとって、
前半の山となるエピソードらしく、充実した作画が違和感ふきとばす。
仲間は夜店であそぶが、いなりは参道をキョロキョロみまわす。
「伏見さん、どうかしたん?」
「う、うん、なんでも……」
「丹波橋くん、きてるとええな」
いなりは全部顔にでるタイプ、なにもいってないのにお見通し。
てごわい恋敵とおもわれた墨染さんだが、応援してくれる。
どちらかとゆうと百合らしい。
執念で、家族づれの丹波橋を発見。
「あれ、伏見さん」
「どーもどーも、グーゼーン」
「ひとりで来てるん?」
「ふぇ? ひとりの様な、そうでもない様な……」
ピコーンと神通力が発動する丹波橋ママ。
「コウジ、お母さんシロウと盆踊りいってくるさかい」
「え、ほんならボクも」
「いいから、伏見さんと一緒におり」
お義母さまのナイスアシストで、ふたりきりのシチュが実現。
「そういや伏見さん、浴衣かわいいなぁ」
丹波橋は天然タラシの性向があり、中学生のくせ社交辞令をさらっとゆう。
いなりはともかく、コンの驚愕ぶりがいささか失礼(笑)。
「わたし、きょう……死ぬん?」とひとりごちる乙女。
混雑のなかではぐれた。
この世のおわりみたく狼狽する。
「いやや……せっかく丹波橋くんと一緒にいられたのに……」
カラン、コロン。
ドンくさいいなりの手をひいてあるく。
朱にそまる、宵の千本鳥居。
それを監視する兄。
またそれをみまもる、神社の主神「うか様」。
いろんなひと、ときに神まで味方する、やさしい空気が本作の美点。
段差につまづいたいなり。
なれない下駄の鼻緒で擦れて、足はもう限界。
夏用の足袋を履くのが正解だった。
いや、履かないのが正解。
「神社が、お祭りが、真っ赤でよかった。
わたしのほっぺが赤くなってるん、丹波橋くんに気づかれへんから……」
年中行事と京言葉と和の風景と人々のまごころが一体となり、
思春期の女の子の感情のながれを演出する、すばらしい回だった。
夜もふけたころ、うかとトシ、神の兄妹が議論する。
「そもそも人間は、神となじむに値する存在か?」
「え……」
「神は、すべての人間に平等であらねばならぬ」
「そ、そんなことはわかっています」
「神と人間がどれだけ胸襟をひらいたところで、彼らは光の速さで寿命をむかえてしまう。
これはよくないことだ」
「わたしはただ、いっときだけでも彼らの幸せをみまもれれば、それで……」
少女漫画的恋愛と、ファンタジー設定がウリだけど、地に足つけた物語でもある。
しみじみとせつない。
命みじかし、恋せよ乙女。
丹波橋ママが、去り際にいなりへとばしたウインクにも、その思想がこもっていた。
![]() | いなり、こんこん、恋いろは。 第2巻 限定版 [DVD] (2014/04/25) 大空直美、桑島法子 他 |
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テーマ : いなり、こんこん、恋いろは。
ジャンル : アニメ・コミック
小説17 女子会
『自由か、隷属か』
6月13日 朱星ジュン
がらんとした会議室で足を机へなげだしゲームする。
リズムにあわせボタンを連打。
いそがしい。
「ハロ
昔のアニメにそんなのいたっけな
ハワユ
羨ましいな 皆に愛されて」
リョウさんとこの曲きいたときは、歌詞に超怒ってたなぁ。
「ガンダムは昔のアニメじゃない」とかなんとか。
あたしはロボットアニメ嫌いだからよくわからなくて、笑えた。
……くそ、泣くなジュン、たえろ。
忘れろ、あえて忘れろ。
紺のキュロットスカートはいたフランちゃんがはいってきた。
「へぇ意外、ジュンさんもニンテンドー3DS持ってたんですね」
「おいおい、よく見なって」
マジックで「SONY」と書いてある。
これは『Project mirai』専用ハードの「PS3D」だ。
「そこまでして……」
「いつ死ぬかわからないから、食わず嫌いやめようとおもって。
