小説14-1 司令官

『自由か、隷属か』


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5月12日 朱星ジョージ

 

 

 

1万の群衆にかこまれた、マリンスタジアムの特設ステージ。

壇上にはオレとジュンだけ。

 

「戦争とかこわいし、よくわかんないけど、お兄ちゃんと一緒なら戦える!

だってあたし、大好きなお兄ちゃんのためなら死ねるもんっ!」

 

マイク片手に、背のびして頬にキスしてくる。

羨望まじりの喚声。

かくしてオレは自由日本軍司令官に就任した。

なんてこった。

 

 

 

 

 

電話とノートPCがならぶだけの簡素なオフィスで、

受話器をにぎるフランちゃんがペコペコあやまる。

会長はスマホにむかいさけぶ。

 

「……ハンコもらうだけの仕事に何時間かかるのよ、グズ!」

 

通話をきったあとこちらに気づき、上品にほほえんだ。

黒いスウェードのジャケットをきている。

 

「あら、はしたないところ見られちゃった」

「いそがしそうですね。電話もひっきりなしにかかるし」

「まさにカオスよ。特に県との折衝に骨がおれるわ……」

「おカネは大丈夫ですか?」

 

食料・装備・医療・光熱費……出費はきりがない。

オレは剣道の大会で全国に知り合いがいるから、何十枚と手紙をかき支援をつのる。

額はたかがしれるが。

 

「いまさらなにいってるの。はなから破産状態よ」

「うーん」

「軍隊ほど最悪なものはない。1万人の集団がいて、1円も稼がないなんて!

コスタリカが常備軍を廃止したのは理にかなってる」

「会長は大金持ちなんだから、すこし貸してよ」とジュンが口をはさむ。

 

元会長の切れ長の目の色がかわった。

 

「いくらわたしでも自由につかえるキャッシュなんてそうない。

家族の反対おしきり不動産処分して、8000万円用立てたけど」

「ありがとうございます」

「でもこの程度じゃ焼け石に水なのよ。あと悩みは兵にはらう給料」

「給料? はらう必要ありますか?」

「あたりまえでしょ、かれらだって息抜きしたいもの。

ま、危険手当みたいなものね。月5万はらうとして5億とぶ」

「…………」

「だから司令官、食料や装備は可能なかぎり現地調達して。

借用伝票を発行してるのに、市民から信用されないのがつらいけど」

 

愚痴ってるわりにたのしげ。

後方支援の任務が性にあうらしい。

 

「おもうに、会長は県庁に詰めた方がいいのでは」

「え?」

「あっちでオフィスをもらったんでしょう? 会長が常駐すれば、行政と連絡がとりやすい」

「でも、わたしだけ安全地帯にいるのは良心がとがめるし、

仲間外れにされたみたいで愉快じゃないわ……」

「兵站は重要な役割です。おそらく司令官より」

 

鼻をならす会長。

 

「そういわれたら拒否できないわ、了解。

本城さんは連れてかないことにする。ここにも常識人がいないとね」

「がんばります!」とフランちゃん。

 

非常識人を代表する15歳がまた無責任に放言。

 

「県からおカネひっぱってきてね」

「ムチャいわないで。それは県が国に対し、独立を宣言する様なものよ。

わたしは県職員として働くだけ。まあ、ほかに金策のアイデアはあるけど」

「なんですか?」

「成田空港を制圧して、通行税をとるとか」

 

カネの話がきらいなアリアが、異議をとなえる。

 

「反対だ。後背が無防備になるし、そもそも大義名分がたたない。

われらは不当な税に抗議して、叛旗をひるがえしたのだから」

「それもそうね」

 

セーラー服の革命家がニヤリとした。

悪だくみをおもいついたときの顔。

 

「千葉県にドル箱がもうひとつあるよ」

「……ピーナッツか?」

「感動的なにぶさだね、アニキ。あれだよ、千葉なのに千葉じゃない施設」

 

 

 

内戦勃発による来場者激減にくるしむ東京ディズニーリゾートは、

「浦安市を戦場にしない」とゆう自由日本軍の申し出にとびついた。

条件は、施設名を「東京」から「千葉」へかえること。

県知事をまじえた、フランちゃんを中心とするオリエンタルランドとの交渉は成功。

「千葉ディズニーランド」誕生の発表に、県民は狂喜乱舞した。

チーバくんとミッキーマウスのコラボなども人気を博す。

自由軍の財政は、すこしだけうるおった。



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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

笠原巴『たけだけだけ-武田系限定-』

 

 

たけだけだけ-武田系限定-

 

作者:笠原巴

掲載誌:『月刊少年ライバル』(講談社)2013年-

単行本:ライバルKC

 

 

 

真田昌幸DNA保有者、「真田理絵子」。

高校2年生。

鞘に六連銭がしるされている。

主人公の「武田哲郎」にかしづく。

 

 

 

 

信玄のDNAをもつ「武田殿」は、「日本国立武士道学園」にスカウトされた。

モノノフを育成する超エリート校。

 

 

 

 

敷地は日本列島を模し、織田や島津など、各勢力ごと校舎がわかれる。

学園を統一したものには、国の要職があたえられるとか。

 

 

 

 

細身を盾とし、矢弾から主君をまもる理絵子。

命がけの学園生活。

アクションは戦国モノらしくはげしく、のびやかな手足はエロい。

 

 

 

 

武田軍校舎には、山本勘助の血をひく「山本香奈」が。

キツネ目がかわいい。

天下取りに軍師は不可缺。

 

 

 

 

3年の「北条綾」は、氏康のDNAを保有するライバル。

 

戦国時代と萌えのミクスチャには、アニメ化された『織田信奈の野望』などあるが、

本作は「東寄り」な点に価値がある。

信長の覇業をなぞるだけでは、時代をえがききれない。

東国あつてこそのセンゴク。

 

 

 

 

哲郎の強運に惚れこんだ綾が、ウェディングドレス姿でおしかける。

政略結婚も、戦国モノの醍醐味。

ツンツン姫が一巻から全力でデレる、わりと必死なハーレムラブコメ。

 

 

 

 

作者の縞パンへのこだわりも特筆せねば。

理由なくアオりまくるのがうれしい。

下着が上着を圧倒する、これぞ真の「下剋上」!

 

 

 

 

理絵子は「正室」候補でもある。

昼も夜も、戦場でも寝床でも、忠実につかえる。

乱世には男のロマンがある。

 

 

 

 

「軍神」上杉謙信は、兇暴系ロリとして転生。

 

人間十七年。

二次元の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり。

美少女が割拠する当世に奇襲をかける注目作だ。




たけだけだけ-武田系限定-(1) (ライバルコミックス)たけだけだけ-武田系限定-(1) (ライバルコミックス)
(2013/12/27)
笠原巴

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ナポレオン・ボナパルトとヒクソン・グレイシー

トゥーロン攻囲戦にて

 

 

ナポレオン・ボナパルトの武器といえば、少年のころよりひいでた数学力。

つねに数式が頭を支配していた。

地図の読解力とあいまつて、進軍や兵站について即座に命令くだせる。

エジプト遠征に必要な水の缶の数まで自分で計算した。

 

偉大な戦場心理学者でもあつた。

砲兵科出身のボナパルトは、大砲の音と衝撃で敵の戦意をくだいた。

 

 

スフィンクスのまえで

 

 

ヒトをモノとみなし、ひとりで世界を相手にチェスをした。

部下はみな勇敢だが、自立心に缺け、命令がないと無力なコマだつた。

 

イギリスのウェリントンは、好敵手の軍事的権威をねたむ。

自分がむなしく500人の犠牲をだせば、下院にひざまづかねばならないと。

 

ボナパルトは保守的な軍人だつた。

かれが恩恵うけた参謀幕僚や信号などの新機軸は、

アンシャン・レジームか革命期に導入されたもの。

あたらしい武器や医療や輸送手段に関心なかつた。

傷ついた兵の手足は薬で治療するより、弓鋸で切断させた。

勝ちまくつた軍事的天才ゆえ、革新をこのまない。

 

彼はかつて「時代を制した男」だった。

1790年代の後半、ボナパルトはヨーロッパ中で、

古い正統主義者や彼らの無能さ、特権、反啓蒙的な姿勢、

資源の濫用に対抗する者の、そして何よりも才能と若さの化身であった。

だから成功し、君臨できた。

しかしながら1813年までに彼は時代遅れになってしまった。

彼の時代は終わったのだ。

 

ポール・ジョンソン『ナポレオン』(岩波書店)

 

要するに、議会にひざまづく男の方がつよい。

 

 

 

 

 

リオのビーチで

 

 

つぎは「400戦無敗」でしられたヒクソン・グレイシーの著書『心との戦い方』(新潮社)から。

ボナパルトが数学者なら、ヒクソンは生理学者。

冬山で氷のはつた湖へとびこむトレーニングや、

2分以内に脈拍数を60までさげる呼吸法など、凡人の想像をこえる。

 

戦士である以上、心理学者でもある。

「自殺するにも勇気がいる」とか、「運をあてにした時点で敗北」とか、

「人生でもつとも重要なのは自己評価」とか、謙虚に耳をかたむけたい。

 

ヒクソンは試合に勝つてもガッツポーズしない。

対戦相手への敬意をたもつためだが、欧米でも、ブラジルでも、

グレイシー一族においてすら例外的な態度で、ゆえにかれは日本人選手に共感する。

やはり武士道の本質は「残心」にあり。

 

 

「コロシアム2000」

 

 

安生洋二による道場破りを撃退する話はおそろしい。

あとでホラふかれない様に、日本のメディア関係者をしめだし、

すべての窓にカーテンをかけ、血祭りにあげる一部始終をビデオ撮影。

失神させるまえに顔をタコ殴りにし、物理的證拠ものこした。

 

船木誠勝との試合でヒクソンは、アリに対する猪木みたく寝転がるが、

このとき眼底骨折し両目がみえなくなつていた。

立てるはずなかつた。

それでも視力うしなつたのをかくすため、決して目に手をやらない。

闇のなかで敵のローキックを1分間さばくうち、右の視野のみ恢復。

一気に攻勢へ転じ、だまされたままの船木をチョークスリーパーで死の淵へおいやる。

 

さてヒクソンには、ボナパルトにまさる点が。

 

もちろん、私だって疲れることはある。

そういうときには、しっかり眠って、できるだけ早く疲れを取る。

つまり、眠るのにも最大のエネルギーを注ぐというわけだ。

 

「1日3時間睡眠」伝説の皇帝とはひと味ちがう。





ナポレオン (ペンギン評伝双書)ナポレオン (ペンギン評伝双書)
(2003/03/26)
ポール・ジョンソン

心との戦い方心との戦い方
(2013/10/31)
ヒクソン・グレイシー

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峠比呂『これだからアニメってやつは!』

 

 

これだからアニメってやつは!

