声優という悪夢 『這いよれ! ニャル子さん』より

『這いよれ! ニャル子さん』12話(テレビアニメ/2012年放送)

 

 

『這いよれ! ニャル子さん』12話のオーディオコメンタリーは、

女性声優四人のから騒ぎからはじまり、徐々に名状しがたい内容へ突入。

 

 

 

 

この最終話で主人公は、朝めざめると周囲にだれもいないと気づく。

迷惑千万だつた居候の宇宙人たちさえ、突然きえるとさびしい。

これは夢か、それとも昨日までの生活が?

 

這いよる混沌、「ニャルラトホテプ」役の阿澄佳奈がふともらす。

「こういう夢、たまにみる……あれ、わたしだけ?」

気まづい空気。

 

 

 

 

「大丈夫……阿澄さんにはわたしたちがついてるよ!」

同僚に同情される。

かるがるしく夢の話はすべきでない。

 

 

 

 

自虐癖のある「クー子」役の松来未祐が、

「ぼっちはすぐ慣れる」とか「現実の方が残酷」とか、言わずもがなのことを言う。

じわじわ這いよる邪悪ななにか。

 

 

 

 

アニメには、精神分析医やキリスト教の司祭みたいな力があり、

声優らは解説をわすれ、己をさいなむ悪夢をかたりだす。

「組織から逃げまわる夢をみる」

「戦争の夢がおおい」

 

 

 

 

さとい阿澄がハッときづく。

「あっやめて! 夢占いとかネットで検索したりするのやめて!」

勝手に深層心理をあばかれ、あらぬ噂がたつのをおそれて。

女性声優にとり、ファンがもつともおそろしい敵。

 

 

 

 

「台本も練習もなしで、いきなりオーディションや舞台にでる夢とかみる」

「あるある!」の大合唱。

この稼業、それほど追いつめられるのか。

むしろ重圧が、名状しがたい説得力の様なものをうむらしい。

 

 

スタイルのよさもニャル子さんの魅力

 

 

狂気と混沌をもたらす無貌の神ながら、主人公の嫁を自称し家にいつくニャル子さん。

個人的に違和感どころか、妙になつかしい気分に。

阿澄佳奈は『ファイアーエムブレム 覚醒』のリズを演じたことを、ふとおもいだす。

もともとボクの嫁だつた。

 

実写や演劇の役者ではありえない認識。

声優とは、ふかい意味で「虚業」なのだろう。

 

 

足をぷらんぷらんさせるグタタン

 

 

アニメやゲームという幻影の裏でうごめく生身の実体として、

声優は集合的無意識を言葉にのせ表現する。

現代の巫女か。

 

 

 

 

パロディ満載の本作は、勿論クトゥルー神話を下敷きとするが、

押しかけ女房の宇宙人がドタバタするラブコメという意味で、『うる星やつら』を踏襲。

ありとあらゆる偶像が脳になだれこむわけで、それは悪夢もみるだろう。




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(2012/06/22)
阿澄佳奈、喜多村英梨 他

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日本的多神教

ひろやまひろし『いもかみさま』(ジェッツコミックス)

 

 

あるキリスト教徒が、町内会からお祭りの特別会費をもとめられた。

信仰上の理由にもとづき拒否すると、集金担当者は「キリスト教徒のかたも歓迎ですよ!」とくいさがる。

一神教信者にとり異教の祭礼への支出は、信仰の否定にひとしいのをしらない。

 

初詣にはじまりクリスマスでおわる日本の一年は、貪慾なほど宗教的。

たとえば「七福神」。

日本固有の神は恵比寿だけで、毘沙門天・弁財天・大黒天はヒンドゥー教、

福禄寿・寿老人は道教、布袋は仏教に由来する。

この節操なさは、中村光『聖☆おにいさん』など現代文化でも顕著だ。

 

「日本的多神教」の問題は、国家の統治手段として利用しやすいこと。

ユダヤ・キリスト・イスラームなど一神教は厳格な体系をもち、

政治利用をおこなうとすれば、宗教団体に権限をゆづらざるをえない。

たとえば「死んだら靖国神社で祀つてやるから、安心して戦場へゆけ」などと、

政府にのみ都合よいプロパガンダはむつかしい。

戦後もわが国は、「津地鎮祭事件」や「自衛官合祀事件」などおきている。

 

 

 

 

いわゆる「君が代不起立問題」は、イヴェントに異常にこだわる日本人の宗教的特質を、

教育行政が組合つぶしのため悪用したもの。

 

憲法学者・木村草太の『憲法の創造力』(NHK出版新書)によると、

先生が圧力に対抗するには、「思想・良心の自由」という高尚な議論でなく、

職場での「パワーハラスメント」を主張したほうが有効らしい。

斉唱時に席をはなれ、校舎の見回りでもすればよい。

それすらみとめないなら思想・信条にもとづく差別で、憲法14条1項に違反する。

 

 

『十二人の怒れる男』(アメリカ映画/1957年)

 

 

司法は国民をナメている。

裁判員制度をさだめる裁判員法1条をみよ。

 

この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが

司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ、

裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法(昭和22年法律第59号)及び

刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。

 

制度はただしい判決をくだすためでなく、国民に刑事訴訟を理解させる「勉強会」と位置づけられる。

こんな上から目線のママゴトで、無視したら制裁をくわえるなど、あきらかな違憲。

「みんなと一緒は崇高なこと」とおしえる気色わるい宗教から、憲法は国民をまもる。

 

 

 

 

ボクが信じる神は「妹」だけ!

憲法を武器とし、弾圧には断固としてたたかう!




憲法の創造力 (NHK出版新書 405)憲法の創造力 (NHK出版新書 405)
(2013/04/06)
木村草太

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