ねんどろいどのミクが超カワイイよ。任豚にはもったいないゲーム。
フランちゃんにもあとで貸したげるね」
「ありがとうございます! 今度飛行機のるから、そこであそぼうかな。
ところでジュンさん、きのうエヴァンゲリオン見せてくれるといってましたけど」
「そういやそうだった。じゃあいこう」
兵隊さんにフランス版DVD-BOXもらったけど、映像方式がPALだから、
MBP経由で大ホールのスクリーンにうつすのがはやい。
「新旧の劇場版しか知らないから、たのしみです!」
「やっぱエヴァはテレビ版でしょ。エピソードがいちいちおもしろいし。一緒に主題歌うたお」
廊下にでると、大ホールから爆発音がひびく。
となりのちびっ娘が緊張する。
扉をあけると、暗がりでアリアさんがひとり戦争映画をみていた。
机にビールの空き缶がならぶ。
ほっと息つくフランちゃん。
「びっくりした……先輩がさきに見てらしたんですね」
「ん、キミらもつかうのか? あと30分くらいで終るからまってくれ」
「なんて映画ですか」
「『スターリングラード』。ぬるいハリウッド映画だが、独ソ戦の雰囲気はでてる」
右目が爆炎でかがやく。
興奮してやがる。
非難せずにいられない。
「リアル戦争のまっ最中に戦争映画ってどうなの」
「おかしいか? 現代の戦場ではありふれた娯楽だ」
「戦争中毒だね」
「……ジュンさん、そんないいかたはダメ」
キュロットの先輩が、あたしのセーラーの袖をひく。
ミリタリージャケットの眼帯女が、とがった顎をしゃくる。
「キミらが好きなそのアニメだって、要は戦争だろう」
「はぁ?」
「敵がいて、それと戦い、人がたくさん死ぬ。おなじことだ」
かえす言葉がない。
使徒やネウロイ相手の戦争と、人間相手の戦争に差異はあるか。
うまくいえないけど、一緒にされたくない。
「興がそがれた。あとは好きにつかってくれ」といい、アリアさんが退室しようとする。
「……あたしらがいると、人殺しがたのしめないよね」
「ジュンさん!」
なだめようとするフランちゃんの気持ちはわかるが、
このモヤモヤした鬱屈を胸のうちにとどめたくない。
頭ひとつ分おおきい女剣士とにらみあう。
「ジュン、わたしはまだろっこしいのが苦手だから、単刀直入にいわせてもらう」
「なんだよ」
「キミが敵意むきだしなのは、わたしとジョージの仲が原因だろう」
「ざ、ざけんな!」
「別にかくしてないが、妹のキミを蚊帳の外におくのはよくなかった。反省している」
眩暈がする。
よりによってあたしが、バカアニキとられて嫉妬するとか。
これ以上の侮辱はない。
冗談でもゆるせない。
フランちゃんがしどろもどろに取りなす。
「ふ、ふたりともおさえて……。兵がきいたら動揺します」
「うるせぇ! そんなだからオマエはいまだに処女なんだよ!」
「ふえぇぇっ」
扉がひらき、廊下からの逆光にてらされ、長身の女のシルエットがうかぶ。
「……本城さんは処女じゃないわ」
「ひゃあっ」
「まったく、なに暗闇でケンカしてるんだか。電気つけるわよ」
黒のパンツスーツをきたトモコ会長が、ホールの階段のぼりながらつづける。
「蒼月の生徒会役員は、任命されたその日、会長の家に泊まるしきたりなの。
本城さんとも一夜をともにしたわ。だから非処女」
「はわっ……はわわわわわわっ」
「一年まえなのに随分昔におもえるわね、本城さん」
フランちゃんの顎をもちあげる。
蛇ににらまれた蛙みたく、なすがまま。
体はった暴露でこっちも機先を制された。
やるじゃん、この女。
「共学なのに、ウチの生徒会が女ばっかの理由がわかったよ」
「朱星さんも写真審査で候補にあがったけど、しらべたら素行面がちょっと」
「そんなしきたりは御免だっての。会長がメッセにくるのはめづらしいね」
「作文の宿題を提出しにきたわ」
とりだした書類は「独立宣言」と題されていた。
すべての人間は幸福を追求する権利をもち、政府はそれを確保するため組織された。