 

作者:峠比呂

掲載誌:『コミックフラッパー』(メディアファクトリー)2013年-

単行本:MFコミックス フラッパーシリーズ

 

 

 

主人公は29歳の「南坂ちさと」。

アニメ制作会社で「制作進行」をつとめる。

つまり本作は、アラサー女子のお仕事モノ。

 

 

 

 

制作進行、通称「制作」の役割は、視聴者にとりイメージしづらい。

一枚も絵をかかないから。

簡単にゆうと、作画監督・各話演出・原画マンなどと折衝しスケジュールを管理、

自動車ではしりまわりながら素材を回収する仕事。

まともに寝るヒマない激務で、デートはドタキャンばかり。

 

 

 

 

アニメ制作の全工程にかかわる不可缺な職務だが、

クリエイティヴな作業をしない分、アニメーターからただの小間使いとみなされがち。

逆に「パンツ出しとけばOK」といわんばかりの無責任な演出家に、

かぎられた予算と時間のなかで、最大限のクオリティを要求したりする。

 

 

 

 

アニメーターはフリーランスもおおく、個人の仕事場を回収してまわる際、

他社の制作と縄張りあらそいになることも。

 

 

 

 

概してアニメーターはプライドたかく、あつかいがむつかしい。

それぞれの得手不得手をかんがえ発注する必要あり。

女性にパンツばかり描かせればセクハラになりかねない。

 

 

 

 

作画には資料が必須ゆえ、コピーとりも大変。

一日つぶれるほど量がおおい。

 

 

 

 

そんな具合に、地味といえばたしかに地味な、

アニメの裏方のさらにその裏方へスポットライトあてる。

われわれアニメファンなら興味津々だが、親からは理解されない。

 

 

メガネは制作デスクの「竹宮さん」

 

 

現場でスタッフが命けづることを、会社の上層部もしろうとしない。

高品質のアニメができて当然とおもつている。

 

峠比呂先生といえば、『まおゆう魔王勇者 ~丘の向こうへ~』について、

ボクが無智から失礼な記事をかいたところ、熱いコメントをくれたひと。

『まおゆう』でそれなりの売上を記録し、念願のオリジナル連載にいたつたのだろう。

題材は、アニメ専門学校へかよつた経歴をいかしたもの。

そんな裏事情をしつてると感慨ぶかい。

 

ただし、本来ものすごく絵の達者な作家なのに、

連載二本かかえるせいか作画が荒れてる様にみえるのは残念。

「作画崩壊」とまでゆかないが。

 

 

 

 

彼氏にふられ、お見合いが破談になつても、ちさとはやめられない。

潤滑油としてクリエイター同士をつなぐ仕事もまた、クリエイティヴな醍醐味があるから。

表現者の魂がこめられた作品だ。




これだからアニメってやつは! 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)これだからアニメってやつは! 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
(2013/12/21)
峠比呂

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小説13-3 開戦

『自由か、隷属か』


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メッセの国際会議場3階。

会長が、嗚咽もらすフランのちいさな背をさする。

 

「わたしなにもできなくて……」

「そんなことない、勇敢だったわ」

「ゴッドガール陛下のときも……失敗してみんなに迷惑を……」

 

ずっと呼吸があさく、せわしない。

PTSDに発展する可能性がある。

のりこえてほしい。

わたしやジョージには軍師が必要だ。

戦局全体を俯瞰しながら、筋のとおった戦略をたて、

ときに外交官として合従連衡をむすべる人材が。

 

 

 

来島ゲン元中尉が3人つれて入室。

 

「会議のまえに不幸なしらせがある。

さきほどの戦闘で獅子奮迅の活躍だった、一ノ瀬シン上等兵が死亡した」

 

フランが息をのむ。

 

「1分間の黙祷をささげ、霊をなぐさめたい。いいかな? では、黙祷」

 

薄目でみると、来島が会議室の約30名を両目あけて観察する。

忠誠心をためしたつもりか。

おたがいさまだが、卑しいふるまいだ。

 

「革命戦士の栄誉は永遠にたたえられん!」

「死者に安息を、われらに勝利を!」

「自由日本万歳!」

 

士気のたかさは噂どおり。

クリップボードもった迷彩服のメガネ男が事務的な話をはじめた。

この梁山泊は正規軍あがりが牛耳ってる様だ。

上座についた来島がわたしのTシャツをみている。

きがえたとき、面倒でブラジャーしなかったのをおもいだした。

わたしは脂肪がすべて胸にあつまる体質らしく、閉口させられる。

ほかは骨と皮なのに不格好でしたかない。

 

「中尉、ちょっといいですか」と小声で話しかけた。

「な、なんだ」

「会議は無腰でとききましたが、なぜあなたたちだけ帯刀してるのですか?」

「法律が軍人にみとめる権利だ」

「『元』軍人でしょう」

「…………」

 

メガネが、われら蒼月学園自由部員を紹介する。

 

「そういや羽生女史は秋葉原にいたそうだね。何人斬った?」と来島。

「中立のつもりだったから武装してません」

「わたしは10人斬った。はやくも『一人十殺』達成さ」

「たのもしいですね」

「キミも相当な腕らしいじゃないか。どこの戦場にいた?」

 

おもわず吹き出して注目あびる。

 

「あっはっは……ネットのデマを真にうけるなんて。剣道をかじっただけですよ」

「かくさなくていい。SASにいたとゆう話もきく」

「バカバカしい! ただの女子高校生なのに」

「わたしはフォートブラッグに派遣され訓練をうけた。イラクにもいった」

 

会話をきりあげるため、席をたちコーヒーメーカーへむかう。

 

 

 

猫舌なので、必死にさましながら熱すぎるコーヒーをすする。

議題はきょうの復讐戦にかわり、来島が雄辯をふるう。

ホワイトボードにきたない図をかき、練馬の駐屯地を襲うとかなんとか。

 

「たとえば、わたしもいたデルタフォースはソマリアで民兵の包囲を突破し……」

 

そろそろ灸をすえねば、こちらの命が危険にさらされる。

マグカップをテーブルの角においてから、ちかよる。

 

「来島中尉、ソマリアと日本になんの関連性が?」

「あくまで過去の作戦の例として……」

「で、なんの関連性が?」

「……ならきくが、キミにもっとすぐれた作戦案があるのか。

わたしはフォートブラッグで非正規戦をまなんだ専門家だ」

 

相手の胸ぐらをつく。

倍の体重があるくせよろける。

 

「おい中尉、デルタ本部の門番をつとめる名物じいさんをしってるか?」

「なに?」

「名前をいえ。退役曹長だ。さあ、はやくいえ!」

 

さらにおす。

太刀に手をかけた巨漢の腰がテーブルへぶつかる。

 

「いいかげんにしろ小娘……あちっ!」

 

手足にそそがれる、推定95度のコーヒー。

喉をつかみ、上半身を卓上にたたきつける。

 

「驕りたかぶりたいなら、戦場で手柄あげてからにしろ!

この朱星ジュンが、どれほどあぶない橋をわたってきたかしらないのか!?

オマエみたいなウスノロとは格がちがう。すこしは敬意をはらえ!」

 

 

 

 

 

はぁ……またブチギレてしまった。

ほかにやり様あったろうに。

解散後の会議室でため息つく。

セーラー服の革命家がニヤニヤしてやってきた。

 

「やっぱアリアさん、ウチらで一番漢らしいわ」

「……反省してるんだから、放っておいてくれ」

「『敬意をはらえ』って、うれしかったよ。あたしも苦労したもんね」

 

どの苦労をさすのだろう。

 

「これが武力革命のみにくい現実だ。キミもわかったんじゃないか」

「でもアリアさんと仲よくなれた。昔からお姉ちゃんほしかったし」

 

声に切実なひびきが。

 

「ところで門番の名前ってなんなの?」とジュン君がつづける。

「オチは御想像のとおりさ」

「さあ、どうだか」



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小説13-2 開戦

『自由か、隷属か』


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海浜幕張駅につくと、「きがえてくる」といってジュン君がトイレへゆく。

入口の見張りはジョージにまかせ、わたしがつきそう。

内側のたかいところに窓がある。

尻をおしあげれば、襲撃されても逃がせるだろう。

おなじみのセーラー服で、悲劇のヒロインが個室からでた。

 

「……朱星ジュンだ……」

 

ざわめきだす改札口。

時計は6時すぎ。

本身をさげたふたりで両脇かためる。

武装が理由で逮捕されかねないが、丸腰のリスクの方がこわい。

無遠慮にカメラのレンズが集中。

好奇心からでなく、するどく警戒する視線も目にはいる。

もしあいつらが政府の手のものだとして、

黙認されるのは、ここが叛乱軍の勢力下だから。

 

緒戦にやぶれた叛乱軍だが、むしろ士気はたかまり、

千葉市の「幕張メッセ」を基地として接収、全国から兵をつのっていた。

おどろくことに、その数1万をこえたとか。

付近にマリンスタジアムや稲毛海浜公園などあり、収容は可能。

ロッテは今季のペナントレースの参加資格をうしなうが、

不人気のせいか、市民から特に不満の声はあがらない。

 

 

 

「……ようこそ、自由の震源地へ」

 

改札機ぬけたら、迷彩戦闘服の大柄な男に握手をもとめられた。

背丈はジョージとかわらないが、胸板あつく首もふとい。

おなじ格好の兵士を7人つれる。

 

「失礼ですが、あなたは?」

「来島ゲン。先月に不名誉除隊となるまで陸軍中尉。

キミは拉致事件で有名な羽生女史だね。お目にかかれ光栄だ」

「尾ひれつけて宣伝に利用されただけです、あれは。

あなたは叛乱ぐ……いや、メッセの勢力のかたですか?」

「内部では『自由日本軍』とゆう呼称が定着してるよ。

ちなみにわたしは秋葉原の戦いで指揮をとったものだ」

 

くちゃくちゃガムをかむ横柄なやつ。

あの混戦で、叛乱軍に指揮統制などあったはずない。

最初にわたしに話しかけた魂胆もみえすいている。

ジュン君やジョージを後回しにして主導権をにぎりたい。

乱世は、こうゆう野心家の背をおす。

 

 

 

南口のロータリーにレンジローバーが2台とまり、10人ほど男がおりた。

 

「蒼月学園のみなさん、お迎えにきました!」と笑顔でまねく。

「……徒歩数分なんだけどなあ。まあ乗るとしよう」と来島。

 

脊髄を電流がかけおりる。

出迎えに10人も必要なものか。

ジョージに「時間かせげ」とささやく。

かすかに会長(いまだそう呼ばれる)へ目くばせ。

自販機へむかうふりし、射界を確保しにゆく大学1年生。

矢筒の蓋があいている。

牛丼屋の社長にしておくにはおしい女。

 

探知しろ。

敵もおなじことをかんがえるはず。

どこかに別働隊がいる。

視野の右の限界に人影を感じた。

通行人がジュン君へ焚いたフラッシュでうかびあがった。

ククリ刀を二階建ての屋上へ投擲。

殺傷力など期待できないが、ほかに投げるものもない。

 

「敵襲っ!! 4時方向、屋上、射手2人!」

 

射手ひとりにククリが命中、もうひとりに矢がつきささる。

わたしのは偶然だが、会長の的中率はたのもしい。

抜刀したジョージが妹の手をひくも、まごついている。

さっきフランのタブレットで地図みたとき、脱出ルートをきめればよかった。

 

「直進! メッセへむかえ!」

 

わたしの叫びに反応し、かけだす兄妹。

来島たちがレンジローバーのまわりでチャンバラする。

 

「キサマら何者だ!?」とさけびながら剣をふるう元中尉。

「来島、撤退しろ!」

 

逆上してるらしく、馬の耳に念仏。

会長の矢が、またひとりつらぬいた。

敵の攻撃はよわまっている。

 

「……フラン、会長、われわれもゆくぞ!」

 

朱星兄妹を掩護するため、血のにおいのする闇のなかを疾走した。


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小説13-1 第二部「乱花篇」

『自由か、隷属か』


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5月9日 羽生アリア

 

 

 

京葉線は江戸川をこえた。

夕陽にきらめく川面が海へひろがる。

戦争などなければ、最高の一日だったのに。

 

となりの席でジュン君が漫画をよむ。

「4月22日の朱星ジュンはどこまで計算していたか?」

この問いは、後世の歴史家をなやますだろう。

一部始終を目撃したわたしすら、見当つかないのだから。

 

