レアアースと支那
スカンジウムの結晶(撮影:Alchemist-hp)
「レアアース(希土類元素)」はレアメタルの一種で、れつきとした金属だ。
さまざまな岩石に微量にふくまれ、分離抽出がむつかしい。
ハイブリッド自動車や電子機器でもちいるため、日本の工業において重要だが、
2005年以降、世界生産のうち97-8%を支那がしめていることが問題視される。
「これだからチューゴクはつけあがる!」と憤慨するまえに、冷静に状況をながめよう。
支那のレアアース埋蔵量は世界の一部にすぎず(半分とも23%ともいわれる)、
生産量も1991年は33%にとどまつていた。
採掘技術のイノヴェイションが独占をもたらす。
露天掘りでなく、1-2メートル間隔で穴をあけ硫酸アンモニウムをそそぎ、
横からレアアースのイオンをふくむ溶液を採取する、単純な方法がそれ。
民間資本が殺到し価格暴落、世界最大の生産国だつたアメリカは採掘中止した。
つまりレアアース独占は、中共政府の意図せざるところ。
2010年9月、尖閣諸島問題を機に輸出停止した(といわれる)のも、場当り的対応にすぎない。
2011年には価格つり上げが成功したかにみえたが、
各国で採掘や代替技術開発が活発化、国内はヤミ生産と密輸が横行し、統制は失敗。
さらに政府による輸出制限は協定違反と、WTOの被告席にたたされるハメに。
商業とナショナリズムは相容れないと、支那人は肝に銘じている。
中華思想ゆえ、かれらは世界最悪のナショナリストにちがいないが、
一方で個人としては世界最悪のエゴイストでもある。
自国政府なぞ毛頭信じないし、まして外国は視野の片隅にもはいらない。
4700年間、なんぴとも統制できなかつた連中について、頭をなやませるほど時間の浪費はない。
上空からみた南鳥島
「たかが電気」といつたのは坂本龍一だが、それにならえば「たかが金属」。
レアアースの輸入価格が数十倍に高騰した2011年でさえ、
エアコンの値段が5-15%あがつたくらいで、国民への直接的影響はほぼ皆無。
(この値上げも経済産業省の要請による)
もし假りに輸入が長期間停止されたとしても、
ネオジム磁石を国内生産するかわり、支那製の磁石をかうという程度のはなし。
70年まえアメリカが日本におこなつた、石油・天然ガスの供給途絶と次元がちがう。
2012年、南鳥島周辺でレアアースを多くふくむ泥が発見され、日本のメディアはいろめきたつ。
「レア」という言葉によわい国民だ。
だが自給率向上をあせり、莫大な税金を投じ資源を開発するのはおろかしい。
その隙に、支那ではまた別分野で創造的破壊がおこるのだから。
【参考文献】
丸川知雄『チャイニーズ・ドリーム 大衆資本主義が世界を変える』(ちくま新書)
![]() | チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える (ちくま新書) (2013/05/07) 丸川知雄 |
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