そして、いかなる政治の形体であろうと、その目的を毀損する場合は、
これを改廃しあらたな政府を組織するのは、人民の権利かつ義務である。
われわれ自由を希求する人民は、公正な世界に対しこの意志を宣言し、
生命財産および名誉をささげることを誓う。
……とかなんとか。
「これをどうするの」
「本城さんにたのまれたのよ。あなたも手伝って。羽生さんも意見があったら言ってね」
「大義名分をしっかり打ち出すべきとおもうんです」とフランちゃん。
「社会が苦手なあたしにゃ無理ゲーだよ」
社会の先生はすきだったけど、もういないし……。
県庁勤めで苦労してるトモコ会長が、真剣な表情でゆう。
「勝利の暁には、わたしたちで新憲法をつくることになる」
「一大事だなあ」
「そう、これは革命なの。そしてあなたが、その中心にいる」
「憲法かぁ……アニメーターさんの待遇を改善したいな」
「ふふ、あいかわらずね。そうゆう意見を土台にかんがえましょう」
「あと在日は全員死刑」
「あなたはネトウヨ的言動さえなければ、それなりにいい子なんだけどねえ」
腕組みして立ちっぱなしのアリアさんが、会長の方をむいてボソリつぶやく。
「憲法第1条、象徴ゴッドガール制はどうしますか」
「問題はそこよね。わたしは廃止が当然とおもうけど……」
「会長は左翼だからね。ホッブズの『リヴァイアサン』をよみましたか」
「まぁ一応」
「混沌とした社会のなかで、人に畏敬の念をいだかせつづけるには、
怪物みたいに強力な権威が必要とホッブズはのべる。わたしも同意だ」
「うーん」
腕時計をみたフランちゃんがゆう。
「飛行機の時間があるので、そろそろ失礼します。北京にいってきます」
「なんでまた中国。危険じゃない?」
「いまのところ成田の入管は中立よ。でもリスクはあるわね」と会長。
「わたしも役にたちたいんです! あとそうそう、ジュンさんに渡したいものが」
光沢のある紫のリボンをもらった。
「フランちゃんとちがって、あたし普段リボンしないんだけどな」
「コスプレとかでつかってください。雑貨屋さんでみつけて、似合いそうとおもって」
「キレイな色だね、ありがたくもらっとくよ。いつも気つかってもらって、わるいね」
「いえいえ。わたしひとりっ子だから、妹ができたみたいで嬉しいんです!」
「えー、どっちかっていったら、あたしが姉だろ」
「もう! そんなことゆうなら返してください!」
女子力ゼロの女子会がおわり、フランちゃんを駅までみおくったあと、会議室でまたPS3Dを起動。
「幸せだろうと 不幸せだろうと
平等に 残酷に 朝日は昇る
生きていくだけで精一杯の私に
これ以上何を望むというの」
「初音ミク」となのるアンドロイドは、なぜこんなに代辯してくれるんだろう。
ボカロがなければ、あたしは確実に自殺してた。
ミクは健気なんだよな。
あたえられた歌をひたすら忠実に、生真面目にうたう。
いってしまえば奴隷で、そこにひとは共感する。
なんていじらしい、でもあたしは彼女みたく生きられない。
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東元俊也/西条隆雄『バウンスアウト』
バウンスアウト
作画:東元俊也
原作:西条隆雄
掲載誌:『週刊ヤングマガジン』(講談社)2013年-
単行本:ヤンマガKC
六本木のクラブのVIPルームを、目出し帽かぶった10人あまりの男が訪問。
金属バットたづさえて。
1分間にわたるメッタ打ちでひとり死なせる。
のちに人違いと判明するが。
関東連合による「六本木クラブ襲撃事件」(2012年)の忠実な再現だ。
作中は「暴走連合」を称する。
下のフロアにいあわせた主人公「大和壮兵」が、無謀にもわってはいる。
「囲むケンカ」を憎悪するから。
きっかけは中学時代の恋にあった。
彼女はヤンキーで、「強くなれ」とけしかける様なタイプ。
ある日の帰り道、暴走族に強姦され命をうしなう。
少年院をでたばかりの不良の大和が、