恋人を斬首する15歳の映像は、彼女を「悲劇のヒロイン」にした。

ふさわしい称号にちがいないが、あの悪意にみちた言葉の洪水を、

一瞬ですべて虚構と證明するしわざにわたしは戦慄した。

学び舎のみぐるしい醜聞が、革命前夜のうつくしい悲恋に。

どんでん返し。

反政府デモは、法の範囲内におさまるのをやめた。

支配者がそむいた法に、民衆がしたがう道理はない。

 

 

 

白地に黒のチェックのワンピースをきたフランが、ジュン君にはなしかける。

 

「髪きりましたよね。ボブかわいいなぁ」

「ありがと。『声優グランプリ』もってって、花澤香菜みたくしてもらった」

「そう言われればちょっと似てるかも。目おおきくて色白くて」

「あたしにとっちゃ最高の賛辞だね、お世辞とわかってても」

 

フランはさりげない心くばりのできる子だ。

 

 

 

電車は船橋競馬場や谷津干潟をとおりすぎる。

 

4月26日の日比谷公園周辺のデモは2万5千人あつまった。

すくなからぬ参加者が武器をたづさえた。

革命の聖地となった秋葉原へ行進する途中、武力衝突が。

火虎首相は軍に治安出動を要請。

中立のつもりでそこにいたわたしが目算するところ、

政府軍は約2000、デモ参加者で武装し戦意あるものは約3000。

万世橋付近、中央線の高架下でせめぎあう。

組織化されない叛乱軍は蹴ちらされた。

正確には敵に痛撃あたえ、一目散にげた。

報道によると政府軍の死傷者は1500、叛乱軍は4-500。

鎮圧するには民間人との区別がむつかしく、同胞相手で士気もあがらない。

政府軍はアキバを死守したが、勝利はたかくついた。

 

 

 

やさしい笑顔でフランが会話をつづける。

 

「漫画なによんでるんですか?」

「サブロウタ先生の『citrus』。百合姫コミックスの名作」

「百合、つまり女同士の恋愛ですね。ジュンさん、そうゆうの興味あります?」

「いや自分がするのはなぁ。百合漫画は絵カワイイのおおくて好きなだけで。

ああでも、フランちゃんが相手ならいいかな」

「はわわっ……わたしなんかじゃ釣りあいません!」

「耳まで真っ赤だよ。こりゃフラグたったか」

「ふ、ふえぇぇ……ア、アリア先輩はカッコイイから、同性からモテますよね?」

 

いやなタイミングでガールズトークにまきこまれた。

 

「カッコイイとゆうか、怖いとよくいわれる。眼帯してるしな」

「このひとたちはダメだって。面とか胴しか知らないんだから」とジュン君。

「なにをゆう。ジョージはともかく、わたしは恋のひとつやふたつ知ってる」

「ほう、聞かせてもらおうじゃないの。てゆうかアニキ動揺しすぎ、アハハハハ」

 

たわいないコミュニケーション。

恋人を手にかけたとゆう心の傷が、20日で癒えるはずない。

苦悩のほどは想像を絶する。

否、朱星ジュンなら克服できたのか。

かぼそい少女が、社会秩序をゆるがす。

その正体は無邪気にふるまう天使か、底しれぬ闇をかかえる悪魔か。



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聯合艦隊・軍用犬・日本語文法

 

 

あまりおもしろくないイアン・トール『太平洋の試練』(文藝春秋)から、別の話題を。

 

北太平洋をおおうミッドウェー海戦の作戦計画は、妥協の産物。

「柱島艦隊」とバカにされる戦艦艦隊に、日の目みさせた。

マハンの「集中の原則」と欺瞞作戦を、都合よく抱きあわせて。

攻撃のみ執着し、索敵をわすれる。

連戦連勝が運命と信じ、矛盾を矛盾のまま放置。

宇垣纏参謀長など、兵棋演習でサイコロの目をごまかした。

 

 

 

 

ニミッツはアリューシャン列島をすて、空母三隻を南雲の左側面に配置。

まつしぐら敵の喉元へくらいつく。

 

南雲忠一の兵装転換は後知恵で批判され、山口多聞の積極性が賞讃される。

たしかに飛行機の発艦は、空母の火災をふせいだ。

防御としての攻撃。

 

 

B-17が投下する爆弾をかわす空母飛龍

 

 

炎上する赤城をどうするか。

黒島亀人先任参謀は「陛下の艦を陛下の魚雷でしづめることはできない」とさけぶ。

なんの論理性もない。

「陛下の艦」を敵にわたすのはゆるされるのか?

天皇の概念は議論を封じるに有効だが、戦争の役にたたない。

 

山本も南雲も草鹿も「復讐する」とかなんとかいつて、敗北の責任をとらない。

海軍の損耗は一週間、東條英機首相にすらかくされた。

すでに国家の体をなしてない。

 

 

空母エンタープライズに着艦するデバステーター

 

 

アメリカ国民の士気は高くも低くもなかつた。

国旗をふつたり行進するほど能天気でない。

スキャンダル、労働争議、凶悪犯罪、人種暴動、官僚の縄張りあらそい……。

ルーズヴェルト大統領は開戦前とかわらず非難をあびた。

日本以上に混乱した国家だつた。

 

だが社会全体でみると、おそろしく効率よい戦時体制をきづいた。

 

 

 

 

 

 

 

くわしく紹介する時間ないが、マイク・ダウリング『レックス 戦場をかける犬』(並木書房)はよい本だ。

アメリカ海兵隊の軍犬兵だつた著者と軍用犬「レックス」の、

イラクでの苛酷な日々と、戦友としてのたしかな絆がしるされる。

レックスは美男子で、マリーンから「セクシー・レクシー」とよばれ愛された。

 

イヌは「死」を認識する。

正確にゆうと、「死」をおそれる人間の心を理解する。

生物学的に意見のわかれる話題だが、

毎日AK-47や迫撃砲でねらわれた体験にもとづくから説得力あり。

危険を察するほど、レックスは士気をたかめる。

 

 

 

 

反政府組織は民間人のあいだにひそみ、簡易爆弾で米軍や協力者をころす。

アメリカはベトナム戦争以来はじめて、軍用犬を戦闘任務につけた。

地中ふかく武器弾薬をうめても、かれらは地表にのこる臭気をかぎあてる。

おそれをなした敵は、レックスを優先的に攻撃しだす。

 

M16は長すぎイヌにあたるので、M4をもとめる提言など勉強になつた。

 

 

前線基地マハモウディアの検問所

 

 

イラクでは、互いの命を互いの手と足に委ねながら、

あらゆる状況を乗り越えてきた。

この絆は生きている限りずっと続く。

海兵隊のモットー「いつも忠実に」に値するマリーンがいるとしたら、

それはレックスに他ならない。

 

こんなうつくしいセリフをはくから、ボクはアメリカ海兵隊がすき。

 

 

 

 

 

 

 

現代日本人の武器はアサルトライフルや軍用犬でなく、日本語。

1981年の井上ひさし『私家版 日本語文法』(新潮文庫)をよんだ。

 

かれは共産党を支持した左翼で、文法観にも政治意識がにじむ。

日本語が西欧語とくらべ時制の区別がはつきりしないのは、

わが国は世界最後の元号使用国だからとこじつけたり。

時間をある種の循環構造とみなすんだと。

 

言葉についてかんがえぬいた井上は「新かな」で書く。

古代の表音による「正かな」より、どれほど缺点がおおくとも、

自分がいきる時代の表音にしたがいたい。

一方、新仮名がもたらす混乱をさけるため漢字を多用。

水掛け論になりがちな問題に対する、徹底した道具主義にボクは感服した。

 

ただつかうのは新仮名だが、支持するのは正仮名。

なにしろ日本国憲法が正仮名で書かれる。

さまざまな矛盾を解決する、憲法の威力を尊重。

井上は筋のとおつた左翼の闘士だつた。





太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 下太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 下
(2013/06/14)
イアン・トール


レックス 戦場をかける犬レックス 戦場をかける犬
(2013/09/27)
マイク・ダウリング


私家版 日本語文法 (新潮文庫)私家版 日本語文法 (新潮文庫)
(1984/09/27)
井上ひさし

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兄弟で『聖剣伝説2』

 

 

ファミコン至上主義のボクが、めづらしくスーファミをしらべてたら、

いい感じの『聖剣伝説2』(スクウェア/1993年)のアマゾンレヴューをみつけた。

当時小学生の「NaOkI」氏は、兄が主人公ランディを操作するかたわら、

魔法をつかえるプリムやポポイで支援した。

 

ここで魔法使えとか、装備あれにしろとか、

アイテム取れやとか、死ぬなとか。

色々うるさい兄貴との2Pプレイだったが、本当に兄貴と二人で

冒険に出てるような錯覚に陥っていたせいか耳には痛くなかった。

 

アニキの文句も、ゲームならうるさくない。

むしろ本当に冒険するみたいでリアル。

 

 

 

 

あ、天使の聖杯無いから生き返せへんわ、ごめんな。とか

おう、よう倒したやんけとか、え今の技どうやってだしたん!?とか、

普段兄貴が言わないような優しい(?)言葉がゲーム中に出てきたりして。

 

関西辯の記憶に実感こもる。

ゲームしてる方が普段より、アニキのやさしさが表に。

 

 

 

 

ストーリーは当時あまり理解できなかったのだが、その物語の壮大さ、

小さなものが大きなものに立ち向かえるというすばらしさなど、

(今でもだが)馬鹿な自分でもなんとなくは分かっていたようで、

今思い出すと本当に懐かしく、胸が熱くなる。

 

ファンタジー世界の物語は小学生にむつかしいが、

現実を投影するドタバタの活躍で、自分なりに作品の本質をつかんだ。

 

 

 

 

いまのゲームがわすれた宝物がここに。

任天堂はまだマリオなどで同時プレイにこだわるが、目指すところはややちがう。

神話的な感動を、お茶の間で共有することに価値があつた。

聖剣2をWii Uにダウンロードし、20年まえの攻略本まで注文したけど、

さすがにもう兄弟であそぶ年でないのが、なんとなくさびしい。



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テーマ : ゲーム
ジャンル : ゲーム

タグ: ファミコン  WiiU 

小説12 別れ

『自由か、隷属か』


登場人物表


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4月22日 朱星ジョージ

 

 

 

椅子にすわるアリアが、真剣の柄に両手と顎をのせる。

鬼の形相。

 

先週、特定秘密保護法にもとづき軍律会議がひらかれ、

蒼月学園教諭・灰野リョウの死刑がきまった。

執行はきょう午前10時。

 

うちひしがれても、絶望しない自由部員たち。

身長143cmのフランちゃんも薙刀で武装する。

 

「なんとか救出できませんか? わたしも戦います」

「警官200人以上、こちらは5人。犬死にするだけだ」と目の血ばしるアリア。

 

ジュンは窓辺で、イヤフォンしてPS Vitaでカチカチあそぶ。

ドアがひらき、死刑囚がはいってきた。

 

「先生……」

「キミたちには挨拶しておきたくてね」

 

かける言葉がない。

死が1時間後にせまる男は、ゆったりした風情で着席。

動揺をかくしてるか、無我の境地に達したか。

 

「いまの心境を説明するのはむつかしい。

後悔しているが、自分の行動のただしさを確信してもいる」

「オレらのせいでこんなことに……」

「気づかってくれてありがとう、ジョージ君。

でもキミらの運動ははじまったばかり。未来へ目をむけよう」

 

この重責をオレはになえるのか?