族やヤクザをきらうのは、連中がつるんで乱暴したがるのが理由。
クラブでの奮戦をみこまれ、バウンサー(用心棒)派遣会社にやとわれる。
専用のジムをそなえた本格的組織だ。
派遣会社の会長はヤクザで、「半グレ」の暴走連合との抗争勃発。
大和の戦法は掌底が主体。
素手ゴロ専門ゆえ、拳をいためないスタイルなのかな。
格闘技漫画としてもたのしめる。
さんざん拷問され、裸で首都高のしたに放置される「準暴力団員」。
カタギとヤクザの境界が曖昧な時代。
六本木らしく混沌としたケンカをえがく。
盛り場に縁がなくしらなかったが、最近は「ガールズバー」とやらが人気らしい。
メイド喫茶風に、コスプレなど萌え系サーヴィスでもてなす。
リーダーの顔をみた大和をおいつめようと、暴走連合は親友の木嶋をおそう。
AV制作会社を経営してるので、融資の話でおびきだした。
工藤明男『いびつな絆 関東連合の真実』(宝島社)にも、
AV業界との関係はかいてあったしリアルだ。
にわかに勃興したワルの集団を礼讃することなく、
卑怯な面や、既存のヤクザとのつながりにも目をくばる意慾作。
![]() | バウンスアウト(1) (ヤングマガジンコミックス) (2014/02/06) 東元俊也 |
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なぜ源氏物語はハーレムラブコメなのか
平安神宮
太政大臣となった光源氏は、六条京極あたりに大邸宅をたてた。
四つの区画はそれぞれ春夏秋冬をあしらう。
自分が起居する春の御殿に紫の上を、夏の御殿に花散里を、
秋の御殿に秋好中宮を、冬の御殿に明石の上をすまわせる。
あちこち散在していた女がひきうつる「殿わたり」は、平安朝の男の理想の生活。
冷泉院の帝を中心にした対立系図
臣下にくだった33歳が他氏をおしのおけ、位人臣をきわめる。
藤原氏全盛期にあってはファンタジー小説まがいの絵空ごとだが、
主人公もそれなりに努力している。
たとえば若い玉鬘を自分の娘といつわり引きとったのは、
ロリコン趣味だけが原因でなく、イモねえちゃんをしかるべく教育し、
いづれは宮中にいれ、一家一門の繁栄をはかる手立てのひとつ。
女とゆう政治資産を売買しながら、ハーレムとゆう政治機関を拡大。
玉鬘は結局、髭黒の大将に略奪されるが。
車あらそい
女を手にいれることは侵略戦争とおなじ。
兵をうごかさず領地をひろげられるのだから命懸け。
影媛への求婚がみのらなかった武烈天皇は、
恋敵の平群鮪をころしたし、仁徳天皇も弟と女をころした。
おのれの女は、鉄壁の警備でまもる。
正妻格の紫の上は夕霧に懸想されるが、生涯二度しか姿をみせなかった。
台風の翌朝の混乱と、死に顔だけ。
義理の親子でさえ、一瞬の油断は破滅をまねくから。
女三宮の子をだく光源氏(源氏物語絵巻・柏木)
朱雀院の帝の姫君である女三宮を、妻にむかえるのは気がすすまなかった。
40歳はすでに老境、女たちの感情のうずまきに身をおくのはわづらわしい。
正妻の誇りをきずつけてまで後見となった女三宮は、柏木との不義の子をうむ。
これも家筋をたたる怨霊のしわざらしい。
六条御息所の怨恨がもののけとして発動、
葵の上と紫の上をころし、女三の宮に世をすてさせた。
光源氏の家の始祖は光源氏だから、全責任は自分にある。
病にくるしむ柏木を宴席へよびだす。
密通についてほのめかし、酒をしいて心身をいたぶり、容赦なく命をうばう。
刃物もちいぬ殺人で、ダメージコントロールを遂行した。
冷徹さ、それがラブコメ主人公の条件。
【参考文献】
池田彌三郎『光源氏の一生』(講談社現代新書)
![]() | 光源氏の一生 (講談社現代新書 2) (1964/03/22) 池田弥三郎 |
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坂本真綾『Be mine!』
Be mine!
坂本真綾のシングル曲
作曲:the band apart
作詞:坂本真綾
発行:FlyingDog 2014年
【上の画像クリックでYouTubeへ飛びます】
吸気音からはじまり、ギターが切迫感を煽る。
the band apartが作編曲と演奏をてがけた坂本真綾の新曲は、
うるわしい高音と弦楽器とゆう本来のイメージに、
尖り、とっ散らかったロック色がまざり、型やぶりな風景をえがく。
『世界征服』OP。堂々たるワキ見せに毎回ときめく
アニメ『世界征服~謀略のズヴィズダー~』のオープニング曲でもある。
帝国主義的幼女の物語にこれほどハマる曲をほかにしらない。
バンアパとは昨年「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」でしりあい、楽曲提供を依頼した(『声優グランプリ』2月号)。
ボクは坂本真綾の活動にくわしくないが、プロデューサー的センスあるひとらしい。
歌手自身による作詞もおもしろい。
設定やプロットだけで、よくあのけったいなアニメをつかめるものだ。
あえて内容おしえずかかせた『残酷な天使のテーゼ』がアンセムになったわけで、
情報すくない方が作詞家の想像を刺激するのかも。
(ちなみに『世界征服』監督の岡村天斎は、エヴァの評価高い13・18話を演出した)
「続きは昼寝のあとで」とか「お空に星はまたたく」とか、
ロリ要素を夜空にちりばめるのは、声優兼歌手の特権。
やりたいようにやったって
誰か邪魔してくれないかな
勝負はいただき
「いただき」のところで左の口角をあげるヴィニエイラ様がすき。
英雄は裁かれない
勧善懲悪のからくりに
(略)
私の名は本能の共犯者
絶対に裏切れない生命活動の源よ
権力もとめ、自由にあこがれ、他者を支配したがるのは、生命としての本能。
勧善懲悪のからくりで裁けない。
裁かせてはいけない。
虚空にガントレットをつきあげるヴィニエイラ様。
可憐な英雄をたたえる歌声が、あまねく世界へひびきわたる。
![]() | Be mine!/SAVED.(世界征服盤)(初回限定盤) (2014/02/05) 坂本真綾 |
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テーマ : 世界征服~謀略のズヴィズダー~
ジャンル : アニメ・コミック
知的女子! 『インサイダー』『天海の定跡』『こたつやみかん』『ムジカ』
投資顧問会社に転職したばかりのヒロイン、「春風日向(ひなた)」。
『週刊ダイヤモンド』や『経済界』などの雑誌で勉強したと、先輩にみせびらかす。
ともぞ・作画/呉屋真・原作『インサイダー』(ヤングジャンプ・コミックスGJ)から。
アウディの窓からなげすてられた。
「お前やっぱ奴隷だ」
各投資情報誌がすすめる銘柄が下落したのは、
大口投資家たちが「売り抜け」のためしこんだネタだから。
金持ちに身銭を上納するなんて、まさに奴隷。
父が株で失敗し自殺、春風さんは9000万円の借金をせおう。
金融業界へとびこんだのは、その清算と仇討ちが目的。
年俸10億の指導主任「東堂」の仕事ぶりをまなぶ。
半年まえから知り合いになった、ある玩具会社の社長秘書の息子に、
ニンテンドー3DSソフトをプレゼントしたり。
無線LANのセキュリティを突破し、PCへ侵入成功。
業界最大手と提携する情報をつかみ、2億4000万の利益をうる。
違法なインサイダー取引だが、證拠はのこさない。
カネ儲けに必死な女子って、なんか萌える。
![]() | インサイダー 1 (ヤングジャンプコミックス) (2013/12/19) ともぞ |
八神健の短篇集『ユキのいた街』(バンブーコミックス)から、
2004年に発表された「天海の定跡」を。
奨励会に所属する17歳の「鳴瀧」を主人公とする将棋モノだ。
『密・リターンズ!』に『ななか6/17』に『どき魔女』と、