大学進学後も自由部に顔をだす、トモコ先輩が泣いている。

 

「卑劣です……先生をスケープゴートにするなんて」

「たしかに濡れ衣だ。ボクが軍の機密をもらし、暴動を使嗾したとか」

「この国は狂ってます!」

「社会科教師らしく最終講義をしてもいいかな?」

 

ホワイトボードに中東の地図をかく。

2011年の革命、いわゆる「アラブの春」の熱狂がすぐ鎮静したのは、

アラブ諸国が「レンティア」、つまり地代生活者の国家だから。

政府はガスや石油による歳入が豊富で、税にほとんど依存しない。

「課税なくして代表なし」で、国民は政府に説明責任をもとめず、

民主化への熱狂もひろく共有されなかった。

そう、逆もまた真なり。

資源をもたない政府は、おもい説明責任を課せられる。

 

「……だれかが責めをおわないと混乱はしづまらない。国民はひとつになれない」

「先生がその犠牲になるんですか」

「まさか、ボクでは荷が勝ちすぎる。騒動はつづくだろう。

すこし話しすぎたかな。それじゃ、みんな元気で」

 

ジュン以外全員起立し、みおくった。

 

 

 

 

 

「本日の臨時生徒総会は午後1時に延期します」と校内放送が。

現生徒会長のフランによると、死刑執行をつとめるブシドーの荒谷がにげたらしい。

同僚を密告しておきながら、泥はかぶらない。

激昂したアリアがゴミ箱をけとばす。

 

「生殺しみたいな非人道的なまねを……。広報してるんでしょ、効果はないの?」と、

トモコ先輩がフランちゃんにたづねる。

「本のステルスマーケティングにつかってる、ツイッターアカウント2000個をフル稼働させてます。

リツイートの連鎖で情報は拡散してますが……」

「ムダだろ」

 

きょうはじめてジュンが口をひらく。

おおきな瞳にかなしみの色はみえない。

 

「テレビや新聞に、機械いじりで対抗できるかよ」

 

連日マスコミは、灰野先生やジュンの醜聞をかきたてる。

ほぼすべてウソとわかってても、耳ふさぎたくなるほど。

 

「あたしがやる。アニキ、太刀かして」

「……多勢に無勢だ、勝ち目はない」

「そうじゃない、あたしが先生を斬る」

 

表情ゆたかすぎる妹から感情がきえた。

 

「やめておけ、シロウトにできる仕事じゃない」と口をはさむアリア。

「朱星の人間なめんな」とはきすてるジュン。

 

 

 

 

 

校庭に約千人の生徒と教師、約百人の警官、テレビ局の人間がいる。

肌をさす四月の風。

 

「……キミがくるとは、おどろいた」

「リョウさん、あたしはなにもゆうことがない。ただ一刀でしとめる」

 

風の音しかしない。

 

「生きつづけてくれ。エゴイストとして」

「約束できないけど、がんばる」

 

春光を照りかえす刀身が、急転直下のうごきをはたした。

 

 

 

 

 

第一部「綻花篇」了


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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

堀泉インコ『愛しの花凛』

 

 

愛しの花凛

 

作者:堀泉インコ

掲載誌:『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)2013年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

 

 

 

笛ヶ丘遊園地のマスコット、「めるんちやん」。

「ハーメルンの笛吹き男」の様に、子どもをつれてくるとゆう意味がある。

 

 

 

 

中の人は、高校生の「河合花凛」。

カメコにも偏見もたない気さくな性格で、人気急上昇中。

 

 

 

 

花凛の属す「キャラクター部」は苦労がおおい。

特に子どもの兇暴性がなやみ。

 

 

 

 

掃除担当の「重松」は、水たまりをながすのがすき。

なんかわかる。

 

 

 

 

きまぐれで紙吹雪をばらまく、めるんちやんとは犬猿の仲。

雨のあとはがすのがめんどくさい。

 

 

 

 

主人公は20歳の「花ヶ崎豊」。

遊園地にかかせない花壇の世話をする。

どこか花凛に似た薔薇のコーネリアがおきにいり。

 

 

 

 

花をめでる様にやさしく交流する、草食系男子の恋。

なにげない会話も、爆発物解体みたくドキドキ。

オトコ目線だけど、少女漫画的に繊細なラブコメだ。

 

 

 

 

いまがさかりと咲きほこる、一輪の花のごとき思春期女子の可憐さ。

制服も尋常でなくカワイイ。

 

 

丁寧なトーンワーク。舞台は「都会」だが東京にはみえない。作者は新潟在住

 

 

本作は堀泉インコの初連載。

美少女かければそれだけで連載もてそうな(失礼)『きららフォワード』らしく、

ドラマツルギーはつたないが、それも初々しくていとおしい。

 

 

 

 

ラブコメとゆうアミューズメントパークは、いくつになつても心ときめく。

鉢植えの様にさりげなく、本棚にしまつておきたい作品だ。




愛しの花凛 (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)愛しの花凛 (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)
(2013/12/12)
堀泉インコ

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: きらら系コミック 

小説11-2 ボンバーガール

『自由か、隷属か』


登場人物表


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箱買いしたブラックサンダーをほおばるところに、女子小学生があらわれた。

 

「なにやつじゃ」

「蒼月学園のあたらしい生徒会長、本城フランともうします」

「なぜとおした、火虎!?」

 

胃弱の首相がこたえる。

 

「直接対面したいとの、陛下の仰せがあったので」

「みたかったのはパンツを燃やしたオナゴじゃ。まあよい、話をきこう」

「このたびは御多忙のなか、御尊顔を拝したてまつりまして……」とチビ。

「3時から夕食までゲームの時間でな。結論からもうせ」

「和睦の提案でございます」

「ほう」

 

チビがタブレットとりだしプレゼンをはじめた。

パンツ女のサイト閉鎖とツイッターでの謝罪、

新法は政府と業者ともに不利益をもたらすこと、

より効率的なインターネットでのヘイトスピーチ規制、

全国規模の学生自治組織設立などについて、立て板に水でかたる。

瞼がおりてくる。

 

「で、結論はなんじゃ」

「不公平税制の撤回と、警察の撤収をもとめます」

「よかろう、くわしくは火虎と相談いたせ」

 

こやつの様な小才子の腹はよめる。

権力にコミットしたいだけ。

藤原氏の専横すら耐えたわらわにしたら、児戯にひとしい。

 

「跳ねっ返りをまとめるのは物入りであろう。火虎よ、できるだけ資金も融通せよ」

「はっ」

「陛下、わたしはタカりにきたのではありません」とチビ。

「そう卑下するな。カネがなくてはなにもできまい」

「問題は政府の抑圧です」

 

きらめく瞳がいまいましい。

 

「抑圧ときたか。選挙権はないにせよ、さんざん政治活動しとるくせに。

この国がいやなら、支那か北朝鮮でもゆけ」

「日本の若者は、もっと自立すべきとおもいませんか!?」

「たあいもない」

 

「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば 忍ぶることの弱りもぞする」

『新古今集』恋一・1034。

堪忍袋の緒は限界じゃ。

3DSの『スペースハリアー』を起動。

マイケル、裸眼立体視でスペハリをあそべる時代になったぞよ。

 

「……だからわたしは今回の騒動は、真の自由を手にするため……」

「くどいぞ、クソチビ!」

「陛下、御自重を」とあわてる火虎を無視。

「象徴であるわらわが不自由なのだから、国民も不自由で当然であろう!」

「ふぇっ」と生意気なチビが涙目に。

「ガキはスクールカーストで萎縮して生きておれ。恋愛などもってのほか。

本当はわらわだってイチャラブしたい……キュンキュンする青春がほしいのじゃ!」

「はわわっ」

「ぬしらなぞ芥子粒ほどの力もない。わらわは南北朝争乱も明治維新も勝った。

アメリカにだって負けてない。万世一統、世界最強の神じゃ!」

 

沈黙。

すっきりした。

 

「まだおったのか、クソブスチビ。さっさとかえれ」

「……ぶつぶつ」

「きこえぬのか」

「……陛下より背たかいもん! 中身も16歳、だれかとちがってババアじゃないもん!」

「こ、こやつを逮捕せよ! ゴッドガール不敬罪で死刑じゃ!!」

「はわわわわ……」

 

わらわはゴッドガール。

またの名をボンバーガール。

リア充は爆発しろ。



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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

小説11-1 ボンバーガール

『自由か、隷属か』


登場人物表


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4月13日 ゴッドガール

 

 

 

「うりゃスマッシュ、パーフェクトじゃ!」

「やられた!」

 

ゲームセット。

わらわのとなりに、Wiiリモコンプラスをにぎる小太りの中年男が。

任天堂社長・岩田聡と『Wii Sports Club』であそんでおる。

 

「陛下がこんなにお強いとは、おどろきました」

「Wii版をやりこんだからのう。和歌や俳諧に通ずるシンプルさがよい。

ところで今日はもうひとり客人をまねいたはずじゃが」

 

ここは吹上御苑にあるゲーム部屋。

『PONG』からXbox Oneまで、入手可能なすべてのゲームをそろえた。

セガの「R-360」筐体がギュンギュンまわる。

 

「紹介します、弊社の専務取締役・宮本茂です」

「ゲーマーでしらぬものはおらぬわ」

 

キツネ目の男がでてきた。

 

「……おもしろいけど、ここまで回転する意味あったんかな」

「これはマイケル・ジャクソンの遺品じゃ」

「ああ、かれはセガのファンでしたね」

「おしい男をなくした。またここであそぶ約束をしておったのに……」

 

いかんいかん、やつのことをかんがえるとつい涙が。

 

「葬儀へゆけなかったが、先代の山内のことは愁傷じゃった」

「おそれいります。故人もよろこぶでしょう」と岩田。

「ファミコンなくしてわらわの人生はかたれぬからのう。

スーマリにスターソルジャーにボンバーマンに桃鉄……」

「ハドソンさんが多いですね」と宮本。

「高橋名人の熱狂的信者じゃったからな。買わなきゃハドソン♪

損ばっかりだして会社自体買われたのは皮肉なことよの」

 

無反応。

 

「ぬしの作品では、ありきたりではあるが『時のオカリナ』に感動したのう。

ゲームを藝術の域へたかめた天才じゃな。国民栄誉賞授与をはたらきかけておる」

「もったいないです、ゲームは集団でつくるものですから」

「謙虚なことよ。さて、先週おくった企画書の件じゃが」

 

世間話モード終了。

 

「マリオ新作のキャラを、陛下にかえるとゆうお話ですね」と岩田。

「大半のゲーマーはヒゲ面のオヤジに見飽きておる。

わらわもNintendo Directに出演してやるぞよ。てゆうか出してたもれ」

「うーん、キャラは数学の記号みたいなもので、簡単にかえられないです。

たとえば信号の赤と青が逆になったら混乱するでしょ?」と宮本はしぶい顔。

「任天堂はそう保守的だからいかんのじゃ。

国内市場は萌え、海外はグロで勝負せんときびしいぞ。わらわはどちらもイケる」

 

ふたりが気乗り薄なのは想定内。

エサも用意せずよびだしたりしない。

ぶあつい書類をとりだす。

 

「コナミとかけあって、ボンバーマンと桃鉄の権利を買いとってきた。

わらわの小遣いで買えたのが、ファンとしては複雑じゃが……」

「はぁ」

「宮本には、わらわがピョンピョン跳びはね、爆弾をばらまき、

電車にのって買い物するゲームをつくってもらう。

神ゲーまちがいなしじゃ! 神であるわらわが言うのもおかしいが」

 

顔をみあわせる社長と専務。

どう断ろうかかんがえとるな。

切り札である英文の手紙をみせる。

 