八神先生も20年しぶとく生きのこってるなあ。
父の跡をおいプロをめざす鳴瀧は鳴かず飛ばずで、きょうも敗戦。
シュンとして帰宅したら、みしらぬ女の子がいた。
北海道出身の「天海(あみ)」は父の弟子で、奨励会の入会試験をうけにきた。
なぜかゴスロリ
将棋会館で対局する。
二代目としての重圧でつぶれそうな鳴瀧は、たのしく将棋をさす天海がゆるせない。
一手ごとコロコロかわる表情も、ことごとく定跡をはづす戦法も。
作戦なのか、天然なのか……。
……天然でした。
恋は知恵くらべ。
さぐりあって、だましあう。
つぎの行動がよめる女の子なんてかわいくないし。
ふたりの関係がみづみづしい好篇だが、
作者の棋力は駒をうごかせる程度で、連載へのこころみは頓挫した。
でもこの「初手」のあざやかさを、短篇集は後世にのこす。
![]() | ユキのいた街 八神健短編集 (バンブーコミックス) (2013/12/17) 八神健 |
噺家系JKをえがく、秋山はる『こたつやみかん』(アフタヌーンKC)も第3巻[1巻/2巻]。
「有川真帆」さんの三味線で、お楽しみ寄席のはじまり。
若さに似あわぬシナをつくり、「牡丹楼まほ吉」師匠が『転宅』を演ずる。
特に男子はメロメロ。
ファミレスできょうの高座を反省する、まほ吉師匠。
色物でなく、本寸法の落語をやりたい。
「それって自分は美人でいい女だよってことっすか?」と、後輩の「梢」。
「あ、そーいうことになるか~。なははは」
みづからの美貌を否定しつつ肯定。
漫画のヒロインがカワイイのはあたりまえ、むしろつまらない。
最終的に勝負は総合力できまるが、
「付加価値」の部分は萌えと齟齬をきたしがち、匙加減がむつかしい。
可愛げないインテリガールを、いかに可愛くみせるか。
秋山はるの、高校の落研とゆう壊滅的に地味な題材を、
日常エピソードのつみかさねで語りつくす藝にうならされる所以。
![]() | こたつやみかん(3) (アフタヌーンKC) (2014/01/23) 秋山はる |
最後に、かかし朝浩『ムジカ』(バーズコミックス)完結となる第2巻を。
ロベルトとクララ、シューマン夫妻の青春時代をえがく音楽史モノ。
のちに歌劇王として音楽界に君臨する、18歳のリヒャルト・ワーグナーが、
擲弾でバイエルン王マクシミリアン2世の命をねらう。
ドイツ三月革命に加担し、テロリストとして指名手配された史実をふまえる。
黄燐マッチを擦ってたり藝がこまかい。
正規の音楽教育をうけたが、元祖中二病のせいで貧困にあえぐ。
偉人のカッコワルイ面に光をあてるのが、かかし流。
ここには「解釈」がある。
ケン・ラッセル監督の映画『リストマニア』(1975年)にまけてない。
メンデルスゾーンへ、反ユダヤ主義的ヘイトスピーチを直接ぶつける。
ネット右翼さながらの醜態。
クララがワーグナーのピアノソナタをみつけたが、理解できない。
わざと人間の手で弾けない様にかいた、「音楽の悪魔」のための曲だから。
われをわすれ難曲にいどむクララ。
服をぬぎ髪をきり、限界まで身をかるくする。
天才同士の狂気がぶつかり、エロスの火花をちらす。
このうつくしい作品が、7巻までつづいた『暴れん坊少納言』に対し、
わづか2巻でおわったのはおしい。
19世紀ヨーロッパ音楽界は男社会でありすぎ、
女が活躍する余地がすくないのが一因かな。
平安時代の宮廷が異色ともいえるが。
日本は知的女子がさかえる国だった。
いまはどうだろう。
![]() | ムジカ (2) (バーズコミックス) (2013/10/24) かかし朝浩 |
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深山おから『俺のぱんつが狙われていた。』
俺のぱんつが狙われていた。
作者:深山おから
掲載誌:『月刊コミック電撃大王』(KADOKAWA)2013年-
単行本:電撃コミックスNEXT
異性の下着が気になるのは男子だけじゃない!