「これはゲーム事業について提案する、ビルからの手紙じゃ」

「……ビルといいますと、まさか」と岩田の眼鏡がひかる。

「もちろんビル・ゲイツじゃ。いまは慈善基金を運営しておるそうな。

やつはアマチュアの歴史家でな、わらわを妙に慕っておる」

「そんな御関係がおありとは」

「最近はマイクロソフトも、アップルやグーグルにおされ苦しいからのう。

そこで目をつけたのが、わらわと任天堂とゆうことらしい」

「く、くわしく訊かせてください」

「まさに『社長が訊く』じゃな」



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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

紺野あずれ『私立はかない学園』

 

 

私立はかない学園

 

作者:紺野あずれ

掲載誌:『コミックハイ!』(双葉社)2013年-

単行本:アクションコミックスコミックハイブランド

 

 

 

学業優秀、品行方正、容姿端麗。

全校の支持をうけた「清和院花緒」は、生徒会長にえらばれる。

就任の挨拶で新校則を宣言。

 

「パンツ着用禁止」がそれ。

 

 

 

 

さつそく翌日から施行。

校門で風紀委員がスカートのなかをチェック。

 

 

 

 

なにかの拍子でまる見えになるかもしれない。

女子生徒はみなモジモジ。

 

 

 

 

会長ひとりだけ優雅にふるまう。

花緒は生まれて一度もパンツはいたことがない。

鉄壁ガードが、洗練された身のこなしをうむ。

 

『ストライクウィッチーズ』とおなじく変態を堂々肯定し、高貴さをきわだたす。

 

 

 

 

男子もパンツ禁止。

下半身の異常があらわになるので、問題はある意味女子より深刻。

節制をもとめる会長のたくらみか。

 

ちなみにアンスコもだめで、女子テニス部員は窮地におちいる。

(個人的にノーパンのラクロス女子がみたい)

 

 

 

 

ヒロインの「深草夕夏」はおもわぬ恩恵をこうむつた。

ガサツで同性にしかモテないのに、

はいてないのを恥じる姿が男心をつかみ、ラブレター三通。

ノーパンは少女をオンナにかえる。

 

 

 

 

「はいてないと痴漢の被害が甚大」との苦情をうけ会長は譲歩し、

登下校中のパンツ着用をみとめる。

かわりに「下着ロッカー」での脱衣を強制。

 

 

 

 

「わざわざ脱ぐ」とゆう行為は、「はいてない」ことより恥づかしい。

 

ドレスコードの文化が繊細で微妙とわかるし、

逆にみんな一緒だと案外平気なのもおもしろい。

服装は間主観的な事象で、真剣な哲学的検討にあたいする。

 

 

 

 

ひたすらパンツの話題に終始する本作が(さほど)猥褻に感じないのは、

ノーパンを倫理思想の域へたかめた花緒の高潔さゆえ。

スカートの中身が、世界をうごかす。




私立はかない学園(1) (アクションコミックス(コミックハイ!))私立はかない学園(1) (アクションコミックス(コミックハイ!))
(2013/12/12)
紺野あずれ

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シンジュク

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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小説10 一夜

『自由か、隷属か』


登場人物表


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4月11日 朱星ジュン

 

 

 

夜10時、コーポアヤナギ303号室のドア。

ひとり暮しの男の部屋は来たことあるのに、ガタガタ身ぶるい。

多分いまから灰野先生に抱かれる。

根拠ないけど人生かわる予感が。

ドアがひらいた。

 

「どうしたんだ突然」

「突然学校こなくなったのは先生でしょ」

 

許可えないまま入室。

シナ人窃盗団に荒らされた様な乱雑さ。

 

「ちらかってるから、あがるのは遠慮してほしいんだが」

「そうゆうレベルじゃない。汚部屋だよ。にしてもすごい数の本だなあ」

「で、なんの用?」

 

フードつきの黒のジャケットに、カーキ色のカーゴパンツできた。

私服みせるのはじめて。

あたしはオンナノコぽくない服の方が似あう。

 

「正直にこたえて。先生はスパイ?」

「…………」

「いろんなひとに裏切られたから、あたしは傷つかない。ウソはやめてね」

「たしかにスパイをした」

「ふーん、そうなんだ」

 

気絶しそうなほど胸がいたむ。

 

「キミの情報を生徒指導の荒谷先生につたえていた」

「メールでおびきだして拉致させたの?」

「その計画はしらなかったが、責任は感じる。もうしわけない」

「あたしを守るといってくれたもんね」

「見通しがあまかった。一介の教師の手におえる問題じゃなかった」

 

泣いちゃダメ……泣いたら負け。

 

「あやまらなくていいよ。本当のこと言ってくれてありがと」

「まだ言ってないことがある」

「なに?」

「部室にカメラが仕掛けられていた。あのときのキスの映像で脅迫された」

 

くだらない、どうでもいい。

 

「変なことにまきこんで、ごめんね」

「教師としてどうすべきかまよっている」

「あたしなら大丈夫。自分のせいで先生がクビになったら嫌だし」

「ボクのクビですむなら簡単な話さ……」

 

話を複雑にしないでよ。

不良娘がいて、手におえなくて、見放した。

いつもの結末でしょ。

先生が書物の密林をみまわす。

 

「たくさん本をよんだけど、ボクはまるで社会をわかってなかった。

ひとは権利をもとめ戦わなきゃいけない。つねに全力疾走すべきだ」

「エゴイストでいいってこと?」

「そう、キミはただしい。ヘイトスピーチはいただけないけど」

「在日特権でヌクヌクくらすゴキブリがいて、

そいつらの多くが凶悪犯罪者なのは事実でしょうが」

「統計的事実じゃないだろう」

「日教組乙。あたしがチョンにレイプされても平気なの?」

「ボクは加盟してないよ。はぁ……どうして極論にはしるかなあ」

 

映像ソフト専用の棚をみつけた。

かくれアニオタだったか。

 

「『ロウきゅーぶ!』のBOXじゃん。いいアニメだけど、なんか意外」

「いや、むかしバスケやってたから」

「『なのは』に『はなまる幼稚園』……なるほどねえ。

『小学生は最高だぜ!』のひとか。あたしに興味ないわけだ」

「ご、誤解だ」

「わかるよ、小学生ってカワイイもん。

小4くらいの自分の写真みるとマジ天使っておもう。いまはもう下り坂」

「そんなバカな」

「じゃあまだイケるかな。ねぇ先生しってる? あたしもう生徒じゃないんだよ」

 

足の踏み場もないので、四つん這いでちかよる。

草食系教師は部屋のあちこち指さす。

 

「さっきまでカメラやマイクをさがしてたんだ。監視されてる可能性がある」

「だからなに? 先生とならこわくない」

「まだ『先生』っていってるじゃないか」

「ニコ生でながしてもいい。垢BAN上等で」

 

胸におさまる。

気持ちいい。

 

「あたしビッチっていわれるけど、どっちかってゆうとセックスはきらい。

アレのときの男って必死でこわいでしょ。あちこち舐められるのも不快だし」

「そうゆうものかな」

「でもギュッとされるのはすき。だからそうして」

 

政府のひと、みてる?

あたしはいま、天にのぼるほどしあわせ。

 

「……本当にキミは自由だな。そこがすきだ」

「うれしい。リョウさんにあたしの全部をあげる」

 

この人生、まだ落ち目じゃなかったみたい。



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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

けんたろう『百騎夜行』

 

 

百騎夜行

 

作者:けんたろう

掲載誌:『アワーズGH』(少年画報社)2013年-

単行本:YKコミックス

 

 

 

鎖につながれ、神社に軟禁される「伊東阿頼耶(あらや)」。

神託つたえる家業を、19歳になるまでつとめた。

 

 

 

 

神をくらう異形のもの「神上(かむあ)」の襲撃にあう。

あつけなく噛みちぎられるデブの巫女。

 

 

 

 

金髪碧眼の美女がバイクで体あたり。

 

 

 

 

その名は「テミス・ローランド」。

「聖剣ザドキエル」で巨大なケダモノも一刀両断。

 

そんなダークファンタジーが本作。

俗にゆうと中二病アクション。

 

 

 

 

彼女は内閣府神祇局「百騎夜行」一番隊隊長。

なるほど沖田総司か。

新選組まんまの編制が中二病的に燃える。

 

 

 

 

百騎夜行が阿頼耶を救出したのは、体内に神をやどす異能者だから。

四尾の天狐「阿小町(あこまち)」に萌える。

 

 

 

 

テミスはカトリックの聖職者。

本作でえがかれる「神々」はキリスト教の神をふくむ。

節操ない日本的多神教がリアルだ。

 

 

 

 

魔物を利用し、体制の転覆をはかる勢力も暗躍。

阿頼耶の姉「刹那」は、弟をつれさつた百騎夜行に対抗するため、神の敵とくむ。

ブラコン姉の物語でもある。

 

 

 

 

こちらは、ニホンオオカミが神格化した「大口真神」で破壊工作をたくらむ。

 

スタイリッシュにえがく、闇のなかの神の使いと悪鬼の群れの死闘。

もうすこし女の子がカワイイとボクごのみだが、

それでも中二マインドはおおいに満足させられる。




百騎夜行 1 (ヤングキングコミックス)百騎夜行 1 (ヤングキングコミックス)
(2013/11/16)
けんたろう>

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小説9-2 拉致

『自由か、隷属か』


登場人物表


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窓からとびおり前転して衝撃をにがす……のはむつかしい。

ヒーローの様にゆかず尻餅つく。

いたむ足で駆ける。

やつらがジュン君を拉致するつもりなら、校門付近に車輌があるはず。

阻止するならいましかない。

気配を感じた花柄ネクタイ男がふりかえる。

 

「先輩……こいつらに脅されて!」

 

人質は無視、敵とたがいに値踏みしあう。

警察がここまでムチャするとおもえない、軍か諜報機関の人間だろう。

ふたりが特殊警棒をのばす。

背後から足音が……ジョージ、おそいぞ。

袈裟がけに花柄男を斬る。

渾身の力で四度うつも受けられ、揉みあいながら突きたおされる。

 

「先輩! アニキ!」

 

こちらも鍛えてるが男の腕力はつよい。

空き缶入れにぶつかったらしく、金属音がひびく。

つめよる花柄が、おとした木刀をけとばす。

 

「娘、投降しろ」

 

胴への一撃もかまわずしがみつき、首に歯をたてる。

ひるんだ敵をおしたおし馬乗りに。

つぶれた空き缶で顔をきりきざむ。

頬や鼻をそぐ。

何度も、何度も。

顔面は痛覚神経が集中しており、悲鳴あげるのも当然。

 

捕虜をひきずる縞ネクタイと打ちあう、ジョージの取り柄は身長だけ。

人のよさで主将に推されたクチで、技量はわたしに数段おとる。

木刀と警棒ひろい助太刀にむかう途中、

校門に人影ふたつ、真剣をぬいてるのに気づいた。

撤退すべき。

 

「ジョージ!」

「……あ!?」

「新手だ」

 

ストン、予備軍の足もとに刺さる矢。

 

「ようこそ蒼月学園へ。わたしは生徒会長の斯波トモコ。

これは挨拶がわり、つぎは外しませんよ」

 

二階で弓をひきしぼる。

 

「受付はむかって左、来校者の方はまづそちらへどうぞ」

 

兵科混合の差で、かろうじて撃退。

 

 

 

 

 

しこたま打たれたジョージは全身アザだらけ。

 

「アリアさん、救急車よばなきゃ」

「かれの頑丈さだけは保証するよ」

 

仔犬みたくふるえるジュン君。

 

「なにがどうなってるの……こんなことありえない」

「物的證拠がほしかったんだろう」

「え?」

「われたディスクとキミの身柄を同時に確保すれば、灰色が黒になる」

「でもそれをしってるのは……まさか会長に売られた?」

「失礼ね。わたしの活躍をみなかったの」

 

てごわい射手がおりてきた。

 

「さっき警察よんだのにまだ来ないのもおかしい。

残念だけど、灰野先生はスパイかもしれない」

「…………」

「あくまで可能性よ、にらまないで」

「二階から様子見してたくせに、変なこといったら承知しない」

「おおこわ」

 

瞼をはらしたジョージがたづねる。

 

「会長、ボクら兄妹はどうしたらいいんでしょう」

「さあ……サイトとじて自首するとか」

「それでゆるされますか」

「むつかしいわね。相手はスケープゴートをもとめてるから」

 

ジュン君がスマホをとりだす。

 

「『拉致未遂なう』……くそ、写真撮っときゃよかった」

「これ以上さわぎをひろげるな!」とジョージ。

「うるさい、ほかに抵抗の手段あんのかよ!?」

 

ジョージの肩に手をおく。

 

「キミは全力で妹をまもれ」

「わかってる。オレは妹のためなら剣をとる」

「ならわたしは傍らにたとう。われらは同志だから」



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小説9-1 拉致

『自由か、隷属か』


登場人物表


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4月8日 羽生アリア

 

 

 

自由部部室で、上下スウェットの中等部女子がパソコンにくいいる。

数日入浴してないらしく体臭が鼻をつく。

わが盟友・朱星ジョージの妹、ジュン君だ。

四月になりもうウチの生徒でないはずだが、不法占拠中。

バタンと蓋をとじてやる。

 

「な、なにすんだ!……ってアリア先輩か」

「のめりこみすぎだ。家で風呂にはいって、ちゃんと寝なさい」

「やっぱくさいかな? この記事アップしたら体ふこう」

 

きく耳もたない。

画面に「五輪招致でゴッドガールが職権濫用!」と見出しがおどる。

2020年の東京オリンピック開幕式は、浅利慶太氏の演出で、

ゴッドガール陛下が主役をつとめるときまつている。

実は五輪招致自体、陛下が裏で糸をひいたもので、

石原慎太郎や猪瀬直樹などの政治家へ賄賂がおくられたとか。

 

「プロパガンダか。いっぱしの革命家きどりだな」

「まあね」

「国民はオリンピック開催をよろこんでるのに」

「それ以上に大衆はスキャンダルをこのむからねえ。

特にゴッドガールネタは右も左も食いつきがいい。

ミッキーマウスのネガキャンされたら、ディズニーはこまるでしょ」

 

不敵な笑顔。

はりたおしたくなる。

 

「……宗教は民衆の阿片とマルクスがいってるわ。ゴッドガール制もおなじこと」

 

男の社会科教師と一緒に、生徒会長の斯波トモコがはいってきた。

身長172センチのわたしより背がたかい。

政治面でジュン君に共感しており、部外者の部活動を黙認する。

 

「あっ灰野先生! いま部屋はいっちゃダメ!」

「え?」

「とにかくダメ、でてって!」

 

ジュン君はネコ顔だが、本質はイヌ。

みえない尻尾をブルブルふるわす。

瞬時に頬あからみ、女のわたしがみても鳥肌たつほど可憐。

両者にコトがおきたのはまぎれもない。

すこしはジュン君もかくすべきだが。

 

会長が荷物をわたす。

 

「これが自由部宛でとどいてたわ」

「ありがとうございます。ストパンのブルーレイです。ディスク割ったやつ」

「なににつかうの?」

「声優の沢城みゆきさんのサインがはいってるんです。

あたしらの活動に賛同してくれたとかで。ある人がゆづってくれて」

「それは光栄ね。ところで目のしたの隈ひどいわよ。ファンデ貸そうか?」

「いやあ、化粧が必要なトシじゃないんで」

「……ちょっと」

 

サインに狂喜乱舞したジュン君は、スマホをチェックしてやおらスウェットぬぎ、

汗ふきシートで体をぬぐい、制服にきがえドタバタ部屋をでた。

おちつかない子だ。

議論は苦手だが、パトロンにも釘をさそう。

 

「会長は暴動を支持するんですか?」

「正当性があればね。悪政への叛逆は摂理にかなう」

「警察との衝突でまた死者がでたのに!?」

「火に油をそそぐ政府がわるいのよ」

「炎上させてるのはあの子です。全国的な暴動の首謀者なんですよ!」

「組織だった運動じゃないし、首謀者といえるかしら……」

 

金持ちケンカせず、ただ高みの見物に興ずる。

混乱をおもしろがっている。

社会がどうなろうと、食うにこまらないから。

 

「……あれ、ジュンいないのか」

 

ジョージがきた。

わたしとおなじ剣道委員だから木刀をさげる。

あいかわらずノンキな面がまえ。

 

「ちょうどいい、キミの妹が話題だ」

「アイツをとめろってゆうんだろ。でも本当に強情で」

「心配じゃないのか?」

「あたりまえだろ! 兄としての責任もある。でも……」

「『でも』ばかりだな。わたしがキミの立場なら力づくでとめる」

「そうだな、シャレにならない状況だし……わかったよ。気にしてくれてありがとう」

 

ここ二階から、校門へむかうジュン君がみえる。

両脇に背広の男ふたりがピタリつきそう。

 

「ジョージ、あのふたりに見覚えあるか」

「いや、しらない」

「腰がすわっている。普段本身をさげてる軍人だ」

「どうゆうことだ?」

「シャレにならない状況ってことさ。支援をたのむ」


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鈴木恵美『エジプト革命』

2011年2月8日のタハリール広場(撮影:Mona)

 

 

エジプト革命

 

著者:鈴木恵美

発行:中央公論新社 2013年

レーベル:中公新書

 

 

 

2011年1月25日の大規模な反政府デモとその拡大をおそれ、

ムバーラク政権はインターネットや携帯電話の通信を遮断した。

 

民主化運動の中核はわかい大卒者で、

そのおおくはエジプトではまだ高価なPCをもち、扶養家族がいない。

かれらは組織化されず、リベラルで、信仰において穏健だつた。

 

 

「1月25日 エジプト民衆蜂起の日」としるされたホームページのバナー

 

 

小説のためアメリカ革命(独立戦争)を参照しておもつたのは、

おこるべくしておきた革命はないこと。

悪辣な為政者ほど権力維持に躍起となり、すぐ叛乱の芽はつまれる。

 

なぜエジプト革命は成功したか?

アラブにめづらしく、「エジプト人」とゆうアイデンティティをもつから。

地域にむすびついた軍閥もあらわれない。

 

 

テレビ出演する軍最高評議会メンバー

 

 

軍部はエリート集団としてあおがれ、国民をまもる存在とみなされてきた。

警察の様に弾圧の道具につかわれなかつた。

 

だが1.25を「クーボリューション」とよぶものもいる。

クーデターの側面がつよいから。

軍は法的根拠なく憲法停止、文民統制を否定する体制を死守した。

 

 

炎上する軍用車両(撮影:Jonathan Rashad)

 

 

軍部は、ムバーラクの次男ガマールへの世襲をきらつたらしい。

取り巻きによる経済的利権の切り崩しにあつていた。

 

エリートを自認する軍人は名声をおもんずる。

政治家以上に輿論に敏感で、デモにふりまわされた。

青年将校の組織的離反がおこるなど、軍内部もゆれる。

 

 

ウルトラスの応援手法をとりいれたムスリム同胞団に対するデモ

 

 

カイロのサッカーチーム、アハリーのサポーター組織であるウルトラスが、

革命をになつたのはおもしろい。

ひごろ治安部隊と対峙するのになれてるため、たよりがいがある。

かれらを鎮圧するには実弾が必要だつたとか。

 

大太鼓をたたくなどサッカーの応援手法は、デモをもりあげるのに有効。

 

 

軍の式典に出席するムルシー大統領

 

 

ムルシーが新大統領に就任する際、軍人は革命への貢献をほこつた。

われらこそキングメーカーとゆう自負があつた。

イスラエルの脅威や、戦略的拠点のスエズ運河の存在が、

軍の特権を国民にゆるさせる土壌をうむ。

 

ムルシー政権下で知事職は、軍部と与党・ムスリム同胞団のあいだで等分される。

権力と利益の分割、それが革命の成果。

 

 

ヌール党の選挙横断幕。女性候補者はベールで顔をおおう

 

 

ムバーラクの国民民主党は利権うしない自然消滅。

一方で過激なサラフ主義者が政界進出するも、

法案審議中にコーランをよみだすなど議会を混乱させる。

 

新大統領は支持層である農民を対象に、負債を免除した。

末期の鎌倉幕府みたいなポピュリズム。

ムスリム同胞団は「多数派」の驕慢があつた。

 

 

エジプト軍のフェイスブック。社会の二極分化をうれうメッセージをおくる

 

 

「革命で血をながしたのはわれわれだ!」

不満つのらせる青年勢力。

 

軍はフェイスブックで広報をおこない、新憲法についてアンケートをとるなど、

あきらかに国防以上の役割をはたしだす。

民意を口実に政治介入をつよめ、ついに今年7月3日、

今度はまぎれもないクーデターをおこした。

「民主的政権」は一年しかもたなかつた。

 

 

タハリール広場上空をアクロバット飛行する空軍機

 

 

クーデターとその後の報復の連鎖で、膨大な血がながれている。

青年勢力は誘惑にまけ、もともと敵だつた軍と手をむすぶ。

ロクに字もよめない農民がえらんだ政治家を排除するため。

民主化運動が民主主義を否定する矛盾。

 

文民統制を憲法で保障する思想は、人類のもつとも偉大な発明のひとつ。

「ナショナリズム」と「法の支配」、これがあるべき革命の両輪だろう。




エジプト革命 - 軍とムスリム同胞団、そして若者たち (中公新書)エジプト革命 - 軍とムスリム同胞団、そして若者たち (中公新書)
(2013/10/22)
鈴木恵美

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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

菊池まりこ『カプチーノ』

 

 

カプチーノ

 

作者:菊池まりこ

掲載誌:『ハルタ』(KADOKAWA)2013年-

単行本:ビームコミックス

 

 

 

16歳の「涙川克美」。

ウブすぎ恋愛漫画すら直視できないネンネ。

コーヒーはにがくてダメ。

 

 

 

 

強引にさそわれた合コンから脱出するため、カラオケ店員が彼氏といつわる。

ひよんなことからカップル誕生。

 

 

 

 

形だけデートするはめになり髪をきりにゆくが、バカ美容師にザックリやられ大失敗。

唯一の長所であるキレイな髪すらうしない、色気ゼロに。

 

 

 

 

雑貨屋で「あの子かわいい」といわれよろこんだら、男にまちがえられたとしり落胆したり。

 

……とまあ、それだけの古風なラブコメ漫画。

中二病とか腐女子とか非リア充とか、時代に媚びた設定まるでなし。

よくこれで企画とおつたと感心する、自由放任の『ハルタ』らしい作品だ。

 

 

 

 

ゆえに新人作家のスッピンの魅力が炸裂する。

「かわいいヒロインをかきたい!」とゆう衝動が。

 

なお克美が男にふれた経験は、先生が食中毒でたおれたときのみ(長谷セン食中毒事件)

 

 

 

 

「萩原」の手をにぎろうとねらう姿勢は、レスリング選手さながら。

グレコローマンスタイル。

 

 

 

 

せつかくの水着回はパーカーで鉄壁ディフェンス。

 

 

 

 

誕生日プレゼントをわたしにいつたら、キャンパスのひろさに圧倒される。

井のなかの女子高生、大学をしらず。

 

 

 

 

コスプレと勘ちがいされ、サークルに勧誘されたり。

日常エピソードのつみかさねが、ほのぼのたのしい。

 

 

 

 

萩原の元カノの噂をきいて一週間泣きくらす。

友人らは応援する様な、おもしろがる様な。

「恋とかわかんない」のモンチッチが、いつのまに嫉妬でくるしむオンナに。

 

秋月りすの長期連載『OL進化論』になぞらえるなら、本作は「JK進化論」。

 

 

 

 

恋、つまり自我にめざめたJKは、だれもとめられない。

世界は彼女の手中にある。

 

 

 

 

地上最強の生物は女子高生。

自明の理をためらわず宣言するいきおいが、さわやかで好感もてる。




カプチーノ 1 (ビームコミックス)カプチーノ 1 (ビームコミックス)
(2013/11/15)
菊池まりこ

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テーマ : 漫画
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ナムコ史観

『ツインビー』(コナミ/1986年)

 

 

多根清史・阿部広樹・箭本進一によるレトロゲー本『超ファミコン』(太田出版)は、

当ブログに記事もかいたくらいでたのしく読んだが、勘所をはづしてた様だ。

アマゾンに投稿された「野比のび犬」のレヴューにおしえられた。

そう、ナムコがおおすぎる。

 

本書で取り上げられているナムコものはなんと11本と、

任天堂の12本に次ぐ多さだ。

ハドソン6本、コナミは5本、カプコン4本といった具合で、

当時のファミコンゲームメーカーの勢力図を思い返してみると、

ナムコの11本は、妙に突出していると言わざるを得ない。

 

たしかにナムコは偉大だが、ファミコンの雄ではない。

地味な『ゼビウス』より、ふたり同時プレイ可能な『ツインビー』の方が、

ファミコン少年の心をつかんでいた。

コナミがどれほど果敢に、ハードウェアの限界に挑戦したことか!