かぎりなく犯罪者にちかいパンツ娘、「桜坂このみ」が暴走するラブコメ。
フツウのオンナノコは恋すると、話をしたり手つないだりキスしたくなるが、
このみの頭はぱんつのことばかり、ほしくてたまらなくなる。
性癖は特殊だけど、わるいコではなさそう。
主人公の「村上祐希」は、少女漫画を愛するオトメ系男子。
まっすぐでキラキラした恋愛にあこがれていた。
これまでこのみがほしくなったぱんつは、村上のだけ。
だって初恋だから。
なんだかんだで、これも純愛?
村上に気にいられようと、ぱんつ泥棒を我慢する危ノーマル系女子。
禁断症状をきたす。
体育祭の二人三脚で、まぢかでかいだ村上の匂いに悩乱、
婿入りまえの男子に赤っ恥かかす。
村上の体は、フェロモンみたいな誘引物質を多量に分泌するのかも。
犬にもぱんつを盗まれる。
ぱんつを狙う目は、このみとおなじ。
概して女はモノよりココロをおもんじ、フェティシズム(物神崇拝)の傾向はうすい。
すくなくとも法をやぶってまで下着を盗もうとしない。
つまり、このみのぱんつフェチは犬の本能にちかいかな。
忠実でいじらしい。
初デートの舞台は男性下着専門店。
自信満々でエスコートする、ぱんつソムリエ。
いい感じでデートはすすむが、ついに衝動にまけ、ぱんつをかぶってしまう。
フツウのオンナノコみたくしようとすればするほど、ココロはぱんつに支配される。
「私も普通の恋がしたい……!」
ヘンタイだけど、一途で健気。
恋する乙女はうつくしい。
同級生でチア部の「桃瀬さん」は、村上の本命。
このみとちがってまっとうな、ヒロインぽいオンナノコ。
全篇に甘酸っぱいトキメキがみちる、いまどきめづらしい王道ラブコメだ!
![]() | 俺のぱんつが狙われていた。 (1) (電撃コミックスNEXT) (2014/01/27) 深山おから |
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『世界征服~謀略のズヴィズダー~』4話 「UDOは冷たい土の中に」
UDOは冷たい土の中に
テレビアニメ『世界征服~謀略のズヴィズダー~』第4話
出演:久野美咲 花江夏樹 花澤香菜 伊瀬茉莉也 山崎エリイ
演出:春藤佳奈
脚本:星空めてお
監督:岡村天斎
シリーズ構成:星空めてお 岡村天斎
キャラクター原案:黒星紅白
キャラクターデザイン・総作画監督:佐々木啓悟
アニメーション制作:A-1 Pictures
放送:2014年
逸花さんのすてきなおケツからはじまる第4話。
ねぼける明日汰。
ナターシャさんとの同衾をとがめられる。
寝てる間にむこうがはいっただけだが。
逸花さんの足がキレイ
花澤香菜演ずるナターシャの広島辯を玩味できる、ざーさん回だ。
釣りコン?
「よっしゃ、ウドコンレーダーじゃ」
モニターはディグダグ的にウドの親株のありかをうつす。
ウドがズヴィズダーの動力と資金の源と判明した。
地下に「超古代ウド川文明」の遺跡があるのだとか。
な、なんだってー。
明日汰、ナターシャ、ヴィニエイラ様の三人でダンジョンへいどむ。
ドラクエをパロったり、演出はRPG風。
道中ナターシャが幼少期をかたりだした。
「うちがこまいころから、無類のメカ好きじゃったんは知っとるよの」
「知りませんよ、初耳ですって」
花澤さんの方言はなぜかここちよい。
『のうりん』の美濃辯との切りかえが大変と、ラジオでこぼしている。
ウクライナ出身なので、民族衣装をデザインにとりいれる。
総じてキャラデザの趣味のよさに感心。
成長してからは露出狂みたいな格好だが、
黒星紅白によるとウクライナはヌーディストビーチのイメージとか。
最下層で枯れかかった「ウドの大木」をみつけるが、
まがまがしき何者かの襲撃にあう。
「のぅ、あんたにゃあいつらはどがいな風にみえとる?」
「どがいな風って……なんてゆうか、もやもやっとした人類の恐怖を具現化した様な……」
三人とロボ子の奮闘で敵を返り討ちに。
雪みたいなものがふる。
死の灰にもみえる。
「禁煙ファシズム」を中立的にえがいた3話につづき、