 

 

『ファミコンジャンプ 英雄列伝』(バンダイ/1989年)

 

 

だが、ツインビーもゴエモンもドラキュラも本書には出てこないし、

チャレンジャーもボンバーマンも迷宮組曲も、

ドラゴンボール神龍の謎もファミコンジャンプも出てこない。

 

すでにハドソンはわすれられた。

バンダイは「クソゲーメーカー」の烙印おされ、ネタあつかい。

 

あきらかに偏見。

文句いいつつ、みなバンダイのゲームが大好きだつた。

でなければ『ファミコンジャンプ』がミリオンヒットになるものか。

 

 

『ディーヴァ』(東芝EMI/1987年)

 

 

野比のび犬は、執筆者の世代に先入観の要因をみる。

 

本書を執筆している3人のライターの生まれは

1967年(多根)、1970年(阿部・箭本)と、

ファミコンブーム当時すでに「ファミコン少年」から

「ファミコン青年」に差し掛かっている年齢である。

 

勿論、多根らは真剣にファミコンであそんだろう。

だが革命に直接まきこまれてない。

ゆえにプレミアソフト『サマーカーニバル'92 烈火』をとりあげるし、

オリジナル作より、アーケードやPCからの移植作を優先する。

なによりナムコ贔屓をおさえられない。

 

ファミリーコンピュータの歴史がかたられるのは、これからだ。



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小説8 魔法少女

『自由か、隷属か』


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3月29日 ゴッドガール

 

 

 

わらわの庭、千鳥ヶ淵。

白髪の老人とベンチに腰かける。

お堀をかこむ桜の海にたゆたう。

 

「……敷島の大和心を人問はば 朝日に匂ふ山桜花」

「本居宣長の歌ですね」

「毎年この季節は、日本人でよかったとおもわぬか」

「否定はしません」

 

この男はアニメーション作家、宮﨑駿。

よびつけたことを、こころよくおもってない。

 

「ぬしの作品のテーマは、自然保護をうたうものがおおいな。

東京で植物の在来種など、ここ皇居にしかのこっておらぬ」

「絶対権力にまもられる自然。皮肉ですね」

 

この世代は左翼がおおくてこまる。

 

「わらわはぬしのアニメを全部みたが、やはり一番は『赤毛のアン』かのう」

「あれはパクさんの作品です。ボクはアンがきらいで。でしゃばりな女は苦手でして」

 

いやみったらしい。

こらえろゴッドガール、相手は巨匠だ。

 

「ところでカントク、企画書はよんでもらえたかのう?

わらわを主人公とする4クールのアニメじゃ」

「もう引退した身ですから」

「だれも信じておらぬぞ。魔法少女として活躍するわらわを描いてたもれ。

NHKで日曜朝8時30分放送、プリキュアをぶっつぶす」

「この様なことを直接もうしあげるのは恐縮ですが……」

「なんじゃ」

「わたしはゴッドガール制に批判的な人間です。企画にふさわしくありません」

 

だいぶ怒っとるな。

 

「おもしろいシャシンをつくれれば右も左も関係ないと、大映の永田雅一がいっておる」

「もしわたしが陛下のアニメをつくるなら、戦争責任などにふれるでしょう」

「かまわぬぞ。わらわほど平和を愛する君主がほかにおるか?」

「それはそうかもしれませんが……」

 

あぶないあぶない。

統帥権問題とかツッコまれるとくるしいのじゃ。

百年まえのふるい本をとりだす。

 

「ところでぬしは夏目漱石がすきらしいのう」

「ええまあ」

「誕生日もおなじとか。国民作家をうむ星のめぐりあわせらしい」

「暦がちがいますけどね」

「わらわは漱石に会ったことがある。なかなかいい男じゃった」

「ほぅ」

 

くいついた。

オタクを操縦するのはたやすい。

 

「これはヤフオクにだすつもりの『草枕』の署名本じゃが、どうしようかのう」

 

 

 

 

 

宮﨑がほくほく顔でかえったあと、電話で火虎をよぶ。

10分後、はしってベンチまでくるが、七三分けはみだれない。

 

「アニメの企画、ゴーサインじゃ。すぐ手配せよ」

「承知しました」

「暴動はどうなった」

「また全国に飛び火したものの、事態は沈静化へむかっております」

「道頓堀にとびこんだアホが溺死したときいたぞ」

「……不幸な事故ですな。フェンスは設置されてるのですが」

「いちいちオチをつけたがる土地柄じゃな」

 

桜花のごとくきよらかな大和心はどこへいったのか。

 

「いかに始末つける?」

「ことは財産の破壊におよんでいます。政府もうごかざるをえません」

「具体的にいえ」

「特に秋葉原の首謀者は、きびしく処罰する必要があります」

「女子中学生じゃろう。見せしめにできるか」

「映像がのこってますが、物品の強奪を教唆する発言はありません。

自分の下着をもやしただけです。閣内でも意見はわれています」

 

狡猾な。

いつの世も煽動家は手をよごさない。

 

「あの法律がいかん。ストパンに長ズボンはかせるなどありえぬ。

ぬしはアニオタをなめておったな」

「創価学会婦人部から要求があったもので」

「カルトの圧力に屈したか」

「中年女とオタク、底辺同士いがみあわせればよいのです」

「理にかなっとるが、ぬしまで累がおよべば世話ない」

 

うらめしげに火虎の目がひかる。

 

「……先日の陛下のいいつけどおり、毅然として対処します」

「連帯責任をおわすつもりか? わらわは議会政治体制の君主にすぎぬ」

「言葉がすぎました」

「要するに問題は不況じゃ。『三本の矢』とやらで、はやく民の不満を解消せよ」

 

コンビニの袋から、ペットボトルなどとりだす。

 

「ぬしには期待しておる。ファミチキの残りをたべるがよい。さめとるが」

「ありがたくいただきます」

「カネとは流動的な、水のごときものじゃ。器にあわせ形をかえる」

「はぁ」

「一枚の紙幣が、チキンになり、本になり、セックスになる。不思議ではないか」

 

ごくごく。

 

「だが風呂桶に湯が半分ではカゼをひく。じゃんじゃん万札を刷れ」

「そこは慎重さがもとめられますが」

「ハイパーインフレなどそうおこらぬわ。日銀が紙幣発行すればシニョリッジが生じ、

インフレ期待により株価と為替が反応する。金融政策はマジックさながらじゃ」

 

わらわはゴッドガール。

世界をすくう魔法少女。

プリキュアは『ハートキャッチ』しかみとめない。



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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

此ノ木よしる『SE』

 

 

SE

 

作者:此ノ木よしる

掲載誌:『ヤングアニマル』(白水社)2013年-

単行本:ジェッツコミックス

 

 

 

大学卒業し、ITヴェンチャーへ入社した「丘史郎」。

社員は数名、職場の雰囲気はゆるい。

 

 

デニムのショーパンでITぽさを演出

 

 

なにせ社長は女子高生。

オナホールの制御プログラムなど開発する。

ユーザーの性癖を学習し、つかえばつかうほどキモチよくなるイノヴェイションだ。

 

 

ある意味、現実歪曲フィールド

 

 

「高島百香」、17歳。

ひとよんで「オナホ界のスティーヴ・ジョブズ」。

起業家精神で、沈滞した日本経済に風穴あける。

 

 

 

 

チン設定がひときわ目をひく萌え漫画だが、

システムエンジニアの仕事もマジメにえがく。

ふたりで一台のPCをつかう「ペアプログラミング」とか、うらやましい。

 

 

 

 

作者は女性で既婚。

オナホに切実な関心あるはずなく、下品にならない。

デスマーチで意気消チンする女子社員の愚痴などわらわせる。

 

 

 

 

新製品「スマートホール」は自動洗浄機能つき。

射精後にゴシゴシあらう虚しさをさけるため。

わかるなあ。

 

 

 

 

「.」と「,」のちがいでNASAのロケットがとばなかつた話など、勉強になる。

女性すくないプログラマの世界で、百香のギャップ萌えがきわだつ。

 

 

 

 

TOTOがウォシュレットを開発するとき、

肛門の位置などデータは存在せず、社員の協力をあおぐしかなつた。

女子社員は恥づかしがるが、どうしても必要だつた。

 

羞恥心の壁にたちむかつてこそ、創造的破壊ができる。

 

 

 

 

社長命令でスマートホールをつかつた丘は、デザインについて具申。

かくしたくなる恥づかしいのでなく、堂々かざりたくなる形状はどうか。

インテリアとしてのオナホ。

 

ユーザーからのフィードバックをおもんずることで、

日本の技術者がおちいりがちな機能性偏重の罠をかわす。

 

 

 

 

ジョブズばりのドヤ顔でプレゼンする百香。

 

先日、小型無人8翼ヘリで荷物をとどける「Amazon Prime Air」の発表をみて、

もうわが国は技術革新のスピードについてゆけないのではと悲観したが、

エロスとゆう得意分野ならまだ太刀打ちできそう。

 

 

 

 

天才ゆえの不幸か、百香は脳に重病をわづらう。

重厚なドラマもみせる必読作にちがいない。

 

 

 

 

雇用主と雇用者の恋模様はあわく、直截のエロはない。

本作をオナニーのネタにつかえればメタフィクション化し、おもしろいのに。

TENGAとコラボするとか。

作品のさらなる昇天……もとい、発展を期待する。




SE 1 (ジェッツコミックス)SE 1 (ジェッツコミックス)
(2013/11/29)
此ノ木よしる

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

宮﨑勤と攻性防壁

岩手県警ホームページより

 

 

「不審者」とゆう言葉をつかうのは日本だけ。

犯罪者を外見で識別しようがないと、外国人はしつている。

 

学校の訓練で、サングラスとマスクをつけた不審者役がしばしば登場する。

そうした姿の犯人が侵入した事例はないのに。

だれがすきこのんで「わたしは不審者です」とうつたえる?

防犯教育として有害だ。

 

日本人は子どもに智恵つければ、犯罪者をだしぬけるとおもつている。

防犯ブザーがその典型。

東京都品川区は年間1億6千万円を投じ、救難信号システムを運営する。

ブザーをならしたうち99.9%が誤報だが。

 

警察は大人にも、「バッグは車道の反対側にもて」などと指導。

これも無意味な智恵だ。

バッグをかける肩は癖になつており、道を折れるたび持ちかえるなどありえない。

ひつたくりは、その隙をねらうだけ。

 

 

撮影:Corpse Reviver

 

 

犯罪者は「だまし」の専門家、国民の平均より知能たかいはず。

敵に最大限の敬意をはらわずして勝利はない。

 

たとえば宮﨑勤の犯行は、合理的で緻密だ。

4歳の女児が歩道橋の階段をのぼるのをみた宮﨑は、

あえて反対側の階段をつかい、偶然よそおい橋のうえで声をかける。

腰をかがめ、やさしく「すずしいところへ行かないか」と。

さきに階段をおりた加害者のあとを、被害者はよちよち追随した。

ふたりが車にのる様子は「不審」にみえなかつた。

 

宮﨑は2008年に鳩山邦夫によつて殺されたが、

できるだけながく生かし、その智恵を国家に役だてるのがただしい。

アメリカのFBIが犯罪者からおおくまなぶ様に。

 

 

ウィーンの低所得者むけ市営集合住宅

 

 

異民族の侵略をうけなかつた日本は城塞都市がない。

その歴史が防犯意識の拙劣さにあらわれている。

攻撃をこのみ、守備をしらない。

太平洋戦争もサッカーもそう。

 

ヨーロッパは集合住宅まで要塞化する。

入口にゲートバーをおき侵入をこばむ。

中庭はひらけており、360度から監視がゆきとどく。

緩衝地帯としての芝生など、公園も外敵から身をまもるよう設計。

 

 

ニュージーランドの公園

 

 

公園のベンチは遊具に背をむける。

子どもをみるのでなく、子どもをみる人間をみる。

かわいい我が子をみたい気持ちはわかるが、日本式の公園は、

宮﨑勤が女児を物色するのにつかわれるなど隙だらけ。

 

「人通りが多いところは安全」とゆう意識もまちがつている。

だれかがウチの子をみてくれるなど、むなしい期待だ。

ウチの子をみるのは親だけ。

2003年の長崎市で買物客でにぎわう家電量販店が、

2006年の西宮市では、駅前広場が誘拐現場となつた。

 

障碍者むけの「だれでもトイレ」もおかしい。

「だれでも」とはつまり犯罪者をふくむ。

2011年に熊本市のスーパーで、男子大学生が女児を窒息死させた。

 

 

 

 

これはイギリスで販売されるキッチンナイフ。

先端がまるまり、人を突き刺せない様になつている。

ここまでしてこそ防犯。

 

 

藤沢市立鵠沼小学校の正門

 

 

校門から受付までひかれるオレンジ色の線。

「しらない人間」がこの線をはづれたら、「不審者」とわかる。

「部外者立入禁止」と看板をたてようが犯罪者はあきらめない。

敵の侵入を想定したうえで、返り討ちにするのが上策。







【参考文献】

小宮信夫『犯罪は予測できる』(新潮新書)



犯罪は予測できる (新潮新書)犯罪は予測できる (新潮新書)
(2013/09/14)
小宮信夫
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タグ: 刑罰 

小説7 秋葉原パンツパーティ

『自由か、隷属か』


登場人物表


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3月21日 朱星ジュン

 

 

 

コンコン、ガラリ。

 

「お兄ちゃん、お背中ながしてあげるね♡」

「……ああ、たのむ」

 

ゴシゴシ。

 

「男の人の背中って大きいな。たくましいし……はい一丁あがり!」

 

ドボン。

 

「やっぱふたり一緒だと湯舟せまいね」

「…………」

「もう、さっきからどこ見てるの。お兄ちゃんのエッチ!」

 

肌色の水着、湯気でごまかせたかな。

世界中の男子がいまなにしてるかおもうと興奮。

 

「それはともかくエンタメ法のことだけど」

「と、唐突だな」

「お兄ちゃんは賛成? 反対?」

 

「青少年育英法」の施行により、「日本エンターテイメント協会(NEK)」は、

若者むけ書籍・アニメ・ゲームなどのインターネットにおける独占販売権をえた。

各業界は違法ダウンロード対策で国に泣きついていた経緯もあり、

そもそも経営的に不利な内容でもなく、抵抗しなかった。

政府系機関として価格統制し、消費者に負担かける不安もあったが、

むしろ値下げがなされ、非正規業者は駆逐されつつあった。

 

「……てなわけで、あたしたち兄妹はエンタメ法反対! くたばれNEK!

それではみんな、また来週もみてね♡」

 

ふぅ。

ぱちゃぱちゃ。

湯をかきまぜる。

 

「アニキ、またニコ生に協力してくれてありがと。のぼせちゃうね」

「オレは法律に反対したおぼえはないが」

「なによ、あたしとガチで議論する気?」

 

あたしは『エンタメ補完計画』とゆうサイトをたちあげた。

キャッチーなネーミングをしたけりゃエヴァだ。

体はった活躍のおかげで、アクセス数はかせげてる。

けどネット輿論はたやすくうごかない。

反対3分の1、賛成3分の1、日和見3分の1ってとこか。

決してすくなくないのに、全体でみると「少数派」。

はがゆいぜ。

 

「相手は国だぞ? 15歳の小娘が太刀打ちできるもんか。学生自治とは次元がちがう」

「うっせー剣道バカ。こっちは策があんだ」

 

ピチョン。

水滴おちる。

 

「だから感情的になるな。オマエの運動は必然性がない」

「必然性って、いまの政府がおかしいとおもわないのかよ?

『ヒトラミクス』とか礼讃されてるけど、ウチらの生活なにもかわってないだろ。

むしろくるしくなる一方だろ」

「それとこれは……だいたいオマエは火虎首相の支持者じゃないか」

「うっさいな。そうだよ、あたしは無智だから経済なんてわかんないよ。

でもアレだけはゆるせない。アレだけは!」

 

めまいがするのは、風呂のせいか、怒りのせいか。

 

 

 

 

 

自由部部室でMADを編集してたら、灰野先生がはいってきた。

複雑な表情をしている。

本ばっか読んでる陰気な男とおもってたけど、意外にイケメンときづいた。

 

「ここには来ないつもりだったんだ。なにせ自由部だから」

「あたしを止めにきたんでしょ。校長あたりにいわれて」

「察しがよくてたすかる」

 

ブルーレイがちらばる机にちかづく。

あたしのMBPをのぞく。

このひと、結構ヒゲこいんだ。

 

「アニメがすきなんだね。声優になるのが夢って聞いたよ」

「狭き門ですよ。別に本気でじゃありません。で、御用件は」

「名ばかりの顧問としてはいいづらいが、卒業まで活動を自粛してほしい」

 

名称を「不自由部」に変更しようかな。

 

「なんの権利があって?」

「ひっきりなしに苦情がくるんだ」

「実名も学校名もバレましたからね。クズが2ちゃんに書きこんだんです」

「中学生が政治活動するのはかまわないが、キミはやりすぎた」

「迷惑かけたのはあやまります。でも……」

「学校は生徒をまもる義務がある。わかってくれ」

 

あたしのためといえば納得するとでも?

どうしてだれも、ただひとりも理解してくれないのか。

 

「事情はわかりますが、指示にはしたがえません」

「性急に自由をもとめるほど、泥沼にはまり不自由となる。

普通にいきればこんな自由な国もないのに」

「それがあたしですから」

「まわりに尻ぬぐいさせても?」

「そうです。すくなくとも先生はまもってくれるでしょ?」

「……努力はする」

 

駆け引きのはじまり。

そっとボタンふたつはづす。

必勝のゲーム。

 

「だからなのかな」

「なにが?」

「あたしがいつも先生を好きになっちゃうこと」

「噂はきいたことある」

 

視線があう。

期待? 躊躇?

 

「はじめは小学4年のとき。相手は塾の先生で、大学生だった」

「早熟だな」

「警察沙汰になって先生は退学。あたしはひたすら被害者をよそおった」

「事実だろう」

「大人はそうおもいたがる。両親はわかってた、だれがわるいか」

 

ブラをみてる。

てのひらで自分の肌をさわると、スベスベきもちよい。

他人なら、もっとさわり心地よいはず。

 

「父は母に責任おしつけて離婚した」

「責任?」

「あたしがビッチになった管理責任。最低のオヤジでしょ」

 

あたしのキスをこばむ男はいない。

今回もそうだった。

右手で口をおさえる先生。

かまわない、もうあとへひけない。

 

「言い訳になるが、話についひきこまれて……」

「いいのよ。あたしが好きな人に勝手にキスしただけ」

「…………」

「ごめんね、こんな生徒で」

 

みんなそう。

あたしのためなら死ねるって顔になる。

 

「ネットの件から、ボクはキミに興味があった。助けになりたいとも」

「うれしい」

「あくまで想像だが、お父さんに対するコンプレックスにとらわれてるんじゃないか」

「かもしれない。大嫌いだもん。いますぐ死んでほしい」

「コンプレックスは除去するのでなく、接近すべきとフロイトがいってる。のりこえられるさ」

「できるかな」

 

一枚のFAXをみせられた。

 

「実は文科省からキミに関する通知がきたんだ。異例のことだ」

「ふーん」

「でもボクがどうにかする。キミは自由にふるまっていい」

「ありがとう。大好き……本気で愛してる!」

 

今度は夢中でしがみついた。

 

 

 

 

 

日曜の秋葉原中央通り。

あたしはマイク片手に壇上にたつ。

おもったほど緊張しない。

白のセーラー着てれば、だれにもまけない。

 

「……あっあー、てすてす。『エンタメ補完計画』オフ会、再開するよっ!」

「ウォー!!」

「うひゃー、ノリいいなあ。ストパンのブルーレイやDVDもった?」

 

きょうは『ストライクウィッチーズ』OVAの発売日だった。

いまさっき、みなでヨドバシやソフマップなどの店舗から強奪した。

むろん犯罪だ。

警官もゾロゾロあつまるが、連中はまだ事態をつかめない。

 

「われわれは角川書店をゆるさない!」

「ゆるさない!」と唱和。すごすぎ。

「まえからアコギな会社とおもってたけど、やつらは魂まで売った!」

「いいぞ、じゅんじゅん!」

「なによりNEKをゆるさない! 権力をかさにきてアニメを改悪するなんて。

宮藤芳佳やリーネちゃんの長ズボン姿なんて、だれがみたいんだ。

あれは誇り高きウィッチの象徴だろ。パンツは正義!

いや正確には『ズボン』だからややこしいけど……」

 

ウケてる。

 

「よってわれらは、ここに鉄鎚をくだす。破壊せよ!」

 

ディスクがわられ、ふみにじられる。

ただしい行為じゃない。

でもさきにアニメを破壊したのはむこうだ。

安全地帯にいる日和見主義者にも批判されてたまるか。

「パンツ! パンツ!」とシュプレヒコールがあがる。

自分がなにをのぞまれてるか明白。

 

「あたしたちは奴隷じゃない。みとめないものは、みとめない!」

 

無数のカメラのまえでパンツをぬぐ。

あたしは一体なにやってんだ。

 

「だれかライターもってない?……うん、ありがと。火つけて」

 

あちちっ。

火がまわるのがはやく手ばなす。

男たちがむらがるも、すぐ灰となる。

なんかいわなきゃ。

この場にぴったりのセリフがあったはず。

あれだ。

 

「……パンツじゃないから、恥ずかしくないもんっ!!」

 

わりと怖いものなしのあたしだが、かえってきた絶叫にびびった。



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