文明批評が本作の主題であるらしきことが匂わされる。
ウクライナと広島をつなぐもの、それは原子力の恐怖。
テレビアニメで原発問題をあつかうつもりなら、みあげたチャレンジャー精神だ。
2月9日の都知事選とのシンクロもみのがせない。
「あほたれ、花も恥じらうフィフティーンじゃ!」とか、花澤香菜のキレ演技にいつもときめく。
彼女のリップノイズのうつくしさを佐倉綾音がかたってるが、
プロも真似できない、天性のにごりない発声法をもつらしい。
きたない言葉もキレイにきこえる。
ボクは謎が謎をよぶたぐいの物語が苦手だけど、
聴覚と視覚の快楽が、じらされる不満をふきとばす。
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テーマ : 世界征服~謀略のズヴィズダー~
ジャンル : アニメ・コミック
小説16-2 マラソンガール
『自由か、隷属か』
インテグラで信濃町の慶應病院にのりつける。
首相の火虎シンゾーの見舞いだ。
むらがるSPは動揺したが、さすがにわらわを通せんぼできない。
「ひさしぶりじゃな。胃の方は大過ないか」
「……へ、陛下、どうしてここが」
「福澤諭吉はわらわの家庭教師じゃからな、ぬしもしらぬツテがある。
桃を買ってきたから、むいてやろう」
カーテンしめた病室にあまい香りがただよう。
かすかな夏のおとづれを感じた。
「いくら陛下でも、アポなしの訪問は御遠慮ねがいます」
「電話にすらでないぬしが悪い。内奏は首相の義務であろう」
5月28日、内戦勃発をうけ火虎は憲法停止を宣言。
同日、国会に「全権委任法」を提出し、強行採決する。
国家権力は独占された。
「火虎よ、ぬしのため忠告しよう。日本に独裁者はふさわしくない。
織田信長も東條英機もあわれな死に方をした」
「わたしには国をまもる責任があります」
「おなかこわしてコソコソ病院にかくれとるくせに」
「執務に支障ありません。叛乱もじきに鎮圧できるみこみです」
「スカイツリーの戦い」にやぶれた叛乱軍は脱走者あいつぎ、兵力は1万5000をわったらしい。
勝てるのかもしれない。
いや満洲も支那もノモンハンも真珠湾も、やつらはそういった。
だまされてはいかん。
「ゴッドガールの名のもと、もうしつける。講話せよ。いまがよきタイミングじゃ」
「御冗談を。国民が納得しない。戦死した兵の遺族はなおさら」
「民がのぞむのは平和じゃ!」
「陛下はわたしの支持率を御存じないのですか」
「独裁体制での輿論調査になんの意味がある。
いますぐ憲法を恢復させよ。強引にとらえた政治犯の釈放もわすれるな」
「ことわるといったら」
「わらわに友人が多いのはしっておろう」
火虎がフォークで桃をつまむ。
だいぶ痩せ皺もめだつが、目に不敵なかがやきがある。
「陛下、御自身がいったいなにものか、かんがえたことはありますか」
「わらわはゴッドガール。万世一統、2700年にわたりこの国をおさめてきた」
「ちがいます。戒厳状態にあっては、ただのかしましい幼女にすぎない」
「その侮辱、ぬしはかならず後悔するぞ」
「本日より安全確保のため、陛下の行動を内閣が直接監督します」
「…………」
「おすきなゲームやアニメを存分にたのしんでください」
SPの運転でインテグラにのる。
窓をながれる新宿通りの風景が涙でにじむ。
「我のみは哀れともいはじたれもみよ夕露かゝる大和なでしこ」
むかしよんだ歌が脳裏をよぎった。
村上は『アンダーグラウンド』でインタビュイーに、
日本の無責任なシステムを問わず語りで批判させた。
『ねじまき鳥クロニクル』の、皮剥ぎがおそろしいノモンハンのエピソードも、
司馬遼太郎が断念した題材をやつなりに引き継いだといえる。
まぁ最近の史料では、ノモンハンはむしろわが軍の健闘らしいけれど、
とにかく炭鉱のカナリアみたく、ひとびとに警告を発した。
なのにわらわは、なぜこれほど愚かなのか。
人生はマラソンみたくながいのに、気づいたときはいつも手おくれ。
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